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第95話 力を合わせたスキル

 ミリアンの家を訪問した翌日。


 レフレオンにヘスポカの地酒を渡しておいた。

 普段見せることのない、いい笑顔だった。

 まあ想定外とはいえミリアンの家にちゃんと挨拶できたし、きっかけをくれたレフレオンに感謝しておこう。


 ミリアンを迎えに行き、落ち着いたところで【演算】スキルの応用を完成させたい。

 捜索を急いだせいで練習する暇はなかったが、合間にやるより集中できるからかえって良かったかもね。



 俺が考えた【演算】スキルの可能性は、魔力を高速で動作させる魔力制御にある。


 1つ目の可能性は思考加速だ。

 頭脳の補助に使い計算が速くなるということは、頭の中の思考が高速になるということだ。


 クラン『黄金の翼』では、教育により複数のスキルを修得する人が増え、スキルを組み合わせた工夫が行われていた。

 例として、【暗視】【俊足】【察知】の組み合わせで高速で索敵するというものがあった。

 

 思考加速を武術系のスキルと併用して使うことができれば、かなり有効と思われる。

 戦闘は体だけを使うのではなく、思考することも大切だ。

 相手の癖を呼んだ上での攻撃の組み立てなど、思考が速ければ判断も速くなる。

 特に複数の敵に対応するのに役に立つだろう。


 武術の達人になると、考えるより先に体が動くというが……

 俺にはとても無理なので、思考加速で補うほうがいいはずだ。



 2つ目の可能性は中級以上の魔法の高速充填だ。

 中級以上の魔法は初級に比べて、威力は高いが魔力を溜めるのに多少時間がかかる。

 『黄金の翼』でダンジョン攻略をしていたときは、索敵が優秀で常に先手をうてたので、中級以上の魔法を準備する時間が十分にあった。

 このように慎重に攻略を進めるなら必須の技術ではないが、いざというときの備えにはなるだろう。



 そして3つ目の可能性は見た景色をそのまま地図として残すことだ。

 俺は繊細な魔力制御に自信があるので、モデリングストーンで見た光景そのままを成形すればどうかと考えたのだ。

 実際にやってみるとちょっとづつ成形はできるのだが時間がかかりすぎて実用的ではなかった。

 これならまだ手書きで簡易地図を作ったほうがましだと諦めていた。


 【演算】スキルを熟練させることで成型は速くなると思うが、実用的な速度になるかどうか自信がない。


 まあ、何を試すにしても【演算】スキルを鍛えなければならない。

 ひたすら反復練習をするしかない。



 「チェスリーさ~ん」


 「ん?ああ、ミリアンどうかしたかい」


 「いま何をしているのですか」


 「【演算】スキルの反復練習だよ。可能性はいくつが見えているから、スキルを使いこなせるようにならないとね」


 「そうなんですか。あの……私も一緒に練習していいでしょうか」


 「う~ん、どうしようかな。俺の練習がまだ足りていないし、下手な魔力制御を教えるより完成したものを教えたほうがいいよね」


 「ふふっ、そんなことありませんよ」


 「え?どういうことかな」


 「チェスリーさんが教えてくれる魔力制御は、他の方と違って暖かさが伝わることはご存知ですよね」


 「そうらしいね。自分ではわかっていなかったが」


 「私の想像ですけど、あの暖かさはチェスリーさんの思いがいっしょに流れてきているのかなって」


 「思い……もしそうだとしても思いで何か変わるのかな」


 「教えた相手のほうがスキルの効果が高いのは、チェスリーさんのスキルに対する思いという情熱も一緒に引き継ぐからではないでしょうか。特にレアスキルのときは強烈に感じますから」


 「そ、それは申し訳ない」


 「いえいえ、けっして謝られることではないです。それどころかみんな魔力を流してほしいとお願いするぐらいですよね」


 「あー確かにそうだな」


 「そこで先ほどのお話しですけど、チェスリーさんが練習中のスキルを私に流してもらえば、現状の魔力制御がわかりますし、お互いに教え合うことで熟練が早まると思うのです」


 「お互いに現状を知って教え合うか……なるほど。ミリアン、ありがとう。手伝ってくれるかい?」


 「はい!では魔力をお願いしますね」


 「わかった」


 ミリアンに練習中の【演算】の魔力制御を流していく。

 思いが伝わるか……本当にそうなら浪漫のあることだな。


 「ちぇ、チェスリーさん……あの、お願いします」


 「へ?何を?」


 「ちょっと感情が抑えきれなくて……」


 「あ!わかったすぐに」


 ミリアンをそっと抱き寄せてキスをする。


 「ふふっ」


 「え?ミリアン?」


 「レアスキルではないのに、こんなに強い思いをいただけて幸せです。恋人と言ってくださったから私の思いも強くなっているのかもしれませんね」


 「……ミリアン」


 「さあ、練習しましょう。何となくチェスリーさんがやろうとしてることがわかりました」


 「うん。しばらく練習してから魔力制御をお互いに流してみよう」


 しばらくそれぞれで反復練習、少し進歩したところで魔力制御を流しあう。

 ミリアンの言う通りかも。

 この練習方法は1人でやるより効率がよさそうだ。

 自分では気付かない工夫をしていたり、上がった熟練の制御を学び直せる。

 欠点は同じぐらい魔力制御を扱える人同士でないと、この方法は使えないことだろうか。

 俺とミリアンなら問題ないけどな。


 「あっ、メアリもいれたほうがさらに効率よくならないかな」


 「そうですね。1人占めはよくないですもの」


 「いや、そういう意味でいったんじゃないから」


 「ふふっ冗談です」


 メアリを呼ぶとすぐにきてくれた。

 どうやらミリアンと2人でいたので遠慮していたようだ。

 そんなに気を使わなくてもメアリも大事な人なんだけどな。


 メアリに【演算】スキルの練習方法を教えると感心したようだ。


 「ミリアンさん、この練習方法は素晴らしいです。上手くいけばスキルの熟練が数倍早くなるのではないでしょうか」


 「そうなればいいのですけどね。チェスリーさんの教育の力がなければ使えない方法でしょうし」


 「実際に確かめましょう。私にも魔力制御をお願いします」


 「よし、いくぞ」


 メアリにも【演算】の魔力を流していく。


 「これは……さすが師匠です。効率のいい制御になりつつありますね。やりがいがありそうです」


 「そうしないと俺が使えないからな。スーザンの魔力量もかなりのもので、あんなに魔力をつぎ込んだ制御はできないんだ」


 「あの……師匠の魔力量大きくなっていませんか?」


 「え?いや、自分ではそんな感じしないんだけど」


 「私の捜索魔法で感じる魔力が大きくなっています。……これなら今までより遠く離れたところからでも捜索できそうです」


 「お、おう。というか、そんないつも捜索しなくていいからね」


 「師匠は転移が使えますし、これでも完璧とはいえないのです。より精度の高い捜索をするには、別の工夫が必要かもしれません」


 「い、いやいや。俺の捜索にそこまで力をいれなくていい――」


 「いえ、これは師匠のお手を煩わせることはありませんので。【演算】の練習が上手くいったら、ミリアンさんと捜索魔法の共同練習を試してみます」


 何かおかしい。

 会話が噛み合っているようで微妙にずれている。

 どうもメアリの中で俺の捜索を完璧にするのは決定事項のようだ。


 「はあ、わかったよ。それじゃ【演算】の練習を始めるか」


 3人揃って練習を始める。

 いま俺がやろうとしている工夫は、並列で魔力を循環させる方法だ。

 速度が上げにくいなら、並列で循環させことで代用できるのではないかと考えた。

 しかし、結局それをやるためには高速でやらなければならず、なかなか上手くいかない。

 熟練度はかなり上がってきているが、もう少し何とかならないものか。



 「師匠、提案があります」


 「メアリ、なんだい?」


 「やはり師匠の魔力制御がほぼ完成形のようです。しかし、これ以上高速で魔力を動かすには、やはり魔力量が足りないと思います」


 「そうだな。俺も限界を感じてきたところだ。やはり魔力量の多い人に制御だけ教えて、熟練してもらった方がいいかもしれないな」


 「ええ、スーザンさんにも覚えていただきたいですが、もう1つ試してみたいことがあります」


 「お、何か別の方法があるのかい?」


 「はい、師匠に私とミリアンさんの魔力を譲渡して一時的に大きな魔力量を使えるようにしてみてはどうでしょう」


 「魔力を相手に!?そんなことできるのか」


 「あれ?師匠は既にご存知だと思います。既に使っているようですし」


 「ん?……覚えがないなあ」


 「……わかりました。実際にやってみましょう」


 ミリアンはそう言い残した後、ミリアンと何か話しているようだ。

 あれ、2人で魔力制御の練習始めてるし。

 まあいいか、待っている間は練習していればいいや。



 しばらくするとメアリとミリアンがやってきた。


 「師匠、お待たせしました。魔力譲渡を試しましょう」


 「ああ、2人で何をやっていたんだ?」


 「師匠の魔力色をミリアンさんに覚えてもらっていました。譲渡するには、相手の素の魔力色に合わせる必要があるのです」


 「ああ!そういうことか。確かに俺もやっている方法だ。それが相手に魔力を与えることになるとは思っていなかったけどね」


 「師匠が相手の魔力色に合わせていたのは、初期の魔班病治療と教育のときにたまにあるぐらいでしたね。そもそも目的が違うので気付くことがなかったのかもしれません」


 「……まあ自分でやったことに気づかないのは覚えがありすぎるけどな」


 「ま、まあまあ師匠。試してみましょう」


 思わぬところで過去のいろいろな失敗を思い出してしまった。

 挫けずに頑張ろう。


 メアリとミリアンが俺の肩に手を添えて魔力の譲渡を開始した。

 意識を向けることでわかったが、知らないと特に魔力量が増えていると感じないんだな。

 譲渡されていると意識して魔力に注意すると、確かに魔力量が増えているようだ。

 でも使わないとすぐに消えてしまいそう。


 「もう少しだけ多めに流してみてくれないか?」


 「「はい」」


 2人から流れてくる魔力が増えた。

 うん……これなら余裕で魔力を高速で動かせる。


 【一望千里】を発動、これもいつもより楽だ。

 そして地面に手を当て、モデリングストーンを発動。

 見たままの風景を成型で作りだしていく。


 「師匠!」「チェスリーさん!」


 ミリアンとメアリが驚きの声を上げた。

 地面には精密に描写された風景が描かれていたのだ。


今回もお読みいただき、ありがとうございます。


次回は「描画魔法お披露目」でお会いしましょう。


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