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第94話 想定外の正式なご挨拶

 俺の前にミリアンの両親が座っている。

 俺とミリアンは並んで座っていた。

 ご両親とも元気そうだな。


 「チェスリーさん、遠いところわざわざお越しいただいてありがとうございます。ミリアンはちゃんとやっているでしょうか」


 「ええ、よくやってくれてます」


 「そうですか。あの、普段はやはり治療をされているのでしょうか?」


 「えーと、治療もしてますね。後は……教育などやっていますね」


 「まあ、チェスリーさんは教師でもありますのね。どのようなことを教えているのですか?」


 「ま、魔法とかですね」


 「そうですか。ミリアンはマクナルの商会でお仕事をいただくようになっていたと……」


 「あ、いえいえ。商会の仕事もやってますね」


 「え!?商会のお仕事もですか!?」


 ……困った。

 普段やってることに隠すことが多すぎて断片的に話すとよくわからなくなってきた。

 下手に話すと流れで全て言ってしまいそうだし。

 困っているとミリアンが話をつないでくれた。


 「お母さん、商会のお仕事は秘密にすることもあるでしょう?うっかり話せないことがあるの」


 「まあ、そうでしたの。それなら普段ミリアンがどうしてるのか聞きたいわ」


 「もう、お母さんったら。こうして元気に帰ってきたじゃない」


 「遠く離れたところにいる娘のことなんですもの。病気が治ったとはいえ心配なのよ」


 「病気はもうすっかり治ってるし、以前勤めていた商会のようなことはないから安心して」


 「それならいいけど、マクナルから来たのよね?また輸送の仕事で無理に使われているなんてことないわよね?」


 「ええ、輸送のお仕事はたまに頼まれる程度ね。あ、これお土産ね」


 ミリアンが収納から、にゅっと大きめなものを取り出した。

 お、冷暖房の魔道具じゃないか。


 「あらまあ、何に使う物なのかしら?」


 「これを使うと室内の気温が調整できるのよ。暑いときは冷たい風をだせるし、寒いときは暖かい風をだせるの」


 「そ、そんなことできるの?それに魔道具って高かったわよね」


 「ふふっ、大丈夫。詳しくお話しできないけど、この魔道具を作ってるところと親しくしているの。そのおかげで安く譲っていただいたのよ」


 「まあ、こんな立派なものを作れるところと。凄いわ~」


 「私の仕事はチェスリーさんの助手なの。治療や教育のお手伝いをしてるのよ」


 「……無理せず働けていれば安心ですけどね。ミリアンは魔法は収納しか使えないのではなかったかしら?」


 「いろんな魔法が使えるようになったの。チェスリーさんのおかげよ」


 「まあまあ、よかったわね~」


 ほっ、ミリアンに話してもらった方が安心だ。

 そう気を抜いたところで、お父さんのほうから俺に話しかけてきた。


 「チェスリーくん、その……こちらへ来たのはミリアンのことで何かあるからかね」


 「え、いえ。たまたまヘスポカに来たのでご挨拶に伺ったのです」


 「たまたま!?い、いや、マクナルから来るのは大変だろう。道中は魔物もでるし危険だと聞いているが」


 あっ、転移のことご両親は知らないのかな。

 また失言をしてしまったかもしれない。


 ミリアンに【以心伝心】でこっそり聞こう。


 {ミリアン、ご両親は転移のことは知らないのかい?}


 {あ、はい。……秘密でしたね。エドモンダ様の使いの方はマクナルでチェスリーさんのお手伝いをすることしか伝えていないと思います}


 {そうか。あのさ、俺が話すとやらかしてしまいそうだから、話の続きをお願いしたい}


 {ふふっ、お任せください}


 「お父さん、チェスリーさんは冒険者でもあるのよ。商会の取引でヘスポカまでくる用事があったので護衛をしてくれたの」


 「お、おお。そうだったのか。それにしてもチェスリーくんはいろんなことをしているんだね」


 そう言われてみると、俺は冒険者だったよな。

 最近は教師の仕事ばかりしているし、ダンジョン攻略はしたけど魔物と戦ってないし。

 あとは地図作りやダンジョン捜索か。

 ……深く考えないようにしよう。 


 「え、ええ」


 クランの環境のありがたみがよくわかる。

 秘密を共有しているメンバーが相手なら、自分の話したいことを気にせず話せる。


 しかし、ミリアンのご両親が相手では、いろいろ話したくても秘密にしなければいけないことを考えながらになり、非常にもどかしい。

 結局、曖昧な返事ぐらいしかできなくなってしまう。



 ……いや、話し辛くなるのも俺がはっきりしないせいだ。

 ミリアンのご両親が何を聞きたいのかはわかっている。

 普段の様子や仕事のことを聞いてくるのは、ミリアンのことが心配だからだ。


 ミリアンは病気になる前にも商会で働いていた。

 大容量の収納魔法があることで、商会の都合に振り回され、明らかに過労だったのだ。

 過労が魔班病の原因ではないが、魔班病が発症しなくても倒れていたかもしれない。

 便利なスキルを持っていることで、利用された例と言えるだろう。


 だからこそ、今ミリアンは幸せに過ごしているのか確かめたいのだ。



 「ポールさん、モリーさん。今日はお二人に伝えたいことがあります」


 「あ、ああ。何だね」


 「私はミリアンさんとお付き合いさせていただいてます」


 「チェスリーさん!?」


 ミリアンのご両親の名前は、父がポール、母がモリーだ。

 今までちゃんと名前で呼んだことはなかったが、今はしっかり呼ぶべきだと思った。

 ミリアンも驚いているようだな。

 当たり前か、こんなことを突然相談もなしに言ったのだから。


 でも俺が秘密を気にしながら話をしても、ご両親の不安が増すだけだ。

 俺の正直な気持ちであり秘密にする必要がない、最もご両親が安心できることを伝えたかった。


 俺の言葉を聞いてモリーさんの目からすうっと涙が一筋流れた。

 ポールさんは一瞬驚いた顔をしたあと、やさしく微笑んだ。


 「わしはミリアンがチェスリーくんを追って旅に出ようとしたときに猛反対したのだ。マルコラスが付き添うとは言っていたがマクナルは遠い。まして病み上がりの体だ。無理をすべきではないと」


 「お父さん……」


 「エドモンダ様の使いからの話も最初は断ったのだ。収納魔法のことを知らなかったようだし、仕事はチェスリーさんの手伝いと伝えられたが、信じられなかったのだ」


 「そうでしたか。あの、なぜ信用される気になったのですか?」


 「エドモンダ様が直接いらしたのだ。話を聞くと同じ病気で苦しむ娘さんをチェスリーさんに救ってもらったという。そして平民のわしに頭まで下げたのだ。ミリアンをあずからせてほしいと」


 「エドモンダ侯爵様がそのようなことを……」


 「おお、侯爵様になられていたのか。こちらに来たときは伯爵様だったね」


 「あ、ええ。魔班病の治療などが認められ昇爵されました」


 「そうか、やはり立派なお方だったのだな。そうして送り出したものの、ミリアンの思いが届くのかどうか不安でしょうがなかった。チェスリーくんの一言で安心したよ……」


 ポールさんの目からも涙があふれてきていた。

 くうっ、俺も涙をこらえきれない。


 「ミリアンよかったわね。私もすごく不安だったの。チェスリーさんはいい人だと思ったけど、治療してもらっただけの縁だし、上手くいくかどうかなんてわからないもの」


 「お母さん、私は不安なんてなかったよ。私のために必死で治療してくれた人なの。あの時感じた気持ちは絶対にそれだけじゃないって思えた。どうしてももう一度会って確かめたかった」


 「うんうん、ミリアンが正しかったのね」


 「チェスリーさんと一緒にお仕事して、いろんなところに行ったり、いろんなことをしているの。今とても幸せよ」



 いやあ、今更だけど正式なご挨拶になってしまったな。

 今後気が変わることもないだろうし、何より安心できたと思う。


 ……ミリアンには【以心伝心】で謝っておこう。


 {ミリアン、突然ですまなかった}


 {もうっ、驚きました。……でも嬉しいです。ありがとうございました}


 {あ、ああ}


 ミリアンが怒ってなくてよかった。


 思い切って告白したおかげで、それからは自然に会話できるようになった。

 仕事の話が絡まなければ、ミリアンとの思い出を語ればいい。

 つい王都のことを言いかけてしまったので、ミリアンから注意されたけど。


 しばらく楽しく会話していると、モリーさんの調子があがってきてミリアンの過去のことを話し始めた。

 い、いや、俺は別にを詮索したいわけじゃないんだけど……ちょっと気になる。


 「ミリアンは商会のお仕事であちこちに行ってたし、出会いもいろいろあったわけね」


 「は、はあ」


 「誘われたことも1度や2度じゃなかったかしら。訪問先のことは詳しくないのだけど、商会の男性が家にお花を持って来たこともあってね。それにほらミリアン、お隣の町の鍛冶屋さんにいったときのこと覚えてる?」


 「お、お母さん!!チェスリーさんにするお話しじゃないでしょ!」


 「何言ってるの。私が言うのもあれだけど、あなたわりとかわいいんだから、何もないほうが不自然でしょ。ちゃんと話してあげたほうが安心するから」


 「いえいえ、そんなこと話さなくても大丈夫ですー」


 「まあそんなことなんて。ね、気になるでしょチェスリーさんも」


 「あ、まあ、いやあ」


 「チェスリーさん!」


 ミリアンに睨まれてしまった。

 ちょっと怖い。


 「何を騒がしくしているんだい。あっ!!ミリアンじゃないか。それにチェスリーさん!」


 マルコラスが家に帰ってきたようだ。

 俺が来ていることに気付き、かなり驚いている。


 「お久しぶりです」


 「おお、マルコラス。そっちも元気そうだな」


 「ミリアンもよく帰ってきた。またマクナルへの護衛任務でもあれば訪ねようと思ってたんだけど、なかなか依頼もなくてね」


 そうか、マルコラスに会うのも久しぶりだし、いろいろ伝えていないことがあるな。

 後でそれとなくマクナルにはいないことを伝えておかないと。


 一応エドモンダ様の屋敷に訪ねてくれば王都に伝えてくれることにはなっているが、シルビアに手間をかけさせることになる。

 あ、呼びかけ魔道具が完成すれば、その問題も解消されるのか。



 その後はマルコラスも交えての歓談となり、ミリアンは自宅に泊まっていくことにしたようだ。

 俺は仕事の都合ということで、クランに帰らせてもらうことにした。

 家族水入らずで話したいこともあるだろうしね。


今回もお読みいただき、ありがとうございます。


次回は「力を合わせたスキル」でお会いしましょう。


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