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第93話 ダンジョン捜索と魔法の工夫

 ダンジョン捜索は以前の効率が良かった役割分担でいいだろう。

 俺は視認転移、メアリは捜索魔法、ミリアンは重力魔法だ。

 今回はレフレオンとマックリンが一緒だが、魔力の範囲を少し広げるだけなので問題ない。


 捜索は人の生活圏の外側に絞っており、王都を中心とした大雑把な円周で例えると、北から右回りに南までの調査が終わっていない。

 北から左回りで南までは終わっているので、単純に考えれば半分終わっていることになる。

 実際は東側のほうが西側より外周が遠いので、4割が調査済みで6割が未調査といったところだ。


 あれ?たった3日で全て調査できるのだろうか。


 「メアリ、これだと俺が加わってもあと3日で調査するの無理じゃないか?」


 「心配ご無用です。捜索魔法を工夫して一度に広範囲を調べられるようにします」


 「ほお、工夫か。どんな工夫をしたんだい?」


 「発想を少し変えてみました。自らの魔力を地下まで広げてダンジョン核を感知しようとするから、調べられる範囲が限定されるのだと」


 「そうだな。でも感知するためにはそうするしかないんじゃないのか?」


 「ダンジョン核は魔力を吸収するだけでなく、魔力でダンジョンの拡張を行います。攻略を優先するダンジョンは地表の近くまで魔力がきているので、それを感知します」


 「なるほど。地下深くまで探らなくていい分、広範囲を捜索できるようになるのか」


 「はい、以前の約3倍は広範囲に探せます」


 「しかし、まだ地表近くまで魔力が届いてないものは見逃してしまうことにならないか?」


 「あくまで優先度の高いダンジョンを探すためです。師匠は帝国のことが気になっていると思いますので、王都の用事を早めに済ませましょう」


 「……うん、ありがとう」


 「い、いえ。弟子として当然の配慮かと」


 「ふふっ、私の重力魔法も以前より自在に操れるようになっています。お役に立てると思いますよ」


 「おお、ミリアンも進歩しているんだね」


 数日見ないだけで、みんな驚くほど成長してるな。

 俺も負けてはいられない。


 「チェスリーはやっぱりもてるんだな。羨ましいことだぜ」


 「マックリンだってリオノーラがいるじゃないか」


 「え?いや、別にリオノーラとそういう関係じゃないぞ」


 「そうなのか?クランで噂になってたけど」


 「チェスリーのことでこっそり相談することが多かったからな。クランの体制や教育のことや……思い出してみると、お前の話ばっかりしてたことになるな」


 「あ、ああ。いろいろ迷惑かけたな」


 「いいってことよ。そろそろ行こうぜ」


 「おう」



 ダンジョン捜索は先ず北に行き、そこから時計回りで南に進む方針とした。

 北は寒いらしいから、早めに済ませてしまおうと思ったのだ。


 ミリアンの重力魔法による空の飛び方も工夫されていた。

 以前は重力魔法を全体に展開することで重力の影響をなくし、魔力を薄めると重力の影響をうけて薄めた方向に進むという手順だ。

 俺が元々空間魔法だと思い込んでいたので、引っ張られる性質を利用するという考え方だった。


 重力魔法であることを認識したミリアンは、重力の影響をなくす魔力色だけでなく強くする魔力色もあるのではないかと考えたそうだ。

 そして試行錯誤の末、重力を強くする魔力色を発見した。

 この発見で魔力を薄くするという特殊な制御は不要となり、魔力を展開するという通常の制御で進む方向が自由自在に制御できるようになったのだ。



 王都の北部外周の地点には、既にメアリの転移陣が置いてある。

 調査開始地点までクラン拠点から転移で一気に移動することができた。

 ここからは重力魔法と視認転移による移動だ。


 ミリアンが重力魔法を展開し、重力を強くする魔力を上部に展開する。

 魔力を薄くする方法より、ずっと安定感が増した。

 前は魔力を薄めすぎると思わぬ加速をしたりすることがあったが、今回は展開する魔力量できっちり制御できるから速度が一定に保たれる。

 順調にぐんぐんと上昇していく。



 「お、おい。チェスリー!」


 レフレオンが慌てたように声をかけてきた。


 「どうした?何か気になることでもあったのか」


 「い、いや。見えたというより見えなくなっていくぜ」


 「……何が?」


 「地面だ!!地面が見えねえっての落ち着かねえんだ!」


 「そう言われても、上昇していくから、地面から離れるのは当たり前だろ」


 「おお、おい!これ落ちたりしねえだろうな」


 「大丈夫だよ。ミリアンがそんな失敗するわけないじゃないか」


 「よし、わかった。俺は目を開けねえから後は任せたぜ」


 「お、おう」


 目を閉じているほうが怖いと思うんだけど。

 レフレオンは高いところが苦手だったのか。

 俺は自分で重力魔法を使えるし、ミリアンを信頼してるから怖くないな。


 「マックリンは平気か?」


 「ああ、最初は少し怖かったがそんな場合じゃなくなってきた。こんなに素晴らしい眺め、しっかり見ないともったいない」


 ドラゴン退治のとき、転移でドラゴンの頭の上にのっても平気そうにしてたしな。

 あれより遥かに高いけど恐怖を感じるかは人それぞれのようだ。


 上空から視認転移で地上に移動、そして捜索魔法でダンジョン核を探す。

 魔法の工夫がある分、捜索は以前より順調に進むはずだったが……足手まといが邪魔をする。

 レフレオンが空を飛ぶことを嫌がったのだ。


 「レフレオン、捜索が嫌ならクランで待機していてもいいんだぞ?」


 「別に捜索が嫌なわけじゃねえ。空を飛ぶのが嫌なんだ」


 「いや、空を飛んでいかないと効率が悪いんだよ」


 「せっかく各地を見て回るんだ。飛ばねえ転移でも十分だろうが」


 「さっきのメアリとの話は聞いていただろ?頑張って早く調査を済ませようとしてくれてるんだぞ」


 「おう、それはわかった。わかった上で何とかしろと言ってるんだぜ」


 面倒くせえ……

 何でこうレフレオンが絡むたびに振り回されることになるんだ。


 うーん、クランに放り投げてきて捜索に戻るのが一番早いんだがどうしたものやら。

 空を飛んで視認転移した後にレフレオンを転移で運んでくるという手もあるが、手間が増えるだけだな。

 困ったときはヴェロニアに相談してみるか。

 俺は【以心伝心】でヴェロニアに連絡をとった。


 {ヴェロニア、今話せるか?}


 {ん?ああチェスリーね。どしたの?}


 {レフレオンが空を飛ぶのを嫌がって困ってるんだ。どうしたらいい?}


 {ふーん、付き添いだったしクランに戻せばいいんじゃないの?}


 {捜索についてきたいようで、空を飛ばずに何とかしろとうるさくてさ}


 {そういう時はね、もっと強く興味を引くことを提案すればいいの。思い当たることあるんじゃないの?}


 {考えてみる。ありがと}


 興味を引くことねえ。

 レフレオンと言えば食い物か酒だよな。

 ……あ、思いついた。


 「レフレオン、前に俺が買ってきた地酒を大事に飲んでいたよな」


 「おう、【嗅覚】のおかげで女房から無事取り戻せたぜ。もう全部飲んじまったがな」


 「そうか、もう一度飲みたいと思わないか?」


 「な、なんで今そんな話をするんだ。捜索があるんだろうが」


 「ああ、確かにどうでもいいことだが、ヘスポカは王都の南東にあるんだ。捜索が早く終わればついでに寄ってもいいかなと思ってな。ミリアンの故郷でもあるし」


 「……確かにどうでもいいな。おっと!俺のほうも空を飛ぶのなんざどうでもよくなってきたぜ」


 「ん?いや、空を飛ばずに捜索する方法を考えてるんだが」


 「いらねえから早くいこうぜ。さっさと捜索を済ませちまうんだ」


 「よし、わかった。みんないくぞ!」


 ふっ、ちょろいやつだ。

 言質をとった以上、泣こうが喚こうがかまわず空を飛んでいくからな。



 今度こそ順調に探索は進んだ。

 ミリアンの重力を重くする方法は上昇速度も速い。

 高速上昇だと下半身がふっとすくみあがるような独特の感覚があるんだな。

 地上へは視認転移で降りるから、下降の感じかたは今度自分で確かめてみよう。


 いつも強気なレフレオンだが、ミリアンの高速飛行にはかなりまいったようだ。

 それでも口はよく動き、やたら捜索を進めることを優先してくる。

 おかげで夜になりクランに戻る頃にはみんな疲れ切っていたが、捜索予定の半分の調査を終えることができた。


 北から東にかけて見つかったダンジョン核は2つだけだった。

 やはり魔物の森から離れた北側はダンジョン核が少ないようだ。


 そして次の日、レフレオンは自ら捜索を辞退した。

 それなら昨日も無理しなければよかったのだが、酒で釣って無理させすぎたのがまずかったかもしれない。


 前日で慣れたこともあり、東から南にかけての捜索も順調に終わり、見つかったダンジョン核は5つだった。


 これで攻略対象のダンジョンは合計17で確定だ。

 後はアリステラに【分析】してもらい、攻略の順番を決めることになるだろう。


 レフレオンには初日の努力賞として、ヘスポカの地酒を準備することにした。

 ミリアンも久しぶりに両親とマルコラスの顔を見たいだろう。

 そんなふうに、気軽に考えていたのだが……



 「お母さん、ただいま!」


 「まあ!ミリアン戻ってきたの?マクナルの商会のお仕事はいいのかい?」


 「あ、あの。お久しぶりです」


 「まあまあ、チェスリーさんとご一緒なのね。さあさ、中へ入って寛いでください」


 久しぶりにヘスポカにきたし、俺も少しぐらい顔をだしておこうと思ったのだ。

 しかし、この時点で俺は一般とかなりずれていることに気付いていない。


 転移魔法を使うのが当たり前になり、長距離を短時間で移動することに慣れすぎていた。

 一般に長距離の旅は時間がかかるもので、さらに魔物により命の危険を伴うのだ。

 転移を知らなければマクナルからヘスポカまで馬車で14日かかる。

 まして王都に引っ越したことを知れば、ヘスポカまで1か月以上かかる。


 するとこの里帰りは、ご両親からすればこう考えるだろう。

 ミリアンと共に長い旅をしてまで、何か重要な話をしに来たのではないかと。


 いつかはミリアンとのことを話さなければと思っていたが、まさか今日になるとは……


今回もお読みいただき、ありがとうございます。


次回は「想定外の正式なご挨拶」でお会いしましょう。


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