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第92話 スキルの可能性

 クラン会議はまだ継続中だ。

 ヴェロニアが宣言した通り、今回の議題は多いな。

 人数が増えたせいもあるが、それぞれが別行動しているから認識合わせもあるしな。


 「次はスーザンのことね。チェスリーよろしく」


 「ああ。スーザンの【演算】スキルの熟練を上げたいと思っているが、もう少し待ってほしいんだ」


 「はい。あの……最近は魔法のほうが楽しくなってきました。【演算】スキルで地図作りに必要な計算なら既にできそうですし、魔法を熟練させたほうがいいのではないでしょうか?」


 「魔法が楽しくなったのはいいことだね。確かに魔法が便利に使える状況は多い。でも、【演算】スキルには素晴らしい可能性があるんだ」


 「え……【演算】スキルの可能性……私は計算することしか思いつきませんわ」


 「【演算】スキル単独で考えるとそうだね。俺もいろんなスキルを修得した経験がなければ思いつかなかったと思う」


 「は、はい」


 「あと一息で使えるようになりそうなんだ。楽しみに待っててくれないかな」


 「わかりました」


 「ふーん、チェスリーにしてはもったいつけるじゃない。失敗すると恥かくわよ」


 「まあ見てなって。でももったいつけてると言うより、思ってたのと違う結果になるかもしれないからなんだけどね」


 「あんたねえ。そこはバシッと決めなさいよ。魔班病のときも最初そんな感じだったわよね」


 「初めては何があるかわからないじゃないか。慎重になるのはしょうがないだろ?」


 「え~、魔道具作りなんて初めてのことばかりよ。魔力視の素材判別ができなかったときなんて、全てが思いつきみたいなものなんだから」


 「俺はヴェロニアみたいに勘がよくないんだよ。それに魔道具だって失敗が多かったじゃないか」


 「それよ!失敗してこそわかることがあるの」


 「いやいや、失敗していいことと取り返しがつかないことがあるだろ」


 「そういうこともあるけど、常に成功なんてできないわ。それにスキル応用の結果は失敗しても取り返しつかないことじゃないでしょ?」


 「う、まあそうだな」


 「ふふ~ん。私の勝ちね」


 「おい、いつの間に勝負になってるんだ」



 「また隙あらば2人で会話してますわ」「まあまあ」「ふふっ」


 うわ、油断していたらまたやってしまったようだ。

 ヴェロニアが絡んでくるとこうなってしまうんだよな。



 「ごほんっ、とにかく詳細は後日だ」


 「もうっ、ごまかしたわね。まあいいわ。次は呼びかけ魔道具のことよ。マーガレットどうかしら?」


 「はい。一応呼びかけはできるようになりましたが、問題がありますわ」


 「呼びかけできたなら、完成じゃないの?」


 「このままでは大きすぎるのですわ。これでは収納魔法でもないと持ち運びできませんの」


 「あ~、わたしの設計だとそうなっちゃうのね。ジェラリーに相談してみるわ」


 「お願いしますわ」


 「あっ!ジェラリーさんに相談するなら私も行きます」


 「アリステラも?またお手伝いしてあげるの?」


 「えーと、お手伝いもしますけど、呼びかけ魔道具をもっと改良できるかもしれないと考えた事があるのです」


 「ほ~、いいわね。試したいことがあるなら私も一緒に考えるわ」


 「はい!よろしくお願いします」


 アリステラはすっかり魔道具作りにはまってるな。

 便利な魔道具がができれば、スキルを覚えていない人でも使えるし、値段次第では一般に広まることになるだろう。

 ん?これも後世に残る仕事と言えるかもしれないな。

 何となくスーザンが興味ありそうに見つめているし。



 「スーザン、魔道具に興味があるのかい?」


 「え!?い、いえ……はい。でも【演算】ではお役に立ちそうもないので」


 【演算】が魔道具作りに役に立たないか。

 いや、必ずしもそうとは限らない。


 「スーザンも一緒にジェラリーさんを訪ねるといい。魔道具のことを知らなければ、本当に役にたたないかわからないよね?」


 「そうですね……ご一緒させていただいていいでしょうか?」


 「もちろんいいわよ。私も具体的に【演算】をどう使えばいいかわからないけど、ジェラリーなら思いつくかもしれないしね」


 「はい」


 「さてと、あ、レフレオンとマックリンはダンジョン捜索に一緒に行ってもらえるかな。先に攻略対象の場所を見ておくのもいいでしょ」


 「それもそうだな。わかった」

 「おう、あちこち回れるのは面白そうだしな」


 レフレオンとマックリンが一緒なら、休憩のときにでも新技を見せてもらおうかな。

 あ、【演算】スキルを合い間に練習しないといけないから、余計なことできないか。


 「いよいよ最後の議題ね。アメリアの人形のことよ」


 ……やっぱり議題になる事態だったのか。


 「えっ?私のお人形がクランで議題になるかもですか」


 「率直に聞きたいんだけど、アメリアは自分の人形を見てどう思ってるの?」


 おお、まっすぐ聞いたな。

 ちょっと変わっていると自分でも言っていたし、思うところはあるようだが。


 「えーと、実物より迫力があると思います!」


 「そ、そうね……ありすぎるとは思わなかったのかな?」


 「お人形って特徴があるほうがいいかもですよね。アリステラさんのお人形もとっても特徴的ですし、私なりの特徴をだそうと頑張ってみたです」


 「ほ、ほほう。特徴の違いと……チェスリー、どう思う?」


 ヴェロニアが言い返せないのに、俺が何か言えるわけないじゃないか。


 「いやあ、俺は人形のことあまり詳しくないから。アリステラに聞いたほうがいいんじゃないかな」


 「えっ、わ、私はその……いいんじゃないかなあと。ね、マーガレットさん」


 「へ?私にきますの!?その……ちょっと怖すぎるんじゃないかなあと思いましたわ」


 おお、マーガレットよくぞ言った。


 「そうですか……」


 アメリアがしゅんとなってしまった。


 「あ、アメリアさん!私の趣味に合わなかっただけで好きな方もいらっしゃると思いますわ!」


 あ、アメリアが立ち直った。


 「はい!私頑張ってみます」


 あら~頑張っちゃうのかあ。


 「なあ、その人形はそんなに怖いのか?」


 「なんだマックリンは見たことないのか?」


 「今日こっちに来たところだからな。どんなものか見せてくれよ」


 「うん、ほいこれ」


 「え、えええええええ!!」


 凄い勢いで遠ざかったな。

 こらこら、攻撃態勢をとるんじゃない。


 しょうがないので人形を収納するとマックリンが戻ってきた。


 「ふむ、なかなか迫力がある人形だな」


 「取り繕っても全く隠せてないぞ」


 「いや、初見だったからな。少し過剰に反応してしまっただけだ」


 ……その時点で怖すぎるってことじゃないか。


 「アメリアの嬢ちゃんだったな。その人形1つ俺にくれないか」


 えええ、レフレオン欲しいの!?

 お子さんが見たら泣いちゃうかもしれないぞ。


 「いいですよ!チェスリーさん、収納してるのから1つ差し上げてください」


 「お、おう」


 「ありがとうよ。大事に使わせてもらうぜ」


 「はい!」


 アメリアも興味がある人がいるとわかって喜んでるな。

 あれ、大事に使う?

 表現がちょっと引っかかるな。


 「そ、それじゃクラン会議終わりね。各自行動開始よ!」



 議題盛りだくさんのクラン会議だった。


 俺が優先すべきことはダンジョン捜索で攻略対象を確定することだな。

 攻略対象の確定後はダンジョン攻略だ。

 シペル帝国の情報がいつ入るかわからない。

 戦争に介入する方法をしっかり考えるためにも、危険な未発見ダンジョンは片づけておきたい。



 早速ミリアンとメアリに捜索の資料を見せてもらおうと思っていたら、先にレフレオンが声をかけてきた。


 「チェスリーよ、もうダンジョン攻略したらしいじゃねえか!何で俺を呼ばなかったんだ!」


 「ああいや、攻略で必要なとき以外呼ぶなって聞いてたからさ」


 「おい、おかしいじゃねえか。何で攻略してるのに俺たちが必要ねえんだ」


 「まあ、待ってくれ。俺の攻略方法だと、まだ戦力が必要がなかったんだ」


 「……またおかしな戦術を使いやがったな」


 「おかしくないよ。効率のいい戦術を考えた結果だ」


 「まあいい。マックリン!チェスリーの戦術を聞いておくぞ」


 レフレオンに呼ばれてマックリンがやってきた。

 ミリアンとメアリも一緒に捜索に行く予定だったので、そのまま話を聞くようだ。

 これからはレフレオンとマックリンの力が必要になることがあるはずだ。

 戦術に問題になりそうなことがないかも聞いておきたかったしな。


 俺はメンバーのスキルを駆使したダンジョン攻略について一通り説明した。

 ダンジョン核の真上からまっすぐ穴を掘り、転移で移動していく方法だ。

 途中で何か言われるかと思ったが、意外とすんなり受け入れられたようだ。


 「なかなかおもしれえ攻略方法じゃねえか。戦闘がなけりゃ俺たちを呼ぶ必要がねえわけだぜ」


 「何より攻略時間の短さと探索が最低限で済むのがいいな。魔物を警戒しながらの探索が最も体力と精神に堪えるからな」


 「2人から見て、何か見直すところはないか?」


 「そうだな……通常なら魔力の使い過ぎが問題になるはずだが、アリステラ嬢ちゃんが桁外れすぎて欠点にすらなってねえ。転移で撤退できる保険付きなら小規模ダンジョン程度なら問題ねえだろうぜ」


 「小規模ならか……やはり中規模以上のダンジョンは厳しいか?」


 「アリステラ嬢ちゃんが最短攻略の要だ。中層以下の魔物がいるところはやばいぜ」


 「鉄壁の防護服で防御はできる。それでも危ないかな?」


 「魔道具で防げるとしても、とっさの判断ができなきゃ命取りだ。凶悪な魔物との対峙は冒険者でさえ恐怖でやられちまうことがある。チェスリーもそれがわかってるから必要以上に魔物を避けてたんだろ?」


 「やっぱりわかるか」


 俺はダンジョン攻略のために冒険者ではないミリアンとアリステラ、マーガレットの協力を受け入れた。

 ただし、俺の中では全員を守り切ることが絶対条件としている。

 そのための戦術を考え、魔物との戦闘を避けた。

 いくらスキルや魔力量が素晴らしくても、戦闘や魔物に対峙した経験はほとんどないからだ。


 「そこで俺たちの出番ってことだろ」


 「その通りだ。2人がパーティーに入れば、ダンジョン内に安全な拠点が確保できる。戦闘がこの人数で足りるかどうかは、レフレオンとマックリンの力次第だけどな」


 「はっ!言ってくれるじゃねえか。不足かどうかしっかり見てな」


 「ところでチェスリー、さっき【演算】スキルに可能性があると言っていたな」


 「ああ、俺の考えが正しければ、かなり便利に使えるようになるはずだ」


 「ほう、楽しみだな。俺のほうもスキルの可能性を実感しているところだ。【一騎当千】の新たな使い方を見せてやる」


 「おう、期待してる」



 どうしても攻撃力が不足するようなら、最悪ミリアンに魔法を使ってもらうことを考えていた。

 だが、レフレオンとマックリンの自信は口だけではないだろう。

 どうやら杞憂になりそうだ。


今回もお読みいただき、ありがとうございます。


次回は「ダンジョン捜索と魔法の工夫」でお会いしましょう。


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