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第82話 未発見ダンジョンの攻略

 クラン会議は夜遅くまで続き、ダンジョン攻略の戦術と、捜索の方針を決めていった。


 ダンジョン捜索は想定以上の数が見つかりそうなため、捜索場所の優先順を決めることになった。


 捜索場所の情報は、冒険者ギルドを通じて収集することにした。

 人の住んでいる町や村の情報であれば、冒険者ギルドで十分な情報が得られるだろう。

 本当はジェロビンにも頼みたいが、帝国にいったきりだしな。


 確実なのは大陸全体の地図を作製し、全ての場所を捜索することでが、すぐにできることではない。




 今回は捜索で見つけた4つのダンジョン核が対象だ。

 メアリの捜索魔法によると、1つが7センチ、2つが15センチ、最後の1つが20センチほどらしい。

 拳大を10センチぐらいとすると、1つかなり小さいものがあるな。

 小さい方から順番に攻略する予定だ。



 翌日。

 ダンジョン攻略を開始する。

 いや正確には、ダンジョン核の採掘とダンジョン封鎖だな。


 パーティーは俺、ミリアン、アリステラ、メアリ、マーガレットの5人構成だ。


 貴族であるアリステラとマーガレットを攻略に参加させるのは抵抗があった。

 同じクランメンバーとなり、二人とも敬語や敬称も不問にしてくれた。

 普段身分差を感じるようなことはないが、命の危険を伴うとなると話は別だ。


 その考えを改めたのは、ヴェロニアの助言があったからだ。

 俺の目標である全てのダンジョンと魔物の殲滅は、とても一人の力で成し得るものではない。

 マックリンやレフレオンのように冒険者としての仲間や力も必要だが、それだけでは足りないのではないかと。

 危険なところに連れて行くのが嫌なら、危険が少ない戦術を考えなさい、と。



 人によって得意なことや不得意なことは違う。

 人によって考え方や感じることは違う。


 俺が貴族をダンジョン攻略に連れていくのに抵抗があるのは俺の考え方であって、アリステラやマーガレットの考えは違っていた。

 俺の支援ができるのなら、ダンジョン攻略に一緒にいきたいと考えていたのだ。



 そこで実行したのがメンバーへのスキル教育である。

 個々で修練したスキルも取り入れて戦術をたてた。


 戦術といっても、敵と戦うわけではない。

 いかに敵と戦わずして、攻略を成し遂げるかに重点をおいている。



 最初の攻略目標である一番小さいダンジョン核のある場所にやってきた。

 メアリの捜索魔法のおかげで、ダンジョン核の位置だけでなく、大よその深さがわかるのがありがたい。


 ここでアリステラの出番だ。

 【分析】スキルを使い、地上からダンジョン核までの状況を調べてもらう。

 通常は円状に膜を広げるようにして周りの状況を調べるのだが、目標がわかれば一直線に魔力を伸ばしていけばいい。

 魔力を伸ばせる限界は調べていないが、若いダンジョンの深さ程度は問題なさそうだ。


 「チェスリーさん、地上から少し下の部分とダンジョン核の手前に広い空間があるようです。後は目立つものはないようですね」


 「よし、地上から近い空間まで穴をあけてくれ」


 「はい」


 次もアリステラが活躍する。

 【能工巧匠(のうこうこうしょう)】は様々な素材の加工が容易にできるレアスキルだ。

 その応用で穴を掘ってもらう。

 広さはそれほど必要ないので、直径20センチぐらいで掘り進める。

 ……うわあ、凄い勢いで穴が深くなっていく。



 「穴が開通しましたわ」


 「おお、もう開通したのか。マーガレット、【察知】で敵を探ってみてくれ」


 「了解ですわ」


 次はマーガレットの【察知】で地上から穴の先に敵がいないか索敵してもらう。

 【察知】も一方向に集中させれば、索敵可能な距離が伸びる。

 マーガレットの魔力量なら遠くまで【察知】の展開が可能だった。

 穴の先の空間から横方向までは広く索敵できないが、穴の下周辺に敵がいなければ問題ない。


 「【察知】に反応なしですわ」


 「わかった。念のため気配遮断のローブを使って待機。メアリは俺といっしょに移動準備だ」


 転移陣を書いて丸めた紙を穴に落とす。

 ……さっそく問題発生、これ下に落ちたかどうかわからないや。


 「転移陣の紙が下まで落ちたかどうか確認する方法ないかな?」


 「師匠の魔力であれば、私が捜索できます」


 「え!?メアリ……それで俺のこと見つけてたのか」


 「てへ」


 メアリが俺をすぐに見つけられたのは、特殊能力じゃなくて魔法を使ってたのか。

 それにしても転移陣の魔力まで感知できるとは、凄い捜索力だな。

 ……メアリとマーガレットには隠れ拠点なんて無意味ってことか。


 「メアリ、転移陣の紙はどうなってる?」


 「……ずっと下の方で止まっていますね。下まで落ちたと思います」


 「わかった。転移するぞ」


 穴の下に落とした転移陣をイメージし、転移を発動する。

 着いたところは当然真っ暗だ。

 【察知】を展開して索敵を行い……よし、反応なし。

 そして光属性の魔法のライトを発動する。


 「異常なさそうだな」


 「はい、師匠」


 「みんな連れてきてくれるかい」


 「了解です」


 メアリが3人を連れて戻ってきた。


 「ふああ、これがダンジョンの中なんですね。……普通の洞窟と同じ?」

 「こ、怖いですわね。【察知】は使ってますが、何かでそうな感じですわ」

 「ふふっ、こんなに静かなのですね」


 マーガレット以外は、わりと平気そうだな。


 「ダンジョン核が原因で早く拡張してるが、周りは洞窟と変わらないからな。魔物さえいなければだけど」


 「魔物がそこら中にいるわけではないのですね」


 「さすがにそんなことはないね。モンスター部屋と呼ばれる空間みたいに、魔物が集まってるところもあるけどな。目的はダンジョン核の採掘だから、魔物は避けていく」


 「あれ?チェスリーさんの目標はいいのですか?」


 「魔物殲滅のことかい?直接倒すだけが殲滅方法ではないんだ。後で説明するよ」


 「ふふっ、了解しました」



 先ほどと同じ手順でダンジョン核の手前にあるという空間まで穴を掘り、【察知】で索敵する。


 「チェスリーさん……今度は何かいるようですわ」


 「俺も調べてみる……この大きさと動きは……多分レッサーウルフだな」


 「どうしますか?」


 「あの程度なら殲滅できるだろうが、今回は魔物を避ける方針でいこう。アリステラ、【分析】で敵を避けられる空間がないか探してくれ」


 「はーい。……左に進んだところから下に行けば避けられる空間があります。でもダンジョン核の真上から遠ざかってしまいますね」


 「かまわない、そっちへ移動しよう」


 左に進んだ先で、もう一度アリステラに穴を掘ってもらい、再び【察知】を展開する。


 「今度は何もいませんわ」


 「よし、さっきと同じで俺とメアリで先行する」


 再び転移陣を穴へ落とした後、転移を発動する。

 【察知】展開……反応なし、ライト発動。


 安全が確認できたので、メアリに3人を連れてきてもらう。 


 「最後の仕上げだ。ここからダンジョン核に穴を繋げよう」


 「穴を繋げるのはいいですが、取り出しをどうするか聞いていませんわよ。人が通れるぐらいの大きさにするのかしら?」


 「あれ、まだ説明してなかったっけ」


 「重力魔法しかお話ししてませんね。私もうっかりしてました」


 マーガレットに質問されるまで、ダンジョン核まで穴を掘る話しかしていなかったことを忘れていた。

 何でだっけ……あっ、ヴェロニアがメアリとはどうだったかとか横やりがはいって話が逸れたんだ。



 「ミリアンお姉さまはご存知ですのね」


 「ええ、私の【収納魔法】を使います」


 「え??収納魔法って手で触れたものを収納する魔法ですよね。どうやって使うのですか?」


 「手で触れなくても目で見たものを収納できるように収納魔法を改良したのです」


 収納魔法で物を収納するには手で触れる必要がある、というのも誤りが含まれていた。

 実際は手に展開した収納魔法の魔力が、物に触れると収納されるのだ。

 ミリアンは手に展開していた魔力を視線に展開することで、見たものを収納することができるようになっていた。


 「【一望千里】を教えていただいて、【収納魔法】と組み合わせられるかもと思ったのですが、上手くいきませんでした。収納の魔力が全く届いてなかったようですね。その後、【剛力】の魔力増幅を試してみると【一望千里】で見たものを【収納魔法】で収納できるようになったのです」


 「ほええ」


 俺は【剛力】をミリアンに教えるときに、収納した重いものを出した後も動かせるから便利というぐらいしか考えていなかった。

 魔力を一瞬だが増幅できることに気づいたのはミリアンだ。


 「ただし、収納魔法の距離は魔力量による制限があって、せいぜい数十メートルまでしか収納は届きませんけどね」


 これは嬉しい誤算だった。

 ダンジョン核の近くにはモンスター部屋があることが多い。

 ダンジョン核が魔物の発生元だから当然とも言えるが、最後は魔物を避けられない場合が多いと考えていた。

 人が通れる穴を魔物を避けて掘ることも考えたが、崩落の危険が増すし巻き込まれたらお終いだ。

 遠距離の収納魔法があれば、まっすぐ小さめの穴を掘ればよく、中に入る必要もない。



 「あの~、真下に掘り進めるのと違って方向がわかりませんわ」


 「方向はメアリに指示してもらってくれ。メアリなら正確な方向がわかる」


 「はい!メアリさんお願いしますね」


 「お任せを」


 メアリの指示で、アリステラがまっすぐダンジョン核に向けて穴を掘り進める。

 何度見ても穴があっという間にできていく光景は凄いな。


 「アリステラさん、ダンジョン核まで到達しました」


 「は~い。ミリアンさんお願いしま……あ、こんなに暗くては【一望千里】で見えないのでは」


 「あっ、ここで私の出番ですのね。光球の魔法を運びますわ」


 「ああ、マーガレットに任せる。ミリアンは【一望千里】と【収納魔法】の遠隔版を準備してくれ」


 最初の未発見ダンジョンの時もダンジョン核を確認するために、光球に光線を繋げて伸ばしていく魔法を使ったな。

 マーガレットの魔力量なら、遠い距離でも光線を伸ばしていけるだろう。


 こうして同じような光景を見ると、あの時のことを思い出す。

 リンジャック達と攻略した未発見ダンジョンのことも、ここに至るまでの大切な出来事の一つだからな。



 「ダンジョン核が見えました。収納を発動します……できました!」


 「よし、地上に戻ろう。メアリ、全員の転移を頼む」


 「はい。みなさんいきますよ」


 最初に穴をあけた地点に戻ってきた。

 念のためアリステラに穴を塞いでもらい、今度は平面方向に上に繋がる穴がないか【分析】で調べてもらう。

 想定していたとおり、これほど小さなダンジョン核ではまだ地上への穴は開いていなかった。


 攻略完了だ。

 地上への穴がなければ、魔物が中にいたとしても出てこられないだろう。

 わざわざ倒さなくとも、地上へ出てこられず隔離されていれば存在しないのと同じだ。



 「師匠……この攻略を他の冒険者に知られると、どう思われるでしょうね」


 「……うん、話さないほうがいいだろうね」


 戦術を確認しながら慎重に進めたにも関わらず、たった2時間でダンジョン核を入手できた。

 それぞれの得意なスキルを生かし、役割をしっかりこなした成果である。


 しかし、通常の探索とは生かすスキルが違いすぎるし、魔物と戦闘すらしていない。

 命懸けでダンジョン攻略をしている人からすれば、好意的に見られるとは思えない……かな。


 まあレアスキル使いまくっているし、他の人に話せるわけないけどね。


今回もお読みいただき、ありがとうございます。


次回は「役割分担と今後の課題」でお会いしましょう。


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