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第80話 理論より大切なこと

 ミリアンのスキル修得は順調だ。

 レアスキルの魔力を流した際の休憩時間が大幅に短縮されたため、教育の効率がよくなったのだ。

 俺も苦労した2色の魔力を表裏一体に重ねる制御が、徐々に形になり始めていた。


 本日2度目のキスを終え、ミリアンの魔力制御を見守る。


 ……惜しい。


 「ミリアン、無理に2色を表と裏にくっつけようとするのではなく、2色を順番に流すイメージでやってみて」


 「わかりました」


 2色の魔力を同時に展開することはできている。

 後は表裏一体にするだけだが、これが難しい。

 完成形にこだわっていきなり形作ろうとすると、歪になってしまうのだ。

 魔力は循環させるのが基本なので、流れをなめらかにするイメージのほうが上手くいきやすい。


 ……よし。


 「チェスリーさん!できました。わあ……こんなに遠くを見ることができるのですね」


 「ミリアン、レアスキル修得おめでとう」


 「チェスリーさんの教育は素晴らしいです。魔力制御はわかっているのに、何でできないのか不思議だったのですが、イメージの違いだったのですね」


 「ああ、全てにあてはまるとは限らないけど、魔力は循環しているものだからね。形にこだわると循環がおろそかになる場合があるんだ」


 「そうでしたか……次から注意しますね」


 「レアスキルの魔力制御は特殊だからね。後は反復して熟練させていこう」


 「はい!」


 レアスキルを後から修得することはできないと言われていたが、修得できるものだとわかれば教育の考え方も変わる。

 できる前提とできない前提とでは、当然できる前提のほうが教育の効率がよくなるのだ。


 常識に思っていたことが一つの発見により覆ることは、過去に何度もあったわけだし。


 そんなことを考えながら、空間魔法で浮いたままの状態でミリアンの【一望千里】の練習を見ていた。

 俺の空間魔法も反復練習して熟練させておかないとね。


 練習を続けているうちに、ミリアンが【一望千里】の応用で思いついたことを説明してくれた。

 ……これは凄い!

 この魔法があれば、攻略の懸念事項だったことが解決できる。


 ミリアンと一緒に魔法を試し、大よそのことがわかったところで、タイミングよくマーガレットから連絡が届いた。



 {チェスリーさん、いまよろしいですか?}


 {ああ、大丈夫だ}


 {私たちはクラン拠点に戻りましたわ}


 {そうか、なら俺たちも戻るよ。お互いに報告があるだろうしな}


 {お待ちしていますわ}



 「ミリアン、みんなクラン拠点にいるそうだ。俺たちも戻ろう」


 「はーい」


 ミリアンがぴったりくっついてきて準備完了だ。

 転移を発動し、クラン拠点へ戻る。



 早速クラン会議が開かれるようだ。

 お互いにいい報告ができそうだからな。

 出席者は、俺、ヴェロニア、マーガレット、アリステラ、ミリアンの5人だ。


 「第12回クラン会議を始めるわ。議題はダンジョン捜索の問題点についてよ。メアリから報告お願いね」


 「はい。ダンジョン核専用の捜索魔法の開発に成功しました。王都とその周辺を含むぐらいの距離なら感知できます」


 「おお……それなら視認転移と合わせれば、かなり効率よく捜索できそうだな」


 「頑張りました」


 よしよし、後で頭でも撫でてやろう。


 「俺からも【一望千里】の弱点克服の報告だ。ミリアンが開発した空間魔法を応用して、空を飛ぶことに成功した。これで上からの視点で転移可能だ」


 「「「空間魔法!?」」」


 「あの……私は重さ軽減の魔法だと思っていまして、空間魔法と気づいたのはチェスリーさんです」


 「それでさ、その空間魔法ってのでどうして空を飛べるの?」


 「空間魔法を体の周りに展開することで、元の空間と切り離された状態になるんだ。恐らく収納魔法で物が収納されている状態と似たようなものだな」


 「ほう、そこが重さ軽減ってのと繋がるのね」


 「ああ、空を飛ぶには元の空間と繋がろうとして、引っ張られる現象を利用する。上部の魔力を薄くすると、元の空間との繋がりが生じて引っ張られる、つまり上方向に進んで空中に浮くことになるわけだ」


 簡単に説明したが、これで意味がわかるだろうか。


 「う~~ん。……何となく正しいところがあるようで、結局おかしな理論だけど、実際に空中に浮くことはできてるのよね?」


 「うん。そんなにおかしな理論かな?」


 「先ずね、空間が切り離されていたとして空気とかどうなってるのよ。それに収納と同じ別空間だとすれば、見えなくなっちゃうはずでしょ」


 「あれっ……すっかり見落としてた」


 ヴェロニアは何かを考えこんでいるようだ……。

 考えが整理できたのか、続けて話し始めた。


 「あたしはその魔法って重力に作用していると思うわ」


 「重力?重力って重さのことだよね。」


 「ちょっと説明するわ。この世界は球面上に存在するのは知ってるわよね。なぜ球の上なのに地面が滑ったり転がったりしないのかってことよ。重さだけで説明できないでしょ?」


 「……そうだな。重さがあっても丸いものの上だとズレそうだよな。時々地面が揺れるのはそのせいなの?」


 「いいえ、地面の揺れの原因はまだわかってないの」


 「うーん、わからないな。重力ってものを知らないのがいけないのかな」


 「別に悲観することないわよ。まだそんなに知られていないことだからね。重くても軽くても落ちる速度はいっしょってのは知ってる?」


 「それミリアンに教えてもらった」


 「その正体が引力よ。重さのある全ての物は、他の物を引きつける力があって重いものほど強いの。物が落ちるのは星の引力のせいで、同じ力で引っ張られるから同じ速度になるの」


 「へえ、でもドラゴンとかに引っ張られる感じはしないぞ?」


 「引力ってそんなに強い力じゃないのよ。ドラゴン程度の引力だと、身の回りにあるいろんな力に全く勝てないから何も感じないわ。相手が星そのものみたいに圧倒的な違いの重さじゃないとね」


 「そうなのか……球面上にいたとしても、星の引力のおかげで、全て下に引っ張られているわけか」


 「そゆことね。あとさ、この星が回転してるのは知ってる?」


 「ええ!?星が回転している??」


 「びっくりするようなことだけど、回転してるみたいなのよ。そうじゃないと夜空に見える星が1日かけて移動しておおよそ元の位置に戻ることの説明がつかないの」


 「ああ。だけど周りの方が動いてるのでは?それに季節によって違ってくるけど」


 「季節による違いは別要因だから省略するわね。学者さんの観測だとこの星が回転してないとおかしいらしいわ。空の星は想像もできないぐらい遠くにあるそうよ」


 「……なるほど」


 「回転すると遠心力って外に向かう力が発生するでしょ。ほら、ぐるぐる回転すると外に放り出される感じがするやつ」


 「ああ……それはわかるが星が回転してたら、俺たち放り出されちゃうんじゃ」


 「だから引力のおかげよ。星が回転する遠心力より、引力のほうが強いってこと。この二つの力を合わせて重力っていうの」


 「うわあ、難しいけど……うん、言いたいことはわかった」


 「私もこれぐらいしか説明できないけどね。まあ要するに重さの元が重力って覚えておけばいいわ」


 「そ、そうだな。別に俺学者じゃないし」


 「そうよ。正しい理論も知れば便利だけど、チェスリーが空を飛ぶことを実現できたように、推測したことや体験した現象から自分で考えることが大切よ。考えなければ、正しい事がひらめくこともないの。全くの的外れなら失敗しちゃうけど、経験は無駄にならないわ」


 「そうだね」


 「もちろん実現できても誤りが含まれていることもあるしね。空間か重力かなんて、実践を積み重ねて検証するしかないし、間違っていれば修正すればいいだけよ」


 「ああ、ただ魔力制御のイメージに関わるからな」


 「そっか、なら補足しとくね。その空を飛ぶ魔法で魔力を展開すると重力の影響がなくなる、魔力を薄めたほうに進むのは重力の影響がでるから、ってイメージにしてみて」


 「それでいこう。それじゃ名称は重力魔法にしておくかな」


 「おっけー、決まりね」



 「また二人だけで会話されてますわ……」

 「お二人の年季には簡単に勝てませんわ。おさまるのを待って割り込みましょう」

 「ふふっ、お二人の会話はいつも楽しそうです」

 「私も師匠と魔法談義したいです」


 好き勝手に言われているが、俺がやり込められただけなんだけど。

 最後は納得したけど、ダメ出しされて気分は落ち込み気味だ。


 「それで、どれぐらい自由に飛べるの?」


 「自由自在と言っておこう。危ないから練習は必要だけどね」


 悔しいからちょっと得意げに言ってしまった。


 「ほほう。それじゃ練習しながらついでに捜索もお願いね」


 「うへえ。そうくるかい」


 「疲れたら転移で戻れるんだからいいじゃないの。会議後さっそくいくのよ!とりあえず二つ未発見ダンジョンを見つけてきて」


 「ええ、二つも?というか、あるかどうかすらわからないのに」


 「ちょっと事情があってね。ダンジョン核が2個ほしいの」


 「2個って簡単に言うけど、お菓子とかとわけが違うんだぞ」


 「ふふん、やる気はバッチリなんでしょ?」


 「え!?……何のことかな」


 「それにさ、発見さえすれば、攻略に時間はかからないんでしょ?」


 「……俺話したっけ?どうやってダンジョンを攻略するかなんて」


 「いいえ、聞いてないわよ。あんたがマーガレットとアリステラに教育したスキルで、多分こういうことなのかな~って考えただけ」


 「くっ、何て察しの良さだ。……おい、ヴェロニアまさか何か仕掛けてないだろうな?」


 「何のことかしら。ちょっといいことあったような気はしたけどね」


 「あああ!それでミリアンがあんなことを――」


 「ちょ、ちょっとチェスリーさん!何も強制されたわけではありませんから……」


 ミリアンに止められて、少し冷静になった。

 そっとマーガレット、アリステラ、メアリを順に見てみると、みんなジト目でこちらを見ていた。


 「ごほっごほんっ!!ヴェロニア了解だ、すぐに捜索に向かおう。メアリとミリアンは一緒に来てくれ」


 「頼んだわよ!クラン会議終わり!」


 強引に会議を終わらせ、俺はミリアンとメアリを連れて捜索へ向かおうとした。

 ……いや、これではだめだ。

 単に逃げても解決しないってことは以前に学んだじゃないか。


 「ヴェロニア、マーガレットとアリステラに伝えておいてくれ」


 「わかってきたじゃない。メアリにはあんたから話しておきなさいよ」


 「わかった。行ってくるよ」


 「しっかりね!」


 ミリアンと空を飛ぶ練習をした場所に転移で移動する。

 メアリにもちゃんと伝えることにしよう。

 これは隠すべき秘密ではないのだから。


今回もお読みいただき、ありがとうございます。


次回は「未発見ダンジョンの捜索」でお会いしましょう。


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