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第8話 魔斑病の治療

 ヴェロニアはジェラリーに対し、自分の考えを説明した。

 魔道具は魔力を吸収するのではなく、魔力を視るために使うこと。

 俺の魔力干渉の力で、魔力を正常な状態に戻して治療すること。

 そしてジェラリーの方法では、一時的な対処でしかないこと。


 「おっしゃることはわかりましたわ。しかし、危険ではありませんこと?」


 そう、ジェラリーの言う通り、俺の不安も危険性にある。

 初めての試みで、実例がない。

 理屈では正しく見えても、本当に正しいかどうかは、実例や積み重ねた検証結果がないとわからないのだ。


 ジェラリーの出資者は伯爵様だ。

 前例のない治療で、もし失敗でもしたらどんな目にあうか……。

 と思っていたら、ヴェロニアには反論があるようだ。


 「ん~、実例ならあるわよ?」


 「へ?いやいや、魔斑病なんて治したことないぞ」


 「そーじゃなくて、あんたの魔力干渉のこと!いままでもほいほい誰彼構わず使ってたでしょーが」


 「そうだけど、あれは俺の知ってる魔力制御を相手に流してるだけのことだぞ」


 「相手にそういうことしても、特に問題はないってわかってるんでしょ?それで体調悪くなったとか、魔力が暴走したことがない。つまり現状以下になることはないって実例があるのよ」


 ふーむ、確かに自分の感覚としては、それで相手に悪い影響があると思っていないし、実際に何かあったこともない。

 何度も行っていることであり、今では慣れたものである。


 「後は、あたしのとジェラリーの魔道具で、イビルアイの素材を使うところを付け替え可能にしておけば、保険もできちゃう!なんてお得なんでしょう」


 「あなたね……お得って私の魔道具を予備扱いですの!?」


 「予備っていうか、おまけ?」


 「余計に悪いですわ!」


 言いあいながらもお互いに納得したのか、魔道具の設計を見直し、イビルアイの瞳を付け替え可能にする話になった。

 そこからもなかなかに喧々諤々なのだが。


 「だーかーらー、薄く加工しちゃダメって言ってるのよ!瞳を丸ごと使わないと出力が安定しないでしょ!」


 「私の魔道具は常に身につけるの!薄くしないとデザインが崩れてしまいます。そんなセンスのかけらもないもの作れませんわ!」


 「いやいや、治療のためなんだしさ。多少不細工でもいいんじゃないの?」


 「あなたも女ですわよね?!どうしてこう、デザインがわからないのかしら」


 「ん~、ぶっちゃけどうでもいい」


 「はああああ、これだからもう、お話になりませんわ!」


 なるほど。

 そういえばヴェロニアの魔道具はお世辞にもデザインがいいとは言えないな。

 良く言えば機能重視だが。

 ジェラリーはデザインもそうだが、汎用性を重視する考え方らしい。

 ここもヴェロニアの専用性重視と反発するのか。

 そりゃ言い合いにもなるわけだ。


 結果、今回は治療可能かもしれないヴェロニア案を優先し、ジェラリーの魔道具は、お腹に巻く外から見えないコルセット型にするらしい。

 仕上げと調整に時間がかかるので、試験は明日の夕方、問題なければその後に伯爵邸を訪ねることになった。

 ヴェロニアは自宅から魔道具の素材を運び、ジェラリーさんといっしょに作業するようだ。




 翌日の夕方、ジェラリーさんを訪ねると、ヴェロニアもいっしょに出てきた。

 魔道具は無事に完成したようだ。

 あれれ、二人ともフラフラしてるな。

 薬品酔いでもしたのかな。


 「どうした?二人とも随分疲れてるようだが」


 「徹夜……いまさっきやっと完成したの」


 「昨日から寝てないのか!?もう仕上げと調整だけじゃなかったか?」


 「それがさあ、ジェラリーが……」


 「私のせいじゃありませんことよ。ヴェロニアがあまりにも使い手のことを無視したものを作るからじゃありませんの」


 「こんな調子でさ~。散々ダメだしされながら直しもいれて……もう一緒に作業するのはこりごり。はいこれ、試しに使ってみて。被ったら頭に魔力を集める様にイメージして」


 何となく作業の光景が浮かぶようだ。

 上手くいったら、二人ともゆっくり休んでほしい。


 渡された魔道具は、頭から被る頭巾のようなものだった。

 目にあたる部分が透明な膜のようになっており、七色に輝く光沢を放っている。

 ヴェロニアの作るものとしては非常に珍しく、装飾が施されており、見栄えもなかなかいい。


 被ってみると少し重い。

 これは冒険中につけると邪魔になりそうだな……。

 すると頭巾を通して視た風景はいつもと違っていた。


 「お、おおおおお」


 現実にはない微細な霧のように、色とりどりの粒のようなものが見える。

 これが魔力なのだろうか?

 ヴェロニアを見てみると、頭の上からずっと足先まで、まるで血液のように循環しているものが見える。


 「ちょ、ちょっとお。じっくり見られると恥ずかしいんだけど!」


 「ああ、悪いな。しかしこれ何というか凄いな。魔力にも種類らしきものがあるの初めて知ったよ」


 「へ?なんのこと?」


 「いや、魔力に色がついて流れてるように見えるからさ。種類が違うのかなと思って」


 「ちょちょちょ、色!?そんなの見えるの?」


 「ああ、バッチリ見えてる。ヴェロニアの胸のあたりには薄い桜色のものが見える……」


 ゴスッ!!ヴェロニアが肘を叩き込んできた。


 「えっちい!!まさか透けてるんじゃないでしょうね!?」


 「うごっ……い、いや、そうじゃなくて魔力の色がだな……」


 「ちょ、ちょっとあたしに使わせて」


 ヴェロニアがすぽっと俺の頭から魔道具を取り外し、ずぼっと被る。


 「う、生暖かい」


 「気にするな」


 「気にするわよ!えーと、魔力を流してっと……うーん僅かに濃淡があるような気もするけど、見分けがつくほどじゃない。全部白に見える」


 「私にも貸してくださるかしら?」


 ジェラリーも試してもらったが、魔力の流れは見えるものの、やはり白にしか見えないらしい。


 「はあ……やはりヴェロニアの魔道具は専用になってしまいますのね……」


 「おっかしいなぁ。あたしも使えたし、上手くできたつもりだったけど、チェスリーだけ見え方が違うとは想定外だわね。今はチェスリーが使えるのが肝心だから、まあいっか」


 「そうですわね……。では私の魔道具のほうもお試しくださいな」


 頭巾の透明膜を取り外し、コルセット型の魔道具の裏側に透明膜をはめ込むようだ。

 腰に巻いてみると、魔道具の重量以上に体が重くなったような感じがした。


 「そのまま魔法を使ってみていただけますか」


 「よし、それじゃウォーター!……あれっ?」


 いくら魔法を使おうとしても、全く発動しない。

 他の魔法も反応がないようだ。


 「これ凄いな。全く魔法が使えなくなった」


 「私の自信作ですの。魔力を抑えてしまえば、魔斑病の症状はなくなります。ま……まあ全く魔法が使えないほど効果が強力になったのは……」


 「あ・た・し・の・お・か・げ」


 「あなたの魔道具の欠点も直して差し上げましたわ!」


 ヴェロニアは得意満面で言い切った。

 ジェラリーさんは呆れ顔だ。

 やっぱりヴェロニアの魔道具は欠点あったのかよ、危ねえなあ。

 とにかくこれで準備はできた。

 いよいよ本番だ。





 エドモンダ伯爵邸を訪れた俺たちは、ジェラリーさんの協力者と紹介され、共同で治療にあたることを了承してもらった。

 ジェラリーさんはエドモンダ伯爵から度々依頼を受けており、今までの実績もあって信頼されているようだ。

 娘さんの名前はローズリーで年齢は10歳だ。

 魔斑病の症状が出てから、10日になるとのことだった。

 聖魔法による治療は効果なく、ジルシス草で症状を抑えている。


 ローズリーの部屋に案内された俺たちは、ヴェロニアの魔道具”魔力視の頭巾”を使って診察を始めた。


 「チェスリーどうかな?」


 ローズリーはベッドに横になり穏やかに眠っている。

 今はジルシス草の効果で正常な容態のようだ。


 「うん、魔力がよく見える。青と黄の魔力が多いようだ。正常な状態をよく覚えておくよ」


 1時間ぐらい経過しただろうか、魔力の様子が徐々に変化し始めた。

 どうも体が痛み始めたらしく、ローズリーは目を覚ました。


 「お、おじちゃん誰?」


 「おじ……おじちゃんはね。ローズリーちゃんの病気を治療しにきたんだ」


 「そうなの?痛いの……痛いのなおる?」


 「うん。全力を尽くすよ」


 地味に心にダメージを負ったが、素直そうな子だ。

 自分の全力でできる限り頑張ろうと誓う。

 後ろでクスクス笑ってる二人には後で仕返しすることを誓う。


 さらに30分経つ頃には、腕に赤い斑点が出てきたようだ。

 ローズリーの顔が苦痛で歪み、汗をかき始めた。


 「む……これは……。ヴェロニアわかったかもしれないぞ」


 赤い斑点が出てきたところは、下腹部のほうで滞留した魔力が原因のようだ。

 正常なときにはなかった魔力の流れが腕まで伸び、行き場を失ったところで表面に溢れて、赤い斑点と繋がっていた。

 同様にお腹のあたりにも溢れていそうなところがある。

 ヴェロニアに確認してもらうと、やはりお腹にも赤い斑点ができていたようだ。


 ローズリーの魔力の流れを自分の中で再現してみる。

 今まで感覚的に行っていた制御を、魔力視の頭巾で可視化しながら行うと単なるイメージより、鮮明に行うことができる。


 後はローズリー自身に覚えてもらう必要がある。

 苦しいところだとは思うが、ここが頑張りどころだ。


 「いいかい?ローズリーちゃん。今からおじちゃんが魔力を流すから、魔力を感じて自分でその流れになるようにイメージするんだ」


 「う……うん……」


 俺は原因と見られる下腹部の滞留に触れる。

 滞留しているように見える流れを正常な状態に……自分の中で作った魔力をそのまま流す。

 そう、この制御はファイヤーウォールを平面にするイメージとよく似ている。

 一度だけではダメなようだ。

 何度も繰り返し魔力を流す。



 開始から約3時間経過。


 「あ……からだかるくなってきた」


 魔力視の頭巾で診察した時に、もう一つわかったことがある。

 体を流れる魔力の量が、ヴェロニアや自分を見たときより明らかに多いのだ。

 魔力量が多い人が、かかりやすいというのは、本当かもしれない。

 魔法の素質も恐らく高そうだ。

 使ったこともないだろう魔力制御が、既にできるようになっている。

 魔力視の頭巾で見ても、正常なときと同じ流れになっている。


 「成功だ。ローズリーちゃんよく頑張ったね」


 笑顔のローズリーちゃんを見て一安心だ。

 後ろで様子を見ていた執事さんが、エドモンダ伯爵を呼びにいった。


次回は「伯爵との交渉」でお会いしましょう。

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