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第79話 捜索魔法の開発

 ◆三人称視点◆


 ミリアンとケイトに指示を伝えた後、ヴェロニアとマーガレットもダンジョン核の調査に加わった。

 今はアリステラが【分析】スキルを使い、ダンジョン核の反応を試しているところだ。

 メアリは魔力視の頭巾で魔力の流れを視ているようだ。



 「アリステラ、どうかしら?」


 「あ、ヴェロニアさん。えっと、【分析】では反応がないような……いえ、正確には反応が消えるようになくなってしまいます」


 「なるほどね。ダンジョン核は魔力を吸収するから、【分析】の魔力も吸収されちゃうのね」


 「次は私が試しますわ」


 マーガレットが【察知】を試してみるようだ。


 「……うーん、【察知】では何も感じないですわ」


 「【察知】は生物に反応するスキルだものね。ひょっとするとダンジョン核は特別な反応があるかもと思ったけど、そうは上手くいかないか……。【分析】みたいに吸収される感じってわかんないかな?」


 「いえ、何も察知できなていないのと同じですわ」


 「次は私が属性の魔法を霧状にして試してみます」


 「メアリってば形状の魔力制御も凄いのね」


 「……いきます」


 メアリは褒められて少々照れたようだ。

 一度深呼吸してから、順番に霧状にした属性魔法をダンジョン核へ放つ。


 「全て吸収されてしまいますね」


 「予想通りって感じね。何かわかったことあるかな?」


 「先にジェラリーさんに質問させてください。ダンジョン核から魔道具に魔力を供給する場合はどうするのですか?」


 質問されたジェラリーは答えるべきか迷っているようだ。

 ダンジョン核から魔力を供給する方法は、クラン内で最重要機密である。

 しかし、ヴェロニアがダンジョン核を入手してきてくれないと、魔道具作成が滞ってしまう。


 「……ヴェロニア、ここだけの秘密にしていただけますよね?クランの重要機密ですの」


 「いいわよ。誰にも話さないと約束するわ」


 「ちぇ、チェスリーさんに伝えるのだけはやめてくださいね」


 「よほど大事な秘密なのね。秘密にしたいならチェスリーに言うわけないじゃん」


 チェスリーの秘密防御力は0である。


 「……お話しします。ダンジョン核から魔力を引き出すには光魔法が重要ですの。魔石に光魔法の魔力を流しておいたものをダンジョン核に繋ぐと、魔力を吸い出して他の素材に供給する役割になるのですわ」


 「へええ、そんな仕組みだったのね。メアリ、これで何かわかるかな?」


 「はい、大変参考になりました。……恐らくダンジョン核を捜索できるようになります」


 「え!?ほんと!?」


 「これから魔法を開発しますので、時間をいただいてもいいでしょうか?」


 「……任せるわ。他に有効な手も思いつかないしね」


 「はい、お任せください」



 この時、メアリは確たる自信があったわけではない。

 師匠であるチェスリーと同じように、推測を重ねて実現方法を導きだそうとしていたのである。


 メアリが属性の魔法を霧状にしたのは、威力を抑えてダンジョン核を傷つけないようにするのと、魔力が吸収される様子を観察しやすいようにするためだ。

 ダンジョン核の反応は、異なる属性でも違いは見られず魔力が吸収されて魔法が消えるだけだった。

 霧状にして試したのは、光属性以外の5属性である。

 光属性は魔力供給を止めた瞬間に拡散する性質があるので、霧状にしようとしても拡散して消えてしまうのだ。

 試しに光属性魔法の光線をダンジョン核に当ててみたが、常に魔力供給しているので吸収されているのかどうかよくわからなかった。


 ジェラリーに質問したのは、ダンジョン核を動力として使用する場合、光属性が関連しているのではないかと予想したからだ。

 他属性だと吸収されて役にたたないだろうという、予想はあたっていた。


 メアリは捜索の魔法を開発した実績がある。

 後に師匠となるチェスリーに、初めて闇魔法の魔力制御を教えてもらったとき、感じたことのない心地よい暖かさに包まれた。

 その魔力制御で闇魔法を使った目暗ましで、人質救出時に活躍することができた。

 努力が実らず、活躍の機会もなく、伸び悩んでいたメアリは、この出会いに感謝しチェスリーに心酔することになる。



 そしてチェスリーに会いたい一心で開発したのが捜索の魔法である。


 きっかけは偶然だった。

 チェスリーの魔力を感じたことで、素の魔力に独自の特徴があることに気づいた。

 そこで闇魔法の相手から魔力を奪う魔法を使い、教育の際にチェスリーの魔力をちょっぴり取り込んでみた。

 取り込んだ魔力を強くイメージすると、その魔力を持つ相手がどこにいるのか大よそ感知できるようになったのだ。

 アリステラの【以心伝心】には劣るが、こうして特定の対象であれば捜索可能な魔法ができた。


 チェスリーが王都に来たとき、すぐにメアリが駆けつけられるのは、この捜索魔法のおかげである。

 ……ミリアンは女の勘のようなものだと思っていたようだが。


 捜索魔法でダンジョン核を捜索できるようにするには問題点が2つあった。

 ダンジョン核の魔力を取り込めるかどうか。

 ダンジョン核の魔力は全て同じ特徴なのか。


 魔力の取り込みは、光属性を使えば可能とわかった。

 闇魔法のドレインと呼ばれる魔力を奪う魔法を、光属性の魔力色で使えばいいだろう。

 ダンジョン核の魔力の特徴は、実際に試してみるしかない。



 メアリは魔力色を光属性の白にした後、ドレインを発動する。

 ダンジョン核に触れ、魔力の一部を取り込むことに成功した。

 続けて捜索の魔法制御を行い、ダンジョン核の魔力をイメージする。


 …………感知できた……しかしこれではダメだ。

 ダンジョン核の魔力の特徴は共通だった。

 捜索で感知できたものは、魔道具クラン内に集中しており、いくつあるのか数えきれないほどある。

 感度がよすぎたのが原因で、恐らく魔道具に使われたダンジョン核の欠片まで感知している。


 感知する魔力のイメージを調整する。

 未発見ダンジョンのダンジョン核は小さめだが、拳ほどの大きさはあるはずだ。

 魔物が溢れるほどのダンジョンであれば、もっと大きいだろう。


 調整が終わり、魔道具クラン内で感知できるのは1つだけになった。

 目の前のダンジョン核だけだ。


 本当にダンジョン核が不足しているのですね、とメアリは思った。



 メアリは、ダンジョン核の捜索魔法を完成させたことをヴェロニア達に伝えに行った。


 「ヴェロニアさん、魔法が完成しました」


 「メアリちゃん!素敵!!」


 ヴェロニアは大喜びでメアリに抱き着いた。

 自分の失態を挽回してくれたメアリに心からの感謝をこめて。



 翌日。

 ダンジョン核捜索の目途がついたので、ヴェロニア達はクラン拠点へ戻ることに……したかったのだが、アリステラが待ったをかけた。

 魔物素材の加工をお手伝いしている。


 ダンジョン核を貸してもらったお礼と、前回訪問した際の約束でアリステラが申し出たのである。

 アリステラは物作りが好きなので、加工のお手伝いは苦にならないのだろう。


 アリステラを待つ間、ヴェロニアとジェラリーは、久しぶりに魔道具について意見交換をしていた。


 「ヴェロニアは、いまどんな魔道具を作っているのかしら?」


 「ん~とね。防御力が高くなる服を作ってるのよ」


 「あら、ヴェロニアにしてはまともな魔道具ですのね」


 「え~今までのだってまともじゃないの」


 「変化の腕輪のこと聞きましたわよ。変装用の魔道具なのに、老齢化した姿にしかできないそうね。何でそう、微妙な線で止めてしまうのかしら」


 「あれえ、変化の腕輪は秘密にしてたんだけど……はあ、またあいつね」


 「そうですね。だからダンジョン核の魔力供給のことはくれぐれも伝えないよう頼みますわよ」


 「りょーかいよ。それはそれとして、変化の腕輪はしょうがないのよ。調整次第では他の姿にできるんだけど、安定性がイマイチなのよね」


 「また何か変な素材使ってないでしょうね?幻覚を作る素材との繋ぎや加工方法によって、何とでもなるのではないかしら」


 「まあ期限も限られていたからね。魔力視で判別してるから、以前ほどおかしな組み合わせはしてないと思うんだけど、パターンが多すぎて面倒くさいのよ」


 「はあ……普段から共通で使える様に部品化してないからそうなるのですよ。私のクランで部品化した情報を提供しますから、使ってみなさいな」


 「うーーん。悪いけど多分使えない」


 「ええ!?最適化された部品ですのよ。使えないわけがありませんわ!」


 「いやあ、わたしの魔道具のこと忘れちゃった?汎用に使える部品だと吹っ飛んじゃうわよ」


 「あなた相変わらずどんな出力の魔道具を作ろうとしてるのよ……」


 「変化の腕輪だってさ、下手に出力が弱いと魔力が飛び交う戦闘なんかでとても使えないのよ。できる限り他の魔力に干渉されないようにするには、やっぱ1つの変化で突き詰めないとね」


 「わからないでもないですが……それでは魔道具一つにいくらかかるか」


 「ふっふーん。ここだけの話、変化の腕輪1つで金貨70枚よ!」


 「はあああ!?それを何個も作るなんてどれだけ利益無視何ですの!?」


 「いやいや、高いのはチェスリーが使ってるやつだけ。後のは金貨30枚程度よ」


 「まあ、それなら……ってそれでも高いですわよ!」


 「いや~、ジェラリーの魔道具こそ、もっとお金とれると思うんだけど、割と安いわよね」


 「私の魔道具はみんなに使ってもらいたいから、値段が下がるように工夫しているのですわ。……それでもダンジョン核のせいで高くなってしまうのよ」


 「え~、あれなら十分安いじゃないの」


 「あなたチェスリーさんに薬草代すら払えなかったでしょ!金銭感覚がおかしくなってるかもしれませんが、庶民には全く手が届かない値段ですのよ!」


 「……言われてみればそうねえ。金銭感覚おかしくなってるわ。気をつけとく」


 「あら、意外に素直。……え~と、実は相談したいことがありましてよ」


 「ん、なに?」


 「その……大屋敷の冷暖房器の依頼があって、出力を数倍に高める必要がありますの。お知恵を貸していただけないかしら」


 「いいわよ。あ、やっぱりわたしも部品化の情報見てみるわ。参考になりそうだし」


 「ええ、よろしくてよ。ではさっそく見ていただきますわ」


 反発することの多い、ヴェロニアとジェラリーであるが、魔道具作りにかける情熱はどちらも本物だ。

 この二人が協力すれば、魔道具は益々の発展を遂げるだろう。



 「あ、その前にさ。あたしとチェスリーの似顔絵を、クラン内に配るのやめてくれない?」


 「嫌ですわ。あなたたちを見かけたら、すぐ連れてきていただかないと困りますから」


 「えーー。チェスリーのだけにしてよ。わたし逃げたり秘密漏らしたりしないからさ」


 「……わかりましたわ」


 チェスリーは全く気づいていないが、魔道具クラン内では超有名人なのである。

 主に機密漏洩を防止するために……。


今回もお読みいただき、ありがとうございます。


次回は「理論より大切なこと」でお会いしましょう。


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