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第74話 山を超えて帝国を探せ

 本日はメアリの視認転移の練習を優先して行っている。

 現在、5度目の【一望千里】の魔力を流した教育で、いつものようにメアリに抱き着かれていた。

 スキルがなかなか修得できないことで、メアリは落ち込んでいるようだ。

 本来は【転移魔法】を修得できただけでも凄いんだけどな。


 先に俺だけ視認転移で帝国探しへ行こうと思ったが、メアリが悲しそうな顔をするので、放っておけなかったのだ。

 メアリの教育を後回しにしてまで急ぐような切羽詰まった状況でもないしな。


 マーガレット、ミリアン、アリステラのスキル修得が順調だったこともあり、メアリに焦りがあったのかもしれない。

 俺に何度も魔力を流してもらうのも遠慮していたようだし……。

 まあ、魔力を流すたびに俺に抱き着くのが、恥ずかしいからかなとも思った。

 どんな感情に耐えているのか聞いてみたが、口を固く閉ざして教えてくれない。


 メアリが落ち着つくのを待ち、魔力制御を試してもらうと、ついに2色の魔力を表裏一体にする制御に成功した。


 「師匠!ついに……やり遂げました!」


 「メアリよくやった。俺はできると信じていたよ」


 「師匠……ありがとうございます。私の修行にお手間をかけてしまって……」


 メアリは感極まって泣き出してしまった。

 頭を優しく撫でて落ち着かせようとする。

 しばらくそうしていると泣き止んで笑顔を見せてくれた。


 最初はいきなり師匠なんて呼ばれて戸惑ったものだが、この子を弟子にしてよかったな。

 レアスキルを2つも修得し、もうどこにだしても恥ずかしくない自慢の弟子だ。

 ボルド誘拐事件が解決した後、『暁の刃』のみんなに感謝されていたが、メアリは特別に俺のことを認めてくれていた。

 これからも一緒に成長していきたいものだ。


 「よし、帝国へ行こうか」


 「はい、お供いたします」


 ヴェロニアに帝国行きの準備が整ったことを伝え、出発は翌日の朝となった。

 視認転移は見えた風景をイメージして移動するので、暗闇では使えない弱点がある。

 【暗視】と組み合わせれば克服できるかもしれないので、今後の課題として練習する予定だ。


 マーガレットに【以心伝心】を使ってもらい、ジェロビンとグレイスに連絡をとる。

 二人とも翌日出発で問題ないようだ。


 ジェロビン、グレイスと共に行動するのは久しぶりだ。

 俺とメアリは王都に戻るが、その前に少し観光を楽しむぐらいはできるだろう。


 問題なのは帝国の場所がわかっていないことだ。

 視認転移では、山の向こう側を見通す手段がないので、先ずは山頂に移動することになるだろう。

 そこから場所と視点を変えつつ、帝国を探さなければならない。


 通常なら無計画に行くことはできないが、転移魔法のおかげで、クラン拠点に戻ることや、探索した場所に転移陣を設置して、再び戻ることができる。

 最悪捜索が上手くいかなかったとしても、路頭に迷う恐れはない。



 翌日。

 帝国へ向けて出発だ。

 今回は俺、メアリ、ジェロビン、グレイスの4人で行動する。

 帝国を見つけることができるだろうか。



 「しばらくメアリに転移を頼む。山頂付近に到着してから、俺も【一望千里】で帝国を探すから」


 「はい。ではみなさん、行きましょう」


 「チェスリーさんと一緒だあ。嬉しいな」


 「へっへっ、帝国で情報収集が終わったら、休んでいいでやすよ」


 グレイスとジェロビンは、いい師弟関係を築けているのかな。

 遠慮なく会話しているようなので、仲はいいと思われるが。


 「……ほんとですか?前もそんなこと言って、次の任務がすぐ入りましたよね……」


 「へっへっ、大勢の女性に囲まれて、ちやほやされるとこに連れていってあげやしたよね」


 なにそれ!?

 俺の知らないところで、この二人はいったい何をしているんだ……。


 「……ひょっとしてご老人方の慰問に行ったときの話ですかね?そんなちやほや望んでいないのですが……」


 「年長者からの情報は貴重でやすよ。過去の人間関係や出来事を聞くことで、現在の状況がより理解できるようになるでやす。時には弱みも……へっへっ」


 「俺は知りたくなかったことまで、知ってしまいましたよ……。まさかあの人にあんな過去が……」


 ……うん、この二人に深入りするのはやめておこう。

 手に負えそうにないので、諜報は二人にお任せすることにした。


 「……転移します。みなさんこちらへ」


 メアリもこれ以上は危ないと判断したのか、出発を促してきた。


 「へっへっ、帝国ではどんな情報が集まるでやすかね。楽しみでしょうがないでやす」


 ……俺は帝国に持ち込んではいけないものを持ち込もうとしているのではないだろうか。

 い、いや、探られて困るようなことがあれば、そのほうが悪いんだし。

 ジェロビンには存分に腕を振るってもらおう。


 その前に帝国を見つけられるかどうか、先ずはそこからだ。


 メアリの視認転移で2度移動すると、山が見渡せる場所に到着した。

 さて、どの山の上に転移しよう。


 「メアリ、どの山を目指すのがいいと思う?」


 「なるべく高い山がいいのではないでしょうか。その方が周りがよく見えます」


 「……そうなんだけどな。あの山の上とか、白く染まっていないか?」


 「山頂付近は気温が低く、雪が積もるところは特に寒いと聞いています。そのために防寒着は持ってきています」


 「寒いの嫌いなんだよなあ」


 「師匠は私が温めますので、ご安心ください」


 え?どうやって温めるつもりだ。

 ちょっと期待してしまうな。


 「よし、あの一番高そうな山の上に行く。みんな防寒着を着てくれ」


 全員が防寒着を着用した後、転移を発動する。

 無事山頂についたのだが……。


 「さむっ!」


 気温が急激に下がり、防寒着があっても恐ろしく寒い。

 それに空気が薄いようで、呼吸が苦しくなった。

 山頂はこんなにも環境が厳しいのか……。


 「師匠、結界をお願いします」


 「了解」


 俺は【建城鉄壁】を応用した結界の魔法を発動する。

 これで風と雪は凌げるが、気温は低いままだ。

 メアリが温めてくれると言っていたが……。


 「これで温めます」


 メアリが箱のような物を取り出し、結界の中央に設置する。

 収納の魔法で持ってきていたようだ。

 メアリが箱の出っ張った部分、スイッチというものを押すと、暖かい風が吹き出してきた。


 「あっ、これ暖房の魔道具か」


 「はい、携帯できる大きさの暖房魔道具です」


 期待とは違ったが、これで凍えずに調査ができそうだ。

 ……と思ったがダメか、結界越しだと【一望千里】の魔力が上手く働かず、遠くを見渡せないし、場所を移動しないと遮蔽物が邪魔にならないところを探せない。


 「結界の中からでは帝国を探せないようだ。俺は外に出て周りを調査してくるから待っててくれ」


 「師匠、私もご一緒します。二人で探したほうが効率もいいです」


 「しかし……外は寒いぞ」


 「私が温めるとお約束しました。さあ、参りましょう」


 結界の外に出ると、恐ろしいほどの寒さに体温を奪われる。

 長い時間外にいるのは危ないな……。


 「師匠の周りに魔法を展開します。【一望千里】の邪魔になるようであれば、制御しますのでご指示ください」


 メアリが魔法を展開し始めた。

 おお、これは……ダークミスト……いや違う、霧状の火が周りの空気を温めている。

 火を霧状にするとは、なんという繊細な魔力制御だ。


 「メアリはこんな制御も使えたのか」


 「魔力制御を熟練させるため、属性魔法の形状変化を毎日限界まで練習していました。闇属性と異なり、火はすぐに消えてしまいますが、連続して展開することで補います」


 「これはいい。【一望千里】の邪魔にならないし、これだけ寒さが軽減されるなら大丈夫だ」


 「……お役にたてて嬉しいです。しかし、まだ未熟でした……。【一望千里】の魔力制御に時間がかかり……ご迷惑をおかけしました」


 気にしていたのか……。

 少し帝国探しが遅れることになったが、いまメアリがいるからこそ山頂での調査も継続できるのだ。

 もしメアリを置いてここに来ていたら、寒さに負けて引き返すことになっただろう。


 「迷惑なんて思ったことないよ。メアリがいてくれて本当によかった」


 「……ありがとうございます」


 それから視認転移で見通しのいい場所へ移動しながら、どこかにある帝国を【一望千里】で見渡して探すことを繰り返した。

 2時間ほど、そのようにして探していると、一際大きな町が見つかった。


 「メアリ、あの町が帝国じゃないかな?」


 「師匠、私にも方向を教えてください。……なるほど、大きな町ですね。立派な防壁もありますし、帝国ではないとしても情報は調べられるでしょう」


 「一度戻ってジェロビンとグレイスを連れてこよう」


 結界を張った場所に戻り、ジェロビンとグレイスに町を発見したことを伝える。

 転移で町の近くへ移動すると、先ほどまでの極寒がなくなり、急に暖かくなった。


 「この温度差は体調を崩しそうだな。気分が悪いなら、治療するから言ってくれ」


 全員治療するほどではないが、急激な環境の変化で万全の状態とはいかないようだ。

 山頂からいきなり下へ転移するのは、なるべく避けるようにしよう。


 町を囲む防壁は石造りで10メートルほどの高さがある。

 所々に物見台が作られており、上からも監視することができるようだ。

 どこか町に入れるところを探していると、金属鎧を身につけた衛兵が二人立っているのを見つけた。

 入り口の警備をしているのだろう。


 「旦那、ちょっと様子がおかしいでやすね。グレイス」


 ジェロビンがグレイスの名を呼ぶだけで、グレイスは即座に行動を開始した。

 目の前にいたはずのグレイスの姿が、すうっと消えるように見えなくなった。


 しばらく離れたところで待機していると、再びグレイスがどこからともなく現れる。

 ……これは凄いな、【察知】を使っているのに全くわからなかった。


 そしてグレイスが調査したこと伝えてくれた。


 「あの町はシペル帝国ではないようです。近くにダンジョンがいくつかあるようで、王都のように攻略クランが集まって作られた町のようですね。それで……困った事に帝国と戦争中みたいです。戦争の理由はまだ調査できていません」


 「……帝国は何をやってるんだ」


 ただでさえ魔物の脅威があるというのに、人間同士で戦争とは……。

 それとも帝国では魔物の脅威はそれほどでもないのだろうか。

 戦争の理由も含めて、帝国の現状を知る必要があるな。


今回もお読みいただき、ありがとうございます。


次回は「ダンジョン捜索の問題」でお会いしましょう。


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