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第73話 教育は適切に

 マックリンがレフレオンに連れていかれ、ヴェロニアも魔道具開発に戻っていった。

 メアリと二人になったので、やっと視認転移の練習ができそうだ。


 「師匠、マクナルに移動して練習するのですか?」


 「うーん、もうここで始めようか。マクナルでまた誰かに出会うと予定がくるいそうだ」


 「クラン拠点の屋根の上から、王都の門が見えるはずです。それで外に出るのはどうでしょう?」


 「それでいこう。ところでメアリは【一望千里】が使えるようになったの?」


 「いえ……あの魔力制御はまだ練習が必要です。王都の外まで私の転移でお送りしますので、そこから師匠の練習を見学させてください」


 「わかった。……俺がメアリの転移で移動するの初めてだな」


 「えへ。ついに師匠をお運びすることができます。目標が一つ叶いました」


 「……メアリの目標はどこに向かっているんだ」


 「ささ、師匠行きましょう」


 メアリの視認転移で一度クランの屋根に上がり、そこから王都の門の上へ転移した。

 おお、門の上はなかなか見晴らしがいいな。

 ここからならかなり遠くまでいけそうだ。


 「師匠、ここから転移しますか?」


 「そうだな、下に降りるより上からの方が遠くが見渡せる」


 俺は【一望千里】を使い、転移先を探す。

 特に目的はないので、どこでもいいのだが……お?馬車がこちらに向かっているな。

 王都に行商に来たのだろうか、4台の馬車が連なって移動している。


 馬車の旅は魔物のせいで、決して楽ではないんだよな。

 未発見ダンジョンを全て潰したとしても、既にダンジョンから溢れて各地に広がった魔物がいなくなるわけではない。


 この魔物を殲滅する手段も何か考えたいが、いい方法がないものかなあ。

 ダンジョン中層以下の魔物より弱いとはいえ、ある程度武力のあるものでないと対応できないしな。


 少なくとも旅の危険がなくなる仕組みを作ることができればいいのだが……。


 「師匠、どうかされましたか?」


 「ああ、馬車が見えてね。魔物のせいで旅も楽じゃないだろうなと思ってな」


 「そうですね。私の父は商会の護衛中に魔物に襲われて亡くなったそうです」


 「あっ、悪い。そんなことがあったと知らなくて……」


 「お気になさらないでください。私が物心つく前のことで、実感は薄いのです。幸い母にすぐ再婚相手が見つかり、血は繋がっていませんが優しい父親がいますから」


 「そうか……。よし、未発見ダンジョンのことが解決したら、次は地上に溢れた魔物の殲滅を目標にしよう」


 「師匠……ありがとうございます。どこまでもついていきます」


 「よろしくな。さてメアリ、あの山の上に転移してみるぞ」


 「はい、師匠」


 メアリと一緒に視認転移を使い、いろいろな場所へ転移する。

 途中でメアリにも試してもらおうと思ったが、まだ【一望千里】が使いこなせないようだ。

 魔力制御を教えようとしたら、ここではマズいです、と断られた。

 ……確かにここで抱き着かれても困るよな。


 練習しているうちに、風景が明確にイメージできる場所であれば、再度視認しなくても転移できることがわかった。

 しかし、俺の転移陣のように覚えやすく簡略化したものではないため、複雑な風景は少し時間が経つとイメージできなくなってしまう。

 何度も訪れる予定の場所には、従来の転移陣を設置する方が優れているようだ。


 視認転移は使いこなせるようになったので、帝国に移動するのも問題ないだろう。

 転移の練習を切り上げて、一度クラン拠点へ戻ることにした。

 メアリにも【一望千里】を覚えてもらわないといけないしな。


 「メアリ、もう一度やるぞ」


 「はい……師匠」


 「ちょーーっと、お待ちくださいませー!」


 あれ、マーガレットが走ってこちらに向かってくる。

 何かあったのだろうか。


 「はぁはぁ……、チェスリーさん。私にもスキルの教育をお願いしますわ!」


 「あ、ああ。別に構わないが、よく帰ってきているのがわかったな」


 「まだお話ししていませんでしたわね。チェスリーさんが逃亡したとき、ミリアンさんに見つけられたのを不思議に思いませんでしたか?」


 「あ……そういえば何で追いつけたのか聞いていなかったな」


 「私の【以心伝心】で、伝えようとする相手の位置が大よそですが、わかるようになったのですわ。それをメアリさんに指示して、ミリアンさんを転移で送ってもらったのです」


 「ほおお、それは便利だな。メアリも視認転移を使いこなしていたんだな。……あれ?【以心伝心】で俺に呼びかければよかったのでは……?」


 そう言うと、マーガレットがむすっと怒り顔になった。


 「ずっと呼びかけていたのに、チェスリーさんが答えてくれなかったのですわ!やっと止まったと思ったら、【以心伝心】が届かなくなったのです!」


 「え!呼びかけてくれてたの?それは悪いことしたなぁ」


 そういえば、ずっと【俊足】で移動して、立ち止まったのは戦闘するときぐらいだったな……。

 止まってから【以心伝心】が届かなくなったのは、結界の中にいたからだろう。


 「なるほど、何かに集中しすぎると声が届かないことがあるのか」


 「感心している場合ではありませんわ。それにメアリさんばかりでなく、私にも【転移魔法】や【一望千里】を教育してほしいです」


 そう言われてもな……マーガレットの素の魔力色はシアンだったかな。

 黒系と透明の魔力色を使う【転移魔法】や【一望千里】は難しいと思われる。


 ……この時、ふいにレフレオンに言われたことを思い出した。


 攻撃が得意なマックリンに対し、下手に防御スキルを教えると攻撃が崩れてしまう恐れがあると……。

 いくら便利なレアスキルでも、当人に適切でないものを与えれば、返って邪魔になるかもしれないというのだ。


 『黄金の翼』で行った教育はどうだっただろうか。

 当人の魔力色を見て、なるべく素養のある魔法を教えていたが、どうしてもと希望された場合は、素養がないと思われる魔法も教えていた。

 魔法が使えるようになった人もいたが、せいぜい初級レベルが使える程度だ。

 はたして、この結果は本当にその人のためになったのだろうか?


 当人以外に頼れる人がいない場合、初級レベルでも使えてよかったと思う場面があるかもしれない。

 この場合は、教えておいてよかったと言える。

 だが、一緒に行動する仲間がいて上級レベルが使えるのであれば、その人に頼ったほうがいいのではないか?


 【転移魔法】と【一望千里】は便利なスキルだが、マーガレットの素養は低いと思われる。

 素養の合わないものを、マーガレットが覚える必要はあるだろうか。

 俺とメアリがいるのだから、転移を使いたければ、どちらかがマーガレットと共に移動すればいい。

 【一望千里】で見た風景を伝えたり、視認転移で一緒に連れていくこともできる。


 もちろん、マーガレット自身がスキルを使いたいから、教えてほしいと頼んできたのだろう。

 【転移魔法】は、俺もほしくてたまらなかったスキルだ。

 どうしても転移が必要な理由があれば別だが、マーガレットに素養があり、伸ばすべきスキルを優先したほうが適切ではないだろうか。


 このように考えた事をマーガレットに話してみた。

 するとマーガレットは機嫌がよくなったのか、笑顔で話しかけてきた。


 「ふ~ん。転移したいときは、チェスリーさんがご一緒してくださるということですね」


 「あ、ああ」


 意図していた反応と違うが……納得してくれたならいいかな。


 「なら問題ありませんわ。何か私に合うスキルを教えていただけるかしら?」


 「そうだな……、【察知】なんてどうだろう。素養もありそうだし、【以心伝心】で相手の位置がわかるなら、応用できるかもしれない」


 「それは便利そうですね。是非お願いしますわ」


 せっかくだしミリアンとアリステラも時間があるようなら、スキルを教えようかな。


 「マーガレット、ミリアンとアリステラにも教えたいスキルがあるんだ。今時間がとれるか聞いてもらえるかな?」


 「少々お待ちを…………大丈夫みたいです。二人ともすぐこちらへ来ますわ」


 「ありがとう」


 ミリアンの素の魔力は赤系の魔力色だ。

 しかし、素養に合う魔法以外も含めて4属性が使えるようになっている。

 大容量の収納魔法が得意だが、収納魔法は黒系の魔力を使う必要がある。

 ミリアンの努力もあるが、魔力の扱いがかなり上手く器用だから、このようなことができるのだろう。

 ミリアンなら、【転移魔法】と【一望千里】も使いこなせそうだが、他にも教えたいスキルがある。


 教えたいのは【剛力】のスキルである。

 女性が使うのはイメージが悪いかもしれないが、ミリアンの収納魔法と相性がいいはずだ。

 収納魔法は手で触れることで、容量の許す限り大きなものを収納することができる。

 再び物を出す位置は、手の位置で大まかに調整できるが、重いものは置くだけになってしまう。

 【剛力】を覚えれば、重いものでも動かせるようになるだろう。


 【剛力】は魔力量により威力が決まるので、魔力量の少ないの俺では使い勝手が悪い。

 魔力量の多いミリアンが使えるようになれば、より強い力が出せるようなるだろう。


 「チェスリーさんの考えはわかりますが……やはりイメージが……」


 「ミリアンのイメージが【剛力】で悪くなることなんてないよ。新たな魅力が増えるだけだよ」


 そう言ったら嬉しそうにスキルの教育を承諾してくれた。

 ちょろ・・・おっとこれ以上はいけない。



 アリステラの素の魔力は茶系の魔力色だ。

 【能工巧匠】のレアスキルがあり、様々な素材の加工を自由自在にできる。

 素養のある土魔法も上級レベルを使いこなす。

 アリステラに教えたい【分析】も土魔法と同様の茶系の魔力を使う。

 【分析】は無機物に反応して、見通せない先がどのようになっているか調べることができるので、ダンジョンの構造を先に知ることができるのではないかと期待しているスキルだ。

 アリステラが使いこなせれば、俺のダンジョン攻略に必須なスキルの一つとなるだろう。


 「あの……それでいいのですが、レアスキルの魔力も教えていただいけないでしょうか?」


 「ああ、構わないよ」


 アリステラに【転移魔法】の魔力を流すと、顔を真っ赤にしてどこかに行ってしまった。

 おーい、まだ【分析】教えてないんだけど。


 それを見たミリアンとマーガレットも【転移魔法】の魔力を流してほしいとお願いしてきた。

 魔力を流すと、二人ともどこかに行ってしまった。


 ……教育は落ち着いてからだな。


今回もお読みいただき、ありがとうございます。


次回は「山を超えて帝国を探せ」でお会いしましょう。


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