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第70話 知らぬ間の魔道具革命

 シペル帝国は、アルパスカ王都のずっと東側に存在する都市で、間に山脈帯が隔てるようにそびえている。

 馬車で山越えできるような道などなく、登山も厳しいので、北か南へ迂回する必要があり、移動だけで1年かかると言われている。

 道中は魔物に遭遇する危険もあり、馬車で移動するとしたら命懸けの旅になるだろう。


 移動は転移魔法を使うのが一番安全だが、転移陣を使う方法では、一度は地道に旅をして現地へ辿り着かなければならない。

 視認したところへ転移する方法は、メアリが初めて使ったものだ。

 もしかすると、帝国では視認による転移が知られているかもしれないが、情報がないのでわからない。

 ジェロビンとグレイスを送ったら、帝国のいろいろな情報を収集してもらわねばならない。

 俺たちが知らない事実があるかもしれないし、レアスキルのことも気になるからね。



 【一望千里】を使う際は、見晴らしのいい場所が望ましい。

 見る距離を伸ばすことができても、遮蔽物があるとその先が見えないのだ。


 遮蔽物がないところでも、この世界は球状の上にあるようなので、まっすぐ地上に視線を伸ばしているつもりでも、やがて空が見えてくる。


 地上に視認転移したいのなら、地上が見えるところまでが限界になる。

 空に転移すれば距離は伸びるかもしれないが……空から安全に降りられる方法を準備しないと死んでしまうな……。


 王都よりマクナルのほうが土地勘もあるし、町を出てすぐに見晴らしのいい場所がある。

 練習するなら、久しぶりにマクナルへ行ってみようか。


 「おーい、メアリ~~。そろそろ大丈夫か~?」


 メアリの部屋の前で呼びかけてみる。

 しばらく待つと、扉が開きメアリが顔を出した。


 「師匠……ご用でしょうか」


 うむ、ちょっと顔が赤いようだが、呼吸は落ち着いてるな。


 「いや、そろそろ落ち着いたかなと思って。大丈夫そうならマクナルへ一緒に行かないか?」


 「え、マクナルですか。師匠の故郷……寝ている場合ではありませんね。お供します」


 「よし、早速いく――」


 「チェスリーさん!どこへ行くんですか?」


 メアリと出かけようとしていたら、アリステラが気付いて声をかけてきた。


 「転移の練習をしにマクナルへ行こうと思ってな」


 「マクナル!?それなら私も一緒に連れて行ってくださいませんか」


 「うん、一緒に行こうか。でも練習に行くだけだから、つまらないかもよ」


 「えっと、私はマクナルを見て回ってもいいでしょうか?」


 「構わないよ。何か見てみたい物でもあるのかい?」


 「マクナルの商会を見て、物作りの参考にしたいですわ」


 「そうなの?王都の方が参考になると思うけどな」


 「えっ、チェスリーさんご存じないのですか?今のマクナルは魔道具開発の最先端ですのよ」


 「ええ!?知らなかったよ……いつの間に」


 「いつの間と言われましても……チェスリーさんが貢献したと聞いていますわ」


 「え……あ、あれかあ。魔物素材の魔力を判別したやつ」


 「師匠は魔道具にも貢献されているのですか。まだ私の知らない師匠の一面が……」


 「魔物素材の魔力を判別しただけだからね?大したことはしていない――」


 アリステラが珍しくジト目でこちらを見ている。

 最近こんな風に自分は大したことないと発言をすると、アリステラは不満そうな表情になる。


 「……はい、魔道具開発に貢献しました」


 「はい!チェスリーさんは凄いですわ!」


 もっと自分のことに自信を持ったほうがいいのかもしれないが、まだ……自信はない。

 ”復讐”を終えたら、自信が持てるようになるのだろうか。


 「せっかくだから、ジェラリーさんに挨拶しておこう。それじゃ出発だ!」


 「「はい!」」


 メアリとアリステラを連れて、マクナルへ転移する。

 転移先は、ちょっと懐かしくなりつつある元マクナルのクラン拠点だ。


 転移が終わり、ジェラリーさんへの挨拶は全員で行くことにした。

 ジェラリーさんが所属する魔道具クランの建物は、すぐ近くに新設されたということだ。

 行けばわかるらしいのだが……。


 へ?ナニコレ。

 恐ろしくでかい建物なんですけど。

 この辺りには古い建物が4~5軒あったはず。

 全てまとめた大きさになってるぞ。


 「わあ~~、おっきい建物ですね」


 「でかすぎだろ……。王都でも見たことない大きさの建物だぞ」


 ジェラリーさんに会えるかな……。

 こんなに大きな建物だと知らなかったし、気軽にきたけど紹介状とか何も持ってないぞ。

 門に警備をしている人がいる……聞くだけ聞いてみよう。


 「あの~ジェラリーさんにご挨拶に来たのですが、会えますでしょうか?」


 「失礼ですがどちらさま……あっ!すぐご案内します。こちらへどうぞ」


 「は、はい」


 建物の玄関まで案内され、待つように言われた後、駆け足で中に入っていった。

 ……何となく嫌な予感がする。

 すると誰かが駆けてくるような足音がして、玄関の扉が開いた。


 「チェスリーさん!ようこそいらっしゃいました。どうぞどうぞ」


 「おお、ジェラリーさん。お久しぶりですね」


 「ええ、待ちわびていましたわ。事前に連絡……は無理ですわね。今王都にいらっしゃるとか」


 「そうです。せっかくマクナルに来たので挨拶ぐらいしておこうと」


 「それは好都合……ごほんっ、いえとにかく中へどうぞ」


 「は、はあ」


 応接室に案内され、お茶とお菓子が振舞われた。

 周りに置かれているのは、魔道具だろうか。

 いろんな種類のものがあるなあ。


 「周りにある魔道具を見ていかがですか?クランの成果ですのよ」


 「ええ、見ただけではわからないですね。これは何ですか?」


 俺は部屋の棚の上に置かれている棒の上に何か丸いものがついている魔道具を指差した。


 「これは魔力灯ですね。ここの少し出ているところを押すと明るく光りますの」


 出っ張った部品を押すと、白く綺麗な灯りが点いた。


 「あれ?魔力を流してないのに使える!どうなってるんだろ」


 「うふふ、この魔道具の動力はダンジョン核の欠片ですわ。エドモンダ侯爵様から提供されたものを元に、動力として使う研究成功しましたの」


 「へええ。これなら魔力がない人でも使えるな」


 「おかげで大人気です。冷暖房器に火力調節付きの調理器は飛ぶように売れていて、生産が全く追いついていませんの」


 「あっ、その魔道具ってここで開発されたものだったのか」


 「ヴェロニアから、いくつか特注があったので優先して出荷しました。元はチェスリーさんとヴェロニアのおかげですからね。まさに魔道具革命が起こりましたわ」


 クラン会議で魔物素材の判別のことをついしゃべってしまったが、それが革命的な出来事と言われても、全く実感なかったんだよな。

 こうして完成した魔道具を見て、本当に革命的なことだったとやっと感じてきた。


 「しかしダンジョン核の研究は、ジェラリーさんの成果じゃないのかい?」


 「研究を進めたのは私ですが、魔力視の魔道具がなければ成果をあげることは難しかったと思いますわ。チェスリーさんがいなければ、魔力に色があって判別できるなんて発想もなかったですし」


 「そうか、お役に立てたのなら嬉しいよ」


 「……本当にチェスリーさんは謙虚ですのね。さらにお願い事をするのは心苦しいのですが……」


 「ん?何だい。俺にできる事なら手伝うよ」


 「そうですか!!では、チェスリーさんこちらにいらしてくださいませ」


 「うわあ!あ、アリステラに、ここを見学しても構わないかな」


 いきなり腕を掴まれて拉致されそうになったので、慌ててアリステラのことを聞いておく。

 そんなに急ぎの用事なのかな。


 「どうぞどうぞ、『百錬自得』のメンバーなら大歓迎ですわ!案内の者を呼びますね」


 「まあっ、嬉しいです。よろしくお願いしますわ」


 アリステラは魔道具の見学ができるからいいとして……。


 「メアリすまん。先に用事を済ませてくるよ」


 「いえ、私は師匠に同行いたします」


 「そうか、ならいっしょに行こう」


 ジェラリーさんに案内された先は、魔物素材の倉庫のようだった。

 ま、まさか。


 「こちらの魔物素材の判別をお願いしたいのです。加工が難しい素材で、魔力視の顕微鏡に設置するのが困難でして……。報酬はお支払いしますのでお願いします!」


 なるほど。

 魔力視の顕微鏡は素材を魔道具に設置できる状態にしないと使えないから、不便なところがあるんだな。

 魔力視の眼鏡がまた活躍するのか。


 「わかりました。どうせならどんどんやっちゃいましょう」


 「ありがとうございます!いい魔道具ができたら、優先して送りますわ」


 魔物素材を魔力視で視て、以前も使っていた参考色が載っている紙で、どの色かを示していく。


 「効率いいですわ~。チェスリーさん、こちらに就職してほしいですわ」


 「いやいや、勘弁ね。それに一度判別してしまえば、もう用はないでしょう?」


 「私もそう思っていたのですけどね……。『暁の刃』の方々がいろいろな素材を入手されるので判別するものが増えてしまって……、嬉しい悲鳴といったところでしょうか」


 「そっか、オーガス達が頑張っているんだ。メアリよかったな」


 「……はい。ご無沙汰していますので、近々訪ねようと思います」


 「その時は俺もいっしょにいくよ」


 「師匠……ありがとうございます」


 「あ……作業してたら練習する時間なくなってしまったな」


 「有意義な時間を過ごせました。練習はまた明日ご一緒させてください」


 「ふふふ、いい師弟関係で羨ましいですわ。今日は本当にありがとうございました」


 「いえいえ、また寄らせてもらいます」


 アリステラはどうしてるかなと、様子を見にいってみる。

 すると……アリステラが走ってこちらに向かってきている。


 「ちぇ、ちぇすりーさあああん。助けて~~」


 「アリステラどうした!?」


 「あの……少し魔物素材の加工を手伝ったら、魔道具開発の皆さんが次々に素材を持ち寄ってきまして……」


 アリステラを追いかけていた面々を見ると、気まずそうな顔をしていた。

 ……気持ちはわからなくもない。

 アリステラは大抵のものは簡単に加工できてしまうからな。


 また時間ができたら訪問することを約束し、やっと解放された。

 魔道具の生産が追いつかないほど売れているから大変なのはわかるけど、俺たちは他にやることがあるしな……。


 それに魔道具の動力にダンジョン核が使えるという、いい情報が聞けた。

 未発見ダンジョンを攻略する理由が一つ増えたな。


今回もお読みいただき、ありがとうございます。


次回は「マックリン歓迎会」でお会いしましょう。


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