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第68話 久しぶりのクラン会議

 久々に『百錬自得』のクラン会議だ。

 教育をしている時は、会議に参加することも減ったため、なんとなく懐かしい雰囲気だ。

 参加者は、ヴェロニア、ミリアン、マーガレット、アリステラ、ジェロビン、グレイス。

 ジェロビンとグレイスもずっと会ってなかったな。

 ここにいるということは、有用な情報を掴んできたのだろう。


 「第9回クラン会議を始めるわ」


 おうふ、やはり1回は不参加の時に行われたのか。

 でも期間も空いているし、1回不参加なだけなのが意外とも言える。


 「今日の議題はダンジョン攻略に向けて準備する話よ。具体的にどう進めていくかの方針を決めていくわ」


 「ちょっと待って。確かにダンジョン攻略はするつもりだが、それは俺の目標であって、みんなはスキル研究を続けてもらうつもりていたのだが……」


 「チェスリーまだそういうこと言うの?あ、もうみんなチェスリーの”復讐”のこと知ってるから」


 「おおおい!何で話しちゃったの!?というか、ヴェロニア何で知ってるの?」


 「はっはっはっ、やっぱり忘れてたわね。私に話した時のこと」


 「言ったことあったかな……。ちなみにどんな内容かも伝えたの?」


 「全てのダンジョンと魔物を殲滅すること」


 「うわあ、合ってるし。いやでも……それ聞いたらドン引きするから話さないようにしてたはず……」


 「わたしと会ったのが7年ぐらい前よね。その頃は酔っぱらうと話してたわよ」


 「若気の至りか……今となっては恥ずかしい」


 「いや、その恥ずかしい目標を今でも叶えようとしてるじゃないの」


 「むう。しかし……その……誰も本気にしてくれなかったからさ。現実を見ろとよく言われた」


 「いいじゃない、現実にすれば。レアスキルの効果がわからなくて諦めてた頃より、よっぽど現実味があると思うわよ」


 「確かにレアスキルで少しは力をつけたが、俺のやろうとしてることは単なる殲滅だ。魔物素材や鉱石採掘で金儲けするつもりもない。ダンジョンだって、いくつあるかもわかっていないんだ。スキル研究や魔道具開発で支援してくれるだけで十分助かる」


 「さすがに一人で全部やるとは言わなくなったわね」


 「……一人でできることは限られると散々思い知らされたからな」


 「それならちゃんと話して、協力してもらえるかどうか確かめなさい。”復讐”の話を聞いた後も、こうして集まってるメンバーなのよ」


 今まで散々否定されてきた俺の”復讐”。

 俺の口から話すことで、またみんなが離れていくことを恐れていたのだろうか。

 そう……なのだろうな。

 この仲間を失いたくないと思っている。

 しかし、ここまで言われて話さなないわけにはいかないな。


 「わかった。はっきりと言わせてもらう。俺がレアスキルを求めるのは、”復讐”のためだ。俺の両親を殺し、故郷を滅ぼした魔物が許せない。今後も同じことが発生するかもしれないのに、放置されているダンジョンの存在が許せない。全ての魔物とダンジョンの殲滅が俺の”復讐”であり目標だ。みんなの力を貸してほしい」


 一息に話終わった後、参加者全員から拍手を送られた。

 そうか……こんなにも頼りになる仲間をまだ俺は信じきれてなかったのか。


 「既に話してあるわけだしね。当然こうなるわよ」


 「そうだけどさ、もうちょっと感動に浸らせてくれよ」


 「はいはい、会議を進行するから、感動に浸ってなさい」


 「うわ、雑な扱い」


 「最終目標は全てを殲滅することだとしても、いきなり全部できるわけないわ。段階を踏む必要があるでしょ」


 「まあ……そうだよな」


 「最初の目標は考えてあるの。未発見ダンジョンの殲滅よ」


 「なるほど……え?それ難しいんじゃないの?既に発見されているダンジョンから攻略じゃないのか?」


 「危ないのは未発見ダンジョンのほうでしょ。それに誰も見つけていないダンジョンなら、攻略で他と競合することもないわ」


 「そうだけど、どこにあるかわからないから未発見ダンジョンなんて呼ばれるんだぞ」


 「そこで私の研究の成果を発表させてもらうわ。ダンジョン核についてのことよ」


 「ほう」


 「ダンジョン核は魔力を吸収して貯めむことで成長し、その過程で不要な魔力が放出されるの。その余剰魔力が、ダンジョンの拡張や魔物を作る元になっているようなのね。ということは、魔力の流れが通常とは異なり、大量に吸収されている場所が、ダンジョン核の目印になるの」


 「ふむふむ」


 「魔力の流れを視ることは魔力視の眼鏡で可能。でも調査するには、その場所へ行く距離の問題があるわね。この問題の解決方法は、メアリから説明してちょうだい」


 「はい。転移魔法の改良に成功し、転移陣なしで転移が可能になりました」


 「ええっ!?メアリいつの間に転移使えるようになったの?しかも改良なんて」


 「師匠に教えていただいた後です。それから日々研鑽を重ね、具体的には実際に見た場所であれば、その地点へ転移できるようになりました」


 「凄いな……あっ、ひょっとして【一望千里】と組み合わせれば」


 「これから試すことになりますが、恐らく【一望千里】で見た場所へ転移可能だと思います。大事なのは転移先のイメージですから。僭越ながら師匠には私から視認転移を伝授いたします。師匠は私に【一望千里】を教えていただきたいです」


 「お、おう……そうさせてもらうか……え!?レアスキルの教育……ま、まさか」


 「はい、ここで重大発表ね。チェスリーの【百錬自得】の真の効果よ」


 「マジかーー!レアスキルを教えられるのって、ほんとヤバいんじゃないの!?」


 「あんたに自覚させちゃったことが、本当は一番ヤバいんだけど……まあクランの体制は整ったからね。これからは存分にその効果を発揮してもらわないといけないし」


 「【百錬自得】って自分のスキル修得をするための能力じゃなかったのか……?」


 「元の意味は、”同じことを百回反復して行なえば、自然に反復したことが自分の身につくという、剣の教え”ということよね。最後の”教え”というところも含めて重要だったみたいね」


 「”教え”……つまり人に教えることなのか」


 「そう。教師として優れているという事で、当人も器用ってことなのかしらね……。その辺りは想像だけど。どうもあんたがスキル修得するより、スキルを教えた相手の方が、スキル修得の効果が高いようなの」


 「……えぇ。それだと俺がスキルを使って行動するより、俺が教えた誰かが行動するほうがいいってことなのかい?」


 「単純にそうとも言えないわ。『黄金の翼』で教育したことで、チェスリー自身も成長しているでしょ。魔力量が上がるというのも、今までなかった現象だしね」


 「そ、そうだな。ギガントサイクロプスも倒したしな」


 「あんたそんなの狩りに行ってたの!?眼の膜はこっちによこしなさいよ」


 「えー、俺の隠れ拠点に使おうと思ってたのに……あっ」


 「な・ん・で・隠れ拠点作ろうとしてんのよ!全く油断できないわね」


 「ほら、隠れ拠点ってかっこいいじゃない。男の城ってやつで」


 「あんたの城はここにあるでしょうが。綺麗どころも揃ってるじゃない」


 「わかんないかな~、やっぱ違うんだよ。浪漫あふれる空間というか」


 「へっへっへっ、やっぱり旦那と姐さんは面白いでやすね。でもそろそろ進めやしょうぜ」


 「お、ジェロビンすまないな。何か調子出てきたものでな」


 「あんた隠れ拠点の話は後できっちりするからね」


 「へいへい」


 「もうっ、腹立つわね。どこまで話したっけ、脱線ばかりするから」


 俺にとっては衝撃的な事実だったんだけどな……教育が真の価値だったなんて。

 隠れ拠点の話を思わず口走るぐらいには。


 「未発見ダンジョンを【一望千里】と転移を使って、魔力視で探そうってところまでですね」


 「ミリアン、補足ありがと。次はジェロビンね」


 「へい、こちらが入手した王都周辺の地図でやす。旦那に作ってもらおうかと思いやしたが、絵はこっちのが上手いようでやしたからね」


 「うん、そっちのがいいね」


 「これで目安をつけてダンジョンを探ってくださいやせ。あともう一つ、本命の情報はレアスキルのことでやす」


 「おお!待ってました」


 「といっても王都周辺では、レアスキルは見つかりやせんでした。地図作りにきた【一望千里】のスキルを持つ人から、帝国にレアスキル持ちがいるのがわかっただけで、スキル名も不明でやす」


 「そうか、まだ王都にもレアスキル持ちが……あっ!前にダンジョン地図作成と【電光石火】の情報を掴んだと聞いたことがあるけど?」


 「へっへっ、さすがにスキルのことはよく覚えてやすね。しかし残念ながら地図作成は【分析】のことで、【電光石火】は【俊足】スキルのことでレアスキルではなかったでやす」


 「何だ……がっかりだよ」


 「そこで旦那、視認転移の練習も合わせて、帝国にいってみやせんか?」


 「シペル帝国か……馬車で行くと1年ぐらいかからなかったか?」


 「そうでやすね。どうせ試すなら、目的もあったほうが張り合いがあるでやしょ」


 「……メアリと練習して視認転移を確かめてからだな。帝国を見てみたいし、レアスキルも修得したいから、帝国行きは賛成だ」


 「へへっ、お願いしやす。現地の情報は、あっしとグレイスで収集しやすんで、連れて行ってくださいやせ」


 「わかった」


 「連絡は私の【以心伝心】にお任せですわ。練習を重ねた成果で、複数人で同時に意思を伝えあうことも可能ですのよ!」


 「おお、それは凄いな。戦闘中でも音に邪魔されずに、連携が伝えられるかも」


 「私が教えて差し上げますわ。きっとチェスリーさんのお役に立つと思いまして」


 「マーガレットありがとう。是非教えてもらうよ」


 「あの!私は【能工巧匠】をいっぱい練習しました。どんな素材でも加工や変形が自由自在です!」


 「アリステラの作った家が素晴らしい出来だったのを見せてもらったよ。俺の隠れ拠点を作るときも……あ、アリステラに頼むとバレちゃうじゃないか」


 「あんたは隠れ拠点を忘れなさい!」


 「わ、私も属性魔法を4種類まで上級が使えるようになりました。いつでもどこでもお供できます」


 「俺の【暗中飛躍】も凄いんですよ!チェスリーさんのお供なら俺も!!」


 ヴェロニアに突っ込まれ、ミリアンとグレイスはお供にしてほしいか。

 素直に嬉しいな、ヴェロニアの突っ込み以外。


 「グレイスはあっしと情報収集でやすよ」


 「うう……チェスリーさんとも冒険したいのに」


 「あーもう、みんな落ち着いて。特訓の成果はいろいろあるんだから、この場でしゃべり切れないでしょ。方針は決まったから、会議が終わった後でゆっくりしなさい」


 「……ヴェロニアさんは、チェスリーさんと散々話してたのに」


 「あたしはリーダーだからいいの!クラン会議終わり!」


 強引に会議は終了した。

 先ずやるべきことは視認転移を修得することだ。

 シペル帝国にどんなレアスキルを持つ人がいるか気になるし、未発見ダンジョンの調査も急ぎたいな。


 ん……そういえばまだ何か忘れているような……まあいっか。


今回もお読みいただき、ありがとうございます。


次回は「頼もしい相棒」でお会いしましょう。


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