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第56話 チェスリーのいないクラン会議 『百錬自得』編

 ◆三人称視点◆


 『百錬自得』のクラン会議は全7回行われている。

 そのうち第1回、第2回、第4回は、チェスリーは欠席している。


 何故中心人物である、チェスリー不在で会議が開かれるのだろうか?

 それはチェスリーをよく知るジェロビンとヴェロニアが、チェスリー本人に伝えない方がいい事案を理解しているからである。



 第1回の出席者は、エドモンダ伯爵様、ジェロビン、ミリアンの3人である。

 議題は、ジェロビンがエドモンダ伯爵様に新クラン結成を依頼することである。


 チェスリーが転移魔法を覚えたことで、当然知られるであろう伯爵様への根回しを兼ねている。

 クランの目的であるチェスリーのスキル修得についてと、伯爵様が受けられるであろう利点についてジェロビンが説明を行った。

 ミリアンがクランに参加することを決めたのもこの時である。

 ミリアンに与えられた役割は、チェスリーの助手として監視と行動可否を判断することである。

 チェスリーの迂闊さを警戒していることがよくわかる。



 第2回はチェスリーとミリアンが王都に行き、魔班病治療をしている間に行われた。

 ヴェロニアがチェスリーがいないうちに話したいことがあると提案した。


 出席者は、エドモンダ伯爵様、ジェロビン、ヴェロニアの3人である。

 議題は、ヴェロニアからチェスリーの行動や考え方などを聞き、スキルの秘密を守る上での注意事項を整理することである。


 この話し合いで、エドモンダ伯爵様はチェスリーの秘密を守ることの困難さを知った。

 まさか秘密を守りたい当人が、一番の穴であるとは思っていなかったからだ。

 その事実は、この直後に行われた第3回のクラン会議で、伯爵様自身も体験することとなる。

 しかし、恩人であるチェスリーに常に味方であると宣言した伯爵様は、改めて出来る限りのことをしようと決意を固めた。




 第4回はチェスリーがクラン『暁の刃』の修行に行っている間に行われた。

 ジェロビンがチェスリーがいないうちに話したいと提案した。


 出席者は、エドモンダ伯爵様、ジェロビン、ヴェロニア、レフレオンの4人である。

 議題は、ジェロビンが想定するチェスリーの真の目的がダンジョン攻略にあり、その備えが必要だと周知することである。


 レフレオンには、ダンジョン探索を行う時が来たら、パーティーを組んでもらうことを頼んだ。

 ジェロビンは、ダンジョン探索に有用なレアスキルを優先して調査することを宣言した。

 【暗中飛躍】スキルを持つグレイスを迎え入れることも、この会議で決めたことだ。



 そして第8回のクラン会議は、チェスリーがメアリの様子を見にいった後、第7回に続けて行われることになった。

 出席者は、ヴェロニア、ミリアン、マーガレット、アリステラ、エドモンダ侯爵様の4人だ。


 「ほんとこういう時は行動早いわね。マーガレット、メアリに例の事を伝言お願いね。続けて第8回クラン会議を始めるわよ」


 マーガレットは【以心伝心】を使い、メアリに伝言を伝える。


 「ちょっと妬けますわね。エドモンダ様に指示されたとはいえ、ためらいなしに転移ですもの」


 「……まあ、あいつはそういう人だからね。それじゃミリアン、『黄金の翼』について報告してちょうだい」


 「はい。『黄金の翼』のメンバーですが、チェスリーさんの特異性に気づきつつ、いえ、もう既に気づいていると思われます」


 「やっぱりねえ。具体的にはどの辺りまでバレてる?」


 「私が出向いたことで、何らかの組織がチェスリーさんの裏にあることは疑われてそうです。後、危惧していた教育者としての資質は、知られていると思います」


 「……予想通りね。でもそれを意識させちゃうとダンジョン攻略自体が危険になるかもしれないから、止めさせない方針にしたし、しょうがないわね」


 「はい、チェスリーさんがいつもの調子で、自覚がないことが救いでしょうか」


 「自覚はしないでしょうね。チェスリーは自分の力じゃなく、相手に素質や才能があったから、としか考えないから。やっぱり問題はレアスキルを修得した後、どうやってクランを抜けるかよね」


 「あの~質問していいでしょうか?」


 「アリステラなあに?」


 「クランを抜けるのってそんなに大変なんですか?それとチェスリーさんの秘密ってレアスキルを修得できることで、教育が優れていることは知られても問題ないのでは?」


 「アリステラとマーガレットには、まだ教えていなかったわね。チェスリーの真の価値を」


 「「真の価値!?」」


 「こういうことなのよ……チェスリーは――」


 ヴェロニアの語るチェスリーの真の価値とは、教育者として優れていることだった。

 チェスリーがレアスキルを修得できることも、もちろん下手に知られていいことではない。

 しかし、ヴェロニアとジェロビンの中では既に知られても問題ないことになっているのだ。


 チェスリーがレアスキルを修得できるとしても個人の範囲に限られる。

 神の如き力であれば別かもしれないが、例えレアスキルといえど、個人でできる事は限りがあり影響範囲は少ない。

 それを狙ってくる権力程度は、エドモンダ侯爵様とブリエルサ公爵様が十分対処できるのだ。


 だが教育者となると、影響範囲が個人に留まらない。

 チェスリーが教育することで、優秀な人材が量産されるのだとすれば、桁違いの影響が出ることになるのだ。


 「アリステラとマーガレットは、覚えがあるんじゃない?」


 「そういえば……病気が治ったからだと思ってましたが、土魔法の制御が以前と比べ物にならないぐらい上手になりました……」


 「私も……【以心伝心】をチェスリーさんと使い始めてから、かなり上達してますね……」


 「私の収納魔法は元から大きい方でしたが、今は限度がわからないぐらいになってまして……」


 「ミリアンさんもですの?!」


 「三人は素の素質も高いから、わかりにくいかもね。前に全員ライトの魔法を教えてもらったことあるでしょ?私だけ使えなかったけど」


 「あっ、そういえばありましたね」


 「実はもう使えるの。ほら」


 ヴェロニアは指先にライトの魔法を発動して見せる。


 「ふわあ。ヴェロニアさん魔法使えたのですね」


 「以前に魔法講義を受けたこともあるけど、これまで全く使えなかったわよ。チェスリーに教えてもらった時はわざと使えないフリをしたけど、たった1回教わっただけで使えるようになったの」


 「「!?」」


 「他にも例はある。魔班病治療師として雇った7人だが、魔班病はもちろん、怪我なども問題なく治療しておる。教会では7人とも聖女様と崇められるほどになっておるぞ」


 魔班病治療の件は、クランの手を離れ余り語られていないので、初めて知る事実だろう。


 「そ、そんなに凄いのなら……隠さなくてはいけないのでは……」


 「そこが難しいのよ。チェスリーに自覚がない内は教えないほうがいいのよね……。さすがのあいつも、自分が知らない秘密は洩らしようがないでしょ」


 「そ、それは余りにも……いえ……何でもないです」


 アリステラは、チェスリーに同情しようとしたが、孤児院を訪問した際に行った治療の事を思い出すと何も言えなくなった。

 チェスリーが孤児院で治療した子は、元気になるだけでなく、いつの間にか風魔法を使いこなしていたのだ。


 「でもチェスリーに自覚がなくても、教育された相手は気づいちゃうでしょうね。あいつの戦術は教育で工夫した魔法も含めて考えるから、下手に止めてダンジョン攻略に支障があると困るし」


 「な、なるほど。さすがヴェロニアさん、よく理解してますね……」


 「それでね……さらに恐ろしい事実が今回明らかになるかもしれないの」


 「えええ!?これ以上恐ろしいことって何ですか」


 「メアリくんの件だな。彼女は今シルビアに転移魔法を習っている。苦戦しているようだがな」


 「ま……まさか……」


 「メアリにはチェスリーの教育のこと話せてないの。チェスリーがいるとべったりくっついてるし、いなくなると、どこかに行っちゃうしで。自ら弟子になって心酔してるぐらいだから気づいているかも知れないけど……。もしチェスリーが転移を教えることになったら、レアスキルでも修得できるかどうか、判明するかもしれないの」


 「ふあああああ」


 「人類にとっては朗報になるのだがな……全く魔道具のことといい、とんでもない男と関わってしまったものだ」


 「あら?侯爵様にとっては嬉しい悲鳴がとまらない感じだと思いましたが?」


 「ごほんっ……そうだな。昇爵もチェスリーくんのおかげだ。それに魔道具のこと、これはヴェロニアくんの力も大きいが、これからどれだけ利益がでるか計り知れんからな」


 「侯爵様はできる限り、偉くなって頂きますからね。チェスリーのためにも」


 「……わかった。力を蓄えるとしよう」


 ヴェロニアは、エドモンダ侯爵様の権力も計算に入れている。

 信頼できる仲間なら、どんどん力をつけてもらいたいのだ。

 もしも、信頼を裏切るようなら、ヴェロニアは容赦なく矛先を向けるだろう。


 「ミリアン、マーガレット、アリステラ、あなたたちも同じよ。しっかり力をつけて、チェスリーを捕まえておかないと、他の人に盗られちゃうわよ」


 「「「は、はい!」」」


 「それじゃ、『黄金の翼』の話に戻すわ。ミリアンから補足してちょうだい」


 「はい、現在は大規模ダンジョン攻略中で次が15層、想定では最下層になります。大規模ダンジョンを攻略すれば大きな功績になるでしょう。さらにあと一つぐらい大きな実績を積めば、特級クランに認定されると思われます」


 「特級か……素直に凄いわね。特級クランに昇格してチェスリーが貢献したとなると、抜けるのは難しそうだわ。冒険者引退で抜けられるといいけれど……」


 「ええ……教育の資質を見破られていると、無理かもしれませんね」


 「宴会の時の様子でわかったように女性陣がチェスリーを気にしているようね。引き留められるのは、ほぼ確実だわ」


 「チェスリーさんそれほど人気でしたのね……」


 「変装で老齢化しているから、女性との関りは少ないと思ってましたわ……」


 「とにかく、『黄金の翼』の動きによっては対策が必要になるわ。クラン規模は比べ物にならないけど、チェスリーは私たちのクランメンバーなんだからね。気合い入れていくわよ!」


 「「「はい!!」」」


 「クラン会議終わり!」


 このようにチェスリーのいないクラン会議は行われている。

 今後も開催されることになるのだろう。


次回は「チェスリーのいないクラン会議 『黄金の翼』編」でお会いしましょう。


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