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第54話 ドラゴン討伐戦

 ミリアンのおかげで素材回収が捗り、14層の威力偵察をする時間が作れた。

 ミリアンは既にクラン拠点へ帰した後だ。

 金貨5枚というお小遣いには多すぎるお金を頂いて……。

 何となくまた呼んでくれと言われそうだが、またその時に考えようと問題を先送りした。



 パーティーは索敵二人の構成に変更し、今回も魔物を確認したら撤退する方針だ。

 14層は『黄金の翼』にとっても、今までの攻略した最下層になる。

 ギガントサイクロプス以上に強力な敵とは何がいるのやら。


 探索を始めて約2時間経過したころ、ディアルフの索敵に反応があったようだ。

 この時、俺も同時に反応できていた。

 俺の索敵も熟練してきたようだな。


 喜んでる場合じゃないな。

 これは…・・1匹だけなのか……おいおい、でかいぞこいつ。


 「リーダーでかいのが1匹、大きさは……20いや25メートルぐらいか」


 「全員撤退準備!敵の姿を確認したら転移だ!」


 「「「了解!」」」


 全員が身構える中、そいつはゆっくりと地響きをたてながら現れた。

 威風堂々、こちらをさして気にした様子もなく、まるで散歩でもしているかのようだ。

 体は緑に近い色だ。


 いつかは出会うことになると覚悟していたが、こんなところで出会ったしまったか。

 魔物の中で最も危険とされる……ドラゴンだ。


 「転移だ!」


 「了解じゃ」


 転移で地上に戻ってきた。

 ドラゴンは体が緑色をしていたことから、グリーンドラゴンと想定される。

 グリーンドラゴンは、風の強烈なブレスを使うはずだ。

 まともに攻撃されたら、盾などで受けるのも無理だろう。

 風魔法の上級を使ったとしても、一人だけの威力では押し負けてしまう。


 「ドラゴンか……ついに現れたな」


 「マックリン、お主戦ったことはあるのかの?」


 「いや、レッサードラゴンという、下位種なら戦ったことはあるが、グリーンドラゴンは初めてだ」


 「わしも見たのは初めてじゃ。あれの威圧感は凄いのう」


 「ああ、正直震えが来たぜ」


 「倒す策はあるのかの?」


 「そうだな……転移とあの収納があれば……多少楽になるかもしれんな」


 「また彼女を呼ぶつもりかのう?いつも手が空いとるとは限らんぞ。お主の技で何とかならんのか?」


 「敵がでかすぎる。サイクロプスのように腹に攻撃しても致命打にならないだろう。あの技は一撃で決めないと隙ができちまうんだ」


 「まあ、近づくのも大変そうじゃしの」


 「その通りだ。ブレスを魔法で相殺したとしてもドラゴンの爪と尻尾は止まらねえ。小手先の対策では押し負けるだけだ」


 「転移と収納を使うのは、どういう作戦かの?」


 「ドラゴンを押し返せる武器を運びたい。攻城兵器を2機使えば、ドラゴンでもただでは済まないはずだ」


 攻城兵器とはね。

 ミリアンの収納なら運べそうだが、他に手段はないのだろうか。


 「う~む、それはどうかのう。マックリン他に奥の手を隠しておるじゃろう。この際じゃ、わしに教えなさい」


 「……図々しいなお前。……奥の手といっても実践で使えねえんだ。威力は前に見せた技より上だが準備に溜めがいるし、溜めている間は動き回れないんだ。準備できたとしても、ドラゴンの頭にでもぶち込まなきゃ仕留められない」


 「ふむ……なるほどのう」


 それで攻城兵器なんて使おうと考えたのか。

 要するにドラゴンに強烈な技を叩き込む隙を作るため、別の攻撃に頼りたいわけだな。

 ドラゴンの足にでも攻城兵器の攻撃が当たれば、機動力も落ちるし首が下がるチャンスがあるかもしれない。

 しかし……。


 「攻城兵器の作戦は反対じゃの。反対する理由が二つあるのじゃ」


 「……言ってくれ」


 「攻城兵器はどこにあるのかの?借りるつもりか?」


 「ああ、騎士団に申請して借りるつもりだ」


 「ふむ、クランで攻城兵器の扱いに慣れておる者はいるのかの?」


 「いや……練習するか、騎士団に協力してもらうか……」


 「そこじゃよ。攻略パーティーが使えん武器を、騎士団に任せられるかの?ましてドラゴンの前で訓練したてのものが恐怖に耐えて使えるかどうかもわからん。連携も何もあったもんじゃないぞい」


 「う……」


 「二つ目は運搬じゃ。攻城兵器はドラゴンのいる空間まで収納で運ばんとならん。彼女は冒険者ではないのじゃぞ。安全な討伐後の運搬ならともかく、そんな役割を頼むことはできんぞい」


 「くっ、その通りだな。すまん、別の手を考える」


 「そこでじゃ、マックリンの奥の手をドラゴンに当てれば倒せるのじゃな?」


 「あ、ああ。頭に当てれば、例えドラゴンでも倒せる自信はある。いい考えがあるのか?」


 「ほっほっ、わしの戦術はな――」



 十分に休養をとった翌日、俺たちはドラゴン討伐に向かう。


 前衛にマックリン(剣、格闘)、ディアルフ(索敵)。

 中衛にリオノーラ(火風魔法)、俺(短剣、転移)、。

 後衛にアメリンナ(風土魔法)、シンディ(水土魔法)。

 ドラゴン攻略は6人構成で挑む。


 人数を減らしたのは、攻略の役割がこの6人で十分揃い、戦術が失敗した際に撤退しやすくするためだ。

 盾使いではドラゴンの攻撃を受け切ることは困難なのでお留守番だ。


 マックリンの一撃が失敗に終われば、即時撤退する。


 準備したのは、俺の転移陣4枚。

 1枚はリオノーラに預けており、残り3枚は攻撃用に使う。

 恐らく攻撃用は1枚で足りると思うが、2枚は予備だ。


 ディアルフに先行してもらい、ドラゴンを少しでも早く索敵してもらう。

 危険だがディアルフなら十分索敵後に戻ってこられるだろう。


 ドラゴンを迎え撃つ場所は、先日も遭遇した開けた空間のところだ。

 しばらく待機していると、先行したディアルフが戻ってきた。


 「やっこさんきたぜ!」


 「戦闘準備!アメリンナとシンディはブレス対策の魔法を展開!チェスリーは転移陣の準備だ!」


 グリーンドラゴンは前回と同じように悠然とやってくる。

 その余裕が命取りだとも知らずに。


 とはいえ、こちらも余裕があるわけではない。

 接近を許せば、ドラゴンに蹂躙されてしまう。


 俺とマックリンは、腰のあたりでお互いが離れないようロープでしっかり固定した。

 マックリンが前で俺が後ろだ。

 ドラゴンを前にふざけた真似をしているようにしか見えないが、これが今回の戦術の要だ。


 マックリンには奥の手の溜めを早速始めてもらい、いつでも技が放てる状態を作る。

 上半身と両腕に黄金の魔力を集中し、さらに魔力を圧縮するように溜めて、黄金の輝きが増していく。


 俺は転移陣を書いた紙にダークカバーの魔法をかけ、粘着性を持たせておく。



 ドラゴンは前回と同じパターンで攻撃してきた。

 ブレス攻撃が放たれる。

 やはりこちらを舐めきっているようで、何の工夫もなくきたな。


 アメリンナは風と土の混合魔法、シンディは水と土の混合魔法をそれぞれ展開し、ブレスに直接ぶつけて相殺していく。

 ドラゴンはブレス攻撃のあと、短い時間だが硬直する。


 ここでリオノーラの出番だ。

 ダークカバーで粘着性をもたせた転移陣を、リオノーラが風魔法でドラゴンの頭の上まで運ぶ。

 リオノーラの魔力制御の正確さなら、この距離でも十分狙えることは確認済みだ。

 偵察でドラゴンの高さが判明していることもあり、昨日は居残りで転移陣を飛ばす練習してもらった。


 練習の成果はバッチリだ。

 見事にドラゴンの頭の上に転移陣が運ばれ、ダークカバーの粘着で頭の上に引っ付いた。


 いよいよマックリンと俺の出番だ。

 ドラゴンの頭の上に転移する。

 その直後、マックリンが溜めに溜めた黄金の魔力を、背筋と両腕で突き出すように放出し、ドラゴンの頭に黄金の光が炸裂する。

 マックリンが技を繰り出した直後、俺はリオノーラが持つ転移陣をイメージし、再び転移して元の場所に戻る。


 ―――ドッドッドッドゴオオオオオオォォォンンン


 どこか遠くで爆発があったような、鈍く重い爆発音が連続でドラゴンの頭から響いてきた。

 ドラゴンが崩れ落ち、盛大な地響きを残して倒れ……そのまま動かなくなった。


 「よっしゃああああ!」


 「「「きゃー!やったー!」」」


 マックリンと女性陣が喜びの声を上げる。


 戦闘は5分もかかっていないだろう。

 だがこの一撃で仕留められなければ、撤退以外ない戦術だった。

 6人それぞれが、高い技量で役割をこなしてくれたからこその勝利だ。


 「チェスリーの戦術のおかげで勝てたぜ。ありがとうな」


 「全員の力量があったからこその勝利じゃ。敵もこちらを舐めておったし、油断がなければ、撤退するしかなかったかもしれんからの」


 「俺の奥義をドラゴンにぶっ放せる時が来るとは思わなかったぜ。威力だけはあるが、戦いに使えなかったからな」


 「ほっほっ、その威力あってこその戦術じゃよ。その技がなければ、長期戦で削る辛い戦いになっておったじゃろう」


 「あ~、それで申し訳ないんだが、もう一仕事頼めるか」


 「ほ?……ひょっとしてこれを運べというのかの?」


 「無理かな?これだけ綺麗なドラゴン素材は、恐らく存在しない。いくらでも金がとれそうだぜ」


 「ん~、わかったぞい。収納使いを呼んでくるから、ここで待機しておるか?」


 「頼む。リオノーラの転移陣に向けて帰ってきてもらえばいいぜ」


 「了解じゃ」


 転移で『百錬自得』のクランへ戻る。


 「ミリアン~~、おるかの~~?」


 ぱたぱたとミリアンが走ってきて出迎えてくれた。


 「チェスリーさん、どうしました?今日はドラゴンとの対決ではなかったでしょうか」


 「おう、倒したのじゃ。そこで運搬を頼みたくての」


 「え?でも……まだご飯食べて出かけてから、それほど時間が経っていませんよね」


 「戦術が上手くはまっての。あっという間に倒せたのじゃ。ところで25メートルぐらいの巨体でも運べるかの?」


 「……やっぱりチェスリーさんは凄いのですね。運搬は……そんなに大きいのは試した事ありませんね。倉庫2つ丸ごと分の荷物なら運んだことがありますけど」


 「お、おう。何か余裕で出来そうな気がしてきたぞい」


 「では準備してきますね」


 ぱたぱたと変装をしに戻っていった。

 便利だからつい頼んでしまっているが、あまりいい傾向じゃないなあ。

 巨大な素材を運搬する度にミリアンを呼んでるようでは、俺がクランを抜けられない理由が増えてしまうだけだし、ミリアンにも負担がかかる。

 マックリンは作戦にミリアンを駆り出そうとしたぐらいだしな。


 今のダンジョン攻略が終わったら、クランメンバーと相談しよう。


次回は「冒険者引退指令」でお会いしましょう。


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