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第53話 マックリンの奥の手

 大規模ダンジョン13層の攻略を再開する。

 サイクロプス用に編成したパーティーの実力を見せてもらおう。


 ディアルフの索敵に反応があり、サイクロプスを迎え撃つ準備を整える。


 ライアリーとゲイブラムが前面に立ち、盾を構える。

 アメリンナとシンディは、土魔法で防御壁を構築していく。

 これでサイクロプスの進路は、防御壁を壊さない限り、パーティーの真正面しかなくなった。


 二つ構えた盾の中央後方に、マックリンが低い姿勢で構えている。


 ――ドスッドスッドスッ


 土の防御壁にサイクロプスが攻撃しているようだ。

 重い音が響くが、アメリンナとシンディは土魔法で防御壁を再強化する。


 正面にサイクロプスが現れた瞬間、マックリンが黄金に輝いた。

 グリフォンを倒した足と腕に黄金の魔力を集中させた一撃だ。

 攻撃をくらったサイクロプスは後方へ吹っ飛び、少なくとも気絶しているようだ。

 攻撃後、マックリンは素早く盾の後方へ下がる。


 それから3体ほど正面に来たので、同じように葬りさったのだが、サイクロプスも学習してきたようだ。

 正面にくるのを避け、やたら防御壁を殴ってきた。


 「アメリンナ、シンディ!左の防御壁を放棄!中央に張り直せ!」


 マックリンの指示に合わせ、アメリンナとシンディが防御壁を中央へ張り直す。

 防御壁が破壊される前に、ライアリーとゲイブラムが左側へ移動して盾を構える。

 その後方にマックリンが移動し攻撃準備を整える。


 左に寄っていた5体が突然崩れた防御壁に驚いている隙に、マックリンが攻撃を仕掛ける。

 両腕が黄金に輝き、一撃必殺でサイクロプスを倒していく。

 これで8体撃破。


 最後の2体は土魔法で囲み、マックリンが飛び込んで鮮やかに殲滅した。


 おう……俺の出番全くなしだったわ。



 「索敵にかかったぜ!ギガントがきやがる!」


 「全員集まれ、先ずは凌ぐぞ!アメリンナはトルネード展開!」


 ディアルフの警告に、マックリンの指示が飛ぶ。

 全員が集まったところへ、大きな岩が飛んできた。

 アメリンナのトルネードで威力を弱め、ライアリーとゲイブラムの盾で受け止める。


 ――ドッガアアアアアアア


 何とか岩を受け止めたようだが、ゲイブラムが衝撃で飛ばされる。

 カリスリンが素早く治療の魔法でゲイブラムを癒す。


 このギガントサイクロプスってやつ滅茶苦茶好戦的だな。

 一気に突進して拳を繰り出してくる。

 拳が風を切る音から、一発でも当たると致命傷の威力がありそうだ。


 シンディが水と土の混合魔法、ウォータークラッシュをぶつけるが全く効いていない。

 いや、これは牽制目的なのか?

 俺は槍を投擲して、でかい一つ目を狙ってみた。


 ――カコォォオオン


 え?槍がはじき返されてしまった。


 「そいつの目は一番硬いんだ!狙っても無駄だぞ!」


 えー、先に言ってよ。

 俺は収納から、予備の剣を取り出し構える。


 アメリンナとシンディが土の防御壁を展開するが、ギガントには通用しないようだ。

 拳2発であっという間に潰されてしまう。

 うわわ、これヤバいんじゃね。


 しかし、他のメンバーは落ち着いて防御に専念している。

 ディアルフは嫌がらせの様に短剣を投げて、気を逸らせているようだ。


 ――ドシュウウ


 やばい!

 防御の隙をついて、ギガントの拳が風切り音を伴い、アメリンナに攻撃してきた!


 俺は灰黒色の魔力を作り、透明の魔力に混ぜて放出する。


 ――ドゴオオオオオン


 音は派手だが、アメリンナの少し手前で拳は止まっている。

 これは【建城鉄壁】で覚えた魔力制御に、転移の放出を合わせた絶対防御の魔法だ。

 半径2メートルの任意の場所にしか展開できないのだが……ちゃんと攻撃に当てればいいのだ。


 ギガントめ、思わぬところで拳が止められて怯んだな。

 その隙を見逃すマックリンではない。


 足から腕にかけて黄金の魔力が繋がっている。

 足の踏み込み、体の捻り、拳の突き出し、そして一本に繋がった黄金の魔力。

 全ての力を合わせて、ギガントに突っ込み拳を当てる。


 拳から突き出された魔力が、ギガントサイクロプスに吸い込まれていくように見えた。

 一瞬、音と動きが止まった。


 ――ドボォォォオオオオンン


 ギガントの内部からくぐもった破壊音が響き、ゆっくり倒れていく。


 俺の動作は一瞬どころではなく、止まったままだった。

 マックリンの本気の凄まじさに、呼吸も忘れるほど魅入っていた。


 「チェスリー、助かったぜ……って止まってる!?」


 「チェスリーさん、危ないところを……あれ?どうしましたの?」


 マックリンとアメリンナに声をかけられて、やっと正気に戻った。


 「あ、ああ……。驚いてしもうての」


 「はっはっ、リーダーのあれ初見にはきついわ」


 「リーダー意地悪して教えてない……。チェスリーにも……先に教えてあげれば……いいのに」


 ディアルフとシンディは既にあの技を知っていたのか。

 マックリンと一緒に大規模ダンジョンを踏破してるメンバーだから当然か。


 「そういうなよ。冒険者なら秘密の一つや二つあるだろ。奥の手は隠しておくものだ」


 「ほ、他にもあるのかの!?」


 「うおっ、おお…・・ま、まあ次の層で見せることになるかもしれないな」


 「そうかそうか、楽しみじゃのう」


 「……お前変わってるな。それにチェスリーの技も凄かったじゃないか。ギガントの攻撃を防御なんて、なかなかできることじゃないぞ」


 「ほっほっほっ、わしも奥の手は隠しておるでの」


 マックリンとたわいない会話をしながらも、内心は全く落ち着かない。

 今までのスキルは魔力制御を模倣し、熟練させることで修得することができた。

 だが、マックリンのレアスキルは、そのやり方では無理なことに気付いたからだ。


 黄金の魔力色を作るのはできるだろう。

 しかし、ギガントサイクロプスに放ったあの一撃は、魔力制御だけで行ったものではない。

 魔力に体術を合わせて、魔力制御を組み合わせていたのだ。

 体術だけでも難しいのに魔力を連動させるなど、神業のように思える。


 これ……本当に修得できるか自信ない……。


 いや、長年初級止まりだった剣術を上級まで極めることができたのだ。

 俺の武術だって捨てたものじゃないはず。

 【百錬自得】の可能性が【一騎当千】に負けているとは思えない。

 必ず修得してみせる……たぶん。


 

 ギガントサイクロプスを倒した後、14層へ下る通路はすぐに発見された。

 まだ時間の余裕はあったが、魔物の素材をどうするかが問題になった。

 サイクロプスも皮が貴重だし、ギガントサイクロプスは全身使える素材ばかりだ。

 マックリンの討伐方法は、素材を傷めず最高の状態である。

 マックリンの技は、特に外皮の防御が高い敵に有効らしく、内部は破壊するが表面はそのままなのだ。


 「14層の偵察もしたいが、サイクロプスの素材をどうするかな」


 「前に依頼した大容量の収納持ちをギルドに派遣してもらおうかしら」


 「どうかな、すぐに派遣してもらえるかわからないぞ」


 マックリンとアメリンナが素材運搬について話している。

 大きい収納持ち……心当たりあるんだよなあ。

 ちょっと聞いてみるか。


 【以心伝心】で、マーガレットに連絡することにした。


 {こっちにつないでくれ}


 俺からは10文字までしか一度に送れないので、マーガレットに繋ぎ直してもらう。

 こうすると、10文字制限がとれるので、スムーズに会話ができる。


 {チェスリーさん、何かご用事ですか?}


 {突然すまない。今ミリアンはどうしてるかな?}


 {ミリアンさんなら、ここにいますわよ。何か伝えることがありますか?}


 {ああ、もし空いてるなら素材の運搬を手伝ってもらおうと思って。あくまで臨時ということで紹介するからさ}


 {ミリアンさんをそのまま紹介するのは、まずいと思いますわよ}


 {例の仮面で変装させればどうかな。身元は秘密にすると伝えてくれ}


 {ヴェロニアさんとミリアンさんに相談してみますわ。少しお待ちくださいませ}


 …………。


 {チェスリーさん、了解とれましたわ。変装させておきますので、出迎えお願いしますわ}


 {ありがとう。こちらもマックリンに話してみるよ}


 これなら余計な時間や手間がかからず済むだろう。


 「マックリンさん、わしの知り合いに収納使いがおるんじゃが、連れてこようかの?」


 「おお、そんな知り合いもいたのか。お礼は弾むのでよろしく頼む」


 「いいぞい。但し、あくまで臨時で身元は秘密じゃぞ」


 「それで構わない。大きい収納持ちは商会に囲われてる場合が多いからな。心得てる」


 「それじゃ転移してくるぞい。直ぐに戻ってくるからの」


 そう言い残して『百錬自得』のクラン拠点へ転移する。


 「帰ってきたぞ~い。ミリアンの準備はどうかの?」


 「チェスリー様、おかえりなさいませ。ミリアンさんはご支度中です。お茶をお持ちしますので、少々お待ちください」


 「あ、ケイトさん。すぐに戻るからそんなに気を使わんでもいいのじゃよ」


 「いえいえ、本当は湯あみしてお寛ぎいただきたいぐらいです。お茶だけでもどうぞ」


 「は、はい」


 ケイトさんに癒されながら、ミリアンを待つ。

 あ~やっぱりここは落ち着くな。

 お、ミリアンがきたかな。


 「ぶっ!!」


 思わずお茶を吹き出しそうになってしまった。

 ミリアンが老齢化した姿で現れたのだ。


 「な、なんでミリアンが変化の腕輪を使ってるのじゃ!?」


 「あ、あの……変装ならここまでしたほうがいいと言われまして」


 それにしても……これはこれでありだな。

 年齢を重ねて若さは感じなくなるものの、十分綺麗だ。

 普段のミリアンを見ていると、納得する年の取り方だな。


 「あ、あまり見ないでくださいね。幻覚とはいえ恥ずかしいです……」


 「いやいや、十分に素敵だと思うぞい。『黄金の翼』には見せとうないから、仮面はつけたほうがよいの」


 「は、はい!」


 ミリアンを連れてダンジョンに戻り、サイクロプスを収納して回る。

 さすがの『黄金の翼』のメンバーも、次々にサイクロプスが収納される様子に目を丸くしていた。

 ギガントサイクロプスがあっという間に消えたときは、思わず歓声があがったほどだ。


 上級クランの面々を圧倒するミリアンを誇らしく思い、頼りになる仲間に改めて感謝した。


次回は「ドラゴン討伐戦」でお会いしましょう。


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