表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

50/137

第50話 上級クランのスキル調査

 ダンジョン攻略は順調に進み、現在10層を踏破、11層に下る通路まで到達した。

 7層から11層に到達するまでに、10日程しかかかっていない。

 通常であれば、拠点の確保や兵站の輸送、攻略メンバー交代などで、約50~60日はかかるのだが、転移はその全てを短縮できる。


 『黄金の翼』の実力は確かで、今のところ大きな危険もなかった。

 かつて『暁の刃』を苦しめたハイオークの集団は8層で登場したが、ディアルフの索敵能力が高く、常に先制攻撃をしかけ、マックリンやバーナルドによりあっさり殲滅されていった。


 リオノーラの火と風の混合魔法も、俺の予想を遥かに上回っていた。

 敵の強さを見極めたうえで魔力制御を行い、周りに被害を与えることなく敵を殲滅した時は本当に驚いた。

 混合魔法はダンジョン内では使いにくいという、認識を改めることになった。


 魔力視の眼鏡で視たところ、魔法を発動するために集中した魔力に、さらに制御を重ねて威力を調整しているようだ。

 俺も練習してみたがなかなか難しく、反復して熟練させる必要がありそうだ。


 アメリンナは風魔法が得意だが、土との混合魔法が得意のようだ。

 アメリンナは攻撃よりも防御に魔法を使い、風に土を混合させた竜巻を作り出し、遠距離からの攻撃を無効化していた。


 俺は書物等で魔法の情報も集めていたが、独自に工夫した魔法は秘匿されている場合も多く、優秀な使い方を直接見られる機会がなかった。

 百聞は一見に如かずとはこのことだろう。



 今から11層の探索が始まる。

 このダンジョンは全15層と想定されている。

 層の深さは、各層の広さで判別する方法が知られている。

 深い層ほど横の広がりが狭くなるという特徴があり、ダンジョン核のある層が最も狭い。

 層毎の狭まり度合いで大よその層の深さが予想できるのだ。


 そしてダンジョン核に近い層ほど、強力な魔物が出現するようになる。

 魔物により特徴は異なるが、何れも突出した力を持っている。


 10層まではそれほど強力な個体は現れなかった。

 集団で現れる魔物はやっかいだが、広範囲魔法を上手く使えるなら、返って殲滅しやすい場合もある。


 マックリンの経験から、そろそろ強力な魔物が現れそうな感じがするらしい。


 探索メンバーは、前衛にマックリン(剣、格闘)、ディアルフ(索敵)、ライアリー(盾)。

 中衛にバーナルド(槍)、クラレッド(槍)、俺(剣、転移)。

 後衛にリオノーラ(火風魔法)、アメリンナ(風土魔法)、シンディ(水土魔法)。

 9人の構成だ。


 11層の探索を始めて5時間経過、ディアルフの索敵に反応があったようだ。


 「こいつは……きましたよ~。でかいのが3匹、しかも速い!」


 「全員警戒!アメリンナは防御展開!」


 マックリンの号令で、アメリンナは風と土の混合魔法、サンドトルネードを展開する。


 その直後、猛スピードで火を噴きながら迫る3匹の魔物が現れた。

 魔物の名はケルベロス。

 犬型の魔物で、体長は5メートルほどある。

 俊敏な動きで、口から吐く火炎と、強靭な爪で攻撃してくる。


 1匹でも強いのに3匹も出てくるのか……。


 サンドトルネードとケルベロスの火炎が激突し打ち消し合う。

 ケルベロスは散開しながら、3方から攻めてくる。

 右側はマックリンが向かった。

 正面はライアリーが盾で迎え撃つ。

 左側はクラレッドと俺が向かう。


 マックリンはケルベロスの攻撃に怯むことなく、順調に手傷を負わせていく。

 ライアリーもケルベロスの攻撃にしっかり受け止め、バーナルドが後ろから槍を突き付ける。


 俺の方はクラレッドと二人がかりでケルベロスにあたる。

 ケルベロスは左右にステップして揺さぶりをかけてくるが、俺もクラレッドも十分対処できる速度だ。

 火炎もまっすぐ撃ってくるだけなので、十分避けることができる。

 しかし決定打がなかなか与えられない。


 俺はケルベロスのステップに合わせ、ファイヤーウォールを縦に展開した。

 リオノーラの魔力制御を覚えたおかげで、以前より広範囲に展開できるようになった。


 動きが阻害されたケルベロスが一瞬躊躇したところに、クラレッドが溜を作り、回転を加えた一撃を叩き込んだ。

 これで1匹撃破だ。


 マックリンは既にケルベロスの頭を切り落としていた。

 ライアリーが抑えていたケルベロスも、リオノーラの風魔法で止めを刺されていた。


 「やはり出てきたな。ここからはちょっと厳しくなりそうだ」


 「まだまだ余裕だろ。索敵がしっかりできていれば十分対処できる」


 「へっ、俺の索敵におまかせよん」


 俺も索敵はこっそりやっている。

 ディアルフの索敵は相当優秀なようで、俺の方が一歩遅れる。

 ディアルフの索敵を魔力視で視ると、膜の様に魔力が伸びていくのは同じだが、表面が波うっているのがわかった。

 その魔力制御を真似してみると、索敵範囲が広がり魔物の大きさもわかるようになった。


 索敵ってほんと大事だよな。

 ここまで被害が少なく探索できているのは、ディアルフの索敵のよるところが大きい。

 もちろん敵を殲滅できる個々の技量も必要だが、索敵が早ければ不意を打たれることもない。

 不意を打たれると、武術に優れたものでも案外脆いところがあるのだ。


 この後、ケルベロスが10匹まとめて現れたりしたが、索敵で先制しシンディの水と土の混合魔法、ウォータークラッシュで数を減らし、残りを前衛が始末した。


 順調に攻略は進み、12層へ下る通路を発見した。



 今日の探索はここまで。

 新たに転移陣を埋め込み、地上のクラン拠点へ転移する。

 明日は4日に1回のお休みだ。

 結局言い訳に使えるいい病気は、ジュリーナさんに聞いても心当たりがないとのことで、素直に3日働いたら1日休みたいと言ってみたら、あっさり認められた。

 みんなも休みたかったんじゃないかな。


 いつもなら休みの前の日はすぐに帰るのだが、宴会に誘われて断れなかった。

 せっかくなので、ご相伴に預かろう。


 「12層到達お疲れさん!今後の成功を祈願して乾杯!」


 「「「「乾杯!!」」」」


 参加人数30名。

 攻略メンバー以外に、武器や消耗品の管理をしている裏方さん達もいる。

 これでもクランメンバーの半数に満たないのだから、大所帯だよな。


 酒場を借り切っているようで、俺は4席あるテーブルに座った。

 すると、リオノーラ、シンディ、アメリンナと、攻略パーティーの女性陣が同じテーブルに集まってきた。


 「おやおや、こんなくたびれたわしのところより、他にいい席があるじゃろ」


 「いつもす~ぐ帰っちゃうからね。たまには私たちとじっくり話なさいよ」


 リオノーラは火と風の混合魔法の制御が素晴らしいことを褒めたら、一気に馴れ馴れしくなった。

 普段も魔力制御を教えてもらったり、魔法について話し合ったりしている。


 「あの……私もチェスリーさんのお話……聞きたいなって」


 シンディは水魔法が得意で、土との混合魔法を使いこなす。

 内気な性格のようで、あまり積極的に話しかけてはこないのだが、探索中に料理の話をしたり、魔力制御をちょこっと教えたりしているうちに、仲良くなった。


 「そうよ~、過去を詮索したいわけじゃないけど、気になるじゃない~。謎の転移使いさん」


 アメリンナは風魔法が得意で、攻撃以外にも、風を使った罠探知という特殊な使い方をしている。

 魔力制御で通路に沿った風の塊を作り、それを飛ばすことで、落とし穴や何かに触れると作動するような罠を、先に発動させてしまうのだ。

 この使い方も参考になったので、普段は俺の方から根掘り葉掘り聞きまくっている。


 しょっちゅう臨時パーティーに入っていた経験が生きて、周りに馴染むのは早いほうだと思う。


 「チェスリーさん、休みの日はどうしてるのよ?」


 リオノーラから定番な質問が来てしまったな。

 俺は秘密防御力の低さに定評があるから、迂闊なことは言わないようにしないと。

 間違っても『百錬自得』のメンバーに、ここで覚えた魔力制御を伝授してますなんて、言えないし。


 「訓練じゃの。わしもまだまだ成長できることがわかったからの」


 「真面目ね……。でもさ、いつも楽しそうに帰っていくじゃないの?いい人でもいるんでしょ~?」


 むぅ、否定はできない。

 自分の家に帰れるときは、迷わず『百錬自得』の拠点に帰っているからな。

 ケイトさんの料理も捨てがたいし、『百錬自得』のメンバーとの会話も楽しいしな。


 「ほっほっ、否定はせんの。わしにも好いた女がおるということじゃ」


 「ど、どどど、どんな人ですか!?」


 おおう、シンディらしからぬ大きい声だな。


 「それは内緒じゃ。まあ料理の上手い人とでも言っておこうか」


 その時、突然首の後ろをぐりっと抓られた感触がした。

 後ろを振り向くと……あれ?誰もいない……。


 「え?どうしたのチェスリーさん」


 「い、いや何でもないのじゃ」


 「ねえそれよりさ、その人いくつぐらいなの?綺麗?」


 「そうじゃな。歳はわしより若いぞ。綺麗かどうかは人によるからの。わしから見ればみんなも綺麗じゃよ」


 「まあお上手ね。シンディよかったわね。料理上手がいいらしいわよ」


 「わ、わたしは別に……」


 「ほっほっ、シンディは料理に興味があるのかの。今度いっしょに――」


 再び首の後ろをぐりっとされる感触が!

 後ろを振り向いて……誰もいない……ん?ひょっとして。

 意識を集中して探ってみると……うわ、ミリアン何でここにいるの!?


 「え?チェスリーさんどうしました?今度何でしょうか?」


 「あ、いや。今度探索に行くときに、お弁当でも持っていこうかなと」


 「いいですね。楽しみです!」


 その後もおとなしめに会話は進み、途中ハーレム状態の俺をマックリンがからかいにきたりするなどあったが、宴会は終了した。


 しかし、気配遮断のローブがあるとはいえ、ミリアンが宴会に忍び込んでくるとは。

 何しに来たんだろ……。


次回は「ある日の休日」でお会いしましょう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
読み終わりに↓ををクリック!いただけると嬉しいです。
小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ