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第4話 未発見ダンジョン探索

12/15 わかりにくい表現など一部修正しました

 未発見ダンジョンまで馬車で3日の旅になる。

 移動中にヘスポカの冒険者たちがどの程度信頼できるか、確認しなければならない。


 それとなく今まで行った依頼やスキルを聞き出し、おおよその戦力を知ることはできた。


 ヘスポカの冒険者たちは、リンジャックがリーダーで【剣術】スキルを持っている。

 マルコラスは【槍術】、ニコライドは【光魔法】、アントマスは【火魔法】のスキルを持っている。


 俺のスキルを人に話すときは、【戦術】と伝えるようにしている。


 ヘスポカのパーティーは前衛2後衛2と、護衛依頼を行うには十分な編成だが、ダンジョン攻略には心もとない。

 ここに斧使いのレフレオン、索敵のジェロビンが加わり、ダンジョン探索の役割はある程度揃ったと言えるだろう。

 欲を言えば回復役がほしいが、ポーションで代用できる。

 大怪我だと撤退するしかなく、そのような怪我をその場で治療できる冒険者には滅多にいない。

 俺は武術、魔法どちらもそこそこ使えるので、臨機応変に対応することになるだろう。


 臨時で組んだにしては、なかなかいいパーティーだ。

 移動中の身のこなしや警戒の様子などから、リンジャックらは優秀と思われる。



 ダンジョンの入り口は街道から1時間ほど森の中に押し入ったところにあった。

 場所を知っていたリンジャックでさえ、目印がないと見逃してしまいそうなほど周りは草が生い茂っている。

 こんなに探しにくい入り口を、偶然とはいえよく見つけたものだ。

 草が生い茂っているということは、魔物が溢れて踏みつぶされていない証とも言える。



 俺たちは隊列を組み、早速ダンジョンに入ることにした。

 入り口は1人づつ順番に入るしかないほどの広さだが、少し進んだ先は5人並んでも余裕があるぐらいに開けていた。

 先頭はジェロピン、その後ろにリンジャック、マルコラス、レフレオン、3列目にニコライド、アントマス、殿が俺だ。

 ニコライドが光魔法の光球を使えるので、松明より視界が広いのはありがたい。



 「何かきやすぜ。数は4~5匹みたいでやす」


 ジェロビンが敵を見つけたらしい。

 予告通りコボルドが5匹現れた。


 「リンジャック、てめえらの動きが見たい。いっちょ片づけてきな!」


 レフレオンの言葉にリンジャックは頷き、マルコラスと二人でコボルドに向かう。

 リンジャックが近づこうとするコボルドを剣を細かく振ることで牽制し、隙をついてマルコラスが槍で攻撃する。

 危なげなくコボルドを殲滅した。


 「なかなかやるじゃねえか」


 「コボルドですしね。この程度で手間取ってるようでは、例え未発見ダンジョンでも奥には進めないでしょう?」


 確かにコボルドは弱い魔物だが、5匹同時に魔法の援護もなく抑えるのは、しっかりした技術がないと無理だ。

 マルコラスの槍も的確に急所をついて一撃で倒していた。


 「おう、じゃあさっさと進もうぜ」


 レフレオンが早速進み始めると、ジェロビンが止める。


 「旦那!魔石を剥ぎ取る間ぐらい待ってくだせえ。すぐ終わりやすから」


 「コボルド程度のやっすい魔石なんぞほっとけばいいだろうが」


 「小さくても集めればバカにならいんでやすよ。これでおまんま食ってきたんでやすから」


 しゃべりつつあっという間にコボルドの胸から魔石を剥ぎ取り、皮袋にしまっていく。


 「はい終わりでやす」


 「よしいくぞ」


 レフレオンの号令で探索を再開する。


 事前の打ち合わせで、敵を見つけた場合、最初の指示はレフレオンに任せることにした。

 相手が複数地点に現れた場合は、リンジャックが後衛の魔法使いに指示する。

 俺はマッピングをすることと、状況を見て遊撃の立ち回りの役割だ。



 その後も探索は順調に進み、数回の戦闘を行うが、敵はコボルドしかでてこない。

 これは未発見ダンジョンの中でも、かなり若いダンジョンの可能性が高まってきた。

 そして探索開始から、1日ほどでついにモンスター部屋を発見した。


 モンスター部屋とは、部屋と呼称しているが、ダンジョン内の広い空間のことで、魔物が集団でいる場所ことを指す。


 「モンスター部屋でやすね。コボルドが......200匹ほどいやす。上位種が混ざっているかもしれやせん」


 「どうする?リンジャック」


 「200匹は多いですね......。火魔法である程度数は減らせるかもしれませんが、囲まれると手がつけられないです」


 「そうだな。コボルドでも数がいやがるとやっかいだ。上位種が混ざってくると数匹同時に相手にするのはキツイぜ。分け前が減るが人手を増やすしかねえかもな」


 レフレオンとリンジャックが話し合うがなかなか作戦が決まらない。

 だが、このパーティーなら効率よく倒せる方法がある。


 「作戦があります、俺の話を聞いてもらえますか?」


 「おう、チェスリー。ここらでお前さんお得意の【戦術】の出番か?」


 俺は軽く頷き、説明を続ける。


 「アントマスさん、ファイヤーウォールは使えますよね。そのファイヤーウォールを平面に広く伸ばすことはできますか?」


 「え……ファイヤーウォールは使えますが、そういう使い方はしたことがないです……」


 「割と簡単にできるんですよ。コツは高さを思いっきり押さえて横と前に押し出すイメージで魔力を制御することです。ほら、俺が炒め物作るときに使ってたでしょ」


 ファイヤーウォールは術者の前面に炎の壁を作り出す魔法だ。

 敵の進路を妨害するのに使うことが多い。

 俺が提案した平面に伸ばす使い方は、ファイヤーフロアーと呼んでいるが、火を地面に薄く広く延ばし、足元を広範囲に熱する魔法だ。

 例え魔法が消えてもしばらく地面が熱いままなので、裸足の敵に有効に使えるのだ。


 「あれってファイヤーボールを鉄板に押し付けてたわけではないのですね……。練習させてください」


 モンスター部屋から一旦離れ、アントニオに魔法の練習をさせる。

 アントニオの手や肩に触れながら、魔力を流して制御を覚えさせる。

 数回の練習で、火を薄く平面に伸ばすことに成功する。

 アントニオの魔力なら、1回の発動で10メートル四方程度を熱することができるようだ。


 大した才能を持っているな。

 ちなみに簡単といったのは嘘だ。

 俺も火魔法は使えるようになったが、全く威力がなく戦闘にはあまり使えない。

 意地になって魔力の流れをやたら弄りまわして練習しているうちに、偶然使えるようになった。

 【火魔法】スキルを持ち、普段から魔法を使い慣れているアントニオだからこそ、この短時間で制御できるようになったのだろう。


 「ありがとうございます。火魔法の威力を高めることは普段訓練していますが、こういう使い方は知りませんでした」


 「いや俺も偶然できただけでね……。それに2メートル四方程度しか展開できないんだ。さてと、後は戦う直前に一工夫すれば戦術は完成だ」


 モンスター部屋の手前まで戻り、俺は全員の靴に氷を纏わせる。

 俺の水魔法は火魔法と同じく威力が低く、直接攻撃しても意味がない。

 ただ小規模の範囲で工夫するのは、いろいろできるようになった。


 「冷てえなあ。それにこれ裏に棘みたいのがいっぱいついてんな」


 「単に氷だけだと滑ってしまうから、棘が滑り止めになるんだ。わざと棘を作らず敵を滑らせるという使い方もあるぞ。足場の細いところで使うと、簡単に下へ落とせるんだ」


 「てめえ……案外えげつねえことするな……。俺には絶対そんなことするなよ」


 「味方にそんなことしないよ。火の上だと短時間しかもたないから、滑りやすくなったら戻ってきてくれ。魔法をかけなおすから」



 全員の下準備が終わり、モンスター部屋へと突入した。

 アントマスがファイヤーフロアーで広範囲にコボルドの足元を焼くと、敵はまともに動けず満足な反撃もできない。

 こうなると上位種も下位種も変わらない。

 満足に動けない敵を、氷付き靴を履いた前衛が攻撃し、止めをさしていく。


 こちらに近づくことができず、遠距離から投石してくるコボルドがいるようだ。

 その対策も考えており、ニコライドが光魔法の光線で、遠距離のコボルドの目を狙う。

 攻撃力はないが、目暗ましには十分だ。

 光線を目にうけたコボルドは、しばらく何も見えないだろう。

 ジェロビンが弓矢で遠距離を攻撃し、目が見えないコボルドは回避もできず、仕留められていく。


 そんな中、俺はひたすら仲間の靴に氷を纏わせていた。


 戦闘は間もなく、実に危なげなく終わった。



 「この人数で大した怪我もなく短時間で殲滅できるなんて……」


 「おう、チェスリーがいると楽させてもらえるぜ」


 「戦術の役割が揃い、敵が条件に合っていたからね。相手が空を飛べたり、遠距離からの攻撃が得意な敵だと、この戦術は通用しないんだ」


 殲滅したコボルドの死体を片付けながら、全員で辺りを調べることにした。



 「こっちに何かあるでやす!」


 ジェロビンが見つけたのは、ぽっかり空いた下に抜ける穴だった。


 「底が見えないですね。飛び降りてみますか?」


 「まだダンジョン核が見つかってねえ。行ってみるしかねえだろ」


 「ちょっと待ってくれ・深さもわからないし、底に何があるるかもわからないんだぞ」


 ここまで順調に来過ぎたので、慎重さが欠けてきているのだろうか。

 大胆すぎるマルコラスとレフレオンを窘める。



 「ニコライドさん、光球を穴にゆっくり降ろすことできますか?」


 「え?光球から手を離すと消えてしまいますよね」


 光魔法は火や水などの属性と異なり、常に魔力を流し続けないと拡散して消えてしまう性質をもっている。

 利点としては、手元で発動しても、熱など味方を害するものはなく、魔力消費も少ない。


 「手から離れるとそうなりますね。でも光線の魔法と組み合わせることで、消えないように制御できるんですよ」


 光線は遠くを照らすために、手から光を細く長く伸ばす魔法だ。

 先ず光球を作り、それに光線を繋げるようなイメージで伸ばしていくと、光球を離れた位置に運ぶことができる。

 火球を放つほうが手っ取り早いのだが、もし底に引火性のものがあったら危ないし、お宝を傷つける恐れがある。

 ニコライドに魔力を流しつつ練習してもらうと、すぐにできるようになった。


 光球はゆっくりと穴の周りを照らしながら底へ向かう。


 「飛び降りなくてよかった……」


 「おお……」


 マルコラス、レフレオンは冷や汗をかいている。

 まあ、本当に飛び降りたりはしなかっただろうけど、既に5メートルを超え、まだ底が見えない。

 約10メートルのところでようやく底が見えた。

 中心に光がキラリと反射する丸い物がある。


 ダンジョン核だ!


 俺たちは一斉に歓喜の雄たけびを上げた。


次回は「未発見ダンジョンからの帰還」でお会いしましょう。

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