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第3話 とあるパーティーとの出会い

 俺が冒険者を始めて10年の時が過ぎていた。

 裕福とまではいかないが、食い扶持ぐらいはまともに稼げるようになった。



 俺は冒険者として登録するときに、レアスキルを与えられていることを伝えた。

 レアスキルのことは、すぐに冒険者ギルドのギルドマスターに知られることになり、スキルを使いこなす協力をしてもらえることになった。


 ギルドマスターも【百錬自得】の意味から、どのようなスキルでも、訓練すれば修得できるのではないか、と考えていたようだ。

 冒険者ギルドとしても、優秀な冒険者が育つことは利益になる。

 おかげで、いろいろな武術、いろいろな魔法を学ぶ機会に恵まれた。


 しかし、訓練を繰り返しても人並みの成果しかあげることができなかった。

 剣がそこそこ使え、魔法もそこそこ使える、いわゆる器用貧乏な冒険者にしかなれなかったのだ。


 冒険者になったことは間違いではなかったと思う。

 冒険者の仕事は魔物との戦いを避けることはできず、常に命の危険が伴う。

 まともに戦えば命落とすことになる魔物は、あらゆる場所に存在するのだ。

 しかし、下調べを十分に行い、時には罠を使い、時には弱点を突くなど、慎重に行動すれば問題なく対処できる。

 スキルを試行錯誤するため、幅広く情報収集や反復修行をしていたことが役に立っている。

 使えるスキルが多いと、魔物に対処する戦術が立てやすい。

 いかに探索場所や魔物に合わせて、効率的な戦術をとるか。

 戦術を考えるのが面白く感じるようになり、冒険者の仕事にやりがいを感じていた。




 そんな冒険者生活に変化が訪れたのは、とあるパーティーとの出会いからだった。



 「あなたがチェスリーさんでしょうか?」


 冒険者ギルドの受付嬢と依頼の相談をしていた時に、後ろから声をかけてきたのは、ショートソードと皮鎧を装備した若い男だった。


 「そうですが、何か?」


 「依頼したい仕事の話があります。お話しする時間をいただけないでしょうか?」


 「いま依頼の相談をしてるところだ。急ぎの依頼でなければ後にしてほしい」


 「いえ、出来るだけ早く出発したいのです。お話しを聞いて判断いただけないでしょうか?」


 依頼を受ける際に、臨時メンバーを募集することは珍しくない。

 俺もできるだけ多く、他人のスキルを学ぶ機会を得るため、臨時メンバーとして様々なパーティーに参加している。

 普段は事前にパーティーの下調べをして、信頼できるかどうかを見極めた上で参加を決める。

 依頼に対して技量不足のパーティーでは、自分の命が危ないからだ。


 いま声をかけてきた男は初対面だ。

 信用できるかどうかは当然わからない。

 しかし、碌な依頼が残っていないので困っていたところだ。

 どんな依頼の話かを聞くぐらい損にはならないだろう。


 「わかった、話を聞かせてくれ」


 男は軽く頷いて、俺をギルドの相談室に案内する。



 相談室には先客が5名いた。

 俺と呼びに来た男を加えて7名が部屋に集まった。


 全員男で、2人は見知った顔だった。

 1人目はレフレオン、斧使いで前衛の火力役として頼もしい男だ。

 2人目はジェロビン、罠解除や索敵が得意なやつだ。

 2人とも癖のある強面をしているが、何度か一緒に依頼を受けたことがあり、技術的にも性格的にも信用できる。



 「わたしはヘスポカの冒険者リンジャックというものです。マクナルには、ヘスポカからの護衛依頼で来ました」


 護衛依頼でマクナルに来たのなら、もう用事は終わっているはずだ。

 帰りの旅で何かあるのだろうか。


 「臨時メンバーを募集した理由は、私たちと共にダンジョンを探索してほしいからです」


 「ダンジョンだと?たった3人追加したぐらいで、どうにもならねえだろうが。この人数だとどのみち低階層しかいけねえし、わざわざ俺たちを誘うこともねえだろ」


 レフレオンが鼻息荒く答える。


 「これから行くダンジョンは、恐らく未発見ダンジョンです。魔物が溢れた形跡もありません」


 「なんだと!?」


 レフレオンが驚くのも無理はない。

 正直俺も驚いた。


 未発見ダンジョンとは、存在が知られていなかったダンジョンのことで、人里離れたところに存在する場合が多い。

 ダンジョンを発見する事は難しく、ダンジョンから魔物が溢れ、周りに被害がでるまで気づかないことがほとんどだ。


 現在、人間の生活圏は魔物により狭められている。

 何をするにも魔物の対策が必須であり、気軽に旅や散策など、武力がない人にできることではない。


 ダンジョンから魔物が溢れるには長い時間が必要だが、なかなか調査ができないため、未発見のまま放置されることが多いのだ。

 時間経過とともに、ダンジョンは広く深くなり、凶悪な魔物が出現するようになる。


 しかし、発生からあまり時間が経過していないダンジョンなら、階層も浅く敵も弱い。

 少人数でも十分攻略できる可能性がある。


 そしてダンジョンには必ずダンジョン核と呼ばれる純度の高い魔石がある。

 手に入れることができれば一攫千金だ。



 リンジャックは説明を続ける。


 「私たちにとっても千載一遇の機会です。護衛中に襲ってきたコボルドを追って、偶然ダンジョンの入り口を見つけたのですが、今からヘスポカに帰って準備すると30日はかかってしまう。ここからなら馬車で3日の距離なので、すぐに探索が始められます」


 確かにヘスポカに帰ってからでは、時間がかかりすぎる。

 可能性は低いかもしれないが、その間に他の人がダンジョンを見つけると、せっかくの機会を失うことになる。

 俺もすぐに探索を始めたいと考えるだろう。


 「みなさんはギルドから紹介していただきました。信頼できる方々と聞いています」


 俺、レフレオン、ジェロビンは、マクナルの冒険者の中でも仕事の達成率が高く、ギルド嬢からの信頼を得られていたようだ。

 信頼できると紹介されたことは素直に嬉しい。


 リンジャックのパーティは護衛依頼の編成であり、ダンジョン探索に必要な技能を持つ冒険者を追加したかったのだろう。


 「あっしはのるでやす」


 「俺もいいぜ」


 ジェロビンとレフレオンは乗り気のようだ。


 俺は……既にやる気になっている。

 下準備の不足や見知らぬ4人に不安はあるが、上手くいけば大金が手に入る。

 もし騙されたとしても、ジェロビンとレフレオンがいれば何とかする自信がある。


 「俺も参加させてもらう」



 話が決まれば即行動だ。

 馬車を2台と御者を手配し、保存食や水、.ポーションなどの消耗品を買い込み、さっそくダンジョンに向かうことになった。


次回は「未発見ダンジョン探索」でお会いしましょう。

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