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第23話 魔道具の歴史が変わる?

 ヴェロニアにより、魔道具の画期的な発見が、今、まさにここで起こったことを知らされた。

 歴史に名が残る……名誉なことだと思う。

 多くの人は、この事実に歓喜することだろう。


 しかし……!

 俺がやりたいことは、せっかく効果がわかった【百錬自得】を使いこなすことだ。

 まあ……今いろいろ寄り道してる感じはあるが、なるべく他の事に時間を費やしたくない。

 魔道具の革命的発見とやらで、魔道具研究に縛られるのは、はっきり言って困る。


 それによく考えれば、全てはヴェロニアの魔力視の頭巾のおかげなのだ。

 ヴェロニアは魔道具師(自称)だし、この発見を生かして、魔道具の研究に打ち込めばいい。

 出資者もさぞ集まる事だろう。


 はははは、ヴェロニア様万歳!


 「あんたさ~。またよからぬ想像してるでしょ」


 「ん?何のことだいヴェロニア様」


 「ほら、もうおかしい。どうせ自分は目立ちたくないから、あたしに押し付けようとか考えてるんでしょ?」


 「い、いやあ。そんなことするわけないじゃないですかー」


 「はあ……。あんた人を騙したり、隠したりすることが致命的に向いてないからね」


 「そうかなあ。【百錬自得】とか秘密にしてたりするじゃないか」


 「……あたしから見ても穴だらけの秘密だけどね」


 「えええ?マジかよ」


 「うん。フォローしてるジェロビンと、それにレフレオンにもちゃんと感謝しなさいよ。あんたほどのお人よしが10年も冒険者続けていられるのも、二人のおかげだからね」


 「う……いやあ、あの二人はかなり信頼できるからさ……」


 「それじゃ話を戻して、最後に属性の色を教えてちょうだい。その後はあたしが研究するから」


 順に属性ごとの魔法を使いながら、魔力色を確認していく。


 各属性は、以下のような色だった。

   火魔法=赤

   水魔法=青

   風魔法=緑

   土魔法=茶

   光魔法=白

   闇魔法=黒

   転移魔法、放出?=透明


 正確には原色ではなく、もっと明るかったり濁ったりしているが、大まかには各属性のイメージ通りの色だ。


 「あんたのおかげで、素材の無駄がかなり減るはずだし、実験の手間も少なくなる。新しい魔力視の魔道具は安く作れると思うわ」


 「ああ、よろしく頼む」





 そして数日後、エドモンダ伯爵様からお呼びがかった。

 新しい治療依頼だろうと思い、エドモンダ伯爵邸へ向かう。


 伯爵邸に到着すると、いつもの執事さんが出迎えてくれて、伯爵様の部屋へ入ると……。

 ジェロビンがそこにいた。


 ……え?何でそこにいるの?



 俺がぼーぜんと立ち尽くしていると、エドモンダ伯爵とジェロビンが大声で笑い始めた。

 いやいや、何で笑ってんの。

 人を見て笑うなんて、すごく失礼ですよ。


 「へっへっへっへっ、あ~笑えるでやす。エドモンダ伯爵様、言ったとおりでやしょ」


 「ごほんっ。ああ、実に愉快だった」


 「えーと……どういうことです?」


 「あっしがここにいることで、大体理解できたと思いやすがね」


 「いや、さっぱりなんだが」


 「さすが旦那だ、期待を裏切らないでやすね。簡単に言えば、エドモンダ伯爵様は協力者だってことでやす」


 「えぇ……」


 「ちょっとしたヒントは出してあげやしたぜ。事あるごとに、『伯爵様は気さくなお人』とか。あとシルビアの姐さんに、あっしの姿を見せたり」


 「あ……え?そういうのでわかるものなの?」


 「へっへっへっ、すんません。旦那にわかるとは微塵も思っていやせんでした」


 「おい!」


 まじかー。

 俺ってそんなに鈍いのか……。


 「まあまあ、落ち着いて話をしやしょう」


 「チェスリーくん、騙したようですまなかった。ジェロビンくんが場が整うまで話さないほうがいいと言うものでね」


 伯爵様……。

 俺一生懸命働いてましたよね……。


 「シルビアくん、入りたまえ」


 ああ……もう驚くことはないと思ってたら、まだあったか。


 「やあ、チェスリーくん。ごきげんなようだね」


 あれ、一応仮面とローブはつけてるのか。

 そうか、作業着みたいなものだよな。


 「……この顔を見て、ご機嫌と思えるなら、全財産ひったくられた人も同じ顔に見えますよ。契約ってなんなんでしょうね……」


 「伯爵様には話してないが、執事さんには話してたさ」


 「うわー、そんな屁理屈聞きたくなかった」


 「へっへ、旦那には何度かいったでやしょ?目立つものは隠せないと。シルビアの姐さんは伯爵様の指示で転移を教えてたのでやす。いくらなんでも、隠すのは無理があるでやしょう」


 「まあ……そう言われると何も言い返せないが……」


 もうボッコボコで心が折れてるんだが。

 お家に帰って眠りたい。


 「チェスリーくんを虐めるのはもうやめて、建設的な話をしよう」


 「いえ、伯爵様も大概なんですが……」


 「ごほんっ。悪い話ではないから聞いてくれたまえ。君は娘の恩人なのだよ。無為に害したりすることはないと約束する」


 「……わかりました。お話を伺わせていただきます」


 「魔斑病治療の話から始めよう。今までは特に重症の患者を優先して情報を集めていた。治療できるのが君一人で、転移も万能ではないから、厳選せざるを得なかった。……あの侯爵以外はな」


 「はは……あの方はね……」


 「魔斑病が重症化するのは、数千人に1人と言われている。それ以外は自然に治ることが多いとはいえ、患者の数は重傷者の数百倍存在するのだ」


 ヴェロニアも症例は多いって言ってたものな。

 治るのを待つだけ、というのも辛いものだろう。


 「魔斑病が治療できることを、なるべく拡散しないように情報を集めたが、口止めしたとしても治癒したものが外に出歩くなどすれば、隠すのに限度がある。大事になる前に、手を打てないか悩んでいたところに、君が新治療方法を開発してくれたのだ」


 ……ひょっとしてアリステラの治療のことがなかったら、既に危なかったの?!


 「そこでチェスリーくんに確認したかったのは、魔斑病を治すときに使う白と黒の魔力についてだ。対応する魔法が何か知っておるかね?」


 「ええ、白は光魔法、黒は闇魔法ですね」


 「へへ、さらっと誰も知らない知識を明かしやすね」


 「あっ、まあでもいまさらだし」


 「ごほんっ、ありがとう。一人が両方使えなくても光と闇の魔法使いで揃えればいいわけだな」


 「そうなりますね」


 「それなら治療体制はすぐ整うだろう。後はジェラリーくんに頑張ってもらうしかないな」


 「あ、それならヴェロニアに相談すれば、安くできるかもしれません」


 「しかし、ジェラリーが言うには、ヴェロニアくんは汎用性や安価という点では不得意なのだろう?魔道具クランにも協力させているから、人手は足りている」


 「あ、はい。実は素材が持つ魔力の種類を識別することができました。今まで試行錯誤でしか試せなかった素材の組み合わせが、効率よくできそうです。費用は抑えられ、開発時間も短縮されるはず…………あっ」


 ………………。

 部屋が一瞬で静まりかえった。

 窓の外から、通りの雑踏や物売りの声が聞こえる。

 俺以外の全員が、唖然として顔で停止していた。


 あ~~~、ヴェロニアの言ったとおりだ。

 俺、隠しごとする才能0だわ。


 「チェスリーくん、きみって人はなんてお人さ……」


 「旦那……あんたってお人は……。軽々あっしの想定を超えてきなさる」


 「ちぇ……チェスリーくん……ローズリーを嫁にいらんかね?」


 「伯爵様、落ち着いてください。話が何段階か飛んでます。それにローズリーちゃんは10歳ですよ」


 俺は一周まわって、落ち着きを取り戻していた。


 「ごほっごほんっ。ああ、すまない。わしは、とんでもない男を恩人にもってしまったようだ」


 「いえ……これもヴェロニアに言われてやったことなので……」


 「わかった。ヴェロニアくんに協力を頼む。報酬も十二分に用意することを約束する」


 「はい、よろしくお願いします」


 あれ?結局ヴェロニアシールドが発動しちゃった?

 まあ、いっか。

 どこかで『よくないわよ!』という幻聴が聞こえたような……気のせいだろう。


 「へへ、歴史が変わる瞬間ってやつあ、こういうことなんでやすかね」


 「いや~、大げさだろう」


 「「「大げさじゃない!」」」


 全員から突っ込まれた。悲しい。



 「これは話がいきなりでかくなる可能性がでてきた。信頼できる協力筋を増やさなければいかんな」


 「あっしのほうは、進めやすくなりやしたぜ。一先ず急ぎの仕事を旦那に片づけてもらいやしょう」


 「ん?急ぎって何だい?」


 「いつもの魔斑病治療でやすよ。しばらく飛び回ってもらうことになりやすぜ」


 「えぇ……」


 「頑張ってくださいやせ。もう一つ種明かしをすると、クランも絡んでやすから」


 クラン……確か普通なら無理だけどって話だっけ……。

 というか、秘密バレバレで俺はどういう方向に動けばいいか全くわからなくなってるんですが。


 「旦那の治療する患者が、クランメンバーになるかもってことでやす」


 「え!?」


 「私からクランメンバーの一人を紹介させてもらおう。ミリアンくんを呼んでもらおう」


 「え……みり……ミリアン!?」


 伯爵様が呼び鈴を鳴らし、メイドさんが入ってくる。

 すぐに出ていき、1人の女性を連れてきた。

 お、おお……マルコラスの妹、ミリアンだ。


 「チェスリー様、お久しぶりです」


 「あ、はい」


 言葉が出ない……。


 「ふふふふっ、……失礼しました。チェスリー様のおかげで、すっかり元気になりました。不束者ですが、今後とも宜しくお願いいたします」


 「……こちらこそ、よろしく」


 俺、何度驚いたら済むんだろ……。


次回は「クラン新設」でお会いしましょう。


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