表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

22/137

第22話 転移の特徴、魔道具の現状

 俺は転移魔法を修得してから、時間を惜しむように練習を重ねていた。

 ジェロビンからの指示は、とにかく転移可能な距離を伸ばすことが重要というので、冒険者を使った拠点確保を行い、単独でいろんな場所へ転移していた。

 シルビアから聞いた話では、転移使うことで魔力量が増える、ということだったが……。


 「では話を聞かせていただこうさ」


 「うん、まずは転移についてわかったことを共有したいと思ってね」


 「ほう、興味深いね。どんなことだい?」


 「まず転移魔法を使い続けたが、俺の魔力量は増えていない」


 「想定は間違いってことね……。私は転移を使うことで増えると思っていたのだけど……」


 「2点目は転移の距離と量だ。まだ距離は検証途中だが、恐らく魔力量は関係ない。次に量だが、重要なのは転移で広げる範囲で、重さは関係ない」


 「本当かい?!……重さはその通りさ。荷物の重い、軽いで特に変わったことはないしね。しかし距離については驚きさ」


 「ああ、魔力視の頭巾で視て気づいたんだ。自分の感覚では全くわからないからな」


 「……ということは、王都まで一気に転移することもできるということかい?」


 「今日やっと王都を中継する時に使っていたヘケロイの転移に成功したんだ。王都はまだ準備ができていない」


 「まいったね。何年も先に転移を使っていた私より、君の方が転移に詳しいなんてさ」


 「俺の方は好きに検証できたのと、魔力視の頭巾のおかげだ。仕事で余計なことはできないだろうしな」


 「……そうだね。残りの転移する範囲が魔力量に関係するってことかい?」


 「その通りだ。魔力量の多い人は、転移範囲が広い。俺は精々自分から2メートル程度しか範囲が広げられない」


 「……わかったさ。私も認識を改めて、転移の時に注意してみるさ」


 「よろしくな。それと……スパイさせるみたいだが、エドモンダ伯爵様の様子を知りたくてね。魔斑病の新治療方法を聞いた後のこととか」


 「仕事以外の話はあまりしなくてね。ただ、機嫌はかなりよかったようさ。浮かれてると言ってもいいぐらいだったさ」


 「おお?何か思ってたのと違う……。魔斑病治療で独占してた権益が危ないかもってことで、対策でもしてるかと思ったが……」


 「……何か新しいことをしようとしているのは確かさ。仕事で急に追加されたのは、ある人物を転移で連れてくることだったさ」


 「人を?……知っている人かい?」


 「いや、私は初めて見る顔だったさ。ヘスポカに転移して、女性1人をマクナルへ連れてきた」


 「へえ。誰だろうね」


 「それと、恐らく魔道具ギルドの関係者と思われる人が出入りしていた」


 「ん?ジェラリーさんじゃなくて?」


 「ああ、ジェラリーさんもいたが、他にも数名いたさ。それと……一瞬だったから見間違いかもしれないが、ジェロビンさんがきていたと思う」


 「ジェロビンが伯爵邸に!?」


 「見間違えだったら返って混乱してしまうね……。間違っていたら申し訳ない」


 何故ジェロビンが……。

 ダンジョン核の一件で面識はあるから、エドモンダ伯爵に会うこと自体は問題ではないが……。

 もし……ジェロビンが裏切っていたとしたら…………。



 ……まあ、ここで悩んでもしょうがないか。

 もし裏切られたとしたら、俺の見る目が全くなかったってことだ。

 既に後戻りできないなら、推測で落ち込むだけ損をする。


 「……謝ることはないよ。教えてくれてありがとう」


 「……ああ。気休めに聞こえるかもしれないが、エドモンダ伯爵は信頼に足る人物だと、私は思っている。チェスリーくんのことも、大事に取り計らってくれるはずさ」


 「そうだな。別に悪いことしてるわけでもない」


 「ふふふ、逢引は悪いことかもしれないさ」


 「いや、シルビアとはそんな関係じゃないし」



 その後は、転移陣のイメージの仕方や、模様の決め方について、あれこれ意見を交わしたりした。

 転移陣の『1番』などは、いくら模様に拘らないと言っても酷い……と苦言を呈された。




 翌日。

 新しい転移先の連絡がこないので、自宅で転移範囲の練習を続けていた。

 ヘケロイより先は、王都まで大きな町がない。

 ヘケロイから王都は一か月ぐらいかかるだろう。

 派遣した冒険者は、途中ヘケロイでの空き家確保などもしてもらってるし、王都への転移は気長に連絡を待つしかない。


 一向に伸びない転移範囲の練習に嫌気がさしてきたころ、ヴェロニアが訪ねてきた。


 「チェスリーいる?」


 「おう、入っていいぞ」


 「はーい」


 「何か用事か?」


 「うん……。ちょっと手伝ってほしいの」


 「かまわないぞ、何だ?」


 「いやあ、偉そうな事言っちゃった手前言い辛くて。魔道具なんだけど、軽量化する方法ってのがどうしても思いつかなくてね」


 「ああ……」


 魔道具は、現在あまり一般的に使われているものはない。

 ヴェロニアの作った着火機や、ジェラリーが作った冷蔵庫など、一般で使われているものは、数えられるぐらいしかない。


 魔道具を使うには、使用者が魔力を流す必要がある。

 魔法系のスキルを持たない人でも、訓練すれば初級程度が使えるようになるのだが、全く素質のない属性の魔法は、初級すら使えない場合がある。

 そして魔法を覚えるには、有料で講師を依頼する必要があるのだ。

 お金に余裕がなく、魔法スキルを持たない多くの人は、魔法を覚えることすらしない。

 そうすると、魔道具を使える人自体が一般には少ないという事になる。


 俺はレアスキル【百錬自得】を持っていたので、冒険者ギルドの支援があったから、多くの属性魔法を使えるようになったが、かなり特殊な例と言えるだろう。


 魔道具作成の技術も未発達だ。

 ヴェロニアは天性の勘のようなもので、魔物の素材を選び、組み合わせ、目的の魔道具を完成させる。

 勘に頼った組み合わせは失敗も多い。

 魔力視の頭巾を作るときに、金貨50枚もの金が必要だったが、結果だけ見れば3分の2の素材は無駄になっている。

 魔力を通すテストをした際に、壊れたり、使えなくなる素材が多数あるためだ。

 それでも何とか予算内で仕上がったのが幸運だった。

 特にイビルアイの瞳は特に高価なので、慎重に最後の調整を行った後に取り付けられた。

 もし壊れていたら……何も始まらなかっただろうな。


 魔道具を研究するクランもあるが、多くは冒険者の活動も並行して行っている。

 直接素材を剥ぎ取れるので、購入するより安価で素材を入手できるからだ。


 比較的安価で一般に供給される素材は、魔物からとれる魔石ぐらいしかない。

 魔石は素材を繋ぐ役割に使い、形を加工したり、粉にしたりと使用量も多い。

 転移陣を書くインクにも、魔石の粉を混ぜることで、魔力が流せるようにしている。


 とまあ、こんな状況なので、魔道具を作るものは、変りもの……いや変態……いや大いなる探求心の持ち主に限られるのだ。



 「あんた今あたしのこと変態とか思った?」


 「おもってるわけないじゃないかー。いやだなあー」


 「なによその棒読みーーー!……まあいいわ。あ、魔力視の頭巾も持ってきてね」


 「はいはい」


 ヴェロニアの家へ行き、魔道具を作る工房に案内された。

 普段入ることがないので、物珍しく辺りを見回してしまう。

 ナイフやハンマー、すり鉢みたいなのとか、道具がいっぱい置いてある。

 まだ使われていない魔物の素材もいろいろあるな。


 ヴェロニアがどさっと魔物素材と作りかけの魔道具らしきものを持ってきた、


 「チェスリー、今から順番に素材に魔力を流すから、魔力視の頭巾で視て」


 「よし、いつでもいいぞ」


 ヴェロニアが魔道具に魔力を流す。

 ……薄めの……色の名前がわからなくて、どう伝えればいいの?


 「なあヴェロニア……色は視えるが、色の名前をどう説明していいかわからん」


 「そう言うと思ってね、色の表を作っておいたよ。これでどの色に近いか教えて」


 「おお、頭いいな。この色が近いや」


 俺は、白っぽいが少し黄が混ざったような色を指し示す。


 「了解。それじゃどんどんいくからね」


 その後、数種類の魔道具、数十種類の素材にどんどん魔力を流し、見えた結果をヴェロニアがメモしていく。


 「うん。思ったとおり全然思ったとおりじゃないや」


 「それ矛盾しまくってるけど頭大丈夫か?」


 「大丈夫に決まってるでしょ!主語がちょっと抜けただけじゃない。最初のは、素材に対するあたしの認識で、次が色を確認した結果について」


 「ん……。ああ、要するにヴェロニアが素材に対して思っていた効果と、実際の素材の効果が違ってたってことかい?」


 「そういうことね。いやあ、こりゃ失敗するわけだわ」


 「どういうこと?」


 「例えば、このオークの睾丸があるじゃない」


 「おい、近づけるんじゃない」


 「洗ってあるから大丈夫よ。この魔力色が濃い目の緑だったでしょ?あとこっちのブラックドッグの牙が似たような色。今まで全く別物だと思ってたのが、似たような魔力なの」


 「ふむ。それで?」


 「色は後で整理するとして。魔力色が魔法の種類に関係してるようでしょ。恐らく反発する魔力の種類を繋ぐことが原因で、素材が壊れちゃうと思うの。壊れないように、反発しないものを繋げるのが難しいのよね」


 そうか……魔力色なんて見えないから、その辺りは全て勘でやってたんだよな。


 「実験するときも、オークの睾丸でダメだから、ブラックドッグの牙を代わりに使うとするじゃない?

でも魔力の種類は、ほぼ同じだから、同じ結果になるの。全く違うと思って使った素材が、実は同じ魔力でしただと、無駄な事してるだけなのよ」


 「へええ。確かにそうだよな」


 「あんた暢気にしてるけど、魔道具にとって画期的な発見なのよ?もしかすると歴史に名前が残っちゃうほどの」


 「ええ?!」


 そこまで大げさな名声欲しくないんだけど……。

 それにしても魔力視の頭巾の万能っぷりが凄すぎるので、ヴェロニアを盾にしようと心に誓う。


次回は「魔道具の歴史が変わる?」でお会いしましょう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
読み終わりに↓ををクリック!いただけると嬉しいです。
小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ