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第137話 新たな目標へ

 新たなクランの目標は決まった。

 俺は魔物被害の防止を担当するつもりだ。

 未発見ダンジョンの捜索と殲滅は今のメンバーの協力があれば可能だが、ずっと頼るわけにもいかない。

 他にやりたいこともあるだろうしな。

 しかし、全てのダンジョンと魔物を殲滅をやめた今、他の冒険者やクランに協力を依頼することもできるだろう。

 『暁の刃』はもちろん、『黄金の翼』ともう一度やり直すのもいい。

 未発見ダンジョンを一緒に攻略した、リンジャック達にも声をかけてみよう。


 もう俺は秘密がバレることを恐れたりしないのだから。



 結晶の魔力供給維持はヴェロニアに任せることになるかな。

 ヴェロニアにはジェラリーさんという頼りになる協力者がいる。

 魔力がないと困る人たちは多いだろうし、新たな協力者も現れるだろう。

 



 「それじゃクラン会議は終わ――」


 「終わらないわよ。次の議題があるんだから」


 「へ?クランの目標は決まったし、他に議題なんてあったっけ」


 「あんた忘れたの?国王からの招待のこと」


 「え~、もう放っておけばいいんじゃないの?」


 「だーめ。なんかねえ、どんどん大げさになってきてるの」


 「は?」


 「報奨金がさらに吊り上がったせいで、大手クランが専門の捜索チームまで作ったみたいなの。どっかでケリをつけないと終わらなそうよ」


 「なにしてくれてんだよ王様……それにチームまで作るなんてどこのクランだよ」


 「うーんとね、5つぐらいあったかな。最大手は『黄金の翼』ね」


 「おい!!マックリンどういうことだよ!?」


 「い、いやいや。もう俺リーダーじゃないし」


 「事情を知ってんだから止めてくれよ」


 「事情を知ってるリオノーラが許可したんだが……」


 「え~~」


 「ニコラハムが捜索チームのリーダーだ。あまりに熱心で断り切れなかったらしい。それにリオノーラもチェスリーに戻ってきてほしいって話は前にしたよな」


 「ああ、それは聞いた」


 「ニコラハムがチェスリーを見つけて説得すれば罪は不問にするってさ」


 「いやいや、元々茶番だし不問も何も」


 「とにかくだ、『黄金の翼』以外にも多数のクランがお前を探してるってことだ」


 何なんだかなあ。

 別に招待を受けてもいいけど、さすがにこれだけの騒ぎになると顔をだしてすぐさようならってわけにはいかないよなあ。

 それにしてもまたニコラハムのやつがでしゃばってきたのか。

 次会ったとき覚えておけよ。



 「それでね、対策はみんなで考えてあるの」


 「え、そうなの?教えて」


 「あたしの案は残念ながら今回のことで廃案なのよね」


 「……ちなみにどんな案?」


 「チェスリー英雄計画よ!」


 「はい!?」


 ヴェロニアの案は全てのダンジョンと魔物を殲滅する英雄として国王に対峙させるつもりだったらしい。

 国王といえど、そんな大それた目標があるのに無駄な足止めはしないだろう。

 いや、ダンジョンや魔物の利益がなくなるのを恐れ敵対関係になるかもしれない。

 その場合は実力と実績を見せつけてやればいいと。

 出る杭は打たれるが出すぎた杭は打たれないという理論だ。


 「目標をやめなかっとしても却下だ」


 「え~、いい案だと思うんだけど」


 「秘密がバレてもいいけど、悪目立ちするのは嫌だ」


 「しょうがないわねえ。ま、どっちにしても廃案だからいいわ」


 「はいはーい!私たちの案の発表でーす」


 元気いっぱいに声をあげたのはアリステラだ。

 いったいどんな案を……私たち?


 「えっと、たちってことは他にも?」


 「はい!マーガレットとメアリも一緒です。ミリアンはすこーし消極的でしたけど協力してくれましたわ」


 「え?え?協力って」


 「百聞は一見に如かず、ですわ。スキルラボへ行きましょう!」


 「あ、はい」


 何だかよくわからないうちに、みんなでスキルラボへ行くことになった。

 人数が多いけど……ああ、メアリとミリアンがいれば問題ないか。



 スキルラボへ転移し、周りを見渡すと見事な畑が広がり作物が実っていた。

 うん、よく育ってるね。

 ちょっとでかすぎるけど、味がいいのも知ってるし。


 しかし、その巨大な作物が小さく見えるほど異様に巨大なものがあった。


 「あの~アリステラ。あれは何?」


 「お城ですわ」


 「へ?」


 「私たちの案はチェスリーさん国王計画です!」


 「……内容を教えてくれるかな」


 アリステラの案はスキルラボ周辺の土地を国土として、新たな国を作るということだ。

 王都の国王といえど、同じ国王を無理に引き留めることはできないだろう。

 国王である証拠が必要なら、巨大な城を見せつけてやればいい。


 「うーむ、俺は国王って柄じゃないんだが……」


 「それに私たちの目標を実現するためにも必要ですわ」


 「え、そうなの?アリステラの目標って何?」


 「私は大きい建造物をもっともっと作りたいですわ。そのために広大な土地を自由に使いたいです。チェスリーさんが国王なら自由にできますわ!」


 「お、おう。えっとメアリは?」


 「私は師匠の教えをより多くの人に伝えたいです。国王になれば他の権力を気にすることなく、広く伝えることができるようになるでしょう。とても素晴らしいことです」


 「そ、そう……なのかな?えっと、マーガレットの目標は?」


 「私は【以心伝心】を利用して、話すことができない人や耳の聞こえない人でも快適に暮らせるようにしたいですわ。国として人を集めれば、より多くの人を援助できますわ」


 「おお、それはいい考えだね」



 アリステラの目標は別に国を作らなくてもできると思うんだが……。

 だがクランという小さな組織でやるより、国ならできることはかなり広がる。

 アリステラの魔力は計り知れないし、土地はいくらあっても困ることはない。

 今後魔物被害が順調に減れば人の生存圏は拡大していく。

 早い者勝ちというわけではないが、国土にしてしまえば土地の確保はできるだろう。


 メアリの目標は俺を持ち上げ過ぎだとは思うが、俺のやりたいことでもある。

 いつもダンジョン捜索や攻略をするわけではないし、空いた時間は『黄金の翼』でやっていたように教育をしたり、治療師として活動するのもいいなと考えていた。

 それに人が多く集まるなら……ふふふ、面白いスキルに出会えるかもしれない。


 そしてマーガレットの目標に感動した。

 マーガレットの【以心伝心】は遠く離れた場所から連絡することばかりに使ってきたが、考えるだけで意思を伝えることができるという素晴らしいスキルだ。


 俺の完全治療は歪んだ魔力の流れを矯正し、正常にすることで元の状態に戻すことができる。

 元に戻すだけなので生まれつきの障害は治すことができない。

 しかし、マーガレットの【以心伝心】なら障害に関係なく意思を伝えあうことができるのだ。



 国か……俺の目標についてきてくれた仲間たちの希望だ。

 できることなら叶えたいが、俺に国王なんて務まるわけがない。

 そう考えていたところにミリアンが話しかけてきた。


 「チェスリーさん、国王計画はいかがですか?」


 「いやあ、どうにも俺に国王なんて向いてなさそうでね」


 「難しく考える必要はありませんよ。最初は少人数ですし、クラン活動の延長みたいなものですね」


 「そう考えると少し気は楽だけど……」


 「それにチェスリーさんがずっと国王をする必要はないのですよ?」


 「え?どういうことなの」


 「チェスリーさんは教育者として優れたスキルをお持ちです。適任者を育てればいいのです」


 「あ……なるほど。国王になるべき人を育てるのか」


 「そうです。帝国やミクトラのような事態を避けるには適材適所が重要ですよね」


 「ああ、適材適所を実現することができれば」


 「きっと素晴らしい国になります」


 「おお……何かやる気わいてきた」


 「それとですね、チェスリーさんが国王になれば、他にも解決することがあります」


 「他に何があるの?」


 「私やアリステラたちとの関係です」


 「ほう」


 「国王なら4人どころかもっと女性が傍にいてもおかしくないです」


 「ええええ!?」


 まいったな。

 確かに国王になれば、複数の奥さんや妾がいるほうが自然だ。

 それにマーガレットは公爵様、アリステラは子爵様の娘さんだ。

 国王なら身分差を気にする必要もなくなる。



 「ふふふ。いい目標だと思いませんか?」


 ……そうだな、今までの目標が霞むほど大きな目標を持つのもよさそうだ。

 やる前から諦めていては何もできない。

 何より、俺には頼りになる仲間がついている。

 今後こそ目標を諦めることなく達成するんだ。


 「ああ、そう思う。やってみようか」


 「はい。まあ、私はチェスリーさんの隣にいられるなら、それでよかったのですけどね」


 「ミリアン……」


 そっか、ミリアンが別にスキルがなくても困らないと言ったのはこういうことか。

 まったくもう、ミリアンはかわいいなあ。



 「話はついたようね」


 「ヴェロニアか。大それた目標だがやりがいもある。挑戦してみるよ」


 「いい返事ね。よし、これでクラン会議もあたしのリーダーも終わりね」


 「何でだよ。新しい目標が決まったばかりで終わりはないだろ」


 「新しい目標はクランじゃなく国でやるの。だからクラン会議じゃなくて国会になるのかしら」


 「それはいいとしてリーダーはどうするんだよ」


 「あんた国王やるんでしょうが。あたしは参謀ってところかしら」


 「……はいはい。了解しました」


 「よろしい」


 俺が国王になることを決意すると、周りがにわかに騒がしくなっていた。



 「へっへっ、こいつあ面白いでやす。グレイス、大陸中の情報を探る諜報機関を作るでやすよ。必要な人材は旦那が育ててくれるでやしょう」

 「はい!俺も後輩ができるの楽しみです」


 「はっはっはっ、よかったなローズリー。これで遠慮なく嫁ぐことができそうだ」

 「もうっお父様ったら!……元から遠慮するつもりはございません」


 「わあ、大変なことになったかもです」

 「アメリア、ますますあなたの力が必要になりそうね。……私もお嫁さんに立候補していいのかしら」

 「わ、わたしはその……遠慮するかもです」

 「アメリアは本命をちゃんと追っかけなさいね」

 「はあい」


 「国か。女房のためにもそろそろ安定した職場が欲しかったところだぜ。軍の隊長やってみるのもよさそうだ」

 「レフレオン、人が集まるなら武術大会を開くのもいいぞ。もちろん俺が優勝を狙うけどな」

 「がっはっは、そいつはいい。優勝は俺だがな」


 ……概ね好評のようだ。


 まだ魔物のことや魔力のことが解決したわけではない。

 問題は山積みだし、これからも様々な問題に立ち向かうことになるだろう。

 だが、頼りになる仲間たちと一緒なら恐れることなく前に進むことができる。


 それにしても国王かあ。

 まあ、どういう立場になるにしても俺は俺。

 お人よし冒険者がお人よし国王になるだけのことだ。


 これにて「お人よし冒険者」のお話しは終わりです。

 いろいろ書き足りないことや回収できていない伏線もありますが、一旦締めとさせていただきます。


 思えば書き始めて2か月ぐらいは投稿するたびにブクマやPVの変動を見つめる毎日でした。

 それ以降は極力気にしないようにしましたが……。


 ここまで継続できたのは、ブクマ・評価をいただけたおかげです。



 私の小説を見つけていただきありがとうございます。

 最後までお読みいただいた方に心から感謝します。



 このお話しは国王編に続くことができるのですが、書くかどうかはまだ決めていません。

 まあ書いてもランキングは目指せそうにないですし……。


 次作は現代ファンタジーに挑戦してみようと考えています。

 ある程度の構想はできていますが、少し書き溜めないといけないので投稿はしばらく後になると思います。

 またお会いできる日を楽しみに執筆に励みます。



2019/07/13 追記

 完結ブーストで日間ランキングに入ったようです。

 まさか後書きがフラグになると思いませんでした。

 読者様が増えましたので、国王編を先に書くことにしました。

 筆が遅いので相変わらずストックなしの更新ペース遅めになります。


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