第111話 アメリアのお迎え
ケイトさんにやる気をもらったことだし、次のことを進めよう。
帝国にアメリアを連れていくことになるが、修行は無事に終わったのだろうか。
修行が終わっているなら、迎えにいきたいところだ。
「マーガレット、ジェラリーさんに連絡してアメリアの修行のことを聞いてくれないか?」
「わかりましたわ」
マーガレットが【以心伝心】でジェラリーさんに話を聞いているようだ。
「チェスリーさんも会話に参加したほうがよろしいですわね」
「え?」
{チェスリーさんもそこにいらっしゃるかもですか?}
これはアメリアの声か。
ああ、以前に複数同時に【以心伝心】ができるようになったと言っていたな。
体験するのは初めてだけど、これは便利だ。
{うん。ここにいるよ}
{しっかり修行しましたです。チェスリーさんのお手伝いをさせてほしいかもです}
{ありがとう。アメリアの力を貸してほしい}
{はい。頑張りますです}
「マーガレットありがとう」
「どういたしまして。お迎えは今日行かれますか?」
「そうだな。ジェラリーさんに聞いてみよう」
{ジェラリーさんも会話に参加されてますか?}
{ええ、聞いてますよ}
{アメリアを連れて帰りたいのですが、よろしいですか?}
{ええ、かまいません。その代わりと言っては何ですが、スーザンさんはもうしばらく預かりますわよ}
{わかった。あとどれぐらいかかりそうなんだ?}
{新しいものなのではっきりとは言えないです。いいものを作りますので、お任せいくださいませんか?}
{うーん。スーザンも会話は聞いているかな?}
{はい、聞いています}
{スーザンはかまわないかい?}
{はい。いまとっても楽しいですし、完成まで頑張りたいです}
{うん。スーザンがそういうなら問題ないよ}
{ありがとうございます}
スーザン頑張ってるなあ。
やりたいことがわからなくて迷っていた時とは大違いだ。
本人が希望していた歴史に名を残せるようなものが出来上がるかもしれないな。
「アメリアを迎えに行ってくるよ」
「あたしも行くわ。ジェラリーにお礼を言いたいし」
「ん?お礼か。なあ、ジェラリーさんを王都に招待するのはどうかな」
「うーん、悩ましいわね。ジェラリーは信頼できると思うけど、あんたの転移のこともばれちゃうわよ」
「ジェラリーさんならいいかなと思ってね」
「そうねえ。魔道具クランなら警備もしっかりしてるから大丈夫かな」
「え、なんで警備のこと?」
「秘密を知るというのは危険なこともあるわ。特に影響の大きな秘密はね。今のところ転移はエドモンダ侯爵様の転移使いに頼んでいることになってるわ」
「……やっぱり招待はやめておこうか。帝国のことが片付いてからでもいいしな」
「チェスリーがいいならそうしましょ。それじゃよろしくね」
「あのー、私も一緒にいっていいですか。魔道具を見ておきたいので」
「私も通信魔道具のことが気になりますわ。実物がどうなっているか見ておきたいですわ」
「おいおい、アメリアを迎えに行くだけだって……そうだ、アリステラとマーガレットは転移魔法を修得して自分でいけるようにしなさい」
「「……はい」」
連れていってあげてもよかったけど、身近な目標があるのもいいだろう。
「私は転移陣を置きたいので、ご一緒しますね」
「そうだな。ミリアンは一緒に行こう」
「「ずる~い」」
「ずるくない。ミリアンはもう転移を使えるんだから」
マクナルへいくメンバーは俺、ヴェロニア、ミリアンで決定だ。
マクナルの元クラン拠点へ転移し、ミリアンの転移陣を俺の転移陣の隣に置いた。
「これでマクナルへいつでも来られるな」
「まだ長距離の練習はしていませんが大丈夫でしょうか?」
「不安なら練習したほうがいいね。迷いがあると転移陣がイメージしにくくなるようなんだ。俺も魔力量が転移できる距離に関係ないとわかるまでは、かなり慎重に練習したからね」
「わかりました。迷いがなければ成功するのですね」
「そうだ。俺はミリアンならできると思うけどね」
「はい、その言葉で十分迷いはなくなりそうです」
「ふふん、お熱いことで。キスの効果は十分ね」
「誰がたきつけたと思ってるんだ」
「あたしでーす。でもよかったでしょ」
「あ、ああ」
「さあさあ、アメリアを迎えに行くわよ」
強引に話を打ち切られて、ジェラリーさんの魔道具クランに移動する。
みんなと親密になれたのは確かだけど、複数の女性と同時にキスすることになってしまったんだよなあ。
後悔はしていないけどな。
魔道具クランに到着すると、いつもの顔パスで中へ案内された。
「お待ちしてましたわ。こちらにどうぞ」
いつもの応接室に案内されると、スーザンとアメリアの他にもう1人女性が座っていた。
初めて会う人だと思うけど、誰なのかな。
「あなたがチェスリーさん?」
「そうです。どちらさまでしょうか」
「私はアメリアさんを指導していたクライミーと申します。なるほどなるほど」
「そ、それはどうも。えっと、どうかされましたか」
「アメリアさんの命の恩人と伺ってます。聞いたとおりのかたのようですね」
「は、はあ」
「クライミーさん、チェスリーさんに変なことを言ってはいけないかもです」
「ごめんごめん。アメリアさんはレアスキルを使いこなせるようになったわ。あなたなら大丈夫だと思うけど、使い方によっては危険なスキルよ。守ってあげてね」
「はい、任せてください」
「それにしてもあなた……凄いわね」
「え?何がでしょうか?」
「何といえばいいのかしら……お人よし?」
「はあ、よく言われます」
「やっぱりそうなんだ。これで安心したわ」
「何のことかよくわからないんですが」
「アメリアさんのスキルは無意識に働いてしまうこともあるの。でも近くにチェスリーさんみたいな悪意がほとんどないような人がいれば負担が軽くなりますね」
「へ、へええ。喜んでいいのかな」
「もちろんよ。負担で潰れちゃう人もいるんだからね。とにかくこれで安心したわ。アメリアさん、しっかりやるのよ」
「はい、先生。ご指導ありがとうございました」
「どういたしまして。また遊びに来なさい」
「はい」
アメリアはよくしてもらったようだ。
クライミーさんは少し変わったところもありそうだけど、いい人だと思う。
「スーザンはどうしてるの?」
「魔道具開発に夢中ですわ。みなさんには完成するまで合わないと伝えてほしいと」
「そっか。その日を楽しみにしていると伝えてくれ」
「わかりました」
その後はヴェロニアがジェラリーさんと話をし、俺はアメリアとクライミーさんに修行の様子を聞いていた。
魔道具クランに直接来る人が多いことに驚き、さらに悪意のある人の多さに驚いた。
ほとんど悪意ありなのか……。
魔道具が良すぎるのも問題のようだ。
まだ予約分で手いっぱいの状態なので、先に入手できるなら高値でも買いたい人は大勢いるという。
儲かるなら何とか手に入れられないかと魔道具クランを訪れる。
そりゃあ悪意のある人ばかりになるよなあ。
「チェスリー、こっちの話は終わったわ」
「こっちも切りがいいところだな。クライミーさん、お話しありがとうございました」
「いえいえ。あっ、時間ができたらサンディに会いにいってあげてね。あの子も忙しいらしくて自分からは動けないんだって」
「わかりました。必ず会いに行くと伝えてください」
「サンディも喜ぶわ。よろしくね」
「ええ。では失礼します」
帰りの挨拶をすませ、魔道具クランを後にする。
サンディには会いに行こうと思ってたが、予定がいろいろあっていけていない……。
帝国のことが片付くまでは無理だろうな。
マクナルの元クラン拠点に一旦戻り、王都のクラン拠点に転移する。
少々手間だが、ところかまわず転移するわけにもいかないしね。
すると屋敷の中庭で誰かが何かしているようだ。
光球の魔法で照らしてみると、アリステラとマーガレットが魔法の練習をしていた。
「あっ、チェスリーさんお帰りなさい」
「ただいま。もう暗いし練習は終わりにして、食事にしようよ」
「はーい。だいぶダークミストを上手く使えるようになってきましたわ」
「私はもう少し練習しないと……闇の魔法は難しいですわ」
マーガレットの【以心伝心】は空間を超えて作用するから、転移魔法の段階になれば修得が早そうだけど、闇の魔法の素質がないから苦労しているようだ。
マーガレットの素の魔力色はシアン系で明るい色なんだよな。
アリステラは茶系の魔力色だけど、まだ黒系の制御が楽なのかもしれない。
「マーガレットさん、アリステラさん、ただいま戻りましたです」
「アメリアちゃん、お帰りなさい!元気そうでよかったわ」
「お帰りなさいませ。頼もしくなったように見えますわよ」
「ありがとうございますです」
「さあ、会話は食事と一緒にしよう」
「「「はい」」」
みんな揃って屋敷に入ろうとしたところで、ミリアンから話しかけられた。
「そういえばチェスリーさん。何か用事が残っていませんでしたか?」
「ん?何だっけ。ミクトラに行くのは明日で準備するものもないし、スキルラボで念のため食料も収納しておいた。アメリアは連れてきたし……」
あれ?確かに何か引っかかることがある。
スキルラボで癒されたせいで気が抜けちゃったのかな。
えーと、帝国の調査のことはミクトラにいった後だから違う。
「あー!チェスリーさん。レフレオンさんとマックリンさんのこと」
「あ!!」
やべえ、魔物の森に迎えに来てくれと言われてたんだ。
慌てて魔物の森の結界に転移すると、食事を用意しているところだった。
なかなか迎えに来ないから、狩った魔物で準備していたらしい。
遅れたことを謝ると、来なければ泊りがけで狩りを続けるつもりだったとか気にしていないようだった。
全くどれだけ魔物狩りが好きなんだよ……。
今回もお読みいただき、ありがとうございます。




