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第109話 スキルラボの農園

 王都のクラン拠点でゆっくりお茶を飲む。

 ケイトさんのおもてなしに癒されながら、これからのことを考えていた。


 グレイスに会う約束は、ジェロビンとメアリが転移で向かったから任せればいいだろう。

 でも孤児院の調査結果は気になるから、後で確認しておきたいな。



 戦争をやめずに継続しようとしているとしたら、何が目的でそうしているのだろうか。


 戦争のおかげで大儲けした商会があると聞いた。

 商売だから儲けるのは悪いことではない。

 だが、儲けるために戦争を継続しているのであれば話は別だ。


 そして最悪の想像だが、食料問題のことまで戦争で解決しようとしているなら……。



 そうした悪意を見破るにはアメリアの力が必要になる。

 ジェロビンの諜報で情報を収集したとしても、多数の人物が関連する帝国では悪意の判断は難しいだろう。


 「ヴェロニア、アメリアはいまどうしてるんだ?」


 「ジェラリーのところで修行中よ。いい先生に教わっていて順調だって」


 「いい先生?【慧眼無双】を教えられる先生なんているのか?」


 「【直感】スキルを持っているそうよ。エドモンダ侯爵様が商会から派遣した人でやり手のようね。レアスキルにも負けないぐらい勘が鋭いらしいわ」


 「ほお。エドモンダ侯爵様の商会からか」


 「あのサンディの上司だったんだって」


 「ああ!サンディも商会で働いていたんだったな。会ったときの印象が水商売っぽかったからなあ」


 「あんたねえ。聖女様と呼ばれてる人にそんなこといったら怒られるわよ」


 「ここだけの話しにしておいて。それでアメリアはいつ戻ってくるんだい?」


 「そろそろ修行が終わりのはずなんだけど、今夜にでも聞いてみるわ」


 「そうしてくれ。あとスーザンはどうなの?」


 「スーザンのほうはもうちょっとかかりそうね。でも凄いものができそうだって」


 「凄いもの……通信魔道具だよね?」


 「うん。通信の革命だって騒いでたし、凄いんじゃないかな」


 「革命が珍しいものじゃなくなってきた気がする」


 「ほとんどあんたがきっかけでしょうが。次は帝国で革命かしら」


 「いやいや、帝国のことは……ん?事と次第によっては革命になるのか?」


 「そうよ。あんたの懸念があっていたとして、相手が誰になるかにもよるけど」


 「そうだな。誰が相手かわからないとどうしようもないね」


 対応すべき相手がわからないのは気持ち悪い。

 表で活動してる人だけが黒幕とも限らないのか……。

 先発隊を指揮していたアンディスさんが戦争推進派と知り、敵になると考えていたがそう単純には言えないのかもな。

 魔物のように明確に敵だとわかれば簡単なんだけど。



 「チェスリー、戦争に介入すると決めたからには中途半端はダメよ」


 「あ、ああ。そのつもりだけど」


 「それならいいわ。何となく面倒そうに見えたから」


 「面倒に思ったのはその通りだ。でも面倒だからこそ使う手札は惜しんでいられないなあと」


 「そうね。アメリアには辛い思いをさせてしまうかもしれないけど、悪意を見抜けるのは助かるわ」


 「アメリアには既に人形で助けられてるからなあ。ちゃんとお礼しておかないとね」


 「希望があるか本人に聞いてみて。私も協力するから」


 「よろしく頼む」


 人の本心を知ることは綺麗ごとでは済まないだろう。

 見抜けるからこそ、辛い思いをすることは十分考えられる。



 「それで土壌のほうはどうなのよ。まだ聞いてないけど上手くいったの?」


 「スキルラボに生えてた作物ごと運んできて、畑の整理を頼んできた。作物が巨大に育ってたんだよね」


 「いいじゃないの!食糧問題が一気に解決しそうね」


 「まだわからないよ。俺がクヴァリッグにいた頃はあんな巨大なの見たことがない。一応食べても大丈夫みたいだけど、調べてからでないと安心できないからね」


 「ふ~ん。ちなみにどんな作物があるの?」


 「えーと、白菜にキャベツ、ニンジンがあったね。あと細長芋かな」


 「細長芋!そりゃみんな喜んだでしょ」


 「よ、よくわかったな」


 「男の人は甘味にあまり興味がないものね。女は甘味に目がないのよ」


 「俺だってケイトさんの作ってくれるお菓子とか好きだぞ」


 「あれも美味しいけど、果物の甘さと細長芋の甘さはまた別なのよ。それに砂糖の甘さもね」


 「砂糖ってあれだろ。やたら甘い塩みたいなやつ。俺はあんまり好きじゃないけどな」


 「砂糖はケイトさんの料理にも入ってるのよ?」


 「へ?そうなんだ」


 「高価だから庶民はあまり使わないけど、ここの料理には隠し味で使われてるわ。美味しさの秘密の1つね」


 「ほおお。それであんなに美味しいのか」


 「ねえねえ、いろいろ試すならテンサイも育ててみない?」


 「なにそれ?天才ならうちにいっぱいいるじゃないか」


 「才能のほうじゃなくて、砂糖のとれる大根みたいな作物よ。北の寒いところで少し栽培してるだけだから高いのよね」


 「え、なら無理じゃないか。スキルラボは南のほうだぞ」


 「だからお試し。巨大に育つ土ならいけるかもしれないじゃない」


 「うーん、まあいいか。でもテンサイはどこで手に入れたらいいんだ?」


 「そりゃあ北の栽培地にいって買ってくるしかないでしょ」


 「うへえ。面倒だなあ」


 「面倒だからこそ手札は惜しまないんでしょ」


 「おまえなあ、戦争とテンサイの話を一緒にするんじゃねえよ」


 「まあまあ、上手くいけばみんな喜ぶわ。ほら、手札を惜しまない価値はあるよね?」


 「……しょうがないなあ。買ってくるよ」


 「私もその土に興味わいてきたわね。そろそろ転移を使える人を増やしたらどうかしら」


 「え、いや。それはまずいんじゃないの」


 「クラン内ならかまわないわよ。スキルラボのこともあるから、アリステラかマーガレットが転移を使えると便利そうね」


 「えーと、一番素質があるのはミリアンだったかな」


 「いっそ全員教えてみたら?」


 「全員か……うん、どうせならそのほうがいいな」


 「そうと決まれば、スキルラボに行きましょうか。あたしも土のこと調べてみるわ」


 「そうだな」


 「少々お待ちを」


 「え?」


 出かけようとするとケイトさんに呼び止められた。

 何か用事だろうか。


 「私もご一緒してよろしいでしょうか?」


 「うん、いいけどどうしたの」


 「新たな拠点であれば、私が環境を整えさせていただきます。物件を確認したいのです」


 「は、はあ。いいけど今は小さな小屋があるだけですよ?」


 「問題ありません。では失礼しますね」


 ケイトさんが俺の腕をとり、ぴったりくっついてきた。


 「あ、いえ。そんなにくっつかなくても大丈夫ですから」


 「お嬢様たちはこのようにしていたと記憶しています」


 「えーと、それは決まりというか」


 「決まりであれば問題ありませんね。ヴェロニアさんもこちらへどうぞ」


 「ふふん。じゃよろしく」


 ヴェロニアまでくっついてきた。

 ……ヴェロニアとケイトさんにくっつかれるのなんて初めてで緊張するんだけど。


 「私でも緊張するのね。それともケイトさんだけかしら」


 「余裕ぶってるけど、ヴェロニアの顔ちょっと赤くなってないか」


 「そ、そんなことないわよ」


 転移魔法を発動し、スキルラボへ転移する。


 「素晴らしいです。転移魔法とはこんなにも便利なものなのですね」


 「そうですね。魔法の中で一番多く使ってるのが転移魔法の気がする」


 「頼れる方に仕えることができて幸運です。お嬢様ともども今後もよろしくお願いしますね」


 「ええ、こちらこそ」


 みんなはどうしてるだろうか。

 周りを見回してみると、風景が変わってるんだけど。

 周りがこんなにひらけてなかったし、小屋の隣に倉庫のような建物が増えている。



 「まあっ!ケイトさん!どうしてチェスリーさんと腕を組んでますの!?」


 マーガレットがこちらに気づいて走り寄ってきた。


 「お嬢様、これはチェスリーさんに転移で連れてきていただいたからです」


 「腕を組む必要はありませんわ!」


 「いえ、決まりと伺いましたので問題ないかと」


 「それはミリアンさんの決まりですわ!……私はしていませんのに」


 「まあ、お嬢様は腕を組んでいなかったのですか。それは失礼いたしました」


 ……ちっとも悪いと思ってなさそうな顔してる。

 ケイトさんもしたたかだねえ。


 「む~~、とにかく離れてくださいまし。スキルラボの農園に案内いたしますわ」


 「俺が離れて3,4時間ぐらいしか経ってないと思うんだけど」


 「アリステラさんがどんどん進めてますわ。際限がなくなってきたので止めたぐらいですのよ」


 「やる気あるなあ。農園なんてやったことないだろうに楽しいのかな」


 「見ればわかりますわ。すごく楽しそうにやっていると思いますわよ」


 「ああ、行ってみよう」


 マーガレットに案内されてアリステラとミリアンの元へ連れていってもらう。

 既に周りが畑だらけになりつつある。

 この短時間でどんだけ開墾してるんだ……。

 魔物の森から運んできた土を全部使いきるような勢いだ。


 それに巨大作物がどこにも見当たらないな。

 あちこち芽が生えてきてるし、これどこから持ってきたんだろう。


 「なあ、もう芽が出てる様なんだけどどこからか買ってきたの?」


 「いいえ。持ってきた作物を切り分けて植えただけですわ」


 「えええ、もう成長してるってことなの。早すぎるだろ」


 「そうなんですの?今まで農業をしたことがございませんので、こういうものだと思ってましたわ」


 「花とか育てたことは?」


 「ケイトにお任せしてましたわ」


 「ああ、なるほど」


 知らなければ異常だと思わないよな。

 マーガレットは公爵の娘さんだから、植物の世話はしたことないんだね。

 そうして歩いていると、やっとアリステラとミリアンのいるところに到着した。


 「チェスリーさーーん。この土凄いですわ!作物がすぐに成長しますわ!!」


 「お、おう」


 アリステラのいう通り、見事な農園ができあがっていた。

 広い……あちこちに芽が出ているし、成長が早いのは本当のようだ。


 土壌輸出は慎重にやったほうがよさそうだ。

 何が成長を早める要因か調べないといけない。

 それに過剰に食料を供給すると、あちこちで弊害があるかもしれないしな。


 土壌調査はヴェロニアにお願いして、俺は帝国の調査を進めたほうがよさそうだ。


今回もお読みいただき、ありがとうございます。


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