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第107話 停戦に向けての準備

 ◆三人称視点◆


 チェスリーが先発隊に補給物資の返還にいった後、ジェロビンはメアリの転移魔法で王都のクラン拠点に戻っていた。

 チェスリーがミクトラへ投資をするという話を聞いてから、エドモンダ様の力を借りるつもりだったからだ。

 投資ということ自体に経験がないのもあるが、ジェロビンはあまりこの話に乗り気ではなかった。

 ミクトラの領主が金で実権を握っているのであれば、情報を武器にすればいいと考えていたからだ。

 探れば何か後ろめたいことはあるだろうという想定だ。

 しかし、この方法ではミクトラ内が余計に混乱する恐れもある。


 結果、ジェロビンは投資で行う方法を進めることにしたのだ。



 クラン拠点に戻ったジェロビンは、さっそくヴェロニアの元を訪れた。


 「姐さん、ご無沙汰してやす」


 「あら、珍しいわね。帝国のほうは落ち着いたの?」


 「へっへ、実はその件でご相談がありやして」


 「ふーん、何となくわかるわ。投資のことでしょ」


 「ご推察のとおりでやす。あまりに畑違いであっしの手に余りやして」


 「そっか。チェスリーの話だととゴードリクさんって人に投資すればうまくいくと思ってたけど、そうならなそうなの?」


 「へい。ゴードリクというお人が最も適任だと思いやすが、投資をすることになるとは思いやせんでした。あっしでは判断に困りやしてね」


 「わかったわ。どうするつもりなの?」


 「エドモンダ侯爵様を頼ろうと思いやす。連絡をとっていただきたいでやす」


 「あら、ちょうどよかったわ。今日エドモンダ侯爵様のところへ行く予定だったの」


 「へっへ、そいつは好都合でやす。あっしも同伴させてもらいやす」



 ヴェロニアとジェロビン、メアリはエドモンダ侯爵様の屋敷を訪問した。

 ヴェロニアは大量回収したダンジョン核を、エドモンダ侯爵様に預けて運用してもらっていた。

 ミクトラ投資の資金もそこから捻出する予定だ。


 エドモンダ侯爵様の屋敷につくと、ヴェロニアとジェロビンは執務室に案内された。


 「おや、ジェロビンくんにメアリくんも一緒かね。さあ、こちらに座りたまえ」


 執務室内の接待用の席に座ると、ヴェロニアが話しを始めた。


 「エドモンダ侯爵様、相談があります」


 「む、ダンジョン核のことではなく相談かね。言ってみたまえ」


 「帝国の戦争に介入することはお話ししましたよね」


 「うむ、進軍を止めることと食料輸出の件だな。食糧の手配は順調に進んでおる」


 「それともう1つ投資のことですけど――」


 「ヴェロニアくんそのことだよ!」


 「え?」


 「何故わしに声をかけないのかね。投資は『百錬自得』のメンバーで詳しいのはわしぐらいだろう。わしが動くべきだと思うのだがね」


 「え、えーとまさにそのことをお願いしに来ました」


 「そ、そうであったか。うむ、わしに任せておきたまえ」


 「でも王都のお仕事は大丈夫なんですか?」


 「心配いらん。悪徳商会が一掃されたおかげで順調そのものでな。それより帝国の市場に興味があるのだ」


 「へっへ、さすがエドモンダ様。話が早くて助かりやす」


 「ジェロビンくんの情報のおかげでもあるがな。わしも久々に『百錬自得』メンバーとして活動させてもらう。ミクトラの情報を教えてくれたまえ」


 「へい。ミクトラの状況でやすが――」


 ジェロビンからミクトラの情報が伝えられる。

 問題は領主が金で実権を握っている体制であり、適任者に投資することで解決しようとしていることだ。


 「ふうむ。チェスリーくんらしいというか、何とも人のいい話だ」


 「へい。あっしの情報では内政官のゴードリクという人が実権を握れば問題ないと思いやすが、投資のことは素人でして」


 「先に話を聞いておいてよかった。恐らく失敗するぞ」


 「……だめでやすか」


 「投資と寄付は異なるものだ。チェスリーくんをよく知る者でもなければ、何の見返りも期待しない金など怖くて使えるわけがなかろう。投資とは将来の利益を期待して行うものだ」


 「へ、へい。そのために恩を売ることはしておきやしたがね」


 「それは尚更いかんな。治療ならまだしも金が絡むと曲解されかねんぞ。それに為政者として優れていたとしても、金の扱いが上手いとは限らないのだ」


 「……おっしゃるとおりでやすね」


 「ミクトラへ出向くことにしよう。わしなら投資として利益になる話もできる。内政に関わるものと繋がりができれば商売もやりやすいからな」


 「へい、わかりやした。すぐに出発いたしやすか?」


 「いや、準備と引き継ぎが必要だ。今日中に済ませて出発は明日にしよう。それにローズリーを連れて行きたい」


 「ローズリーちゃんでやすか?それはまたどうして」


 「ローズリーが魔班病にかかっていたことは覚えているね」


 「へい。……ま、まさか」


 「そのまさかだ。ローズリーもレアスキルをもっているのだ」


 「なんと!?そいつは盲点でやした。してどのようなスキルでやすか」


 「スキル名は【天佑神助てんゆうしんじょ】。天の助け、神の加護により助けられるという意味らしい。かなりの幸運があるのではないかということだ」


 「いいスキルのようでやすね。既に効果を自覚しているのでやしょうか?」


 「それははっきりせんのだが、効果は出ているようだ。思い返せばローズリーが病にかかってからというもの、神懸かった出会いの連続であった。ジェラリーくんから始まりチェスリーくんたちとの出会いがなければ、わしが昇爵することもなかったであろう」


 エドモンダ侯爵様は大きく深呼吸をして話を続けた。


 「わしもチェスリーくんに負けない目標を掲げることにした。この大陸で1番の商会を作り上げると」


 一瞬の静けさのあと、ヴェロニアが賛辞を贈る。


 「さすがエドモンダ様!そうこなくっちゃね!」


 「うむ。わしの目標のためにもミクトラ投資は成功させてみせる」


 こうしてミクトラへの投資はエドモンダ侯爵様の担当となり、マーガレットの【以心伝心】でグレイスに伝えられた。

 ダンジョン核の運用は継続してもらい、必要な資金はそこから捻出してもらうこととした。




 その頃ジェラリーの魔道具クランでは、魔道具を欲しがる貴族が訪れていた。

 魔道具の販売はエドモンダ侯爵様の商会が行っている。

 魔道具クランで直接販売はしていないのだが、待ちきれない貴族や販売権が欲しい商人が訪ねてくることがよくある。

 生産が追いつかない状態では断るしかないのだが、あまりにも訪問の頻度が多いので対応する人材をエドモンダ侯爵様から派遣してもらっていた。


 派遣された人の名はクライミー。

 サンディが元働いていた店舗の店長をしていた。

 今でこそサンディは聖女と呼ばれるような人物になったが、店員としてあまり優秀ではなかった。

 そんな彼女の才能を見抜き、エドモンダ様に推薦したのがクライミーだ。


 クライミーのスキルは【直感】である。

 感覚によって物事をとらえるという意味だ。

 直感はあやふやなことも多く、一般には外れスキルと言われている。

 しかし、クライミーは商会の仕事を通じて【直感】を熟練させ、商売に役立てることに成功した。


 アメリアのことを任されたジェラリーは、クライミーの交渉の場にアメリアを立ち会わせることにした。

 実際の交渉を見て、【慧眼無双】を熟練させるためだ。

 チェスリーの教育に加えアメリアについて学ぶことで、アメリアの素質は順調に開花していた。




 「そこを何とかお願いできませんか?私どもも困っているのです」


 交渉相手の貴族が何やら懇願しているようだ。

 対応しているのはクライミー、その後ろにメイド姿でアメリアが控えていた。


 「魔道具はエドモンダ様の商会で予約販売をしております。それ以外に商品を卸す余裕がないのです」


 「冷暖房魔道具を1台だけでいいのです。何とか融通いただけませんか?代金は相場の3倍払いましょう」


 「3倍ですか……何かお困りの理由があるならお話しいただけますか?」


 「ええ、実はとある方のご子息が不治の病で苦しんでおり、余命いくばくもございません。せめて快適な環境をとお望みなのです」


 「……そういうご事情なのですね。しかし他にも事情のある方は多くいらっしゃいます。それでもお待ちいただいているのが現状なのです」


 「どうしてもお譲りいただけませんか?」


 「はい。ご期待にそえず申し訳ございません」


 「……わかりました。また日を改めることにします」


 貴族は交渉を諦め帰っていった。

 それを見届けると、クライミーはアメリアに話しかけた。


 「アメリアさん、今の方どう思われましたか?」


 「はい。不治の病で苦しんでいる人がいるのは本当かもです。でも1台だけと相場の3倍といったところは嘘のようですね」


 「凄いわね。もうあたしの【直感】と並ぶかそれ以上だわ。どこでわかったの?」


 「あの方は目の動きに特徴がありました。本心と違うことを話すときに僅かに下に動きます」


 「うん、合格よ。この短時間で隠せない癖を見抜くことができれば、怪しいところは見抜けるわ。恐らく1台譲ればもっと要求してくる。代金は後払いにでもして高値で先方に売りつけるつもりだったんでしょうよ」


 「それにしても……ここに来る方はほとんど何らかの悪意があるかもです……」


 「そりゃあそうでしょう。ちゃんと販売してるのに横取りして儲けようとしてるやつばかりだから。1人だけでも善良な人がきてくれてよかったわ。人間不信になっちゃいそう」


 「はい、あの南方の町からいらした人ですよね」


 「そう。あの人の町は虫の被害で本当に困っていたからね。南は暑いから締め切って隔離するにも冷暖房がなければ暑さでやられちゃうもの。そういうところにこそ緊急用の在庫を回さないとね」


 「ええ。しかし不治の病の方が気になるかもです」


 「そっちは教会に連絡しておくわ。聖女様のサンディが何とかしてくれるわよ」


 「はい!」


 「聖女様か……あのサンディがそんな風に呼ばれるとは今でも信じられないわ」


 「はは……私も会ってみたいかも」


 「今度紹介してあげるわ!あの子面白いから仲良くなれると思うわよ」


 「はい!楽しみかもです」


 アメリアのスキル修行は一先ず合格がもらえたようだ。


 ミクトラにはエドモンダ侯爵様とローズリー。

 シペル帝国はアメリア。

 それぞれの問題に対応する人材が整った。


 ここから本格的に戦争をとめる行動を開始することになるだろう。


今回もお読みいただき、ありがとうございます。


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