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第105話 魔物退治の特別指導

 土壌輸出を試すつもりが魔物退治を教えることになった。

 きっかけはアリステラの一言だが、魔物の森から土壌をとる際の安全確保は必要だ。

 ついでに魔物のことを教えられるなら一石二鳥となる。


 俺とミリアン、アリステラの3人で行くつもりだったが、マックリンとレフレオンにも付き合ってもらうことにした。

 魔物退治なら望むところらしく、すぐにのってきた。

 するとマーガレットもやってきて、自分にも魔物退治を教えてほしいと頼まれた。


 結局6人で魔物の森に乗り込むことになったわけだ。


 「魔物の森とは懐かしいぜ。俺も冒険者を始めたころ、外周あたりで修行したもんだ」


 「俺は初めてだぜ。どんな魔物がいるんだ?」


 「オークやコボルドだな。フォレストウルフ、アースベアなんかもいるぞ」


 「雑魚が多いな。アースベアぐらいしか歯ごたえあるのがいねえじゃねえか」


 「森外周は初心者向けだ。内部に行くとサイクロプスや虫系のやっかいなのがいるぜ」


 「虫系は面倒だから嫌いだぜ。サイクロプスならいいけどな」


 レフレオンとマックリンが魔物について話している。

 2人の得意分野だから話題は多いようだ。

 でも今日の役割は護衛であって、魔物退治じゃないからな。


 「2人とも手本を見せるために戦ってもらうかもしれないけど、基本は護衛だからな」


 「ちょっとぐらいいいだろうが。アースベアがでたら俺にやらせろ」


 「ダメだ。アースベアは魔物退治の練習にちょうどいいからな」


 「おいおい、あいつは力も強いし素早い魔物だぜ。なりたて冒険者だと死を覚悟する相手だろうが」


 「いきなりはやらないよ。他の魔物で練習してからだな」


 「……何か考えてやがるな」


 「まあね。とにかく護衛はしっかりとな。間違っても突っ込んでいかないように」


 「おう。まあ適度に暴れさせてくれりゃ文句はねえ」


 レフレオンは遊びにでも来たような気楽さだな。

 冒険者に向いてるのはこういう性格なのかもしれないけど。


 「それに転移先は魔物の森の中央部だ。外周部じゃないぞ」


 「な!?いきなり中央だと。それは危ないんじゃないのか」


 マックリンが驚いているが、転移陣が置いてあるのは中央部しかない。


 「そのためにマックリンとレフレオンがいるんだ。頼むぞ」


 「魔物退治の練習っていうからてっきり外周かと思ってた……」


 「マックリン、気合い入れなおせ。こいつの考えは読めねえところがあるからな」


 「さあ、みんな準備はいいか?」


 「「「はい」」」


 ミリアン、アリステラ、マーガレットに魔物退治を教えるのが今回の目的……いや違う。

 土壌を持ち帰るのが目的だった。

 肥沃な土壌は中央部にあるから、どちらにしても辺りの魔物は狩らないといけない。

 2人があまりに魔物ことばかり言うから、俺まで間違えそうになったじゃないか。



 魔物の森中央部の転移陣をイメージし転移を発動。

 転移終了、無事結界の中に転移で来たようだ。

 まだ結界の強度は大丈夫なようだが、一応補充しておこう。


 「ミリアンすまないが魔力補充をお願いできるかな。結界の魔力補充に使いたいんだ」


 「はい、どうぞ」


 「うお!あ、いや。そんなにいらないから、ちょっとだけで」


 ミリアンから大量の魔力が送られてきたので慌てて止めた。


 「すいません。描画魔法のときと同じように送ってしまいました……」


 「いや、ちゃんと説明しなかったし。でも描画魔法ってあんなに大量に魔力使ったかなあ」


 「メアリさんと2人でやってた時より多めにイメージしたら、送りすぎちゃったみたいです」


 「そ、そうか。まあこれで溢れそうなほど魔力があるから大丈夫だ」


 ミリアンの魔力量また増えてるんじゃないかな。

 とりあえず結界に魔力を補充して……これでいいな。


 「ちょっと索敵してくるから待ってて」


 一言残して結界の外に出る。

 転移だと結界が邪魔にならないようだけど、【察知】は上手く使えないんだよな。

 前にミリアンが俺を呼びに来たときも、メアリの視認転移でそのまま入れたらしい。

 もし敵に転移が使えるやつがいたら、結界は役に立たないな。

 転移使いは厄介すぎる……って俺が厄介すぎるやつってことか。


 余計な事考えてる場合じゃない。

 索敵しなきゃ。


 前に来たときもこんなにいい水場なのに何もいなかった。

 恐らくこの辺りを縄張りにしている強い魔物がいるはずだ。

 既に倒したギガントサイクロプスが主なら解決済みになるが、少し離れた場所だったから別のやつかもしれない。

 今も近くに魔物が察知されないしな。


 ……これか。

 注意深く遠方まで探るとやけに長い体長の魔物がいる。

 これはヘビの魔物……ビッグスネーク、いやここまで大きいとジャイアントスネークだな。

 こんなやつがいたのか。

 ジャイアントスネークは夜は行動せず地中に潜む性質があったな。

 前来たときは夜だったからいなかったのか。


 相談してみようと、結界の中に戻る。 


 「縄張りの主がジャイアントスネークだとわかった。でかいヘビと思ってくれたらいい」


 「ほう、大物じゃねえか」


 「俺が倒してこようか?」


 「マックリンに頼んでもいいけど、どうやって倒すんだ?」


 「正面から突っ込んで拳で殴り倒す」


 「いやいや、それじゃ何の参考にもならないじゃないか」


 「え?なるだろ。どんなに巨大だろうと頭に一撃くれてやれば倒せるんだ」


 「だから真似できないっていうの。レフレオンならどうする?」


 「は?同じように殴り倒すに決まってるぜ」


 ……脳筋どもめ。

 そんなの手本にしてアリステラやマーガレットが魔物に突進したらどうするんだよ。


 「はいはい。聞いた俺が間違っていたよ。ジャイアントスネークは強力な噛みつきと胴体による締め付けが武器だ。見た目はでかいヘビだけど、退治をやってみる気はあるか?」


 「おいおい、ジャイアントスネークを嬢ちゃんたちにやらせるのか。アースベアより強えじゃねえか」


 「ああ、そのつもりだ。こいつ用の戦術があるから、アリステラとマーガレットが組めばやれそうだ」


 「あのー、チェスリーさんの戦術やってみたいです」


 「私もですわ」


 「よし、戦術を教える。2人だけで倒すことができれば大きな自信になるはずだ」


 「「はい!」」



 ジャイアントスネーク退治開始だ。

 気配遮断のローブを纏い俺とレフレオンはマーガレットの護衛、マックリンはアリステラの護衛につく。

 過保護すぎるのもよくないので、2人には近くにいることを教えていない。

 それでも過保護だとレフレオンには言われたが。



 マーガレットが【察知】を使い、ジャイアントスネークの位置を特定する。

 ここから二手に分かれて行動だ。

 アリステラは尻尾の方へいき、マーガレットは横から回り込んで頭の方へいく。


 ジャイアントスネークはヘビらしい特徴を持っており、尻尾には感覚がない。

 それを利用して尻尾を固定してしまうのだ。

 しばらくは何をされてもわからないので、固定するのに十分な時間がとれる。


 アリステラはモデリングストーンを発動し、ジャイアントスネークの尻尾を土で包みこんでいく。

 尻尾を固定したが、気づかれると頭が向かってくるかもしれない。

 それを防ぐために尻尾を上に持ち上げる必要がある。


 アリステラは固定した尻尾の下からさらに土を盛り上げて、尻尾を上方に運んでいく。

 こうすると頭が動き回る範囲が制限される。


 そして動きが制限された頭にマーガレットが氷の魔法を発動する。

 横から頭の後ろに回り込んだのは、ヘビの視界が前方にしかないからだ。

 冷えていく感触はあるだろうが、動けないことに戸惑っているうえに視界外からの攻撃だ。


 そうしているうちに低温に弱いヘビは徐々に動きが鈍り始め、やがて動きが停止した。



 「チェスリーさ~ん!成功しましたわ!」 「私でもできましたわ!」


 「よし、2人ともよくやった!」


 「ちょっと待て」


 「マックリン何だよ?せっかく2人が初の魔物退治に成功したというのに」


 「いや、何か釈然としなくてな。これでいいのか?」


 「そう言われてもこういうのが俺のやり方だしな。正面から突っ込むよりはいいだろ?」


 「うーん、アリステラとマーガレットだしそう言われるとそうか」


 「マックリンも納得したことだし、次行こうか」


 「「はい!」」


 「チェスリーさん、次は私も参加させてもらっていいですか?」


 「ミリアンも?ミリアンが加われば戦術の幅は広がるがいいのかい?」


 「ええ、私も『百錬自得』のメンバーです。頑張りますので指導お願いします」


 「わかった。ミリアンがいるなら、次はジャイアントビー退治をやってみようか」


 ジャイアントビーはハチの魔物だ。

 前回来たときに巣があるのは知っていたが、無視して通過した。


 「ジャイアントビー退治の戦術はみんなにも考えてもらおうか」


 「え、私たちで戦術も考えるのですか?」


 「ああ、別に俺の戦術は特別なわけじゃない。必要なのは敵の有利を潰すこと、弱点を突くことの2点だ。後はそれを実現可能な方法にするのを考えるだけだからな。情報は俺から提供する」


 ジャイアントビーの弱点もハチの特徴から知ることができた。

 先ず火に弱いのだが、森林で火を使うのは危険なのでここでは使えない。

 残りは水、低温、暗闇だ。

 水に弱いのは羽が濡れると飛びづらくなるからだ。

 低温に弱いのはヘビと同様で、体温調節ができないせいだな。

 暗闇はハチの目を封じることができる。


 得意なことは数をいかした集団戦だ。

 ハチは視界が広く周りとの連携も優れている。

 飛翔する速度は速く、空中を緩急のある動きで飛び回るので捉えるのは容易ではない。

 四方八方から襲いかかられ腹部の先についた針で刺されると毒であっという間にやられてしまう。


 これらの情報をみんなに伝え、戦術を考えてもらう。

 さて、どんな戦術ができあがるか楽しみだな。


今回もお読みいただき、ありがとうございます。


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