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 山あいに建てられたザテリーテン城の別城。ネーベル大陸、東ソーレンセン地方、カリーサ段丘の郊外。


 麓を流れる雄大な川を支点に、様々な緑をつけた田畑の間を一筋の道が通り、オレンジ色の屋根をつけた家屋が川に沿って不規則に並んでいる。

 空は海よりも深い青、真っ白な絵の具を放り投げたような雲が、所々に綿を描きながら、白鷺と戯れている。動物の唸り声に乗せて、低木の茂みの間を素早く子ネズミが逃げていく。


 ヴァルターに付き添われて麓へと下り、ザテリーテン城に向かう道中、規則正しく敷かれた白石を歩きながら、レスターは自身の頭を叩いて舌を鳴らす。

 レスターの中での魔族感は野蛮で人間より文化的ではない生活を送っていると考えていたから。けれども現実は全く異なっていた。

 レスターはとても後悔していた。


 「ジェム――」

 突然ヴァルターが口を開き、レスターは背中に悪寒を走らす。


 「生誕前暦一千年、人はジェムを手に入れた。その後ジェムを用いる道を選び、力を得た者は人間と名乗り、体にギフトを宿しつづける道を選んだ者を人魔じんまと名乗るようになったのは、今からおおよそ二千五百年前のことですね。一説によると人魔の間に立つ者の意味を込めて人間・・と呼ばれるようになったと耳にしたことがあります」


 レスターは頷きこそするも、昔人間と魔族が同じ種だったことは知らない。

 ヴァルターの一言で聞きたいことが山ほど出来上がってしまったが、ここは流されてレスターはヴァルターの話の続きに耳を傾ける。


 「やがて人間はジェムの力を活かした武器を開発し、人間は更なる力を追い求め、生き続ける道を選んだ。ジェムの所為で自らの寿命が縮まったことすら忘れて――」


 レスターは頷くことだけをした。


 「案の定人間は五百年ほどすると、人魔と同じ種であることを忘れてしまった。私達人魔は、たもとを分かったときより、積極的に人間との交流を絶ち、ソーレンセン地方にずっと住まいを移していた訳だから無理もないのですが……ともあれ、人間は人魔を同じ人であることすら忘れ、いつしか人間は人魔族・・から人の冠を廃し、魔族と呼ぶようになった――そしてジェムを持たない非力な私達は人間の間で一方的に忌み嫌われ、敵対の象徴へと成り下がった――」


 ぐうの音も出ないとはこのことだろう。

 ヴァルターも察してレスターが落ち着くまで、持っていた水筒の水を飲み、喉を潤す。

 「人間と人魔の歴史はここまでにして、君から何か質問はあるかな」


 「――寿命。俺達人間はジェムを取り入れたから百年も生きられないのでしょうか?」

 レスターの問いに、ヴァルターは頷いて、


 「私は今年で三千二百歳であります。もっとも私は長生きな方で、寿命はおおむね二千三百歳程度。人魔は成人期が相当長いのですよ。それと一つ先にお断りをしておきますが、長生きが得をするという訳では全然ありません。辛い経験もずっと頭の中に留めておく必要がありますので、かくいう私はこれまで何千回と戦争を経験してきました。その所為で最近までは五百歳と生きられない者も多く――」


 「魔族も戦争をされていたのですね」

 「昨今はそれほどでもありませんが、昔は私も数々の死線をくぐり抜けてきたものです。昨日もかなり危うかったですが、何とか乗り切れて内心安心しています。レスター君の遺体を持ってせ参じたときには、ミルヒ様に何を言われるか――」

 「ははは……決断が鈍ってしまい申し訳ないです……」

 「突然のことなので仕方がないです。私も貴方を助けるので必死でしたので」


 「聞きづらいのですが、俺と一緒にいたアルビンはやはり……」

 「――大爆発オーバーフロウで行方知れずです。私の力不足です」

 「いえ、ヴァルターさんは何も悪くありません。ありがとうございます」


 レスターはアルビンの行方を案じるも、何とか生きているのではないかと内心思っていた。大爆発が起きればパタゴニア王都から救援隊も来るだろうし、何しろ勇者の失踪ともなれば話題にもなる。すぐに捜索作業に入るだろう。

 勇者の冠がまがい物ではないことをレスターが一番よく知っている。

 治癒を与えたとき気絶はしていたが、息はハッキリしていたしね。

 

 同時にレスターはヴァルターが嘘を言っていないことは何となく雰囲気で理解していた。垂れた目のしわが、年輪のように、日々の苦労を語っていた。

 ヴァルターは相当の苦労人だとレスターは読み取る。三千以上も生きていれば無理もないか。


 今、出来ることを努力しよう――レスターは確かに前を向いていた。


生誕前暦三千年

→ 人間と人魔は一緒の種で、昔は共にギフトを生業としていた。


生誕前暦一千年 

人間

→ ジェムを体内に入れ、スキルを手に入れた者を人間と呼ぶ。

 → 人魔の間に立つ者が人間の由来。

  → ジェムの力を手に入れたことにより極端に寿命が短くなる代わりに、努力をせずとも力を得ることが出来る。


人魔じんま

→ ギフトを活かす道を選ぶ者を人魔と呼ぶ。

 → 長生きだが、ギフトの向上には努力が必要。しかし毎日の鍛錬を欠かさないことでジェムより秀でた力を得ることが出来る。

  →  五百年経つと、寿命の縮まった人間に忘れられ(人間同士の戦争の混乱、魔族の人間世界への※不介入※もあり)人の冠を廃され魔族と呼ばれるようになった。


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