四連装排魔力タービン遠心圧縮式過給器。
「あれに乗ります。」
グラムシが指差す。
大怪鳥は色々な種類がいる。雀の様な姿をした小型種、とは言っても翼幅は数メートルある、から、コンドル型の様な大型種、翼幅は優に50メートルを超す、まで。
眼の前にいるのは高速と高い攻撃能力が特徴の猛禽類型だった。
流線型の客室と、何か大きな機械を背負っている。そしてその機械には多くの管がつながっていた。魔力供給の管だろう。
「あ、飛行長、来ましたよ!」
大怪鳥が背負った客室の方に呼びかけると中から分厚いドアを開けゴブリン達が出てきた。
皆、飛行帽を被り大きなゴーグルをしている。
「筆頭書記殿達に敬礼!」
ゴブリン達と大怪鳥が敬礼をする。大きな翼を動かしたので風で砂が舞う。
グラムシが敬礼を返す。
「今回の移送任務は我々が担います。」
「よろしくお願いいたします。」
グラムシが答える。
「よーし、回せ!回せ!」
飛行長が手を回す合図を出すと機械から管が外される。
次の瞬間、大怪鳥の背中の機械が凄まじい唸り音を上げだした。
フィイイイイイイイイイイイイイン!!!!!!!!!!
と何かが高速で回転する音がする。
タービンだ。
「新型の魔動力過給器です。4つの動力核を使い彼に魔力を供給しています。これがあると無いとでは飛行能力に天と地ほどの差が生じます。」
飛行長が説明する。
こういった類の魔力増幅装置は王国にもあった。だが、例えるなら牛の足を四本から五本にするとか精々その程度のもので、無いよりはマシとかそう言ったレベルの物だった。
こんな物は見たことがない。
「空路の制空権はちゃんと取れてるんでしょうか?」
大怪鳥がグラムシに聞いた。
「ちゃんと取れています。確認をしました。」
心配そうな顔の大怪鳥にグラムシは答えた。
大怪鳥はなおも言った。
「なにせこの過給器はこれだけの魔力を膨大に吐き出し続けていますから、どこにいたって即座に感知されてしまいますよ。現にあれを。」
大怪鳥は鉄柵の囲いにいる捕虜たちの方を羽で指差した。
頭を抱えながら奇声を発している人間が何人もいる。魔法使い達だ。
「放出する魔力が膨大かつ強すぎて受容できないのです。まさに生き地獄でしょうね。デーモン種やハイエルフ種なんかの強力な魔力使いもああなります。妖精種なら起動した瞬間に跡形もなく吹き飛びますよ。私は魔力の無いゴブリン種で良かったです。ですよねサーシャ先生?」
グラムシがサーシャに話を振った。
「あー、そうですね。あれは辛そうだ。数km先まで影響を及ぼしますからね、生産ラインに乗せるならもっと改良が必要だと思いますよ。」
サーシャは、なんだかなあ、という顔をして返した。
「そういうわけで、快適な空の旅を楽しめる種族は限られています。さあ行きましょう。」
グラムシが籠に乗り込んでいく。俺達も後に続いた。
過給器は長時間の暖機運転が必要なので、サキ達が来る2時間前から始動して肌寒い中待っていた。