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1945年の異世界転生。  作者: スカラベ
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評議会同盟連邦中央委員会議議長。


「サキさんだけ来て下さい。オスカーさん、貴方はこの部屋に残っていて下さい。食事を出します。その後に別途取り調べを係の者が行います。」


グラムシに付いて部屋を出てエレベーターに乗った。

しばらく上がってエレベーターを降りると薄暗い廊下だった。控えめな間接照明が重く厳粛な雰囲気を醸し出している。

いくつかの扉を開けながら廊下を進む。途中には何か所かオーガ族の守衛が立っており、グラムシの顔と身分証明書を確認する。

しばらく行くとグラムシがある扉の前で立ち止まる。


「この部屋です。」


他の扉とは違う、重たそうな装飾された木製の大きな扉が威圧感を与える。息を飲む。

グラムシは扉を二回ノックすると


「グラムシです。アオイ・サキさんをお連れしました。」


と来訪を告げた。



「どうぞ。お入り下さい。」



という声が扉の向こうから聞こえた。

凛とした透き通った声であるが、鉄塊を思わせる重たさがあった。


ガチャン!ガチャチャン!


と音がする。鍵が開いた音だろう。


「失礼いたします。」


グラムシと一緒に入る。

部屋はシャンデリアの輝く豪華な広い応接室だった。赤い絨毯が敷き詰められていた。厚いので足が沈む。

部屋の中心には長いガラス張りのテーブルと曲線を多用したデザインの椅子一式があった。


その椅子に一人の男が座っていた。

男は立ち上がるとこちらに歩いてきた。

身長は170cm程だろうか。体つきは華奢である。長く真っ直ぐな黒髪が美しくなびく。

一見すると女にも見えるが、ダークのダブルスーツに黒いYシャツ、真っ赤なネクタイに金のタイピンとカフス、金無垢の腕時計と胸ポケットにさした万年筆、上品でスパイシーな白檀の香水の香り、という装いが男らしさを主張していた。

そしてこれらはこちらの世界には存在しないデザインの服装だ。

この男こそ、大通りで見た肖像画の男だ。




「はじめまして。私はイリヤ・ハジメだ。よくぞ来てくれた。」




イリヤが挨拶をする。声の若さとは不釣り合いな老成な喋り方だった。

イリヤは俺の手を右の握手で握ると左手でポンポンと労るように叩いた。


「始めまして。アオイ・サキです。」


俺も挨拶をした。


「さあ、座ってくれ。」


俺はイリヤに促されて椅子に座った。


「私は退出いたしましょうか?」


グラムシがイリヤに聞く。


「何を言っとる。グラムシ君、立っていないで君も座ってくれ。」


イリヤが答える。


「私はそういうわけには・・・。」


グラムシは困った顔をして答える。


「良いから座れってぇ。」


「そうまでおっしゃられるなら・・・。」


グラムシも椅子に座る。

イリヤが俺の方を向く。


「お茶の味はどうだった?」


「とても美味しかったです。ですがそれよりも衝撃のほうが走りましたよあの味には・・・あー、イリヤ議長。」


「堅苦しい呼び方はしなくていい。そうだな、イリヤさんで良い。まぁ、イリヤ議長と呼んでも良いですがね。」


「・・・わかりました。」


「お茶が美味かったのならばそれは良かった。私の正体の告白というサプライズ、この目論見に気が付いてくれたようだね、よかったよ、あれで目論見に気が付いてくれなかったらどうしようかと思いました。良く再現できてるでしょう、向こうの世界の茶の葉はこの世界には無いですからな。この世界の茶の葉を品種改良やブレンドして作った。それにしても・・・2018年の未来でも緑茶はあるのだなぁ、良いことだ良いことだ。」


「2018年が未来ですか?」


俺は聞き返す。


「グラムシ君が君から取った調書は既に見ています。君は2018年から来たんだろう?私はこの世界に来てありとあらゆる種族と出会ってきたが、未来人と会ったのは初めてなのだよ。」


驚きの言葉がイリヤから出る。





「私は1945年からこの世界にきました。」





驚く俺の顔を見て、イリヤが得意そうにニヤリと笑った。




ラベンダーの香りがした。

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