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A街異能群像-僕達の変化について-  作者: 大紺すずしろ
序章
7/74

卯月の章 第7話 綱渡り③/動機⑥

-数分前-


宇治咲が不良を追い払い、卯月と別れてからすぐの事




宇治咲「……」


宇治咲は頭を抱えて歩いている


トストス


宇治咲「…やっぱ心配だ」



卯月、あいつ独りでどこに行くつもりなんだ?もしも 《敵》が来たらあいつの力じゃ倒せないんじゃないのか?


そんなことを考えていると、体は自然と反対方向を向いて、歩いてきた道を戻るようになっていた……


宇治咲「どこいったんだろうなー」


宇治咲「卯月、ちゃんと喋るようになってまだ1日だよな、」


そう。まだ1日しか経っていない

なのにものすごく心配になる


思い出す、黒黒とした瞳……


宇治咲「っ、どこ行ったか見当つかねーよ」



宇治咲「とりあえず学校の近くの林でも見るか。1人になりたい時はよく彼処使うしな」





━━━━━━━━━━━


-学校の近くの林-


宇治咲「お、ドンピシャだっ!」


林の中に卯月が見えた

しかし


宇治咲「ん?!」


卯月は大の字に倒れている

しかも卯月の周りには血が跳ねている!


顔はよく見えなかったが、目が開いてないことは確認出来た……


宇治咲「なにが、あったんだ……?」


俺は予想外の光景に目を丸くする



宇治咲「あっ!」


そこへ木の上から男が卯月に飛びかかる


男は卯月の腹を蹴って、また木の上に上がる

卯月は苦しそうに ウッと 声を出すが、目は開かず、依然として倒れた状態でいる…


宇治咲「敵……か」


宇治咲「人の喧嘩に手ぇ出すもんじゃねぇが…」


宇治咲「これは喧嘩じゃない、しかも卯月が一方的にやられてる」


宇治咲「しかも」


男は常人じゃバランスが取れない細い木の枝の上に平然と立っている


こいつは確実に……


宇治咲「異能力使い!」



男がまた卯月に向かってジャンプをする


そして木の上にまた上がろうとする


木の上に着地。そのタイミングで《侵食》をお見舞いしてやる……



男が木の上に上がるタイミングで


宇治咲「はあっ!」


リズム・エロウジュン。侵食の能力を発動する



宇治咲「なにっ?!!」


男は平然と次のジャンプへと身を翻した

その時男は次に着地する木をじっと睨んだ



宇治咲「え、なぜだ?《野郎が木に侵食》されない?!」



確実に能力は発動した

木に男の足が《侵食》するように。


しかし男は何事も無かったようにまた卯月に飛びかかる



宇治咲「原因は…」



男の能力だろうか

いや、それは考えにくい。男の人間離れしたあとバランス。あれが能力だろう


だとしたら…


男の足が木の枝に付いている時間が短かった


コンマ一秒無かったかくらい。


すぐに次のジャンプをした



宇治咲「俺の能力は、物体の接触時間が短いと発動出来ない。のか」


宇治咲「知らなかった…」




っと、能力の研究をする前に卯月を助けねぇと


でも、能力が通用しないんじゃどうしたら...




ふと、持っていたレジ袋に目が行く


同時に策を思いつく


宇治咲「はぁ、俺がコンビニで買ったもんは、全部戦闘用品かって」




レジ袋に手を突っ込み中から

瞬間接着剤を取り出す



宇治咲「さて、と」


観察だ。出来るだけ早く男の行動のパターンを




---

--



宇治咲「この木だな」


卯月が倒れているから、敵は油断しているのだろう。4本の木を交互に飛び跳ねている。


俺は瞬間接着剤のキャプをくるくると回す


そしてその口を木に当てて

ブチュュっと中身を絞り出す




宇治咲「リズム・エロウジュン…」


絞り出された瞬間接着剤は一本の木に侵食した



宇治咲「さて、チャンスは1回か。……」


男が反対側の木に上がる

男は次の木をじっと見る



そして、また卯月を攻撃し


宇治咲が仕掛けた木へ…


━━━━━━━━━━━━━━


宇治咲「リズム・エロウジュン!!!!」


卯月「え-」


奥瀬が着地する直前

瞬間接着剤が木からにじみ出る


木に侵食した瞬間接着剤が侵食を解除され、一斉に吹き出した


ブチュ

奥瀬はそれを踏み、滑った



やはり!

奴の能力には弱点があった!


奴は木に着地する時に必ずその木をじっと睨んでいた!


着地するする前に着地場所を睨まなくちゃあ 能力は発動出来ない!その予想が的中した!



奥瀬「っな!!」


宇治咲「《侵食》ううううう!!」



奥瀬は木から落ちそうなるが、宇治咲はすかさず奥瀬の下半身を木に侵食させる



奥瀬の下半身は木に侵食され、上半身だけが飛び出していた


宇治咲「ふぅ…」


いつの間にか卯月は立ち上がり、俺の方に来ていた



卯月「-宇治咲、、くん、」



宇治咲「…すまねぇ、だけど」


卯月は相変わらず影の濃い顔で俺を見る。

帰れって言ったのに、戻ってきたから怒っているのだろうか、



卯月「-ありが、とう」


卯月はそう言いながら、疲れ果てたのか足を曲げて座る


宇治咲「えっ…」


卯月「-来なかったら…負けて、た」


宇治咲「そ、そうだったな、はは」


良かった、怒ってなった





奥瀬「おぃおぃ、なんだこれ下半身が気にのめり込んで、離れねぇぞ!」


その時依然と木に侵食されている奥瀬が大声で叫んだ



宇治咲「《侵食》だよ」


俺はちょいとカッコつけて言う


今この場は俺達が有利になっているからカッコつけも恥ずかしくない

うぅー、気持ちぃぜ



奥瀬「お前は誰だ!お前のことなんか伝令になかったぞ!」


奥瀬は上半身をバタバタとめいいっぱい振り、脱出しようとする


ヒラっ


すると奥瀬の上着のポケットから紙が落ちる


宇治咲「んぁ?なんだこれ」



2枚折りにされたメモ帳の切れ端のようなものだ。

宇治咲はそれを拾い、躊躇なく広げる


そこには


『ランク1

Daniel S pulley ダニエル

Alex F Otto アレックス

Barnabasバーナバス

Melvin メルヴィン

Ava アヴァ


外国人の名前とそれをカタカナ読みしたものが淡々と書かれている


宇治咲「んだよこれ…?」


卯月「-ランク1?って」


奥瀬「んふふふ、あはははは」

突如として奥瀬は笑いだす


奥瀬「俺は負けっぽいから吐いてやるよ」


宇治咲「あ?」


奥瀬「うづきとやら、お前はボスに目ぇ付けられたぁ!」


奥瀬「しかもお前、ボスに恨みもってるらしいなぁ!それにその横のチャラチャラしたやつ!」


チャラチャラしたやつ、俺のことか


奥瀬「これからはもっと強い的に戦うことになるぜ」


卯月「-もっと、、、強い…」


奥瀬「その紙に書いてあるのはランク1、つまり最低ランクの奴らの名前さ」


奥瀬「察してるとおり外国人だよ、読み方が分からなかったからメモしておいたんだ」



宇治咲「おい!そのランクってぇのはなんだ!」


奥瀬「ふふ、俺たちの組織はピラミッド型の構成をしててなランク1ってのはその第1層さ」


卯月「-何層まであらるんだ?ランクって」


奥瀬「くく、さぁな」


奥瀬「俺たちの組織に名前はねぇけど、みんなボスを神様みたいに思って、信仰までしてんだ。その信仰は世界に広がってる俺だって尊敬してる。けどボスはなんでこんな組織をつくってのかは知らねえ」


奥瀬「ま、これくらい吐けば十分すぎるだろ」


宇治咲「…っ」


奥瀬「なぁ、もう手を出さないからよ、この侵食、解除してはくれねぇか?」


宇治咲「…」


宇治咲「解除…」


バタン

奥瀬が木から解除され地面に落ちる


宇治咲「卯月、、帰ろう」


卯月「-あ、、うん」





━━━━━━━━━━━━━


卯月たちが去った後

奥瀬はまだ林の中にいた


そこにトストスと、近づく足音がする


奥瀬「と、なんの用だ?俺は負けたんだぜ?」


そこにフードを被った男がやってきた


???「知っているョ《誘惑》されたキミが負けるなんてネ……」


???「《アレ》は持ってないんだ。《あの能力》は効かない……」


???「で、ドォするの?」


奥瀬「組織を抜ける。それでいいか?」


???「まぁ、殺せって命令はでてないしネ」


???「けど、裏切られたら厄介だから」


奥瀬「殺すのか?」


???「病院送りで許すョ」


奥瀬「どっちみち痛い思いはするのか」


奥瀬「よりによってお前かよ。お前の能力だけにはやられたくなかったぜ」


奥瀬はキュッと目を閉じた







━━━━━━━━━━━━━━━━━

奥瀬逸郎 能力 《バランス》パーフェクト・ダンサー


ゲームオーバー


━━━━━━━━━━━━━━━━━




-林からの帰り道-




卯月「-宇治咲、くん 話がある」


宇治咲「なんだよ改まって」


卯月はこれまでに見たことない真剣な顔をしている



卯月「…………」


宇治咲「卯月??」



卯月「-ごめん、僕は君を巻き込むよ」


宇治咲「…?」


まき、こむ? どういうことだ



卯月「-僕の名前」


宇治咲「え?」


卯月「-僕の名前……卯月うづき 祠朧しろう


卯月「-下はしろうって言うんだ」


宇治咲「っあ、」


卯月は下の名前を隠していた。

それを俺に言うってことは……


卯月「-この、下の名前を」


卯月「-この名前で僕を呼んだのは家族以外に1人だけ…」


卯月「-中学の時の親友」


卯月「《今は居ない親友》の鳶井とびい 廼環のわだけなんだ」


宇治咲「今は、いない?」


卯月「-あぁ、いない。廼環はいないよ。」


卯月「奥瀬の言ってたボスって奴に」




卯月「殺された。」



宇治咲「…え、ころ」


卯月「-中3の初め、背中を異能力で攻撃されて。僕の目の前で」


卯月はそのことを思い出したのか

唇をかみ、目をしょぼしょぼさせる


宇治咲「…」


卯月「-だから、」


卯月「-僕は《ボス》に復讐するんだ」


この一言で卯月の顔が一変する

公園で会った時みたいな 黒く深く 漆黒の瞳に陰を輝かせ


そう発した。



宇治咲「…そう、だったんだな」


卯月「-僕は!僕は…-君を自分の欲望のために巻き込みたくなかった!」


卯月「-けど、けど君があまりにも踏み込んでくるから、-僕の内側に踏み込んでくるからっ!」


今度は下を向いた。顔を俺に見せないようにしているのか


卯月「-もぉ、もう頼らせてくれ」


ポツリ

ポツリと

卯月の下の地面に地面にシミがつく


泣いているのか





そうか、俺はこいつのこと甘く見すぎてた。この苦しそうな声、深いクマ。多分その時からなのだろう。


自分が馬鹿らしくなる。


これまで、喧嘩とかやってきたけど俺はこれまでなんのために戦ったんだ?!


目の前のことばかり意識して過去も未来も考えないで


自分の正義なんかも、ナシで


卯月とは大違いだ


卯月のような目的が俺にねぇじゃねぇか


頼らせてくれ??


ずっと遊んで、高校でも無意味な喧嘩ばかりしていくのかよ



そんなの、嫌 だ


そんなつまんねぇ人生クソ喰らえだ


目的がないなら作ればいい。


俺は遊んで喧嘩して、そうやって人生過ごしてきた。俺にはそれしかない。それが、それで、それを通して

誰か人の役に立つのなら



宇治咲「…卯月、、すまねぇ」


卯月「--ぁ」


卯月「-そうだよね、僕が勝手に復讐しろって話だよね…ゥゥ」






宇治咲「…すまねぇ、俺もそれに協力させてくれ」


卯月「---ぇ」


卯月「…」


卯月「-君まともじゃ、ないよ」


宇治咲「まともな生き方してたら、俺は今こんな所にいねぇよ」


宇治咲「卯月、いや」


宇治咲「祠朧。俺はこれまで無意味な生活送ってたけどさ、その生活にもはっきり言って飽きてたんだ。こんな非日常、万々歳だぜ」


はぁ、何を言っているんだ俺は

万歳もくそもあるか。奥瀬って野郎が言って《もっと強い敵》ってのも居るんだぜ?


はは祠朧の言ってる通り、俺はまともじゃないな


卯月「………-ぁはは」


卯月「………」


卯月「…ン」


━━━━━━━━━━━━━━━━

???「また脳裏に写った。卯月って男」


???「ランク1でも強い方の奥瀬がやられたの。怖いな。卯月って強いのかな。」


???「けど、大丈夫。私はもっと強いんだから」


この世界のどこか。

A街ではないどこか

日本ではないどこか


不気味な声が微かに響く






━━━━━━━━━━━━━━━━

公開可能な情報


ゲームオーバー


負け。再起不能。

死んだ以外にも負けを認めた。病院送りになったなどの理由で原則ゲームオーバーになったら物語に再登場することはない。

序章終わり

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