卯月の章 第6話 綱渡り②
奥瀬「お前の能力...」
奥瀬「『ランダム』だろぉ?」
卯月「--っ」
奥瀬「今の『風』、俺が近づいた時に使えば吹っ飛ばせたはずだろ?」
奥瀬「なのにお前は『電気』を使った」
奥瀬「、、、俺が聞いていたお前の能力は《炎と水の混合》だ。しかしそれは違った」
奥瀬「ランダムな能力ならその説明がつく」
卯月「…」
図星だったな
《だった》
数分前まではそうだった。
しかし
今なら、《水》の能力が使える
右手が凍えたあの瞬間からちゃんと能力を理解できた。
だから
この《水》で、
この場を
切り抜けるしか
ないんだ!!
卯月はくっと歯を食いしばった
奥瀬「ふふふ、ははは」
奥瀬は笑い出す
卯月「!」
奥瀬「《図星》だ!あはは顔がそぉ語ってる!!!!」
奥瀬「ならば、恐れることは無い」
奥瀬「じわじわと、、嬲り殺してやる!」
木の枝の上にいた奥瀬は飛び跳ねて
違う木の上の枝の上に着地する
常人にはできない動きだ
物理的に出来ない。着地する木の枝は人が上に乗ってバランスを取れるような太さはないのだ
しかしそれを繰り返す
だんだんと
スピードが上がり
服の茶色も相まって奥瀬の姿を見失いそうになる
卯月「……」
これが奥瀬の能力だろう。
《バランス》それが能力なのだろう
だったら、
やつを倒すことは
簡単だ
さぁ、飛びかかってこいどこからでも!
心の中で決意を固める
奥瀬「やぁ」
卯月「え?」
頭に重みを感じる!
奥瀬は、僕の頭の上に立っている!!
卯月「-クソっ!」
卯月は振り払おうと頭をぐるっと回す
が、奥瀬はバランスを崩さない
奥瀬「っ!!」
バシッ
奥瀬は片足を卯月の頭に乗せたままもう片方で卯月のうなじを蹴りあげる
卯月「うがっ」
卯月は前のめりになり、倒れそうになるが
奥瀬がまた、アバラのあたりを蹴り、今度は後ろにたおれそうになる
卯月「うげっ、、あっ、、いだっ!!」
背中、腹、後ろ、前
交互に蹴られ卯月は振り子のような動きをする
奥瀬「ふはは、それっ、おらっ!!」
卯月「-ど、どけぇ!」
卯月は右腕を振り上げ、《水》を乱射させる
細く、鋭い 水の刃を7つほど出す
そのうち二つが奥瀬の体にあたり、それ以外は周りの木々へ飛んでいった
奥瀬「った、」
さすがの奥瀬も、頭から離れ、素早い動きでまた木の上に戻ろうとする
卯月「…」
ゴクリと息を呑む
奥瀬は猿のように木に登る
そして木の幹に手を掛ける
すると
ポキッと木の幹が折れる音がした
奥瀬「なにぃ!!!!」
かかった!!!!!!
さっきの水は奥瀬を振り払うことも目的だったが、
それ以外にも
奥瀬が登るであろう木の
幹を傷つけるためでもあるんだ!
ギリギリ折れない程度の傷だ!鳥が1羽とまれば折れてしまうくらいギリギリの深さの傷をつけた
その幹に奥瀬が乗れば重さで折れる!
どれだけ《バランス》の能力があろうが
バランスをとるための《地》が無ければ
《落ちる》
だけだ!!!!!!
奥瀬「って、ことくらい」
奥瀬「 予想 出来てるンだよ」
卯月「-えっ、、、」
卯月の目に映ったのは
空中で仁王立ちする奥瀬の姿だった
まさか奥瀬は空気の上に立つほどのバランスを持っているのかッ!!!!
奥瀬「俺の能力は!俺のパーフェクトダンサーはっ!」
卯月「っ!」
奥瀬「バランス!釣り糸1本ありゃ、その上に地に立ってるのと同じ感覚で立てる!」
と、言ってポケットから釣り糸を取り出す
釣り糸。その直径わずか0.3mmほど
その上にゆうゆうと立つ姿はまさに人外
奥瀬「自分の能力を理解するって言うのはこういう事だろ。バランスが能力なら、その《地》を無くすなんて誰でも思いつく」
奥瀬「予想して 対策 していたんだよ」
なるほど、そういうことか
僕は単純だったんだ
よく見ると木と木の間がきらりと光っている
釣り糸が無数に繋がっているのだ
その釣り糸が光を反射した
奥瀬は空中に立っていのではなくて
その繋がった釣り糸の上に立っていた
奥瀬「俺がさっき木の上を飛んでいたのはお前の集中力を削ぐ為なんかじゃねぇ!この釣り糸を括る為だったんだよ!」
四方八方卯月の周りはグルングルンに釣り糸が巻かれている
囲まれた
釣り糸程度なら《水》で切ることができなく無いが、能力をつかったらその間に奥瀬に殺られる。
逃げ道があるとすれば…
上、真上、空だ
また《風》をつかって浮くことが出来たら
突破口が拓けるかもしれない
賭けるしかないのか
奥瀬「さぁ、嬲り殺しの続きだ!」
卯月「-くっ」
半端な風じゃ体を数メートル上に持ち上げることは出来ない
フルパワー!持てる力をすべて出す感覚でっ!
卯月「-《風》出ろおおおおおお」
ビリリリリッッッ!!!
呆気なく
発動されたのは《電気》
しかも卯月のまわりにだけ影響があるもの
絶縁体の木の上にいる奥瀬には全く効果がない
卯月「---」
ダメかよ…
すぅと力が抜ける
そこへ、
奥瀬「おらぁ!」
グミュチュッ!!
木から飛んできた奥瀬の右足の膝が卯月の鼻をえぐる
卯月「-ぁ」
卯月は鼻血を出し
力なく倒れる
奥瀬は卯月を踏み台にしてまた木に登る
だめだ
もうなにか能力を発動する気力もない
立つ力すら湧く気がしない
ここで
終わってしまうのか
奥瀬の攻撃を受ける感触が何回もあった
けど、その痛みすら遠く感じて
はぁ
脳裏に浮かぶ、何かの映像……
白い髪をした少年がスローモーションのようにゆっくりと地面に頭から倒れていく
少年は倒れながらも淡い瞳で僕を見つめる
----、!!!
その少年は僕の親友だ!
今は亡き旧友の顔が写った!
そうだ!彼のために…………
卯月「-こ、、で…」
奥瀬「む?」
ここで終われるかあああああああああああ!!!!!!!!!
そうだった!友のため
やつを倒すまではゲームオーバーになれない!!!
それまでは地を這う覚悟で闘え!!
たたかえ
戦え!僕!!!!
奥瀬「喰らええええええ!!」
奥瀬は決まった動きをするように僕に足を向けて飛び込む
バッ!!
僕は素早く寝返りをするようによけ、そのまま立ち上がる
奥瀬「なぁっ!」
卯月「-まだ、終わりじゃないぞっ!!!!」
もう一度友人の顔を思い浮かべ、大声で叫ぶ
奥瀬「小癪なぁ!!」
奥瀬は動揺しながらまた木の上へ
宇治咲「リズム・エロウジュン!!!!」
卯月「━━━ぇ」