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A街異能群像-僕達の変化について-  作者: 大紺すずしろ
序章
5/74

卯月の章 第5話 動機⑤/綱渡り



卯月「--あ、ありがとぅ」



宇治咲「っは、奴ら雑魚じゃねぇか。」


不良を追い払った宇治咲は得意げ手を腰に当てて笑っている。


すごいセリフだ

流石、強い人は言うことが違う……。


卯月「…」


しかし、その考えはすぐどこかに行ってしまった。


それ以上に気になることがある。


卯月「-君は」


宇治咲はどうなのだろうか。

自分と同じ異能力使いだが、能力を使えてしまう者なのだが……


宇治咲「ん?なんだ」


卯月「-君は一般人に能力を使うことについて、、なにも感じないの?」


僕は怖い。


無力な人を攻撃するのが怖い……




宇治咲は右手を顎に当て

少し考え始めた。


宇治咲「ぅーん、、持ってる力は出すもんだろ」



宇治咲「異能力が使えようが使えまいが敵には変わんねーだろ」



予想外、想定外、とにかく外れまくった回答がとんできた。


卯月「-そうか、なるほど」


自分も


自分自身も


この考えは必要不可欠だ。


そう思った。


自分は口先だけの人間なんだ、僕には覚悟が全く足りていないんだ。


能力があろうとなかろうと、敵は敵。


卯月「そうだね……。」


宇治咲「……? まぁいいか、卯月!もう用事は済んだろ?一緒に帰ろうぜ」


卯月「--いや、まだやる事が」


宇治咲「んぁ?まだあるのか、」


僕は宇治咲ではなく、地面を見つめる。


これ以上は


力にならないで欲しい。

と。


自分の力で何とかしたい。

と。



そんなことを無言で訴えた。


卯月「-だから、帰っていいから」


宇治咲「……」


宇治咲「じゃ、じゃあな」


宇治咲は何か言いたそうにムズムズしたが、流石に伝わったのか、

一呼吸すると、表情を穏やかにして 別れの挨拶をした。


そしてくるりと体を後に向け、ズボンのポケットに両手を突っ込んで歩いていった。


スクールバッグを背負った背中が景色に溶け込んでいく。





卯月「--はぁ、」


卯月「-めんどくさい目にあったな」



僕はそんな独り言を吐いてしまう……





━━━━━━━━━━━━━━━━━


-学校の近くの林-




何のための林なのか、もしかしたら私有地かめしれないこの林だが、僕は一人になりたい時は、よくこの場所に来る。


自然に囲まれたいと思う時があるのだ。

山や森とかに行った方が 自然に囲まれる感じはするけど、

そこまで遠出するのがめんどくさい。




僕は林の中を軽く散策した。


昨日の夕立で土が少し湿っている。

足で踏むと、簡単に凹み、そこから独特の匂いが出てくる。



さすが夏だ。

そこら中から蝉の鳴き声が聞こえてくる。

いつもなら耳に刺さるこの音たちも何故か今はそんなに嫌ではない。



僕は茂っている木の根に腰を下ろしてボーっとしようと思っていた。




???「うづき、 だよな」


???「見つけたぁ」


突如、どこからがねっとりとした男の声が聞こえてくる……!


卯月「━ッ!!」


腰をギュルッとまわし、背後を見る。


しかし……


そこには誰もいない。



額から冷たい汗が染み出るのを感じる。

これは……敵かっ?!



卯月「--っ!」


おいおいどうしたんだ?


探していた《敵》がそばに居るんだ。


喜べよ……僕……!




この瞬間、

さっきまで聞こえていた大量の蝉の声は一切僕の耳の中には入らなくなった。




そのままぐるっと辺りを見回す。


どこだ?


この声の主はどこにいるんだ……!



???「ヘヘッ、滑稽だな」


さっきよりも大きな声が聞こえた。


近いッ!どこ


に?!!



卯月「うグゥっ!!!」


思考が滑らかに回る前に 上からの衝撃と圧力に体が屈する。


脚は耐えられずに関節が曲がる所まで曲がり、上半身は平衡感覚を失い、頭蓋骨が地面に激突する。


卯月「いでっ……」



《敵》は上から降ってきた。




???「おいおぃ、流石に1発KOはないよな」


???「うづきくぅん??」


卯月「ふぅぅ…」


敵は僕の頭を足でグリグリと踏みつける。そのせいで起き上がることが出来ず、敵の正体を確認でない。


ただじっとりと湿った地面に唇と、鼻を擦りつけることしか出来ない!


切り抜けないと……!


能力……! なんでもいい。


僕の能力の発動を!!



卯月「……っ」


なんでもいいから出ろぉぉぉ!!



ビリリッ━━ッ!!!!!!!!!





???「っと、、んぁ?雷、静電気? 電気系だな」


僕の体から電気が発生した。


敵は感電する前に僕から離れる。


???「聞いていた能力とぉ、違うな」


卯月「…」


僕はようやく起き上がることが出来た。


ここでようやく《敵》の姿がはっきりと見ることが出来た。


卵形の顔に短髪の男、服は林の木と同化するような茶色の革ジャン。


ここでの戦いを有利にできるような服だ。



卯月「-『聞いた』って……」


卯月「--誰に! 何を!」


そう言えばこいつ……さっき、僕の名前を卯月と呼んでいた! 僕はこいつを知らない。 なのにこいつは僕を知っている!


こいつのこの攻撃は、計画性のあるものだ。

事前に僕がこの林に来ることを予想して、僕の能力を調べて、この場所で有利に戦える格好をしている。


こいつが、誰かから僕のことを聞いたとすれば……

その《誰か》こそっ! 僕が探している人かもしれない!



???「そうだな・・・」


???「このまま一方的に俺が勝ってもお前の冥土の土産がないなぁ、」



奥瀬「俺の名は奥瀬逸郎おくせ いつろう、異能力使いさぁ。能力名は《パーフェクトダンサー》。 上のヤツにお前を早いうちに消せって言われてね」


卯月「-!」


上のヤツ。

僕の知りたかった答えは、そう簡単に吐いてはくれなかった。

しかし、僕はそれを聞き返すことよりも、この台詞の一言が強く印象に残り、 上のヤツの正体のことは、忘れてしまった。



『消す』


消す……?


消すってなんだ!??



奥瀬「まぁ、こんなこと言えるのも今くらいだしな、、」


奥瀬「ちょっとぉ、恥ずかしが言わせてもらおう」






奥瀬『お命頂戴いたします』






覚悟を決めろ僕ゥ!!!


半端なやつじゃない! 僕も! 全力で戦う!!!


そうしなければ! 死ぬ!!


刹那、右腕に寒気を感じる。

生理的な寒気ではない。

そして、えげつない量の汗が右腕から染み出してきた。



だが、同時に理解した。


これは、汗ではない。



これが 異能力だ。


と。


卯月「----ゥ」


卯月「甘く見すぎだぁ!!!!」



こうすれば能力が使える。確信があった。


さっきのなんでもいいから出ろって言う曖昧な感覚じゃあない!


ハッキリとした 鋭い感覚っ!



僕は右腕をムチのようにビュルンと縦に振った。


右腕から飛沫を上げ、水が刃のように奥瀬に向かって飛んでいく!



奥瀬「ぬわっ」


奥瀬は右に身体を回転させながら避ける。


発動した《水》は木にあたり、熊が木ををが引っ掻いた傷の5倍くらいの深さの傷をつけて消えた



奥瀬「おいおい、聞いていた能力と全くの別物だ!」


奥瀬「おまえぇ、なんだその能力はぁ!」


卯月「--さぁな」




奥瀬「チッ」


奥瀬は少し青ざめたかと思うと、舌打ちをして、

逃げるように木陰に隠れた。



卯月「-逃げるなっ……」


奥瀬が隠れた木に駆け寄り。


木の裏を覗く。


しかし


奥瀬はそこに居ない。




卯月「-本当に逃げ、、そんなはずはないッ」


上からの司令。

消す と宣言したこと。


奥瀬が驚いて逃げたとは到底考えられない。


消えたのは奥瀬の能力だろうか。


卯月「--」


すぐにまた攻めるはず。




---ヒュ


-ッ!


上になにか気配を感じる。

頭上を飛んだような。


首は曲げずに目玉を少し上に向ける。


居ない。か……


卯月「…」



だめだ。集中力が持たない。

神経を削ることが奥瀬の目的なら、

今の僕は彼の思う壷だ。


《攻める》しかない。


荒れる呼吸をかき消しながら

木に当てていた背中を木から離し、


能力を発動する!!



卯月「うあっ」


そこに現れたのは


否、そこで発動したのは


水でも電気でも火でもなく、


ビュワッッ━!!!




《旋風》だった


卯月の真下から起こった風は


周りの木々を揺らし、土や葉を


そして、卯月までもを巻き上げて消えた。


卯月は風によって浮き上がったのだ




一瞬であったが、確かに浮いた! 数ミリじゃなくて、数十センチは浮いた!!



卯月「━!!」



僕はさらに驚きが重なる。


目の前に奥瀬がいた。


しかも木の上

細い枝の上に立っていた。




僕はそのままバランスを取れずに尻から地面に激突する。


卯月「ふぐっ」


卯月「い、ってぇ…」


僕はズボンについた土を払う前に上を見上げ、奥瀬の姿を確認した


まだ目の前の木に立っている


しかも両手を組み、余裕を見せつけている。


奥瀬「お前の」


卯月「--!」


奥瀬「お前の能力、分かったぜ」


奥瀬は下唇を右上に曲げ


嘲笑う様に呟いた。





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