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A街異能群像-僕達の変化について-  作者: 大紺すずしろ
序章
2/74

卯月の章 第2話 動機②



━━━━━━━━━━━━━


卯月「……」


今日は奇妙な日であった。

いつもの通り学校を適当に終わらせた後、

《あること》を追求するため、街を歩いていると、さっきの男に勘づかれ、勝負を仕掛けられた。


そして、対抗する手段を考えぬまま戦いは終盤を迎え、適当に倒れた方が身のためであろうと思った時、

自分とは全く接点のないクラスメイトが助太刀してきて、予想外にも敵を撃破することが出来た。


そして、そのクラスメイト……宇治咲は、僕と同じ異能力者であった。



この街……いや、この世界には極小数人ながらも、

通常の《人間》では成しえない力、異能力を所有する者が存在している。


基本的に、自分が異能力を使えることは隠していて、普通の人間と変わらない生活を送っている。


僕がこれまで生きてきた中で出会った異能力者は、片手で数えられる程しかいない。

けど、実は出会った中のまた数人は、僕と同じように、異能力を隠していた。なんて可能性は十分にある。




少し話がズレてしまった……。


僕は、この戦いの後、宇治咲に「家に来い」と

そう、唐突に 前触れなく、言われたのだ。


そしてまた彼は、強引に僕の右腕を握り、無理やりに連れていこうとする。


僕の腕を握った時に何か言ったような気がしたが、よく聞こえなかった。


兎に角 僕はこの宇治咲を信頼していない信用していない。

つまりまだ味方だとは考えていない。



僕の過去にはある事件があった。

その事については 後々、おいおい話していこうと思う。



僕は渋々彼について行くことにした。


本当はすぐにでも家に帰って寝たい。

どうせ安眠なんか出来ないけれど……。

それでも横になって、できるだけ何も考えないようにして、 一日を終えたい。



宇治咲「なぁ、もしかして俺が敵じゃないかとか、疑ってんのか?」


僕を先導する宇治咲が緊張気味な声で話しかけてきた。



卯月「--そりぁそうだよ」


先程も言ったが、異能力者なんて早々会うものじゃない。

疑うに決まってる。

たしかに宇治咲はさっき、僕に助太刀をした。

けど……。


まだ、信用したくないんだ。


宇治咲「んん、確かに俺が敵じゃねーって証拠はねぇーけどよ……」



卯月「--」



卯月「」ギュルル


卯月「うっ………」


僕のお腹が鳴ってしまう。


宇治咲「は、腹へってるだろ?飯作るから、俺の美味いって、な?!」


その音を聞いた宇治咲は一瞬目がぱっと明るくなり、テンション高めでそう言った。



卯月「-…」


確かに腹は減っていた。




卯月「--分かったから。 」



宇治咲「え?」


卯月「--ついていってるでしょ? だから、少し黙ってて。耳が痛いよ」




それを見て宇治咲は、目を細めて頬をかいた。



宇治咲「すまねぇな。なんだか嬉しくって。 」



宇治咲「捨てられた猫を拾った気分だ」


卯月「--は?」




宇治咲「な、なんでもねぇ……」



━━━━━━━━━━━━━━━━━



宇治咲「………」


俺はついてくる卯月の顔を少し首を後ろに曲げて確認する。

愛からわず黒い顔。

ずっと下を向いて歩いてて、まるで数十分前の自分みたいだ。



顔を前に戻そうとする時、

卯月の後ろにそびえる山々の上に、入道雲が黒く、大きく発達しているのが見えた。




宇治咲「お前さ、異能力使いだよな?」


今度は卯月の顔を見ないで、前を見ながら話しかける。


卯月「--ぅん」


卯月は小声で答える。


宇治咲「どんな能力なんだ?さっきのじじいを殴った時、奴は熱いって言ってたけど」


卯月の足音が無くなる。 立ち止まったのだ。

俺も立ち止まって、後ろを振り返る。


サーーっと、冷ややかな風邪が俺の前髪を揺らす。


卯月「-わからない」


宇治咲「え?」


自分の能力が、分からない?

そんなことがあるのか……?


俺は口を半開きにしてしまう。


卯月「--だから……わからない 」



そう言うと卯月は歩き出した。


そして、それ以上自分の能力について言及しようとはしなかった。

本当は分からないのか、俺を信用してないから答えないのか。

真っ黒な彼の顔から、その答えを見つけるのは難しいことである。


俺は話題を変えようとする。


宇治咲「いつ能力を手に入れたんだ?」


卯月「--それは」


卯月は歩きながら右手で左腕を掻きながら 少し考える。


卯月「--まだ話さない」


宇治咲「どぅ、、そうか。」


俺は質問をやめた。


卯月のことは気になったが、彼の態度と言動からまだ全く自分を信用していないこと、それに彼の過去を垣間見たからだ。


俺は自分の話をしようと思った。


汗ばんだワイシャツの腰に手を当てる。


宇治咲「俺はさ、小学校の頃に自分が異能力使いってことを知ったんだ。侵食っていう曖昧な能力で」


宇治咲「他人には無いものを手に入れたんだからって、自分はすごいんだって、それで」


宇治咲「遊んだ。毎日のように」


卯月「--」


卯月はさっきよりもちゃんと俺の顔を見て話を聞いている。


宇治咲「そのことは後悔してるし、していない って、な?曖昧だろ?」


卯月「--なにがいいたいの?」


首をかしげて言う。


宇治咲「ぁんー、そうだな」


卯月の一言で、卯月を元気づけようとしていて空回りしていることに気づく。同時に次に発すべき言葉がわからなくなる。


宇治咲「……元気にもっと明るく生きろってことだって、な?」


無理やり話をまとめようとして、変な形になってしまった。


卯月「--」


卯月はまた下を向いて歩き出した。



俺は、やっちまったなと思ったけれど、

それ以上なにか話すこともなかったので、

黙って卯月を俺の家まで先導した。



━━━━━━━━━━━━━


宇治咲「ただいまー」


A街の駅に近い、二階建ての一軒家。俺の家だ。


俺はドアノブを引き、家に入る。


宇治咲 智「ん、おかえりー」


中からは俺の弟が挨拶をしてくれた。


宇治咲うじざき さとる



小学生の俺の弟だ。






━━━━━━━━━━━━━━━━

公開可能な情報


A街


発展度が似ていて、

隣合っている

阿藤街(あとうまち) 安孫子街(あびこまち) 新巻街あらまきまちの3つの街を示すもの


これら3つの街の発展度は

田舎というには建物が多く、都会と言うには緑が多い微妙なところである


実際の街とは関係ない

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