episode.5 前言撤回撤回
お願いします( ´∀` )。
やっべえええええええええええ!!・・・などと唐突に叫んでも何が何だか分からない方のために説明してやると・・
前回までのあらすじ。
キモイぐらいに凶暴な熊と戦わされ、途中で魔力が切れた。
以上だ。俺はこんな絶望的な状況の中、脳をフル回転させ、どうにかしようと試みる。なんかないのか?頼む、モ〇ハンの虫の死骸ぐらい無駄なものでいいからなんかあってくれ!俺はそんな面持ちでポケットに手を突っ込む。
「ん?」
すると、ズボンのポケットにボコっとした感触が・・。急いで感触の正体をポケットから取り出すと、
「これは・・ポーションだ!」
俺のポケットから出てきたのは、魔力回復のポーションだった。試験前、念のためとポケットに入れていたのを忘れていたのだ。さっすが俺。やっぱまだ終わりじゃない。俺の夢への道のりはまだ閉ざされていなかったんだ!
俺は蓋を開けると、すぐさまポーションをのみ・・ザシュ!
「え?」
・・ほそうとすることは出来なかった。暴れ熊にひっかかれ、パリン!と遠くでひび割れたポーションの音が耳に入る。
「・・・・・・えーと、これは・・・」
前言撤回。やはり俺の夢の道は閉ざされていた。さっきはたぶん俺の道を覆っていた土砂が崩れ、一瞬だけ光が差し込んだだけなのだろう。
グルルルル・・。
暴れ熊は弱点であろう背中を攻撃されたせいか、かなりお怒りだ。はあ・・これ詰んだんじゃね?俺はため息を限界まで吐くと、くるりと反転して暴れ熊から逃走した。許してくれ、みんな。「うわ、逃げるとかないわ~。」「あいつ、ダッさ。」会場のあちこちからする非難が俺には手に取るように分かる。もうこれではファナやリルアに同じようなことを言われても仕方がない。
目の前にステージの柵が見えた。これを飛び越えれば俺の夢は終わりだ。あーあ、また農民に逆戻りか・・また汗水垂らしながら一日中鍬を振り下ろす毎日が待ってるんだろーな~。まあ、そんな毎日も悪くな・・。
「悪くない」そう言いかけたところで俺はふと思った。ん?鍬?俺は村にいた時からここにくるまでずっと鍬をぶら下げていたことに気付く。
「これを使えば・・・。」
俺は逃げる姿勢から一転、再び正面に向き直ると、暴れ熊の方へ視線を集中させる。暴れ熊は突進の勢いを弱めることはない。
「まだだ、まだ・・・もっと引き付けてから・・」
俺は暴れ熊とぶつかる一歩手前で横に回避。そして、背後を取ると、
「うおおおおおおお!!!」
思いっきり、鍬を振り下ろした。
ゴン!!!
鈍い音が響き渡る。
しばらく、静寂がコロシアムを支配した。
「戦闘終了!グレンさんの勝ちです。」
その巨体が崩れ落ちたのが先か、試験官がそう言ったのが先か。
どこかのサーカスのような軽快なファンファーレが鳴り響き、緊張状態だった俺の心を包み込んだ。
勝った・・のか?あの熊に?俺はまだその事実に信じられず、周りを見ると他の試験者たちのどよめきが見て取れた。ってことは・・合格ってことか?
「っしゃあああああああああ!!」
喜んでいいよね?だってあの熊に勝ったんだもん。喜びの雄たけびを全力であげる俺。しかし、そこに水を差すものがいた。
「おい、試験官!あいつ、最後魔法使わずに勝ったぞ。あんなのダメだろ!魔法使いの戦いに反する!」
言わずと知れたグリードである。グリードは試験官を呼び捨てにして呼気を乱しながら言った。全く敬語も使えんのか?
「グリードさん、あなたはもう少し言葉遣いに気を使いなさい。さきほども試合中に暴言を吐いていましたね?あまりひどいようですと減点にしますよ?」
試験官はグリードとは相反して、熱を感じさせない冷たい口調で言うと、氷のごとき瞳でグリードを睨みつけた。ほーら言わんこっちゃない。
「しかし、その意見も筋が通っていますね~。ここは、会長に審議してみましょう。」
え?ダメなの?だんだんと不安になってきた俺をよそに、試験官は何やら会長の耳元でごにょごにょとささやいている。多くの試験者が見守る中、会長の元から試験官が離れ、再びマイクを持った。
「ええ~。会長との審議の末、先ほどのグレンさんの行動は魔導士としてはあるまじき行為であったと認識しました。しかし、それは魔力切れが起こったからであり、加えて、実際の現場で魔力が切れることなど珍しいことでありません。そこで、今回は魔力が切れた後のことも想定内として、魔力が切れた場合のみ、魔法以外の攻撃を許可します。」
会場内にざわめきが起こる。
「よって、グレンさんの行為は失格とはならず、合格とします!」
「っしゃあああああああああ」
コロシアム内に再度響く俺の雄たけび。暴れ熊にも劣ってないんじゃないないだろうか。俺は喜びを深くかみしめる。
前言撤回撤回。やはり、俺の夢はまだ続いているようだ。もう逃げたりするもんか。俺はそう固く誓った。
もっとキャラ増やしていきたいと思います。