episode.2試験開始!
お願いします。あんまりキャラ増えません。
俺は体の全身から負のオーラを醸し出しながら、試験会場へと向かった。はあ・・疲れた。
昨日、夜遅くまで魔法の練習をしていたので寝不足と魔力欠乏症のダブルパンチだ。
朝、顔を見るとひどいクマがついていたほどだ。顔をもみほぐせば、少しはましになるような気がした。
「ひどい顔だね~。」
そんな俺の胸中を映し出すかのように、一人の少女が話しかけてきた。名前はリルアというらしい。リルアは俺とは正反対に溌剌とした笑顔を見せつけながら、俺の横に来る。彼女のショートパンツからは、スラリと伸びた艶めかしい足が見えた。
「俺はグレンだ。よろしく。」
とりあえず、自己紹介をしておく。リルアと俺は試験会場まで歩きながら話した。
ゆっさゆっさ・・。いかん。歩くたびに揺れるその双丘についつい目がいってしまう。
「君も試験に出んの?」
彼女の声で我に返る。
「ジョブは魔導士じゃないみたいだけど?」
リルアがそう言うのも当然だ。この魔導士選抜試験というのは、ほとんどが魔導士ジョブとかを持っている奴が国家専属の魔導士になるために行うもので、それ以外の者たち、いわゆる俺のような平民からの参加者はめったにいないのだ。中には平民から大魔導士にまでなった者もいるらしいが、そんな奴はごく一部だ。
そのため、リルアに自分のジョブが農民だということを伝えると大層驚かれた。
「にゃはは。じゃあグレン君は農民代表だね~ん。」
リルアは軽快な笑顔で俺の肩をたたく。
しかしどうやら、勘違いをしているようだ。なんか俺が農民でも大魔導士になれるんだと、証明するために農民代表として試験に参加したと思っているみたい。あいにく、俺はそんな善意はひとかけらもないし、人のために何かをやってられるほどできた人間でもないのでね。だがここはあえて言わずにリルアの想像に任せるとしよう。
彼女は俺のことをいい奴だと認識し、俺に感心する。そして俺もそう思われることで優越感に浸れる。非常にウィンウィンな関係ではないか。それに世の中には知らない方が幸せなこともあるのだ。
そうこうしている内に、試験会場に着いた。俺は村の倉庫からくすねた魔力回復のポーションを飲んで、気を引き締める。あと1本は念のため、ポケットに入れておいた。っていうか自分に、盗みの才能があると思うのは俺だけだろうか。
今までいろんな物を村の倉庫から盗んできたが、一度だってバレたことはない。俺の職業・盗賊だったら結構いい線イってたんじゃね?もし、神がジョブを決めるスイッチを持っているとしたら、俺の時に寝ぼけてて、つい押してしまったとかだろう。などとどうでもいいことを呟いている内に試験は始まろうとしていた。
「いやあ、やっぱ緊張するっさねえ。」
リルアが耳元でそっとささやく。とはいえ表情に余裕があるので、俺が思うほど緊張してはなさそうだ。いつの間にか会場にはかなりの人が集まっていた。そのほとんどが長いローブ的なものを全身に羽織っていて、いかにも魔導士と言った感じの雰囲気で佇んでいる。
俺は会場のあちこちから、嫌悪の目を向けられた。まあ、そりゃそうなるわな。貴族のダンスパーティーに貧乏なホームレスがつぎはぎだらけの薄汚れた服を着て現れたようなものなんだから。
場違いだ。何しに来たんだ。農民の分際で・・。俺に向けられた、視線が人々の感情を物語っていた。
ただ、俺から言わせてもらうとそんなもの知るか!だ。ここは魔導士になりたい奴が来る場所であり、そこには魔導士だの農民だのは関係ない。
「だいじょうぶ~?」
リルアが声を掛けてきた。どうやら、俺を心配してくれているらしい。声色的にはそうは思えないが。
「ああ。ってかお前こそ俺と一緒にいて大丈夫かよ。」
「なんで?私がグレン君といると何かあんの?」
どうやら本気で言っている模様。これはリルアのやさしさなのか、それともただの天然なのか。まあ、どちらにしろ、リルアがそう言ってくれたおかげで、安心できた。
「おおっ、始まるぞ。」
辺りが騒がしくなったかと思えば、壇上に一人の老人が出てきた。どうやら、この試験の試験官のようだ。他の者よりも少しお高い感じのローブを着た老人は壇上中央に立つと、皺だらけの口を目いっぱい開いて言った。
「ただいまより、第143回ロアーナ地区魔導士選抜試験を始めます。」
会場の熱気が一気に高まる。俺も同時に心が奮い立つのを感じた。
「ここからだ。」
俺の夢への第一歩がスタートした。
ありがとうございました。