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15話 ギルド長

「ねえ、これから買い物に行きません?」


 授業も終わり、これから寮に戻ろうかと考えてた私に、誰かが声を掛けてきた。振り向くと、そこに立っていたのはリーザスちゃんとエインちゃん、そしてミア・クリアーちゃんの3人だった。

 リーザスちゃんとエインちゃんは、あの事件の時のこともあって、Sクラスに入ってすぐに仲良くなった。最初はさん付けをしてたけど、仲良くなるにつれてちゃん付けになった。

 そしてミアちゃんもここで仲良くなった友達だ。天然な部分もあるけど、常に笑顔で優しくしてくれる。私がSクラスに入ったばかりの時、緊張して右も左も分からなかった私に色々と教えてくれた。

 そんな3人が並んで私の方を見ていた。


「実は、うちの支店がこっちで開店することになりましてね。それでもし興味があったら一緒に来て欲しいんです」


 そう言うリーザスちゃんの実家は、アルター共和国では随一の魔術道具専門の商家、クァンタム商会だそうだ。世界各地に支店を広げていて、クレイドル王国にもいくつか店があるし、私も何度か見たことがある。だけど、そのほとんどが学生のお小遣いじゃあとても買えないほど高い物しか売っていない高級店だから、入ったことすらない。

 娘であるリーザスちゃんやその使用人であるエインちゃんは問題無い。ミアちゃんの家はどうなのか分からないけど、その雰囲気からしてついていく様子だし、お金の問題は無いんだろう。正直言ってみたい気もするけど、お金が無いんじゃあ仕方がない。諦めようと口を開いた時、私の様子に気付いたようなミアちゃんが口を挟んだ。


「大丈夫。今日行くお店は、主に学生をターゲットにした魔術道具店らしいの。今回は私達のような学生の目線からどうなのか聞きたいらしいし、協力のお礼に少し安くしてくれるみたいだから、そこまでお金は必要ないらしいよ」


 その言葉に心が動く。正直、どんなものが売ってあるのか見てみたい。それに友達と買い物なんて、数年ぶりだ。学園じゃ友達が出来なかったし、アイラちゃんと会う時は必ず特訓だったから、クレイディアに来てからは一切無かったということになる。それに何よりも、ミアちゃんの目が私にも来て欲しいと訴えているように見えた。


「…じゃあ、行くね」


 その言葉にミアちゃんが満面の笑みを浮かべる。そして私達は、その魔術道具店に行くことになった。



××××××××××



 依頼も早々に終え、ギルド近くの喫茶店で食事をしていた時、急に辺りが慌ただしくなった。気になったので、耳を傾ける。


「おい、聞いたか?」

「うん? ギルド長の事か?」

「ああ。今日、帰って来るらしいぞ」

「また、面倒な事とか起こさなきゃいいけどな…」

「無理だろ。あの人はそう言う事に首を突っ込む事が趣味なんだし…」


 ほう。ギルド長が帰って来るのか。そう言えば、今まで一度も会ったことが無い。ゼノは副ギルド長だったということをすっかり忘れてしまうほど、ギルド長についての話は耳に入らなかった。一体、どのような人物なのだろうか。どのような魔術を使うのか好奇心が湧いてくる。

 会計を済ませ、もっと詳しい話を聞くためにギルドに入る。ギルドの中でも大勢の魔術師が騒がしくしている。それほどまでにギルド長は有名なのだろうか。すると、テーブルで他と同じように話し合っているマックスとエイナが見えたので、近付く。あっちもこちらに気付いたようで、手を振って来た。


「アイラさん。あの時以来ですね。どうでしたか、その後は?」

「特にこれといった問題は無かったですね。それにしても大分賑わっているようですが?」

「実は、この魔術師ギルドのギルド長が数カ月ぶりに帰ってくるそうなんですよ。確かファルグ帝国まで依頼で行っていたそうなんですが…」

「ついでに言うと、あの人はクレイドル王国で三賢者として認められているから、ギルドにいるよりも他の所に居ることが多いんだよ。俺達も、まだ3回しか顔を見たことが無いし」


 なるほど。ギルドに帰ってくること自体が珍しいから、これほどまでに浮足立っているということか。ところで三賢者とは何なのだろうか。それを聞くと、マックスが説明してくれた。


「三賢者ってのは通称で、国王から直々に賢者の称号を与えられた魔術師の事を指すんだよ。1人は魔術学院の校長のグイン・ランディス。次に王室魔術師で君と同じ古代魔術の使い手である、アルベルト・フォールン。そして最後にギルド長である、ユーリア・ガーネット。この3人はクレイドル王国でもトップの実力を持っているから、尊敬の意を込めて、三賢者と呼ばれているんだよ」


 なるほど。つまりこの国では最高峰の魔術師ということなのか。…それは良いことを聞いた。どうにかしてその3人と戦えないだろうか。魔術学院の長に古代魔術の使い手、そしてこの魔術師ギルドを束ねる存在。話を聞くだけでもかなりの実力が伺える。きっと面白い魔術が使えるのだろう。それを考えただけでも、心が躍る。

 しかし、問題が1つある。どうやってその3人を焚きつけるか。下手なことをすれば、私の正体がばれてしまうかもしれない。そうなったら、この国から出ていかなければならないだろう。最悪の場合、他の国にも情報が行き、世界中が私を狙ってくるかもしれない。生半可な魔術師等では相手にはならないが、それでも数が多いと、面倒な事この上ない。さて、どうしようか。

 1人で思考に没頭していたが、しばらくして周囲の喧騒が鳴りやんだ。一体、どうしたのだろうか。疑問に思っていたら、エイナが耳打ちをしてきた。


「どうやら、ギルド長が来たみたいですよ」


 その言葉を聞いて、すぐに入り口の方に視線を向けた。そこは未だに人だかりがあるが、一点だけまるで結界が張られているかのように人が避けられていた。私がいるテーブルとそこまではある程度の距離があるものの、その魔力の流れがこの体の感覚を通して分かる。それは、魔術師が大量に居るこの場では、注意しなければ分からないほど抑え込まれているが、かなり繊細な魔力である。これほどまでに洗練された魔力は、蘇ってから初めてだ。これだけで、かなりの実力者がいることが読み取れる。

 既に私は内心で喜んでいた。これほどの繊細な魔力を持つ魔術師とは一体どのような人物なのだろうか。私とエイナ達は立ち上がって、人込みの中に紛れ込んだ。せめて顔だけでも見ておこう。だが、この小さい体のせいで、周囲の魔術師達に隠れてしまい、なかなか前へと出られない。

 もう、諦めようかと考えたその時、私の前に居た魔術師達の間に隙間が出来、そこからギルド長と思わしき女性の姿が見えた。

 身長は私より二回りほど高く、髪は長い銀髪。その肌はまるで雪のように透き通った白。手には年代を感じさせる、先端に宝石が付いた木の杖が握られている。そして何よりも特徴的だったのは、髪から飛び出した尖った耳。

 そう。私も話の中でしか聞いたことが無かった存在。古代魔術よりも遥か前から存在する魔術を作り上げた種族、エルフの姿がそこにあった。



××××××××××



「お帰りなさい、ギルド長」

「おー、ゼノちゃん。元気だった~?」

「あの…、その呼び方は止めてもらえませんか?」

「良いじゃん。私は君が子供の時から良く知ってるんだから。本当に、あの時はこんなに小さかったのに、今はこんなむさ苦しいおっさんになっちゃって…」

「むさ苦しくて悪かったですね。部屋は掃除しておいてあるので、汚さないようにしてくださいね」

「善処します」

「いつもそう言ってますけど、本当に大丈夫ですか?」

「あくまで善処するだけだし」

「全く、あんたの世話係じゃないんですよ、俺は」

「ふふっ。いつもありがとねえ」

「そう言えば、依頼はどうでしたか?」

「問題ないよー。ああ、それと1つ」

「何ですか?」

「あっちの皇女様がこっちに留学するそうだから、よろしく頼むってさ」

「え?」

「もう既にお忍びで来てるらしいし」

「いや、不味いでしょう!? 他国の王族にもしものことがあったら!?」

「大丈夫、大丈夫。私のゴーレムが見張ってるから、問題無いって」

「何であんたは、そう楽観的なんだ!?」

「それに、面白そうな子もいたし」

「いや、話を聞けよ!?」

 ユーリアは出したかったキャラです。このキャラを出すためにゼノをギルド長という設定から、副ギルド長にしました。

 とりあえず、この章ではアンとSクラス中心に進んでいく予定ですので、お楽しみに。

 …あくまで予定ですからね。

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