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14話 特訓の成果(物理)

 正直に言うと、この小説、終わらせ方は考えているんです。ただ、そこまでの道のりがほとんど考えていないという状況ですので、途中で話の一部を少々改変してしまうかもしれません。

 皆様、ご理解とご容赦のほど、この小説をよろしくお願いします。

 …一応、次のストーリーも大体考えてはいるので、それほど大きな改変は無いと思います。

 どうしてだろう。いきなり、ギルドの訓練場で3人の魔術師の人と戦うこととなった。いまいち状況は把握できてないけど、その3人は目を血走らせているし、何か怖い。

 でも、逃げようなんて気は起きなかった。良く分からないけど、アイラちゃんが信頼して任せてくれたんだから、それに答えたいというのが1つ。そして、この3人は私のことをアイラちゃんには相応しくないなんて言ってきた。そんなことぐらい、言われなくても分かってる。私はアイラちゃんの足元にすら及ばない、ただの学院生徒だ。基本魔術だってまだ勉強をしている身だし、古代魔術だってほとんど使いこなせていない。だけど、他人に言われてムッとしないわけがない。特に、アイラちゃんが追い払ったあの男達とよく似た目をしている人に、私の何が分かるって言うんだ。

 ちょっと前までの私だったら、すぐに逃げ出していたかもしれない状況。でも、今の私は違う。決して逃げないし諦めない。その思いを持って、私は3人の前に1歩踏み出した。


「準備は良い?」


 アイラちゃんの声に私と3人の魔術師は黙って頷く。ルールは魔術を使わずに相手を戦闘不能にするか、降参させれば勝ち、というシンプルなもの。ただ、こっちは1人であっちは3人、しかもそのうち2人は男。私はそこまで格闘が得意じゃない。せいぜい、授業で少し護身術を習った程度。それでも、まだ負けると決まったわけじゃない。

 私はしっかりと相手を見据える。3人もそれぞれ構える。それを見たアイラちゃんが、ゆっくりと右手を挙げた。


「それでは…、始め!」


 その手が振り下ろされるのを見て、それぞれが動き始めた。

 まず最初に、大柄な男の人が、大きく振り上げた腕を勢いよく私に向かって振り下ろしてきた。だけど、スピードは遅い。多分、様子見だろう。私は余裕をもってそれを避ける。すると今度は女の人が突っ込んできた。さすがにこれを避けられないわけがない。ただ、大きく動いたら隙になるかもしれないから、軽く斜め後ろに向かって跳ぶだけにする。さらに細身の男の人が、頭に向かって回し蹴りをしてきたから、かがんでそれを避け、バランスを崩したところで袖を引っ張って投げた。すぐにその人は受け身を取り、態勢を整える。

 そこから、3人はそれぞれ攻撃を仕掛けてきたけど、その攻撃は速くないし、連携は上手くない。簡単に避けることができ、ある時は別の人を盾にして、またある時はわざと同士討ちさせた。それでも3人はそれぞれ勝手に動いては足を引っ張り合って自滅していく。

 そんなことが15分ほど続いてから、私はおかしいと気づいた。まだ本気じゃないと思っていた3人の息が上がってる。私はそんなに全力で動いてないから、まだまだ余裕はあるのに、どうして3人の方が疲労しているんだろう。

 まさか、あっちは最初から全力だった? でも、簡単に目で追いつける速度だったし…って、そのこと自体がおかしい。なんか、今まで疑問に思わなかったけど、何か相手の動きが良く見える。それこそ1人だけじゃなく、視界に映る全員の動き、それどころか視界に映っていない人の動きすら感じ取れる。

 一体どうして。疑問に思いながらも、向かって来る3人の攻撃を避けることに集中した。



××××××××××



 やっぱり、あの3人程度ならアンの敵じゃない。改めてそう実感した。

 試験前に行った特訓。あれの本当の狙いは、体力を付けることでも、足を速くすることでもなく、目を鍛えるためだ。どんなに素早い物にも追いつける目。相手の動きを先読みする目。全体の動きを読み取る目。それらが身に着けば、複数人相手でもこのように問題なく戦うことができる。

 そもそも、生身で魔術を避け続けるというのはかなりの技量が必要になる。それこそ基本魔術なら詠唱から魔術の種類を特定して、それを元に回避することができるが、古代魔術はその性質上特定が難しい。だからこそ、いかに放たれた魔術に対応するかが重要となる。それを続けていけば、次第に目を鍛えることとなるのだ。ついでだが視界範囲外の攻撃に察知する勘も鍛えられる。実際に私も師匠にこの方法で鍛えられたことがある。ただその時は、アンにやったように量を重視して小技を連射するようなものじゃなく、周囲一帯に被害を及ぼすような大魔術から逃げるというものだった。…うん。今思い返しても、良く生き残れたと思う。さすがにあんな危険な師匠のやり方よりも、私のやり方の方が十分親切だ。絶対、間違いなく。

 まあ、アンは気が付いていない様だけど、既に目に関してだけならば、古代魔術師として十分な力を持っていると言える。そんなアンに、連携も出来ていないあの程度の魔術師3人が、魔術無しで勝てるわけが無いのだ。

 そしてしばらく経ってから3人は疲労で倒れこんだ。最早、これ以上は意味が無いだろう。


「この勝負、アンの勝ち!」


 その言葉を聞いたアンは、最初は何か疑問に思ったような顔で、しかしすぐに笑顔で私に駆け寄って来た。しかし、倒れこんでいた3人が、何かをぶつぶつと呟く。


「…ふざけないでよ。こんな体力勝負で弟子を決めるなんておかしいんじゃないの!?」

「…そうですよ! 俺の魔術を見てくれれば、すぐに思い直すはずですよ!」

「…大体、魔術もまともに使え無さそうなそんな子に、何を期待しているんだ!」


 3人は思い思いに叫ぶが、どんな言葉も私とアンには響かない。

 …ただ、1つムカつくことがある。私は倒れこんでいる3人の目の前に立つと、ゆっくりと右足を上げ、そのまま勢い良く振り下ろした。



―ドスンっ!!!!!!!!―



 その衝撃で地面が大きく窪む。それを見た3人の顔は、恐怖に染まっている。


「負けた奴が何を言っても、ただの遠吠えにしかならないよ」


 冷めた目で3人を見下すと、そのままアンの下へと向かう。そして一度だけ振り返り、3人に言った。


「今度、アンのことを馬鹿にしたら、私が好きなだけ相手になってあげるから」


 その言葉を最後に私はアンを連れて、訓練場から出ていった。



××××××××××



 訓練場を出た後、広間で私とアイラちゃんは向かい合い、黙っていた。

 色々聞きたいこともあるし、言いたいこともある。あの後、どうだったのかとか、さっきの人達は何だったのかとか、そういえばSクラスになれたとか。でも、なかなか口に出せない。

 そんな微妙な雰囲気の中、アイラちゃんの方から話しかけてきた。


「さっきはごめん。なんか、面倒なことに巻き込んじゃって…」

「えっ、いや、ううん。別に大丈夫だよ」


 いきなり謝られて、つい動揺してしまう。


「あの3人にはこの間から付き纏われて迷惑していたから、本当に助かったよ。だけど、アンを利用する形になったし…」

「ううん。別に良いよ。私もいつもアイラちゃんには助けてもらっているし…、その恩返しだと思ってくっれば良いから」


 その言葉にアイラちゃんはどこか安心したような表情を浮かべた。

 そしてそこからは、中々出てこなかった言葉が溢れるように出てきて、アイラちゃんはそれに一つ一つ答えていった。そしてアイラちゃんからも、試験の時の魔術は良かったとか、大分筋は良いとか、いろんなことを褒められた。ただ、明日からはもっと特訓をハードにするって言うのだけは、少し勘弁してほしかった。

 そんな暖かな時間だったけど、あの試験の時の話をしたとき、少しだけアイラちゃんの顔が曇ったことが気にかかった。

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