どうすればあなたの世界に入れるの?
俺たちと一緒にいろ。諒太さんはそう言って、あたしに来るように言った。理由が知りたい。諒太さんがあたしなんかを必要してくれる理由を。
だってあたしはいつだって、どこでも弾かれ者だったんだ。家でも、誰もあたしを見てはくれない。二人にとってあたしはいらない存在だった。母は、確かにあたしがいらないと言った。誰のせいで友達ができないかも知らないで、平気であたしを捨てた。大人はいつも勝手で、欲しいのは従順な子どもだけだということを実感した。
諒太さんに打ち明けたあの日から、1週間が経った。あたしはあのカフェにも、諒太さんのところにも行っていない。連絡は何度も来ている。だけど一度も返していない。
自分でもわからない。怖い。楽しかったから、いい人たちだったから、いつか拒絶されると思うと怖い。
諒太さんはあたしを必要だって、あたしだから選んだって言ってくれたけれど、きっと誰でもよかったに違いない。目的のために人数が欲しかっただけなんだ。
きっとあたしが普通に入り込んでしまったら、諒太さんはもうあたしには興味がなくなる。入ってほしいだけなんだ。営業スマイルを浮かべているだけなんだ。
だって皆に必要とされて、皆の中心で盛り上げるような人が、あたしに興味を持つわけないんだから。
なんだろう。あたし、どうして。いつものように避ければよかった。一度楽しさを覚えてしまったがばかりに、諒太さんたちのことばかり考えてしまう。
このままでいいとは思っていない。今の日常から抜け出したいとも思っていた。きっと、もう二度とこんなチャンスは訪れない。
諒太さんからの着信。いつも夕方になるとかかってくる。
「もしもし」
思わず出てしまった。一週間も放置していたんだ。軽蔑しているに違いない。怒鳴られるだろうか。
「よかった。ずっと連絡とれなかったから心配してたんだ。
何かあったの? もし会えるなら少しだけでも会えればいいな。話聞きたいんだけど」
どうして、怒っていないの? どうしてまだあたしに関わろうとするのだろう。
「諒太さん」
「ん、何?」
どうすればいいのだろう。
「あたし」
「わかった。今から少しだけでも会えないかな? いつものカフェで」
あたしが何も言わないういに、諒太さんは電話を切ってしまった。
いつものカフェ。時間を潰すために一人で過ごしていたカフェ。
自然と足が向かっていた。そう言った方が正しいと思う。気づけばあたしは、諒太さんに言われた通りあのカフェに向かっていた。
「千佳ちゃん、元気そうで良かった」
店に入ると、既に入口の近くに諒太さんが座っていた。
「先に飲み物買っておいで」
「はい」
緊張、しているのかな。胸が苦しい。どうして、緊張なんて。
「お待たせしました」
諒太さんはアイスコーヒーを飲んだまま、しばらく口を開けようとしない。すごく、気まずい。あたしから話した方がいいのかな。
「ふっ、ごめん。負けたよ」
諒太さんはいつかと同じように突然笑い始めた。
「そんなに見つめられたら、困るな」
「ああ、ごめんなさい」
また沈黙に陥ってしまった。やっぱり怒っているんだ。それなら会わなければいいのに。連絡しなければ、一生会うことだってないのに。
「勝手に来なくなったから、怒ってますよね。そりゃ、怒りますよね。人材欲しいですもんね」
「ねえ、千佳ちゃん」
諒太さんは椅子に姿勢良く座りなおした。とても、真剣な顔だ。
「前にも言ったけれど、俺は千佳ちゃんだから来てほしいって思ったんだ。どうして来なくなったのか、心配だから理由は知りたい。だけどそれに対して怒ったりはしない。それに、君はわかっていないみたいだから言うけど、千佳ちゃんの変わりなんてこの世の中のどこを探したっていないんだよ!」
諒太さんは立ち上がってまで、言って退けた。なんだか胸が熱い。こんな風に誰かに叱ってもらうことなんて、今まで一度もなかった。叱るっていうのは、その人のためを思って言う言葉だから。あたしは愛想をつかされてばかりだった。何が間違っているのか、それすらも教えてもらえないままで。
「あたし」
ダメだ。
「すいません、お手洗いに行ってきます」
諒太さんの顔を見ることができなくて、足早に化粧室に向かった。涙なんて、もうずっと流していなかったのに。もうずっと、全部全部諦めていたのに。
ああ、きっと戻っても顔を合わせられない。どうしてあたしは、上手く生きられないのだろうか。