愛ってコトバ
「ふぅ」
1秒…また1秒
何もしてない。
ただ、呼吸して寝てるだけ
何もしてないのに刻々と時間は刻まれていく
ほら…また1秒。
私…生きてる
「奈央!!こっちこっち」
「ごめんねー遅くなっちゃって」
今日はクラスのみんなとの打ち上げだった
風邪がひどくて少し遅れていった
無意識に富田の姿を探していた
わりと時間はかからなかった
ばちっと目が合う
少し、嬉しくなって手を小さく振った
ちょっとだけ微笑んでくれた
この頃…1年生の子が富田を好きだって聞いた
結構かわいくて富田と同じ部活の子…
たぶん本人は気づいてないよね??
あーぁー
なんで、こう…マンガみたいにうまくいかないのかな…
いつもマンガのヒロインはきらきらしてて、幸せそうに笑っていて
なんで、私たちはマンガみたいにうまくいかないのかな??
「ふぅ」
あんまり心配させないでよ―――――――
なんでこんなに不安になってるかって言うと…
富田の愛って感じたことって、全然ない
半年記念から2ヶ月たった今でも2度目のキスはない
あーぁー
好き……大好き
恋してるって楽しいけど、辛い
でも今、私恋しちゃってるなぁ
こそっと栞が私に言った
「りなちゃん、告ったらしいよ」
「えぇっ??」
びっくりして大きな声がつい出て軽くみんながこっちを向いた
りなちゃんって言うのは富田のことが好きだって言う1年生の子。
「ど、どうだって??」
「もちろん、断ったらしいよ」
ちょっと…安心
「よかったね」
にやっと笑う
「何が!!!!!!!」
「顔赤いよ〜??」
「知りませんっ!!!」
逃げるようにコップを持ってドリンクをつぎにいった
「ふぅ」
「大丈夫??体調悪そう」
富田が心配そうな顔でかけてきてくれた
「大丈夫だよ」
やっぱり風邪なのかも
胸が苦しい
どきどきする
熱がある
…わかんない、あなたの前だからかな??
さっと持っているコップを持ってくれた
…ほら、君ってなんでそんなに優しいの??
私が何も知らないと思って安心してるでしょう??
違うよ、それは…違うの
ねぇ、気づいてよ
カララン
「よぉ♪」
声のした方を振り返る
手を振ってこちらにやってきた
望だ…
1組のメンバーもぞろぞろとやってきた
「俺等もここで食いにきた」
…見慣れた顔
大きい手
笑い方
話し方
とっさに見せる癖
すべて覚えていた
そう、私が前本当に大好きだった人。
この人に何度泣かされたかな??
好きすぎて話すときは顔も見られなくて、顔はもうりんご病みたいだった
君だって、耳真っ赤だったよ??
…迷惑かけちゃってごめんね、私のせいでいつも冷やかされてた
手紙に弱々しい「好き」の文字。初めての告白ですごいどきどきしてた
胸が痛くて壊れちゃいそうなくらいどきどきしてたの
でも…なぜか読めなかったって。
洗濯されちゃったって
…そんなことあるのかよって思いつつ気づいたら電話してた
「…ごめん、好きなの」
本当にどうしようもないくらい好きだった
君に聞こえないかもしれないくらいのささやき声で愛のコトバを口にした
でも間があってから、気づいたら電話は切れてて…
あぁ、私はふられたんだなぁって思った…
本当に悲しくって涙は枯れることを知らなかったよ――――――――
「もう、好きじゃない」
友達に言いまくった
自分に言い聞かせてるだけかもしれない
だって、今でもあなたのこと目で追ってる私がいたの
いつまでも捨てられなかった誕生日プレゼントだったペアのキーホルダーは、机の中で眠っていた
誕生日にさしだしたら、君は走って帰ってったね
…ひどい人
忘れられたら、楽なのに
いつまでも君にときめいちゃうのは…なんでだろう??
「これ、あげるよ」
たまたま前の席の富田にあげた
この頃、仲がよくて…いぢるのがおもしろいなと思っている人。
だから君が捨ててくれればいいと思った。
自分では捨てられなかったから
でもその見たくもないキーホルダーは1週間たっても2週間たっても君の筆箱にぶらさがっていたね
ただ、嬉しかった
単純にすごく嬉しかったの
望がしてくれなかったことを富田はさらっとしてくれた
ただ、それだけ。
それで君がすっごい可愛く見えてしまったの
本当に…恋の始まりって単純だよね
たぶん…望を嫌いになったら次の恋なんてやってこないのだ、と思っていた
でも傷ついた私の心は行き場のないあふれるような想いを誰かに注ぎたかっただけかもしれない
あの時のように笑って話せたら…
何度も思った
だけど時は止まることを知らない
幾度となく押し上げてくる悲しみは私を暗い世界へと追いやった
それでも月日は流れ、新しい恋を運んでくる
恋ってそうゆうものなんだ…“癒し”を求める心に響くのはきっと恋なんだろうな
誰かが言ってた気がする
地球上でもっとも重い病は恋だって、薬がないから治らないって
どうしたら私はこの病から逃れることができるのかな・・・??
ふと見上げる空には星がちりばめられてた
月があまりにも綺麗で…いつもより距離を感じた
空や月にまでふられちゃったみたいに感じた
辛かったり嬉しかったり
悲しくって泣きたくなったり
会いたいと思えど会えないむなしさ…
この想いからどう逃げればいいんだろう??
そんなことを永遠と考えていた
「…お、ねぇ、奈央??聞いてますかぁー!!」
「はっ、はぃぃ」
思わず叫んでしまった
気づけば、望が私の顔を覗き込んでいた
「な…なんざんしょ?」
「ちょっと、来て」
ムリに手を引かれあえなく退出
「待って!!何??寒いよ…」
外に連れ出されて私は薄着で寒かった
「言いたいことがあって今日は来たんだ」
びくっと体が反応した
何したっけ?怒られるようなこと…した!?
ここしばらくの間私たちが話すなんてめったになかった
1回だけ話しかけたが軽く、冷たく返されたのでもう話しかけることはなかった
そう、すごい久しぶりに話す・・・
「俺さぁ、お前のこと別に嫌いじゃなかったよ
あの時告白してくれたぢゃん?頭真っ白になっちゃって何言っていいかわからなくなっちゃっただけ。
電話もきっちゃってごめんね。
突然すぎて何も言えなかったんだ…
これだけ伝えたかったんだ。
何か言いたいことある?」
言いたいこと…あるよ、いっぱいね
でも、それって1年以上前の話だよ?
半年もかけて、君のこと忘れたんだよ…君が笑えばなぜか悲しくなった
失恋ってそうゆうことでしょ?
痛いほど君が教えてくれたじゃん
私は初めて失恋を教わったんだから――――――――
「…別に気にしてないよ」
うそ、すっごい気にしてた
「てゆーか、覚えてたことにびっくり!!
あの時は好きすぎて周りが見えなくなってた
私こそ…ごめんね」
…本心、だけど大事なこと隠してる
なんでだろう、今は素直になってもいい時だよね??
君の前では本当の自分がだせないの…素直になんかなれないの…
なんで??
「今は誰が好き?」
「えぇームリだよ、言えないって!!」
…軽々しく望になんか言えないよ
今だって忘れたんじゃなくて、君へのキモチを隠しただけなんだから
「1度はつかあいかけたなかだろー言えってぇ!!」
そんなこと一回も思ったことなんてない
いまさら嫌いじゃなかったとか、何を言い出すの?
どうせ、あの時だって告白OKする気なかったんでしょ?
それなのに…
「…知らない」
「別に…いいだろ?教えろって!!」
「絶対、言わない!知らない…もう…ほっといて…」
望は軽く言ってるだけなんだろうけど私には大きいんだよ
なんで…気づいてくれないの??
「もしかして、まだ俺のこと好きってこと?」
は…??
好きじゃないって…
好きなのは…君じゃない…きっと…いや、絶対に…そう言い聞かせてきたんだから
「好きな人は――――――――いるよ、だから安心してね??
でも今はまだ言えないかも。」
付き合ってるのって言えたらな。
たったそれだけのこと。
なのに何かが怖くて、悲しくてそのコトバを言うことはできなかった
簡単なことだよね
ただ、それだけ。でかたずけられるようなちっぽけなコトバ
でも出てこなかった…
私は弱いから何も壊したくなかったの…本当に私は弱いなぁ…
望は今も昔も何もわかってない
ここまでにひきずってる私も私なのだけど…
昔の記憶ももう忘れる。これだけはとっておこうなんてキモチも捨てる
絶対に絶対に、今度こそ忘れるよ…――――――――
みんなの所へ戻る前にトイレへ行って、顔を洗った
涙のあとが頬についていた
「ふぅ」
それを服の袖でぬぐった
…いやな顔。
こんなんじゃ愛想つかされちゃうね…
「ふぅ」
「何?さっきの、びっくりしたじゃん。どーしたの?」
栞が聞いてくる
「たいした話じゃなかったよー」
軽く笑みを浮かべた
栞は私の話を無視して、トイレへとつれこんだ
「奈央、泣いてる…」
栞はせつなそうな顔で私を覗き込んだ
あんな笑い方も見逃さなかった
私のこと…わかってくれてる…ごめんね
「うっ…だって…ムリだよ…
いまさら、嫌いじゃないとか言うの!!私のことふったくせにさぁ…
1年以上もたってて…しかも6年間も好きで忘れられるわけないじゃん
もう日々の生活に望がいるのが私の普通だった!!
それでも…あきらめたっていうのに…
大人から見たら14歳の私の言ってることなんておままごとって言うかもしれないけど、本気で好きだったんだよ
そんな…忘れられるわけないじゃん…
昔の記憶を思い出させといて…望は何がしたいのかわからないよ
今でもあの時の望の顔とか、嬉しかったこととか忘れられないの
…だから錯覚をおこしちゃったの
昔の記憶があまりにも鮮明に思い出せるから富田が一瞬見えなくなった…
ひどいよね、私
わかってるんだよ!!でも…私の中で何かが引っかかるの…
なんで…いまさら…思い出させるようなことするの…」
栞はぽんぽんと私の頭をなでてくれた
「…そうだよね、奈央すごい好きだったもんね
忘れられないよ、普通。
とりあえず富田がすごい心配してたみたいだから…ほーら!!元気出せっ
泣き顔ぶさいよ?
笑顔の方が奈央は可愛いんだから」
ねぇ、私に気づいたら君はなんていってくれる?
コトバなんて君はくれないか
いつも不安だけ残して愛はくれない
好きだよ、大好きなの
なんで??
どーして??
私に魅力がないからななぁ??
「ふぅ」
いつまでも君のことが見ていたい
見ていたら声が聞きたくなるの
声を聞いてしまったら、話したくなっちゃうじゃん
話したらずっと一緒にいたくて離れられない
一緒の時間をすごしてしまえば、私は君に触れたくてたまらない
それって、変??
何か間違ってるのかな…
ただ私が君のこと大好きってキモチの表れだよね??
「帰ろうか」
誰かが口にしてみんな一斉に立った
頭が痛い
気持ちが悪い
胸が苦しい
不思議とぽかぽかする
なんだか涙がでてきそう
なんでだろう…
「奈央…っ!!熱あるじゃん、大丈夫??」
「…うん♪」
「チャリの後ろ乗せてもらいなね??」
こくんと、うなずいた
ふわぁーっとした気分でなんかくらくらする
「…え??」
急に腕をつかまれてびっくりして、思わず声が出た
「ふらついてる、大丈夫!?ムリ…するなよ」
…富田
「大丈夫…帰ろ??」
「後ろ乗ってけば」
後ろから声がした
…望だ
「んー、いーよ。栞に乗せてもらおうかなぁって」
腕をつかんでいた富田の手が離れていった
なんだか、寒くなった気がした
今望は私の恋の邪魔したんだよ?
いいかげん…鈍感なおしてよ
迷惑だから…迷惑なんだから…
キーコキーコ
「…奈央は愛されてるんだよ
みんなから。いいことじゃん、富田は奈央のこと好きなんだし…
望はさぁ、奈央にとって大きいかもしれないけど忘れるって言うのも1つの愛の形かもしれないよ」
確かに…
愛の形は1つじゃないよね
気づけば、頬をぬらしていた
冷たい風が吹きぬけ頬のしずくをより冷たく、頬を痛くした
君への隠してた想いも今日で本当に封印するよ
この寒空の下で流した涙が最後です
さよなら…
本当に好きでした
そして…
「ありがとう」
「…奈央、送ってく」
あるていどの所まできたらみんなとも別れなければいけなかった
富田が心配そうに顔を覗き込んでいた
「ありがとう」
「…」
「…望と何話してたの??」
なんで…
「別にたいした話じゃなかったよ」
「ふーん…望って奈央のことが好きなの??」
なんで…富田がそんなこと言うの
「前好きだったんでしょ」
なんで…いつもそんなこと言わないじゃん
「前から両想いだったの?俺…KYじゃん」
なんで…富田のばか…
「知らない、ふられたし…私。
富田が何でそんなこと言うの??意味わかんない!!
いつもそーやって勝手に…私のことさぁ…いつも冷たいし…
好きとか私が聞かなかったら言ってくれなかったでしょ!?
何通も書いたお手紙も無視するじゃん
大事なのは今なんじゃないの!?
意味わかんないよ…
富田にだけは…そんなこと言われたくなかった
いつも…不安だけ残して…私に愛はくれなくって…寂しいよ…
好きなのに…大好きなのに…なんで伝わらないかなぁ…」
泣くな…
泣くな…
冷たいって思った
一生懸命になって書いたお手紙は無視するし
話しかけてもたまに無視するし
学校でだって話すわけでもなく、メールするわけでもなく
…そんなんじゃ、不安になるばっかりなの
本当に好きなのかな、とか本当に信じていいのとか…ひどいことばっかり考えてた
でも、いつも富田の優しさに触れていたこと知ってたよ
嬉しかったの
なんで…大事なときに素直になれないのかぁ…
「奈央だって…簡単に望についていって、2人っきりで話してるのに気にならないわけない!!
なんで隠すんだよ…
悪かったな!余裕なくって…」
男の子はずるい…いつもそうやって悲しそうな顔を見てしまえば、私は触れたくてたまらなくなっちゃうんだよ
ぎゅぅっ
私は気持ちが抑えられなくなって抱きついた
「え…え…え…」
「…好き、なの。望じゃなくて富田が。
いつまでも大好きでたまんないよ」
さっきよりも力を込める
「…俺にとって付き合うのもバレンタインもらうのも、キッ……キスだって初めてなんだよ…
余裕なんてどこにもなくて
でも奈央はどんどん次に行ってしまう気がして…正直つかめなかったんだ
ずっと、こうしてたいって俺は思ってる…
だけど好きな子1人抱きしめるのだって…結構大変なんだよ…」
たぶんこの声は、私がいる距離にしか届かない
「…それだけ愛があるってことじゃん」
ちょっとだけ背伸びをして頬にキスをした
赤くなる君が愛しい
もっともっとって、求めたい
まがままだって君だから言いたいの
やっぱり機嫌が悪くてもむーってなってる時は私にむーの意味を教えてほしい
少しでも一緒に分かち合いたい
私と一緒にいることが少しでも君のプラスになったらいいな
悲しいのだって半分こ
嬉しいのは2倍
それってすっごい素敵なことだなぁって思うよ――――――――
君は…どうかなぁ??
横にあるガードレールに私を座らせた
「愛、あるから」
そっと私の顔に手を添える
時間をかけてゆっくりと愛しい人が私との距離をちじめる
嬉しいような、恥ずかしいような…もどかしい時間。
目を閉じればそこに君がいない
でも唇ににぬくもりを感じる
“愛あるから”
1つ1つが愛しい
君すべてを感じていたい
久々の君の愛を私は感じてる
嬉しくて泣いちゃいそうだよ――――――――
こんな彼女でごめんね
わがままばっかりでごめんね
不安って言って結局は君を傷つけてた…
可愛げもないし、すぐ怒っちゃうし…本当にもっと栞みたいな子が富田のことが好きだったら富田もきっとみんなに自慢できるし幸せだろうな…って思う
でもね、私まがままなの。だから好きな人は私の手で幸せにしたいよ
今、君は“幸せだなぁ”って思ってくれてるかなぁ??
私は君といられて触れられることが何よりの幸せだよ
そっと顔が離れる
ゆっくりと目を開ければそこには真っ赤な富田がいる
自然と笑顔になった
「あ…雪…」
「わぁ、本当だ…」
そっと降ってきた雪をつかまえた
すぅっと雪はとけていった
そのまま手を空にかざした
「なんだか…月だって星だって捕まえられそうな気がする」
…たぶん、君は意味がわからなかっただろうね
でもね、私の気持ちにはそのコトバがぴったりだと思った
雪は私の手の中でとけていってしまったけど、あの遠くに光る月も星だって今だったら手が届きそう。
前見上げた空よりも今見える空のほうが近い気がした
なんでかな??
君とだったら、大きな夢も叶えられるような気がする…
だって君と出会えたことも今一緒にいること、そして…「好きだよ」って言ってくれる奇跡だって“幸せ”に変えられたんだよ
君の優しさに触れて私はもっと大人になれた
もっと好きになることができたの――――――――
「寒いね」
富田がぎゅって抱きしめてくれた
ちょっと照れた声…
「暖かい…」
力が強くなって、ちょっとだけ痛かった
その痛みさえ心地いいと感じる
「俺、本当にに奈央だけだから。」
トクン、トクンって心臓の音が伝わってきた
愛おしい
君だけ。
この世界にたった1人の君が私は、好きで好きでたまりません
星降ル夜、君ヲ抱キシメル
「愛、かなりあるから」