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蛇足:微糖の日

「魔王、覚悟!」

「ハァ、またですか……」


 私は嘆息しながら、振り下ろされた剣を2本の指で受け止めました。


「ぐぅぅううう………っ!」

「無駄ですよ」


 受け止められた状態から押し込もうと力を籠めてきますが、私はそれに逆らわず受け流す様に剣を指で挟んだまま斜めに手を引きます。


「うぉ!?」

「眠ってなさい」


 彼が体勢を崩して前のめりに倒れかけたところに、首筋に手刀を落としました。本気でやると首を飛ばしてしまいかねないため、あくまで気絶させる程度に手加減した上でですが。


「誰か居ませんか。

 コレを外につまみ出しておいて欲しいのですが」




 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




「ふぅ……」

「溜息を吐くと幸せが逃げるそうですよ、レオン様」


 紅茶を飲みながら溜息を吐いた私にシャルリーヌがからかう様に言ってきます。しかし、彼女にだけは言われたくありません。


「溜息の原因である貴女が言いますか」

「あら、私が何かしまして?」

「分かっていて言っているでしょう」


 白々しく惚けるシャルリーヌに、私は再び溜息を吐いてしまいました。


「あれ、どうにかならないですか?」

「私に言われましても……私が顔を見せたら余計に悪化すると思います」


 シャルリーヌがこの魔王城に居座る様になってから数週間、私は頻繁に襲撃を受ける様になりました。襲撃者は(元)勇者パーティ、もっとハッキリ言ってしまえばシャルリーヌに惚れた男達です。先日シャルリーヌと共に魔王城に挑んできた彼等が何度も襲い掛かってくるのです。

 彼等の言い分はただ一つ……「シャルリーヌを返せ」というものです。返すも何もシャルリーヌは自分の意志でここに居座っているのですが、彼等の中では私が誑かして拐かしたことになっている様です。

 ちなみに、先程「(元)勇者パーティ」と言いましたが、正確に言うと「(元)勇者パーティ」+第一王子です。魔王討伐の時には来なかったのに、婚約者を取り戻す為なら来るんですね。王族の務めは良いのでしょうか、第一王子……。


「そもそも、彼等についても説得した筈ではなかったのですか?」

「したのですが……何やら逆に奮起してしまいまして。

 『必ず助ける、だから待っていてくれ』だそうです」

「第一王子も、ですか?」

「あ、彼は言っても諦めてくれないので逃げてきました」


 確信的じゃないですか。


 なお、襲撃してくる男達は纏まってではなくバラバラに来ます。彼等の魂胆は見え透いています、取り返したシャルリーヌを「自分が」手に入れたいのでしょう。学園に居た時や勇者時代のシャルリーヌは第一王子の婚約者であったため、仲間達はシャルリーヌに惚れつつも結ばれる可能性はゼロに等しかったわけです。それ故に(元)勇者パーティでは抜け駆け等がなく団結出来たわけですが、今は違います。シャルリーヌと第一王子の婚約は解消された為、他の男達にとってはチャンスに見えるのでしょう。王子もそれを理解しているのか、単独で襲い掛かってきます。

 シャルリーヌを含めた5人掛かりで勝てなかったのに、1人で勝てると本気で思っているのでしょうか。


 いっそ再起不能にしてしまえばと思わなくもないですが、人類との関係悪化の可能性もありますし、何よりもシャルリーヌからも懇願されているため、殺したり大怪我を負わせることはせずにあしらっています。シャルリーヌとの付き合いは長いですがこれまであまり我儘を言われたことがないため、いざ懇願されると叶えてあげたくなってしまいます。まぁ、これも惚れた弱みでしょうか。

 部下達だと加減に失敗する可能性があるため、彼等については素通りさせて私が相手をするしかありません。正直ストレスが溜まりますが、仕方ありません。


「この徒労感、何とかして下さい」

「疲れている時は甘いものがオススメですよ。

 ショコラを作ってみたのですが、如何ですか?」

「……頂きます」


 受け取ろうと手を伸ばしましたが、何故かシャルリーヌは渡してくれずに自分の口へと運びます。何故?と思って見ているとそのまま──


「………………ん」


 確かに甘いですね。

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