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第八話 サラマンダー

 水を確保した俺とフェルナは、その後は順調にダンジョンを下って行った。

 押し寄せてくる<ファイアフライ>などの上級モンスターをちぎっては投げ、ちぎっては投げ。

 途中で俺の武器がお釈迦になり、予備と交換すると言うトラブルがあったが、それ以外は大した怪我もなかった。

 そうして三日後、とうとう俺たちはボス部屋の前に到着した。

 通路にそびえる巨大な鋼鉄の扉。

 その向こうから恐ろしいまでの威圧感が伝わってくる。


「ここのボスって、火竜サラマンダーだったよな」


「……ああ、ファイアブレスが厄介だ」


 フェルナは相変わらずそっけなくそう言った。

 火竜のファイアブレスは、速度が速いうえにほぼ防ぐことができない。

 鉄の盾で防ごうが水のシールドを張ろうが、あっという間に溶かしてしまう。

 対応策としては大威力の魔法で相殺するか避けるしかない。

 今の俺の魔法だと相殺するのはまず不可能だから、とにかく避けるしかないだろうな。

 幸い、このダンジョンの火竜サラマンダーはブレスを三発しか撃てないらしいから、上手く誘導しながら打たせれば大丈夫なはずだ。


「行くぞ。俺がウォーターボールで牽制し続けるから、フェルナはひたすら奴を斬り続けろ!」


「ああ!」


 フェルナの返事は半ばやけくそのようだった。

 まあ、しょうがない。

 俺は勢いよく扉を開くと、中へ躍り出る。

 すると中は巨大な広場となっていて、その奥でこれまた山のような竜が丸くなっていた。


「グアア!!」


 起き上がって方向を上げる竜。

 やばい、来るぞ!

 俺はすぐさまその顔面にウォーターボールをぶちかます!


「ウオオ!!」


 炸裂したウォーターボールのおかげで、ファイアブレスの軌道が若干だがそれた。

 あぶねえ、開幕でブレスとかやめてくれ!

 俺がそう心の中で叫んでいる間に、フェルナが竜の懐へと潜り込む。


 ギンギンギィン!!


 鋼の剣が竜の鱗と激しくぶつかる。

 だが鋼より鱗の方が硬いらしく、なかなかダメージが通らない。

 しかし、さすがはAランクといったところか。

 同じ場所を集中して狙い続けることによって、徐々に鱗を剥がしていく。


「グアア!!」


 竜が天を仰いだ。

 二発目のブレスが来る。

 俺はすかさずウォーターボールを竜の口めがけて連打する。


「ウォーターボール! ウォーターボール! ウォーターボール!」


 水の三連発が竜の頭を揺さぶる。

 ファイアブレスの狙いは今度も逸れ、フェルナは焼き尽くされずに済んだ。

 その間に彼女は鱗を剥がし終え、露出した肉に向かって剣を振るう。


 バシュッ!!!!


 血がものすごい勢いで溢れ出した。

 どうやら、鱗は堅いが中の肉はそれほど強靭ではないらしい。


「あともう少し!」


 そう思ったとたん、またも竜が上を向く。

 すると、広場に漂っていた魔力が恐ろしい勢いで竜の口へと集中し始めた。

 こりゃ、でかいぞ!

 さきほどのものとは比べ物にならないようなブレスをぶっ放すつもりらしい!


「ウォーターボール! ウォーターボール! ウォーターボール!」


 俺は焦って水魔法を連打するが、全く効果がない。

 ち、こうなったら……あれしかないか。

 俺はダンジョンから帰ってから実験しようと思っていたスキルを、今使うことにする。


「理論上は行けるんだ。出てくれよ……! ファイアブレス!」


 竜が咆哮を上げるのと同時に、俺の口からも炎が飛び出した。

 俺の炎は竜の炎を押し返すには至らないが、その軌道を大きく逸らせることに成功する。


「そりゃア!!」


 その直後、フェルナが雄叫びを上げながら剣を竜の腹に一際深く刺した。

 魔力を使いはたして弱っていた竜は、一気に倒れてしまう。

 やった、倒した……!

 俺は、竜を倒したんだ……!


「やった! これでクリアだ!」


「ちッ……。しかし、さっきのはなんだ? あれは魔法じゃなかっただろ?」


「ファイアブレスさ。理論的には俺は魔物のスキルだってパクれるからな。実際にやったのは初めてだけど」


「また厄介な力を身につけおって……」


 鉄仮面の向こうの瞳が、不機嫌そうに細くなった。

 こいつ、心底俺のことを嫌っているんだなと改めて実感する。

 俺の精神衛生上悪いから、魅了系とか精神操作のスキルとかがあったらすぐに取得しないとな。

 このままだとそのうち不意を突かれて殺されそうで怖い。


 そんなことを考えていると、帰還用の転移魔法陣が現れた。

 俺とフェルナはそれに乗り、地上へと帰還する。

 さあ、これでいよいよAランクだぞ……!


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