第二話 訓練場
眼で見ただけでスキルをコピーできるスキル!?
こんなスキル聞いたことがない。
というよりも、存在するはずがない。
大昔、<倒した相手のスキルの一部をコピーできる>と言うスキルで英雄になった男が居た。
しかし、最終的にその男は国によって捕らえられてしまった。
王が男のスキルを恐れたのだ。
眼で見ただけでスキルをコピーできるスキルなんて、もしばれたら……
俺の背筋がゾクリと冷えた。
明らかにヤバい、超絶的にヤバい。
俺の恐怖は瞬く間に頂上に達する。
「おい、どこ行ってたんだ」
俺が頭を抱えていると、兄ちゃんがやってきた。
オーガは無事に倒したらしく、討伐の証となる角を手に持っている。
「いや、怖くてつい」
「あれぐらいでビビってるんじゃねーよ。ったく、お前のせいで帰りが遅くなっちまった」
兄さんに連れられて森を出た俺は、すぐさまギルドへ向かうと改めてスキルを確認した。
しかし内容は同じ。
確かに俺は<眼で見たあらゆるスキルをコピーし、俺のものとする>という非常識なスキルを身に着けていた。
これは、死ぬまで黙っていないとな。
国に捕まって牢屋の中で一生を過ごすとか勘弁してほしい。
俺は平和な人生を全うしたいだけなのだから。
そう思った俺は、急いで家に帰ろうとした。
だがここで、ふと思う。
黙っていればばれないんだし、使ってもいいんじゃないかと。
大昔の男だって、途中までは英雄だったんだから。
「ちょっと、試してみるか」
好奇心と誘惑に負けた俺は、ギルド裏の訓練場へ向かった。
するとたまたま、Aランクの冒険者が剣術の訓練をしていた。
名前は確か、ノーランドとか言ったか。
人気があるらしく、女の子がきゃあきゃあ騒いでいる。
「おう、まずはあいつからだな」
俺はノーランドの動きをじっくりと観察した。
その剣さばきたるや凄まじく、ブンブンと音が鳴っている。
しかし、俺の眼はその動きを正確にとらえていた。
<万物模写>の影響か、視力も大幅に上昇しているらしい。
しばらく観察していると、眼が疲れてきた。
これぐらいで良いだろうか。
そう思った俺は、ギルドカードを確認する。
すると、<万物模写>の下に<上級剣術>のスキルが増えていた。
「おおおッ!!」
剣を借りると、さっそく剣を振るってみる。
ビュンビュンビュン!!!!
昨日までまともな剣術なんて使えなかった俺だったのに、いとも容易く剣を扱うことができた。
これは、これはいける!
<万物模写>は予想以上に使えるスキルのようだ。
これを使わないのは、さすがにもったいなさすぎる。
「よし、ばれないように使おう。それで兄ちゃんや父さんを……」
いままで、兄ちゃんや父さんには散々バカにされてきた。
だがこのスキルを使えば、二人を見返すことができる。
早く兄ちゃんを超えるAランク冒険者、いやSランク冒険者になって今度は俺が兄ちゃんを馬鹿にしてやろう。
俺はそう、密かに決心したのだった。