第十一話 予選
新作を投稿いたしました。
コピースキルとは違って非常にシリアス風味の作品ですが、それなりに仕上がったのではないかと思います。
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武皇決定戦の開会式。
前日にヤリ過ぎた俺は、腰を押さえての参加となった。
そんな俺とは対照的に他のメンツはさすがに気合が入っているようで、滾るような闘志が伝わってくる。
俺としてはスキルがコピーできればいいわけなんだが……何と言うかヤバそうな雰囲気だ。
「えー、大会の注意事項としては『殺人禁止!』のみであります。他はとくにありませんので、えー、選手の皆様には存分に……」
ハゲ散らかした貴族のオッサンが、壇上で大会のルールや注意事項を述べる。
とはいっても、大したことはないようだ。
殺し以外なんでもありのガチンコバトルらしい。
ただし最初のうちは人数が多いので、ブロックごとにまとめて戦うバトルロイヤルとなる。
まあ、予選みたいなものだな。
「お、俺とアリスはちゃんと別になったようだな」
「アリス……ああ、そうだった。ちゃんと別になれて良かった」
フェルナはアリスの名で大会に登録していた。
本名で登録したらえらいことになるからな。
当然の処置である。
ブロックを決める籤を引いたが、俺とフェルナは無事に違うブロックとなった。
俺がCで、フェルナがGである。
それぞれのブロックから代表として二人までしか本選に出られないので、これはとてもよかったと言えるだろう。
AからHまで八つのブロックに分けられた選手たち。
その中でもCの列に移動した俺は、同じブロックになった冒険者たちの姿を確認した。
どうやら、運がいいことにこのブロックにはSSの奴は居ないらしい。
フェルナの方も見てみると、彼女もSSとは当たらずに済んだようだ。
これでお互い、どうにか本選までたどり着けそうである。
「おい、組まないか?」
後ろに立っていたごついオッサンが話しかけてきた。
背中から背負っている剣はかなり立派で、きている鎧も銀ピカで凄そうだ。
たぶん、強いだろうなこの人。
バトルロワイヤルでは最初のうちは同盟を組んで自分たち以外の奴らを潰すのが賢いやり方だ。
そして、同盟を組む相手は当然強ければ強いほど良い。
このオッサンなら、相手に不足はないだろう。
「いいぜ、組もうじゃないか」
俺はそう言うと、オッサンの手を握った。
するとオッサンが俺の手を握り返してくるが、凄い握力だ。
こいつと組んだのはやっぱ正解だったな、握力だけで人の頭つぶせるぞこの人……!
「よし、俺たちは即席だが同盟だ。最後まで二人で残ろうぜ」
「ああ、頑張ろう」
俺は軽く会釈をした。
これでたぶん、予選はどうにかなるな。
オッサンの豪快な笑みをよそに、俺はにやりと笑ったのであった。
A、Bブロックの予選はあっという間に終わった。
もともとバトルロワイヤルなのでさほど時間がかからないと言うのもあったが、出場した冒険者の中で飛びぬけて強い奴が居たのである。
Aブロックで強かったのはSSランク冒険者キレーヌ。
「暴風」などという物騒な二つ名の付いている男で、槍術の達人だ。
彼は3mもある巨大な槍を振りまわして、自分以外の奴をあっというまに場外へ弾き飛ばしてしまったのである。
よって、Aブロックは彼と彼に吹き飛ばされるのが一番遅かったコインなる男が出場者として決まった。
続いてBブロックで強かったのは、俺たちと乗合馬車に乗ってきた師弟の師匠の方だった。
弟子と同じくAランクになったばかりだそうだが、そうとは思えないほどだ。
戦闘スタイルは素手での格闘術なのだが、残像ができるレベルで動きが速い。
ビュンビュン!って音がしたと思ったら、人間が空を飛んでいる。
こんなのとは絶対に戦いたくないものである。
俺はとりあえず二人の戦いっぷりを見ていたが……スキルはパクれなかった。
どうやら距離が遠いのと、時間が短かったのが関係しているらしい。
二人とも、一分ぐらいで決着をつけちまったからな。
誰かが粘ってくれるのに期待するしかない。
俺自身は……ぶっちゃけ、こいつらの相手はスキルが集まるまで遠慮したいな。
俺がこんなことを考えているうちに、Cブロックの順番がきた。
俺たちは四つに分かれると、コロッセオみたいな闘技場の中央に造られた舞台へと上がる。
縦横それぞれ15mぐらいずつの石の舞台が俺たちの戦いの舞台だ。
「さあ行くぜ! ウオオォっ!」
試合開始。
俺の隣にいたオッサンが、ゴリラみたいな雄叫びをあげて突っ込んでいった。
つええ、一瞬で人がぶっ飛ばされていく。
オッサンのランクはAだと言っていたが、これはSランク昇格間近だったんだろうな。
「あらよッ!」
「ちいッ! 戦いやがれ!」
オッサンが敵の数を減らしている間、俺はひたすら回避に専念していた。
体力を使うのがもったいないからな。
そうしているうちに見る見る敵の数は減っていき、俺とオッサン、そしてもう一人の三人となる。
「厄介なのが残っちまった! あいつ、銀狼だぜ!」
「銀狼?」
俺は目の前に立つイケメンな男を見つめた。
長い剣を背負った彼は銀髪を長く伸ばしている。
確かに「銀」狼ではあるな。
「どんな依頼でも一人でこなすSランクさ。森のロンリーウルフなんて呼ばれてる!」
「なるほど、一匹オオカミか。なら、俺たちの連係プレイを見せてやろうぜ!」
「ああ!」
掛け声とともに、銀狼に向かって突っ込んでいくオッサン。
だが、彼の攻撃はいとも容易くかわされてしまった。
銀狼ってやつ、ここまで残っただけあって結構やるみたいだな。
よし、ここは作戦変更だ。
「オッサン、挟み撃ちにするぞ! そいつの後ろへ回り込んでくれ!」
「よし来た!」
オッサンは俺の言った通り、銀狼の後ろへ回り込んでくれた。
銀狼は舞台の端のあたりに立っていたから、今のオッサンはまさに舞台の瀬戸際に立っている。
ふふ、上手く行ったぞ!
「ありがとうオッサン! ……銀狼、そいつを突き落とすんだ!」
「はッ!?」
戸惑った声を上げるオッサン。
しかし、銀狼のほうはすぐに俺の指示に従ってくれた。
不意討ちを喰らったオッサンは、あっという間にバランスを崩して舞台の上から落ちる。
「よっしゃあ! 予選突破だ!」
拳を突き上げ、高らかに勝利宣言をする俺。
周囲の視線がやたら冷たかったが、まあ気にしないでおこう。
世の中勝てばいいのだよ、勝てば!!
ウルフさんが脱落すると思った人。
甘いです、ウルフさんは本選の一回戦までは必ず残る人なのです。