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第十話 武皇決定戦、始まる

 フェルナがガチ復讐者からただのツンデレにジョブチェンジした。

 兄貴の真実を知った某天才ニンジャぐらいの変貌っぷりだ。

 奴隷教育術、やっぱりすげえってばよ!

 俺はスキルの偉大さを改めて実感した。

 やっぱこの世界、スキルがあれば何でもできるみたいだな。


 俺は友好的になったフェルナを相手に猿になった。

 とにかく、彼女のボリュームたっぷりのおっぱいはたまらない。

 Jカップぐらいあるのに全く垂れてないとか、爆乳星人の俺に対するご褒美だと思うんだ。

 そういうわけで俺は、暫くの間朝から晩まで宿で腰を振っていた。


 そうしているうちに、新しいギルドカードができた。

 絶大な信用力を誇ると評判の、ブラックカードである。

 地球じゃブラックどころかシルバーも持てなかった俺がまさかの大出世だ。


「さて、そろそろ行かないとな」


「ああ。今出れば、ちょうど大会前日ぐらいにつくだろう」


 五日間ほどの間にすっかりイカ臭くなってしまった部屋を後にして、俺たちはフェルバーナ行きの竜車へと飛び乗った。

 クーロンからフェルバーナまでは竜車で約四日間。

 途中、山脈を越えて行くなかなか険しいルートだ。

 魔物もよく出没するので、相当に危険らしい。


 ただ、俺たちの乗った乗り合い竜車は魔物に襲われても大丈夫そうだった。

 俺たち以外にも三人乗客が居たのだが、全員、武道会に向かう凄腕冒険者たちだったのだ。

 特にそのうちの二人は、相当ヤバい。

 師弟っぽく見えるが、纏っている気配が明らかに常人とは違う。


「へえ、では貴方がたも最近Aランクになったばかりなのだな」


「はい。ずっと師匠と二人で山に籠ってましたからね」


 フェルナと話す小柄な男。

 先ほど話した師弟の弟子の方だ。

 見た目は気が弱そうで人畜無害っぽいが、動きに無駄がなさ過ぎる。

 そのことにフェルナも気づいているようで、さっきから積極的に話して少しでも情報を探ろうとしていた。


「あまり余計なことを言うのではない。済まんが旅の人、そやつと話したいのでそれぐらいにしてはくれぬか?」


 そう言ったのは、師弟の師匠の方。

 背の高い魔導師風の女で、目の下に泣きぼくろのある色っぽい女だ。

 全身を黒いローブに包んでいたが、その胸元はガっつりと押し上げられている。

 パッドとか一切なしなら、フェルナ以上かもしれない。

 もし機会があったら、奴隷にしてみたいものだ。


「わかった。こちらこそ話しこんですまなかったな」


 駄目だった、と視線を向けてくるフェルナ。

 まあ仕方ない、こいつらも武道会に出場するならその時にじっくり調べればいいさ。

 俺は少しへこんでいるフェルナの肩をぽんぽんと叩いてやる。

 ……マジで反抗的だった頃が嘘のような従順さだ。

 あれだけ楽しんだのにまた押し倒したくなってくる。


 そうは思っても、さすがに乗り合いの竜車の中では無理だ。

 仕方ないので俺は旅の間中、ムラムラした気分で竜車に揺られていた。

 そうして四日目、ついにフェルバーナの街に到着する。

 デカイ門をくぐり、巨大な城壁の中へ入っていくと、そこはまさにお祭りムード一色だった。


「おお、凄い盛り上がりだな!」


「大陸中の冒険者が集まるからな。観客も多いし、ある意味盛大な祭りなんだよ」


「へえ……」


 俺たちは町を見物しながら、大会の受付をしているギルドへと向かった。

 するとそこはすでに超満員で、受付を済まそうとする冒険者たちの姿であふれていた。

 例の師弟も受付をしに来たらしく、列に並んでいる姿を見てとれる。


「すっげーな。Aランク以上ってこんなにいたのかよ」


「半分ぐらいは付き添いの連中だよ。Aランク以上ともなると取り巻きが多いものなのさ」


 そういえば、王都のギルドでもAランクに張り付いてる奴は居たな。

 まあ、フェルナは一匹狼だったからそう言うのには無縁だったろうが。


「なあ、ところで……出場選手の女はなんであんなに軽装なんだ?」


 何故か、出場戦士と思しき女冒険者たちは皆、いわゆるビキニアーマーを着ていた。

 しかもみんな巨乳ぞろいで、胸が凄いことになっている。

 今の俺にとっては眼福を通り越して目に毒だな……!


「ああ、あれは…………単純に男に対するアピールだよ。女でAランクともなると、いき遅れになることも多いからな。この大会は目立つから、ああやって少しでもアピールしてるのさ。それに対戦相手が男だと別の効果も期待できる」


「なるほどねえ……。でも、あれだと防御力なさすぎなんじゃないか?」


「魔法が掛かっているから、そうでもないぞ。特に胸のあたりは大量にパッドを仕込むから並みの鎧より厄介だ」


「…………偽乳かよ」


「まあ、でかければさまになるからな。結構大きい奴でも分厚いのを三枚は詰める。私は使ったことないが」


 胸を突き出し、鼻を鳴らすフェルナ。

 鉄仮面の向こうの顔は、かなりのドヤ顔になっている

 それだけ大きければ、なしでも十分だろうな。

 むしろ詰めたらビキニアーマーがパンクするだろう。


 こうして男が知ってはいけない裏事情を知って白けた俺だったが、それでも刺激は強かった。

 若干だが息が荒くなってくる。

 しょうがないじゃないか、貯まってるし巨乳のビキニアーマーなんて俺の夢なんだぞ!


 俺がそう思っていると、フェルナがそれを察したらしい。

 彼女はそっと耳打ちしてくれる。


「よっぽどあの鎧が気に入ったようだな。今夜着けてやるから、少し落ち着け」


「……ほんとか?」


「ああ。昔、興味本位で買った奴があってな。過激な奴だ」


「おおっ!」


 俺は結局、今夜も猿になった。

 そして翌朝――


「ただいまより、武皇決定戦を始める!!!!」


 いよいよ武道会が始まったのであった。

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