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統一皇帝は今日も思い悩む

ジェイアの夫がわからない。

それ以前にジェイアの戸籍すらわからない。

フェデルーダ護衛国人の特徴を持ってるから

その辺だと思うのだが。

どういう事だ。


鬱々としていても仕方ないので

この間、ジェイアと同じフェデルーダ護衛国人と言うことで例の宝石を押し付けた。

ジェスレイアの顔を見ておこうと思い立った。


「居ない?どういう事だ。」

ジェスレイアはどこに行った?

「たまに庭を颯爽と歩いているのはお見かけするのですが。」

庭にいるのか?

颯爽と女が歩くのはフェデルーダ護衛国の特徴なのか?

ジェイアも身のこなしが軽やかだ。


それにしても。

...昼間後宮にくるのは久しぶりだな。

子ともの頃はよく乳母を巻いて駆け回ったものだが...。

あれは、まだあるのだろうか?


「陛下?どちらへ?」

後宮管理者が聞いた。

こいつらは知らないかも知れないな。


「やはり、まだあったか。」

記憶よりちいさく感じるが。

昔、作ってもらった、ツリーハウスがあった。


下草に手入れがされてるな?

誰かここまで通っているのか?


「ジェスレイアか、面白い女だな。」

普通、女は虫とか蛇のでる茂みに近づかないだろう。

「ジェイアより先に会ってたらはまってたかもな。」

だかな...あの時。

一年前くらいか?

オレは久しぶりにお忍びに出た。

統一皇帝では、見えないところが見たい。

そう思って黒髪を茶色に染め服装も庶民のものにして下町を歩いていた。


「おばちゃんをいじめるなんて容赦しないよ!」

ドカと言う何か蹴る出される音がして男が転がった。

「チキショー!やりやがったなー!この女!」

大きい柄の悪そうな男が果物屋の前で立つ女、いや少女に吠えた。

「よわいやつほどよく吠えるってね!」


少女は鮮やかな体術でその男を下した。


「チキショー、おぼえてろー!」

男は定番の捨て台詞を吐いて逃げていった。

「いちいち覚えてられないよ、そんなの。」

少女は言った。


なんてすごいんだ。


「ジェイアちゃん、ありがとうね。」

果物屋の店主が言った。

ジェイアと言うのか。

「良いんだよ、まったく、いたいけなおばちゃんいじめんなよ、カツアゲヤロー。」

一理あるな、口は悪いが良い子だな。

大方。地まわりの末端組織のしたっぱがショバ代よこせとでもいったのだろう。


「あー、お兄さん、スミマセンねお騒がせ...して...。」

オレの顔を見た瞬間少女は声を詰まらせた。

オレの顔に何かついてるか?

「いや、ゴミ掃除をしただけだろう。」

オレは、少女をマジマジと見てしまった。

紫がかった灰色の目、クセがある柔らかそうな長い黒髪は一つに無造作に結んである。

整った顔立ちは少年でも通じるが美少女だ。


「...お騒がせしましたね。」

少女は去って行こうとした。

「ジェイアちゃん、荷物、あとこれ、お礼だよ。」

果物屋のおばちゃんが買い物かごと何か包みを押し付けた。

「お礼は良いよ、おばちゃんが無事ならそれでさ。」

少女はお礼をなお渡そうとするおばちゃんに包みを返してにっこり微笑んだ。


オレの心がジェイアにとらわれた瞬間だ。

なんて爽やかな笑顔なんだ。


去って行く彼女に声をかけるタイミングを逃したくらい見惚れていた。


「店主、彼女は何者だ。」

オレはおばちゃんに勢い込んで聞いた。

「....ま、変態でもジェイアちゃんなら大丈夫か。」

おばちゃんは言った。

言うに事欠いて皇帝を変態呼ばわり...。

今は、庶民の男だぞ、落ち着け、オレ。

「この先の小料理屋ハナミズキのアルバイトで用心棒のジェイアちゃんだよ。」

小料理屋ハナミズキのアルバイトだな。


こざっぱりとした落ち着ける店だな。

良い香りがする、今、昼時だったな。

中を覗くとジェイアが料理を運んでいた。

「いらっしゃっ...。」

ジェイアはオレを見ると奥に行こうとした。

「オレはガルディオン、怪しいもんじゃない。」

オレがそう言うとジェイアはホッとした顔をした。

「お客さん、今日のオススメは鰯のフライ、クレシア風とグーレラーシャ風ヨーグルトサラダですよ。」

にっこり微笑んだ顔がやっぱり爽やかでドキドキした。


「考えると初恋だな。」

オレは、ヌーツ帝国の皇帝、かつては皇太子だからいつでも女には困らなかった。

「そのオレを夫がいるとふるとはな。」

良い度胸だ、男ならオレの背中がまかせられる。

はっきり言う人間は貴重だ。

皇帝とわかったらどうなるか...。

案外変わらないかも知れないな。


ツリーハウスの梯子もきちんと直したようだな。

ますます面白い、大工仕事もできるのか?

「登ってみるか。」

オレはうっとうしい皇帝のローブを脱いで後宮管理者に渡した。

「陛下?登られるのですか?」

怪訝そうに見られたが、

オレはフェデルーダの女護衛官のみつれて登った。

ジェスレイアが居たとき怯えさせないためにフェデルーダの護衛官を指定したのだが。


「ジェス様お見事です。」

護衛官が呟いた。

「なんだ?」

オレが聞くと護衛は言った。

「入口にセンサーが施されて居ました、旧式ですので、誰かきた程度しかわかりませんが今日はもうお帰りにならないと思います。」

通信機に情報が送られる軍事用のやつじゃないか...確かに旧式だが。

恐ろしいな、フェデルーダの王女は伊達じゃないということか。


しかも、例の宝石お前もいらないようだな。

ツリーハウスのテーブルに放置するな。


回収しようと手を伸ばすと護衛に押さえられた。

「お気をつけください、罠が仕掛けられております。」

護衛が木の棒を投げるとテーブルごと網に包まれた。

天鉱合金の網だな、恐ろしい。


ジェイアも気になるが、

ジェスレイアも別の意味で気になってきた。

その内、また昼間会いに来よう。


ジェスレイアは、案外護衛官として皇宮務めのほうが向いているかも知れないな♪

会うのが楽しみだ。

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