統一皇帝は今日も仕事
皇宮の皇帝の執務室でオレは黒髪に戻した髪の毛をかきあげた。
「ジェイアに返されたぞ。」
オレはプレゼントの相談をした護衛のビーヌシスにぼやいた。
「そうですか、女性は宝石類が好きとリサーチしたのですが。」
ビーヌシスがいった。
相変わらず真面目だな。
オレはヌーツ帝国の皇帝、ギルデアス・ヌーツだ。
世間一般では『統一皇帝』の方がよく知られているな。
5代に渡るヌツオヨ大陸の征服を完了させた皇帝だからだ。
最後まで抵抗した元オーヨ王国の残党や元オーヨ王国の国民感情を考えて。
セラシナを後宮に入れたが。
...あんなにつまらん女はいないな。
なにが星空ような繊細で朝日のごとく輝く美貌だ。
単なる青みががった黒髪にオーヨ王家特有のオレンジ色の目ってだけだ。
ジェイアの方が美人だ。
柔らかそうな少しクセのある長い黒髪。
紫がかった灰色の瞳は、いつも楽しそうにきらきらしてるし。
何て言っても、出るとこ出て引っ込むところが引っ込んだ引き締まった体つきがな。
あの言動に隠されがちだがな。
ま、ほかに男に目をつけられなくてよいが。
「女性と言えばセラシナ妃様の女官から最近おわたりがない、御加減が悪いのか?と言う問合せが有りましたよ。」
ビーヌシスが言った。
別に女はセラシナ一人じゃないしな。
正妃でもない癖に生意気な。
...正妃か....。
「正妃ならジェイアがいいな。」
あの美貌であのきさくな性格だぞ。
絶対に国民うけがいいはずだ。
「オレもアイツがいい。」
あの引き締まった身体を抱き締めたいな。
「陛下のお達しとあらば説得して参りますが。」
ビーヌシスが言った。
こいつなら、オレの為とか言ってジェイアをさらって来そうだな。
「やめろ、オレはジェイアの心も手にいれたい。」
ジェイアならそんなことすれば許さないはずだ。
「出過ぎたまねをいたしました。」
ビーヌシスがフェデルーダ護衛国の礼をとった。
こいつはそこの元第二王子だからな。
やはり出るか、別に構わんが。
そう言えば、こいつらの妹のジェスレイア姫が後宮にいるはずだ。
セラシナへの当て付けに通ってやろうか。
こいつの顔を見る限り美人そうだ。
「妹君は...。」
言ったとたん、ビーヌシスは手枷を出した。
「妹にお情けを賜るときはこちらにてベッドに固定してからにしてください。」
オレはそんな趣味は今のところない。
「妹は、体術が得意ですので、万が一陛下を傷つけないようにお願い申し上げます。」
...フェデルーダ護衛国の『武術姫』と呼ばれてたそうだな。
遠くからしか見なかったが。
檻に入れられ、手足に手枷足枷、首輪までつけてたか?
それで後宮に放り込まれたらしいな。
美人らしいからな。
とらわれの姫君と言うことでしばらく世間の話題になったらしいな。
オレは、元オーヨ王国の残党がりに頭を悩ましてたから通いもしなかったが。
「すまん、今のところ通う予定はない。」
オレも情けはある。
そんなにしてまで女性を抱きたくない。
ジェイアなら...。
縛っても抱きたいって変だろう、オレ。
「ありがとうございます。」
ビーヌシスはあからさまにほっとした顔をした。
よっぽど。妹君を可愛がってるのだろう。
理性は、オレの情けを妹君が受けることを納得しても。
感情は、大事な妹君を男に抱かせる算段は嫌なようだ。
「セラシナを何とかせんとな。」
正確にはセラシナについてる。
元オーヨ王国の女官だの乳母だのその取り巻き連中だが。
セラシナ自体は、親兄弟が処刑された分、オーヨの血を絶やさないように必死なだけだが。
例え、ヌーツ帝国の皇子を生んででも残そうとな。
あそこは最後まで抵抗された分、過酷な処分をせざる得なかった。
フェデルーダ護衛国と対照的だな。
早めに降服したお陰であそこの王族は完璧に残ってる。
国も属国扱いとはいえ第一王子が王位をついでるし、支配もゆるやかだな。
「御命を賜りますれば、なんとか致しますが。」
...暗殺か?こいつの国の業務ではないだろう。
こいつらは守る為に武術を磨くからな。
個人に対しての業務でグーレラーシャの傭兵達のチーム戦闘守護と対比させて語られてたな。
「いや、まだ様子を見る。」
何か、尻尾をだすかもしれん。
「はい。」
あからさまにまた、ほっとした顔だ
やはり、無理していたようだ。
ま、良い、あやつらより今はどうジェイアを落とすか考える方が先だ。
帝国も平穏無事なのだからプライベートを少しぐらい優先でもいいだろう。
仕事を早めに終わらせて、またジェイアに会いにいくか。