プロローグ 幽霊側室は今日もいません。
新しく始めてしまいました。
在庫切れ時は、不定期開催ミニコーナーの予定です。
でも、毎日書きそうな気がして怖いです。
よろしくお願いいたします。
阿野根の作者
さあ、今日も稼ぐぞー。
私は、ベッドから起きて伸びをした。
ヌツオヨ大陸にはヌーツ帝国しか国がない。私は、そこの帝都の下町にある小料理屋ハナミズキで住み込みバイトをしている。
「ジェイアちゃん、おはよう!今日も頑張ろうね。」
住み込む先のおかみさんも旦那さんもそこそこな年寄りだし、よくしてくれている。
「おはようございます!」
元気に挨拶!それが一番だよね。
「ジェイアちゃん、おはよう。」
旦那さんもニコニコ挨拶してくれた。
昼時はかきいれ時なんだよね♪
「今日のオススメはなんだ、ジェイア。」
茶色の短い髪と碧の目のワイルド系美男が私の手首をつかんだ。あー、アンタ、また来たんだ。
「スズキのパイ包み焼きとヌーツサラダです。」
客は客だし、愛想笑いくらいしておこう。
「そうか、じゃあそれを頼む。仕事の後時間がほしいな。」
ニヤリとして彼が言った。うーん、今更ながら誘われてもなぁ…。
「嫌だな、ご冗談ばっかり。ご注文うけたまわりました。」
それに、今日帰んないといけないし...。
「冗談じゃないんだが。」
何かぼやきながらも、手を離してくれたので仕事に戻った。
「スズキのパイ包み焼きとヌーツサラダ1つお願いします!」
厨房に向かって声をかける。
「ハイよー。」
おかみさんの返事が返って来た...こういうのいいな。
「あー...何で宮廷って行事が多いんだろうね、シノンさん。」
久しぶりに帰った後宮の友だちの部屋でぼやいた。私の部屋?うーん、有るけどね...。
「そうですわね、お店の売上は順調ですの?」
シノンさんが売上報告に目をとうしながら言った。
「うん、順調だよ...あの人は相変わらず来てるけどね。」
思い出してため息をついた。自分の妻誘ってどうする皇帝...ま、私の顔なんて知らないんだろうけどね。
「そう、絶対気がついてないから大丈夫ですわ。」
シノンさんが言った。この人も側室仲間だ。
諸事情により、「ヌーツ帝国皇帝の側室」が本業です...ま、皇帝、ハナミズキで初めて間近で見たけどね。初夜もなかったもんで。つまり、こんなところに放り込んでおいて放置...親父と兄弟の戦闘能力と忠誠心は認めてそばに置いてる癖に。いいけどさ、アンタ、元オーヨ王国のセラシナ妃を寵愛してるんじゃないんかい。
「相変わらず、物置状態...ま、ここにいるかいないかわからない、側室の部屋なんてこんなものか。」
私の部屋は一応ある。でも、普段下町で暮らしているので、後宮女官にいつのまにやら物品の物置状態にされている...つまり出てるのも気がつかれない、幽霊側室なんだ私は。ま、ハンモックでもつるしておかみさんが持たせてくれたごはんでも食べようかな?お茶も持ってきたし。
一応、昔はフェデルーダ護衛国(と言っても小国だしグーレラーシャ傭兵国に比べるとネームバリューがいまいちなんだよね)唯一の王女だったんだけどね...。
人質方々後宮に放り込まれて...あー...オーヨのセラシナ妃とほぼ同期だから忘れ去られたのか。
ま、そう言う人そこそこいるだろうけど。皇帝の体は一つだし...。
今さら興味もつなよ。アンタからすりゃ、下町の食堂の小娘だから遊ぶのにちょうどいいと思ってるかもだけどさ。
さてと、明日に備えて寝るか...ああ、憂うつだよ。