1.巣穴暮らし
日本の文化レベルを10として、俺が今いるここはレベル4ってとこかなぁ。
無論、電気はなし!
動力はもっぱら人力ですってよ、奥さん。
ナイナイ、俺非力だし、無ー理ー、詰んでますよー。
人のいい人間の多い集落近くに落とされたわけだけんどもよ。
まぁ、あれよ、言葉わかんねぇのよ。
脳内パソ起動して翻訳かけたら、スバラシイ事に翻訳されるんだけんども、超適当なのよ。
「今日は、雨で、どこへ去る」
今日は快晴だよおっちゃん、どこへ去るって、俺来たばっかりじゃんか。
ニッコニコしながら声をかけてるってことは、友好的なこと言ってんだと思うんよ。
困んじゃん、俺、対人スキル低いし。
身振り手振りで意思疎通なんてアグレッシブなこと無理よ? 恥ずかちーもん。
そんなわけで、どんなわけでー。
俺、村から離脱。
泣きながら離脱、嘘、泣いてないよ、男の娘だもん、いや、漢の子だもん、ムッハー。
地図検索、素敵GPSで現在位置確認。
ヒャホーイ、変なところで高性能! なんで翻訳は馬鹿なんだ、この変態PC。
ルート検索 雨風しのげそうな場所。
真っ先にさっきの村が指定されたので、二次候補。
道を逸れて、道なき道をナビゲートされ。
『ピコーンピコーン、目的地周辺です、お疲れ様でした』
小憎いアナウンスが流れて。
"目的地"を探すのに、ややしばらくかかったぉ。
一昔前のカーナビかよっ!
見つけた巣穴は確かに雨風を防げそうだわー。
中に白骨化したクマらしき物体があるんだけんどもよー、異世界トリップしたての俺にこれを処理しろとか、無理ぽ。
いや、生きてるクマさん相手にするより全然ましなんだけどさぁ。
大木のウロの中から、骨を摘んでは捨て、摘んでは捨て。
そうね、蛆とかわいてなくて良かったよね。
俺ガンバった、ウロの中のゴミ、全部出した!
もう夜だけんどもね…。
いや、夜こそが俺の時間!
ウロの中で、目を閉じてパソを起動する。(目瞑ってたほうが楽なのよん)
おぉ、"お気に入りフォルダ"ちゃんと移行されてんのなー!
巡回しているサイトの更新もされてるし、書き込みもできるのなー!
あ、IPアドレスは変わってんなぁ。
おぇ? 異世界情報は書き込めねぇの? 自分の情報は全部NGってかー。
ちぇー、折角面白ネタに体張ってんのによー。
まぁしゃぁねぇ。
一通り巡回を終わらせて、目を開ける。
大きく開いたウロの入口から空を見上げれば、木々の間から吸い込まれそうな程深い星空が見える。
あぁん、駄目。
そんな健康的なもん目にしたら、目が腐っちゃうーん。
もう一度目を閉じて、俺の心の安定剤である、二次元エロ画像を検索する。
ああ、今までみたいに、データをわざわざ他のポータブルハードディスクに落とさなくてもいいんだね。
家族に見られる危険はZEROになった!
今こそ俺は、心の翼を広げ大空に羽ばたくんだ! アイ キャン フラーイ!!
俺の異世界初日の夜は、エロ画像収集に費やして終わった。
なんて充実した夜なんだ、うっとり。