第九話〜元康の謀略〜
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朝比奈康朝降伏に先立ち今まで今川家に対して忠義を尽くしてきた国人衆・水軍衆は相次いで今川家に見切りを付けて松平・織田連合軍に鞍替えし、その先兵として今川家領をジワジワと侵し始めた。
そしてついには今川家最後の城・駿府城(興国寺城は既に武田家の攻撃によって陥落)に籠城して城を枕にして討ち死にする覚悟でいた。
城を攻囲して早三日が経過した、駿府城に立て籠もる今川軍二千による必死の抗戦も虚しく大手門・二の丸共に陥落し残るは本丸のみとなっていた。
だが以外にも本丸の守りは堅くまたもや戦況は膠着状態に陥った、その頃信長は墨俣を包囲するも稲葉山城の軍勢に敗北し小牧山城に引き上げていた、信長は籐吉郎に対して速く今川家を攻め滅ぼし美濃攻めに加わるように矢のような催促を繰り返していた。
そこで籐吉郎は須藤・浅野軍三千二百を残して尾張へと引き上げて行かざるを得なかった、元康に後事と兵を託し籐吉郎は東海の地を去っていった。
ある日元康は諸将を呼び集めて軍議を催す事とした、このまま今川攻めが長引けば三河に武田軍が流れ込む恐れがあったのだ。
「さて・・・諸将等に集まって貰ったのは他でもない・・・今川家と和議を結ぼうと思う」
元康が開口一番に和議と言う言葉を口にした、籐吉郎からは『決して和議を結ばず今川一族ことごとく討つべし』との言葉を貰っていた須藤にとって意に反する事であった。
「元康殿!!我ら納得する事ができませぬ!!」
須藤と浅野が勢いよく立ち上がって元康に噛み付いた、自分達がここにいるのは今川家を攻め滅ぼす為であった、のうのうと和議を結ぶ為では無いと続けて言った、それでも怒り収まらず浅野は本当に和議を結ぶつもりならば我ら織田軍は撤退するとも脅迫したのである。
「須藤殿に浅野殿、まずは落ち着かれよ・・・」
松平軍参謀・石川数正が須藤と浅野に対して着席を促した、数正自身もどこか腑に落ちないがとりあえず話だけでも聞こうと須藤達を説得した。
「これは真の和議に非ず・・・これは偽りの和議である、かつて北条家の始祖・北条早雲が難攻不落の小田原城を落とした際に用いた策だ」
元康が諸将に解りやすく説明した、つまりは謀略を持って今川家を討ち滅ぼすと言う訳であった。
その言葉を聞いた須藤達は自分達の非礼を深く詫び謝罪した、その後に元康は諸将達に撤退準備をするように見せかける旨を伝えた。
元康一世一代の大博打は果たして吉とでるか凶とでるか・・・今はまだそれは誰にも解らなかった・・・。
− 深夜 駿府城 北門 −
和議は成り大方の兵は引き上げていった、だが夜も更け咳払い一つ立てずに城に近づく少数の部隊があった。
須藤清則・本多忠勝・浅野長吉・酒井忠次・朝比奈泰朝・渡辺守綱・服部半蔵の猛将を含めたたった十数名の少数精鋭特攻部隊である、本隊は高天神城東方十里にて待機し、合図と共に城に攻め込む手はずであった。
城方は和議が成ったと大喜びで城兵総出で宴に興じていた、まず半蔵と伊賀忍軍数名が音を立てずに城内に侵入し門番と櫓の兵を毒を塗った棒手裏剣を喉に突き立てて一撃で沈黙させた。
半蔵以下伊賀忍軍は手早く大手門の閂を開け忠勝達を中に招き入れた、忠次と長吉が兵の詰め所に火を放ち肝を潰し逃げ出してきた今川の兵達を忠勝・清則・守綱等猛将が悉く討ち取った。
その間に半蔵は泰朝の手引きで兵糧庫・火薬庫に火を放ち本丸へ向けて次々と破壊工作を続けていた。
「忠勝殿!!危ない!!」
清則が大太刀で忠勝に斬りかかろうとした雑兵を素早く斬り捨てた、三対百あまりの兵力差にも関わらず三人は互いに互いの背中を預ける形で陣を敷いた、例え死合いと言えどもそれは合戦と何ら変わりなかった。
「清則殿!!かたじけない!!」
忠勝が槍で雑兵の斬撃を受けて礼を述べた、かつては生死の境をのぞき込む様な一騎打ちをした二人だが今は互いに背を預けている・・・この二人の旨に去来する物は何であろうか・・・それは苦々しい私怨では無く戦国に生きる清々しい武人の性であった。
「すっかり囲まれましたなぁ・・・」
守綱が少し息を整えて辺りを見た、辺り一面には焼け出された雑兵達が着の身着のままながらも手にそれぞれ得物を持っていた。
渡辺半蔵守綱、松平家に置いて『槍の半蔵』の異名を取った槍の使い手で服部半蔵と併せて『両半蔵』と恐れられた猛将である、この時はまだ松平家に仕えるしがない足軽頭であった。
「どう致す?清則殿・・・」
忠勝が槍の柄を強く握りしめて聞いた、このまま斬り続けても埒があかないのである、それに元康率いる強襲部隊が合図を今か今かと待ちわびていたのである。
「守綱殿・・・俺達が血路を開くから元康殿に合図を・・・」
清則が太刀の柄を握り一息付いて言った、合図は鏑矢を勢いよく上に打ち上げるだけであったが、その隙が防戦一方の清則達には見つけられなかったのである
「そんな・・・俺はまだ戦えます!!」
守綱が思わぬ事を言われて面食らったが即座に反論した、もしもに備えて一人一本の鏑矢を所持していたのである。
「その傷では満足に戦えまい・・・ここは清則殿の言うとおりにするんだ!!」
忠勝がちらりと守綱の肩の傷を見て怒鳴った、戦いの最中守綱は肩に怪我を負ったのである、他の二人は満足に手傷すら負っていなかった。
「行くぞ!!忠勝殿!!走れ、守綱殿!!」
清則が思いっきり駆けだして敵に斬り込んで行った、それと同時に忠勝も槍を振り回して敵に突っ込んでいった、思わぬ反撃を受けた雑兵達は動揺して守綱を追う事が出来なかった。
「えぇい!!構うな!!奴らの首を上げよ!!」
足軽頭らしき男が動揺する兵達に命令を下した、だが戦国最強と呼ばれた二人の勢いは止まらなく次々に討たれて散っていった。
二人の活躍もあり守綱は櫓の上から鏑矢を射た、鳥の鳴き声に似た音が闇夜を切り裂くように鳴り響いた、この音を聞いた元康軍本隊は怒濤の勢いで馬を駆けさせて駿府城を強襲した。
作者のどうでもいい日記
今日、TBSサイトで注文した最終話収録某RM第二期DVDが到着。
だけど・・・何回見ても軽く鬱になるなこれ・・・
第三期放送をわくわくして待っている俺は阿呆なのか・・・それとも薔薇しんs(ry