第六話〜鳴海の合戦・中編〜
戦国最強・本多忠勝と対峙した清右衛門。
お互いに守る者の為に戦う同士の激しい一騎打ちの幕が開けようとしていた・・・。
激闘の鳴海の合戦の中編です。
戦国最強・本多平八郎忠勝、幼き頃から松平元康に仕え、信頼厚き猛将である。
諸武芸に優れ三方原〜関ヶ原と数々の合戦に従軍し、榊原康政・井伊直政・酒井忠次ぐと並んで徳川四天王の副筆頭格でもあった。
その凄まじき武を武田信玄には『家康に過ぎたる物が二つある唐の頭(兜)に平八(忠勝)』・秀吉には『古今独歩の勇士』と賞賛さんれた程でもある。
また三河武士らしく主君には絶対の忠誠を誓っていて伊賀越えの折りにも服部半蔵と共に家康をその身で守り抜いた程であった。
酒井忠次・井伊直政・榊原康政と並んで徳川四天王にも数えられた、また政治手腕にも優れ関ヶ原の戦いの後に桑名に転封した折りに城下町の発展にも貢献したのである。
だが、今は元康に仕える一人の武将に過ぎなかった、元康配下として各地を転戦しその勇名は遠く京にもおよんでいたほどであった。
清右衛門はそんな戦国最強・本多忠勝と対峙していた、逃げだそうとする瞬間に背中から斬られるのは重々承知していたのだ。
「清右衛門殿か・・・その武と度胸誠に見事なり・・・ならばこの本多平八郎忠勝、全力でお相手仕ろう・・・」
忠勝が足下に転がっていた槍を拾って清右衛門向けて言った、清右衛門も震える手で槍を拾い上げた、この二人の周りでは死闘が繰り広げられていたにも関わらず、二人の耳には己の息づかいだけが聞こえていた。
先に仕掛けたのは忠勝である、忠勝はまるで最上川の急流が如し早さで槍を突き出した、清右衛門は間一髪でその突きを回避し槍を横薙ぎに振るった。
だがそこは歴戦の勇士である忠勝は素早く手首を返して槍の柄でそれを防いだ、それと同時に清右衛門の胸目がけて槍を薙いだ、清右衛門の胸に鋭い痛みが走りなま暖かい血が少し流れ始めた。
「痛っ・・・」
清右衛門がチラッと胸を見ると鎧は見事に横一文字に切り傷が走ってそこから少しだけ血が滲んでいた、幸い槍の穂先が向かってきた瞬間に身を退いた為に浅い傷で済んだのだ。
『打ち込みは素人並だが・・・即座に身を退いて被害を軽減させるとは・・・間違いない、この男はどんどん強くなる・・・俺と同等、いやもしかすると・・・』
忠勝が少し息を乱れさせて清右衛門の振る舞いに感嘆した、忠勝は叔父に槍術を学び達人の領域にまで極めたが清右衛門は実戦で技を極めたのである。
その一瞬の隙を清右衛門は見逃さなかった、忠勝が息を整えてるわずかな隙を突いて忠勝目がけて思いっきり槍を投げつけた。
「小賢し・・・速い!!」
忠勝が槍を振るって清右衛門が投げた槍を叩き落としたしたが、そこには清右衛門の姿は無かった、しまったと思って下を見ると清右衛門が忠勝の腰に差していた太刀を素早く抜いて斬り付けようとしていた。
「うぉぉぉぉ!!」
清右衛門はもう無我夢中で忠勝の大剣を振り下ろした、その刃は斬撃を防ごうとした忠勝の槍の柄を叩き斬り忠勝に軽く食い込んだ、戦国最強の誉れ高い忠勝が生まれて初めて傷を負った瞬間であった。
「ぐっ・・・完敗だ、我が首持って武門の末代までの手柄と致せ・・・」
忠勝が激痛が走る肩を押さえて呻いた、これ程の男にならばこの首をくれてやるのは惜しくないと悟ったのである、だがその時既に清右衛門の体力は限界を迎えていて膝が震えて上手く立てずにいた。
「取ろうにも力が・・・ここは退いてくれぬか?」
清右衛門が剣を杖にして呻いた、その顔かには疲労の色が滲んでいた、武術の心得がある者は解るが集中力が極限まで達しその集中力が途切れた瞬間にもの凄い疲労感に襲われるのである。
「ふっ、本当に不思議な男よ・・・その剣は貴殿に差し上げよう、その剣で此度の武勲の証となろう・・・」
忠勝が腰に差していた剣の鞘を清右衛門に投げ渡して言った、忠勝はこの男に惚れ込んでしまったのである、そしてその言葉はまたいつの日か戦場で戦おうと言う意味も含まれていた。
結局清右衛門は忠勝の首を取らずに逃がしてやった、その好意に甘えて忠勝は撤退、清右衛門・利家も怪我により戦線を離脱して行った・・・。
この鳴海の合戦は清右衛門の奮闘により引き分けで終わり、国境にて両軍による睨み合いが半月近く続く事となった・・・。
ようやくテストも終わり一段落付いたこのごろ。
でも結果を見て益々勉強が嫌いになりました・・・。