1/12
序章
あー……面倒臭い。
アスタリスクへ。
手紙にはでかでかと俺の名前が書かれいる。裏面には母親の名前。中身はまだ確認していない。でも何かは理解できて、俺はため息をついた。
「今度は何て言って断ろう……。はぁ」
内容は再婚の為の見合い話だ。
結婚なんて、もうする気はないと言ったのに、本当に話を聞かない親である。というか、俺だってもう成人しているんだからそんなに口出ししないで欲しい。
独りになってこれで15年くらいだろうか。息子は学校の宿舎に入っているし、1人で暮らすのも大分と長くなっていた。心配してだとは分かるが、今の生活の方が気楽だというのが正直な所だ。
それに置いてかれるのはもう懲り懲りだった。俺は魔族で、妻は人族。妻が先に死んでしまうのは分かりきっていた事。それでも愛した相手が先に死んでしまうのは、結構キツイ。もう一度結婚するなんて正気の沙汰とは思えなかった。
「保留だ。保留」
ぽいっと机の上に手紙を放り出した俺は、仕事場である王宮の研究室へ行く事にした。